「狛治殿!! やはり傀儡の方は頸を刎ねても無意味だ!! 加えて本体を包む樹木の壁は私の剣の威力では突破できそうにない!! やはりここは逃げの一手を・・・」
「いえ!! おかげで隙が出来ました!! 千載一遇の好機なので俺にやらせてください!!!」
俺は地を蹴り全力疾走する。瞬く間に俺は上弦の肆の本体を包む樹木の檻まで接近し、目の前で両手を引いて拳を握り力を溜める。
すると首無しのまま集合体が太鼓を打ち鳴らし、俺の周囲に木龍が迫る。しかし俺は目を瞑ったまま精神を極限まで集中させる。
ー水の呼吸 肆ノ型 打ち潮ー
ー水の呼吸 漆の型 雫波紋突きー
ー水の呼吸 弐ノ型 水車ー
ー水の呼吸 肆ノ型 打ち潮ー
ー水の呼吸 壱ノ型 水面斬りー
ー水の呼吸 捌ノ型 滝壺ー
ー水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦ー
左近次殿が俺を守るように凄まじい回数の型で木龍をあしらってくれる。俺は木龍の殺到と同時に左近次殿の闘気が膨れ上がったのを感じていた為、迎撃を全て任せていたのだ。
おかげで構えを崩すことなく技が繰り出せる。
まだ実戦では一度も使ったことのない我流の奥義。師範の授けてくれた技が一体多を想定した連打の奥義なら、これはその対極とも呼べる一撃必殺の奥義。名付けて・・・
ー素流体術 奥義 滅式ー
大地を割るほどの踏み込みの力を効率よく上半身に伝え、更に上半身に溜めたバネの力をも両の拳に伝え同時に突く。その瞬間、目の前の樹木の檻は文字通り木っ端微塵に消し飛んだ。
「やったか・・・!!」
俺が一瞬気を緩めると、すぐに左近次殿が警鐘を鳴らす。
「狛治殿!!!! 本体が技の直前に逃げ出した!!! 油断するな!!!」
ー水の呼吸 参ノ型 流流舞いー
太鼓の音と共に数匹の木龍が俺に接近し口を開ける。血鬼術発動の手前で左近次殿がそれらの頸を刎ねてくれたおかげで俺は命拾いした。
「すみません!! 助かりました!! 今度は俺に迎撃を任せてください!! 左近次殿は本体の頸を!!!!!」
「ああ、頼んだ!! 危なくなったらすぐさま退避するのだぞ!?」
「分かってます!!!」
今度は俺が左近次殿を守る番だ。分身に背を打たせはしない。俺が殿となり盾となる。
左近次殿が本体を追って夜の闇の中に消えていくと同時に、上弦の肆の集合体は頸をつなげて青筋を浮かべる。
「させんぞ極悪人共めら!!!! 貴様らは何度小さく弱気者を甚振れば気が済むのだ!!!!! 貴様らはあの者が可哀そうだとは思わんのか!!!??」
「よくもまあ散々人を喰った鬼がそのような被害者振った物言いを・・・」
俺は呆れ果て胸の内で毒を吐く。
何を言っているんだこの馬鹿は。頭に脳味噌が詰まっていないのか? 俺たちは弱き者を甚振ってるんじゃない。悪鬼の本体を追い詰めようとしているのだ。それにお前はその悪鬼の傀儡だろうが。何をほざこうと、左近次殿が追い詰めているのだからお前はもう間もなく死ぬ。
「いつだって我ら鬼はたった一人の身で、徒党を組む貴様ら鬼狩り共と戦わなければならないのだ!! それも孤立無援でだ!!
頸を鬼狩りの刀で刎ねられれば死ぬ上に、朝日が昇れば身を焼かれ生き残ることもできない!!!
それなのに貴様らはあのような小さき者を殺そうとして心が痛まぬのか!!?? 徒党を組むな!! 馬鹿者!! 卑怯者!!!
一対一なら我等上弦の鬼の方が強いのだ!! 一対一なら一度も貴様らの攻撃に晒されることもなかった!! 潔く負けを認めるのだ!! 我等上弦には勝てないと!!!」
奴の言い分を聞いて俺は思わずため息を付く。
「確かに俺達柱と言えど、上弦と一対一で戦えば殆どの者が命を落とすだろう。
俺たちは生身の人間だ。傷も簡単には塞がらず失った手足が戻ることもない。一方で鬼なら瞬きする間に治る。そんなもの鬼ならかすり傷だ。
生物としての優位性の観点から見れば、どう足掻こうと人間では鬼には勝てない。」
奴は俺の反応が意外だったのか怪訝そうな顔をしている。俺は続ける。
「だが、だからこそ俺達鬼殺隊は、鬼と戦う時一致団結する。人を守るために。
お前たち鬼共は、無限の再生力に加えて理不尽な血鬼術まで持ち合わせておきながら、生身の人間である俺達が協力し合って戦うだけで卑怯者呼ばわりするのか?
本当の卑怯者は貴様らの方だ。虫唾が走る。反吐が出る。
なら聞くが、そこまで団結し戦うことの重要性を理解しておきながら、なぜお前たちは他の鬼共と協力して戦おうとしないのだ?
分かっていないようだから教えてやろう。鬼は利己的だからだ、自分勝手だからだ、我が身可愛いからだ。
そんな者共がどう足掻こうと命を預け合い協力して戦うなどできるはずがない。千年続いた鬼殺隊を滅ぼすことなどできる訳がない。
俺達鬼殺隊を本気で滅ぼしたいのなら、その腐った性根を叩き直してから今一度出直して来い。貴様の主人にもそう伝えておけ。」
やがて空の遠くが白む。夜明けだ。もうこいつと戦う理由もない。こいつの勝手な物言いなど否定してやればいい。奴らに正義や大義など一つもないのだから。
朝日が差し、目の前の傀儡の身体が発火する。奴は消え去る前に負け惜しみを言い放つ。
「何とでも言うがいい。徒党を組まねば我等上弦に及ばぬ極悪人共めら。貴様らが息絶えるのもそう先の話ではないぞ? 上弦は今後も補充され続けるのだからな・・・!!」
そうして塵となって消え去った。今の言葉。もしや本体を左近次殿が仕留めたのか?
俺は口笛を吹いて鎹烏の飛影を呼び、左近次殿の安否を確認するべく差し向ける。やがて、朝日の差す森の中、左近次殿が肩を落として戻ってきた。
「済まない、狛治殿。朝日が昇ると同時に奴は底も見えぬ崖へと落ち逃げていった。折角上弦の鬼を仕留める絶好の機会だったのにも関わらず。責任を取り腹を切ってお詫び致す。」
「いや・・・それは困りますよ・・・その理屈だと上弦の陸である童磨を取り逃がした俺も切腹しないといけなくなるので。俺が自刃したら誰が恋雪を泣き止ませるというんです? 本当に勘弁して頂けませんか?」
日が徐々に昇る中、俺と左近次殿は背を叩き合い、そのまま笑いながら帰路に就いた。
続く
滅式がどんな技かは諸説あると思いますが、本小説では両の拳を突き出す技として描写させて頂きました。イメージ的にはONE PIECEのルッチが放つ六王銃もしくはルフィのバズーカ、もしくはBLEACHの山本元柳斎重國が放つ双骨が例に挙がるでしょうか。まあ映画の描写だとその後殴りまくってるので一撃必殺技ではない可能性もありますが、技の開発初期はこんなものだったと受け取って頂ければ幸いです。
加えて憎伯天と狛治の問答は一応原作のオマージュのつもりで書いてます。若干くどいですが書きたかった内容なので強行しました。以上半天狗戦終了となります。
童磨の再登場についてどう思いますか?
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有
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無
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狛治がしっかり倒すのなら有
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原作通り生き残らせてほしい