「よぉおおおし!! 次は徒競走だぞ!! 貴様らには負ける気が微塵もせんわ!! 覚悟しておけ!!」
「五月蠅い、桑島。言っておくが腕相撲ではお前がドベであることを忘れるな。それにあまり強い言葉を使うんじゃない。弱く見えるぞ?」
「何を!? 鱗滝よ!! 何があろうとお前だけには負けんからな!?」
腕相撲大会が終わり、俺たちは以前長寿郎と交流試合をした広場へと移動していた。
俺が簡易的に線引きをし、出発地点に全員並ぶよう促す。
「距離はざっと二十間*1です。瞬発力命の勝負ですね。尚ことね様の掛け声より先に走り出した者は強制的にドベとさせて頂きます。皆さん、準備はよろしいですか?」
「鱗滝よ!! 貴様不正だけは許さんからな!? 今度こそぎゃふんと言わせてやる!!」
「ふん・・・言っておれ。」
「徒競走なんて兄とした以来ですね。何だか楽しみです。」
「私も師範とした以来ですね。何だか懐かしいです。」
やがてことね様が出発地点、ご子息の
「それでは位置について・・・用意・・・はじめ!!」
「うぉおおしゃぁああああああい!!!」
掛け声とほぼ同時に慈悟郎殿が奇声を上げ、一瞬で到着地点を駆け抜ける。俺たちは何事かと驚き、誰一人としてその場を動かなかった。
「おぉおおおおい!? なぜお前ら駆けださんのだ!? これは真剣勝負だぞ!?」
「桑島・・・今のは不正ではないのか・・・奇声で他者を妨害するなど・・・」
「な、何を言っている!? 俺はただ全力で勝負に臨んだだけだぞ!?」
「はあ・・・仕方ありません。やり直しです。ことね様、お手数をおかけしますがもう一度掛け声お願いします。」
「はい。わかりました。」
「桑島よ。ことね様に迷惑をかけるな。柱として恥ずかしくはないのか・・・」
「な、何を!? ええい! 次は黙って走ればいいのだろう!? 今度こそ吠え面をかかせてやるからな!!」
慈悟郎殿が文句を言いつつ出発地点に戻る。やがて全員準備ができたのを見計らってことね様が咳払いする。
「それでは位置について・・・用意・・・はじめ!!」
その瞬間、五つの影がその場より消え去った。瞬く間に全員が到達地点を駆け抜け、決着となる。
「織哉様!! 順位は!? 順位はどうでしたか!?」
慈悟郎殿が織哉様に食い気味に確認をする。完全に織哉様が引いてるので、左近次殿が慈悟郎殿の襟をつかんでその場でひっくり返して地に転がす。
「痛い!! 鱗滝何をする!?」
「お前こそ何をしている・・・織哉様が困っているだろう・・・少しは落ち着け。」
「で、結果は如何に?」
俺は織哉様に静かに尋ねる。柱全員が固唾を飲んで見守る中、織哉様が震える声で返答する。
「す・・・すみません・・・速すぎて見えませんでした・・・」
その瞬間立ち上がったはずの慈悟郎殿が道化のようにその場でずっこける。
「そんなぁあああ!! これでは勝負の判定が出来んではないか!! 折角鱗滝より俺の方が格上であることを証明できると思ったのにぃいいいいい!!!!」
「五月蠅い、黙れ、大きな声を出すな、全くお前と言う奴は。」
とは言え流石に幼い織哉様の目で判定を下すのは無理であったか。これは俺の目論見が甘かったと言わざるを得ない。
「すみません・・・俺のせいです・・・審判を誰にしてもらうかまで考えていませんでした。誠に申し訳ございません。」
「狛治殿・・・お主が謝ることではない。全てはこの五月蠅い男が騒ぎ立てるのが悪い。」
「おぉおおおおい!? 鱗滝よ!? その言い分だけは納得できんぞ!?」
「五月蠅い、黙れ。」
「うぉおおおお!?」
再び立ち上がるも地面に転がされる慈悟郎殿。俺たちはお家芸を見せられているのだろうか。
「あの~・・・私が一番遅かったと思うので、次は私が審判を務めますがよろしいですか? 恐らく何度走っても私がドベだと思うので・・・」
「さやか殿・・・かたじけない。では次こそはさやか殿の判定で徒競走の格付けをつけるとしましょう。皆さんもそれでよろしいですか?」
「おおう! さやか殿の目であれば間違いないであろう!! 今度こそ決着をつけるぞ鱗滝よ!!」
「ふん・・・望むところだ。」
「俺も異論はありません。それじゃあ、さやか。審判を頼む。俺は君の判断を信じる。どんな結果を君が下そうとも俺は認める。頼んだぞ?」
「あ・・・はい/// では任せてくださいね?」
うん。俺の見立てでは、さやか殿は十中八九長寿郎を意識していると見た。これで俺の当初の計画の半分は達成したも同然。あとは如何にして長寿郎にさやか殿を意識させるか。
俺は徒競走の勝敗など気にもせずに策略を頭の中で巡らせながら出発地点へと戻る。やがて他の三人も元の地点に集合する。
「それでは皆様準備はよろしいですね? では・・・位置について・・・用意・・・はじめ!!」
再び影が疾走し、一瞬で到達地点を駆け抜ける。そして柱全員がさやか殿に視線を集中するので判定が言い渡される。
「では順位を発表します。栄えある一位は・・・桑島慈悟郎さんです。」
「うぉおおしゃぁああああああ!!!!!」
「ちっ・・・」
「まあ・・・でしょうね・・・」
「流石腐っても鳴柱ですね。完敗です。」
「おいこら長寿郎!! 今聞き捨てならん言葉が聞こえたぞ!? それと鱗滝!! 貴様しれっと舌打ちをするな!!」
「ちっ・・・聞こえていたか・・・」
「俺は耳が良いのだ!! 貴様も知っておろうが!! もしやわかっててやっておるのではないだろうな!?」
決着がついたというのに年長者二人は取っ組み合いを始める。実に大人げない。
「あの~・・・以降の発表をしても宜しいでしょうか?」
「慈悟郎殿、左近次殿、喧嘩なら後でしてください。さやか殿が困っています。」
やがて二人が取っ組み合いをやめるので、さやか殿は以降の順位を発表する。
「二位・・・狛治さん。三位・・・煉獄長寿郎君。四位・・・鱗滝左近次さん・・・となります。」
「はっはっは!! 鱗滝よ!! 貴様がドベで確定だな!! どうだ思い知ったか!!!」
「私はドベではない。」
「何を!? 貴様!! 負け惜しみなどみっともないぞ!? それでも元武家か!?」
「え~と・・・ドベは私なので、鱗滝さんは違うと思いますよ?」
「え・・・あ・・・」
「ふん・・・漸く気づいたか・・・間抜けめ。」
「何を!? 己鱗滝よ!! 今日と言う今日は許さんぞ!! もう怒った!! 最後は剣術で白黒つけてやる!! かかってこい!!」
「望むところだ。済まないが、ことね様。木刀を拝借したい。許可頂けるだろうか?」
「えっと・・・許可したくないです・・・私は喧嘩で剣を持ち出すのは良くないと思います。」
「・・・くっ・・・」
「・・・むう・・・」
ことね様に諭され冷静になる二人。流石の二人もお館様の御内儀の前では柱の自覚を取り戻すのだろうか。俺は苦笑して話をまとめる。
「では交流会はこんなところでよろしいでしょうか。さやか殿は楽しめましたか?」
「えっ? あ、はい。とても楽しかったですよ? このような催しを準備してくれてありがとうございます。」
「そう思ってもらえてよかった。ではこれにてお開きにしましょうか。ことね様もお付き合い頂きまして誠にありがとうございました。」
「いえ。寧ろ識哉にいい土産話が出来ました。こちらこそありがとうございます。」
俺は当初の目的を半分は達成した為、徒競走の結果などどうでも良くあっさりと催しの終了を促す。
今回は充分に収穫があったので俺は満足した。何しろ将来有望な男女の行く末を進展させることができたのだから。きっと恋雪に今日の出来事を伝えたら頬をほころばせて一緒に喜んでくれるに違いない。
俺は満足げな笑みを浮かべ、長寿郎とさやか殿の二人の様子をこれからも後方より腕組みをして見守ろうと決意した。
続く
以上柱同士の交流会でした。如何だったでしょうか。
因みに原作柱の足の速さランキングは以下の順らしいです。
第1位:音柱・宇随天元
第2位:風柱・不死川実弥
第3位:岩柱・悲鳴嶼行冥
第4位:蟲柱・胡蝶しのぶ
第5位:炎柱・煉獄杏寿郎
第6位:水柱・冨岡義勇
第7位:蛇柱・伊黒小芭内
第8位:霞柱・時透無一郎
第9位:恋柱・甘露寺蜜璃
一応この結果を参考にして本小説の柱達の足の速さ順を決めました。桑島さんがぶっちぎりで足早いのは原作の善逸知ってる人なら予想できたのではないでしょうか。読者の皆様に今話を楽しんで頂けていれば幸いです。
童磨の再登場についてどう思いますか?
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有
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無
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狛治がしっかり倒すのなら有
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原作通り生き残らせてほしい