最悪話の順番入れ替えて対応することになりそう・・・
「いや、折角なんだから夫婦水入らずで行ってきたらどうだ? 俺がいるよりも気兼ねなく過ごせるだろう?」
「え・・・でも・・・お父さんだけ置いて行くなんて・・・」
師範は道場で何やら隠の人達と仕事の打ち合わせをしていた。師範の返答に恋雪は異を唱えるが、師範の意思は揺らがなかった。
「いいから二人で行ってくるんだ。俺にそんな気遣いは無用だぞ? 俺は俺で隠の人達と進めておかなければならないことがあるんだ。狛治ほどじゃないが、俺も鬼殺隊の為にもっと役に立ちたいからな。」
「師範・・・」
「いいから行ってこい。狛治、恋雪のことをくれぐれも頼んだぞ? 愛娘が嬉しそうにしているのを見るのが父親としては一番嬉しいんだ。思う存分楽しんでこい。いいな?」
「わ、わかりました・・・」
俺と恋雪は師範にそう説得されて、渋々二人で出かけることにした。師範なりの気遣いなのだろう。ならいっそ、恋雪に命一杯満足してもらえるよう残りの休暇は過ごすのみだ。
俺と恋雪は身支度を済ませ、そのまま屋敷を出発した。
「恋雪、平気か? 苦しくないか?」
「ふふっ、狛治さん。私もすっかり健康になったんですからこれくらいの徒歩移動へっちゃらですよ? 狛治さんは相変わらず心配性ですね?」
「いや・・・まあ・・・以前の恋雪を知ってる身としてはどうしてもな・・・しかしそうか・・・本当に元気になったんだな、恋雪。」
俺達は紅葉で色づく景色を見ながら街道を進み、最寄りで最も発展している街へと繰り出していた。
一年前はまだ激しい運動をさせるのは不安が残る容体だったというのに、今では普通の人以上に元気になったような気がする。
四半刻以上歩いたというのに、恋雪は疲れの色すら見せないでいた。
「ふふっ、じゃあ早速着物屋さんに行きましょう! 素敵な生地が売ってるといいですね?」
「ああ、そうだな。」
街に付いた途端、恋雪は一層はりきって先へと進んでいく。俺はそんな恋雪の後に続いていく。
やがて目当ての店を見つけたのか、恋雪は店頭の品を好奇な目で眺めるようになった。俺は手首の入れ墨が籠手でしっかりと隠れていることを確認し店へと入る。
「わああ! 見てください狛治さん! 一杯種類がありますよ? どれにしましょう?」
「まあ金子のことなら気にするな。好きなだけ買っても構わないからな?」
正直、日頃任務に忙殺され過ぎて、給金など殆ど使った試しがない。例え店頭の品全てを買い占めたとしても、手持ちの金で充分お釣りが出ると思われる。
俺は恋雪が嬉しそうに反物を手に取り見比べているのを見て頬が緩む。最愛の妻が嬉しそうにしている姿を見れるのは夫冥利に尽きると言うものだ。
「狛治さん! 折角なので私の着物用の生地も買っていいですか?」
「勿論だ。好きなだけ買っていいと言っただろう?」
俺がそう答えると一層恋雪ははしゃぐ。年相応な女の子のようで見ているだけで笑みが零れる。
やがて恋雪が二つの反物の柄を俺に見せてくる。
「狛治さん! こっちとこっちどちらが似合うでしょうか!?」
恋雪がそう言うので、俺はそれらの柄を確認する。一つは恋雪の髪飾りとよく似た氷の結晶を散りばめたような反物だった。水色を下地に白い雪華紋の意匠が散りばめられている。冬にぴったりな着物が仕上がりそうだ。
一方でもう一つは薄桃色に桜の花びらが散りばめられたような反物だった。こちらは春らしい華やかな意匠だ。
「良し。両方買おう。」
俺が即決すると恋雪は慌てる。
「え!? 両方ですか!? でもこれかなりいい生地の反物だから凄くお金が・・・」
「金子のことなら心配するなと言ったはずだ。遠慮することはない。恋雪が気に入ったのなら買ってやりたい。」
「わ、わかりました・・・ありがとうございます! 私腕に寄りをかけて素敵な着物仕上げて見せますね!」
「ああ、わかった。他には気になるものがあれば追加で買おう。その二つだけでいいのか?」
「は、はい! 私の分はもう充分です! あとは狛治さんの分だけです! 狛治さんはどんな意匠が好みですか?」
「そうだな・・・できれば馴染みのある柄がいいのだが・・・ん?」
俺は吸い寄せられるように目に留まった反物に近づき手に取る。それは恋雪が以前花火の日に着ていた意匠と同じだった。
「あ! それは花菖蒲の柄ですね! 私が狛治さんに求婚した時の浴衣とお揃いです! 実は私もそれ気になっていたんですよ? 狛治さんにもし気に入ってもらえるなら私・・・///」
「良し。買おう。」
「え!? 良いんですか!? 他にも見てみたら・・・」
「いや、これが良い。この柄の羽織を見るたびにきっとあの日のことを・・・あの日交わした約束を思い起こせる気がするんだ。寧ろこれ以外考えられない。」
俺は手早く店主に支払いを済ませ、三つの反物を風呂敷に包んでもらった。
やがて店を出て俺は気づいたのだが、何やら恋雪が俺に対し熱っぽい視線を注いでいた。
「狛治さん・・・知ってますか? 花菖蒲には『嬉しい知らせ』『伝言』という意味があるんです。その他、『情熱』『貴方を信じる』『優しい心』という意味も・・・」
「そうなのか? いや・・・知らなかったな。」
「それに菖蒲の柄の服は縁起担ぎで『勝負服』として着ることが多いんです。だから私・・・あの日狛治さんに求婚する際に着ていったんです・・・狛治さんに私の気持ちを受け入れてもらえるようにって願いを込めて・・・///」
「そ、そうだったのか・・・おおっ!!??」
恋雪が俺に一歩近づき距離を詰める。恋雪の顔が俺に迫りそうになり、俺は思わず動揺して顔を背ける。
「こ、恋雪・・・ここは天下の往来だぞ? 流石にそれはまずいだろう・・・///」
「ごめんなさい狛治さん/// でも私、あの日のことを思い出してしまって・・・///」
恋雪が再び俺に迫るので、俺は恋雪を落ち着かせようと必死に宥める。やがて少し寂しそうな様子で恋雪は引き下がった。俺は周りの目を気にして心臓が早鐘のように鳴る。
「もう・・・いけずな人ですね・・・狛治さんは・・・でもここじゃあ仕方ありませんか。」
恋雪は落ち着いた様子で、やがて話の続きを語り始める。
「それと菖蒲には逸話があるんです。ある若者が鬼と遭遇し、逃げた先が菖蒲の茂みだったおかげで命拾いしたという逸話が・・・」
「え・・・そ、そうなのか!?」
「はい・・・その逸話を元に菖蒲は鬼避けの意味を持つようになったみたいなんです。だから私、狛治さんの為に一生懸命羽織を仕立てますね? その羽織を着て狛治さんが無事に帰ってこれるよう願いを込めて。」
「恋雪・・・」
俺が佇んでいると、恋雪は俺の手を両手で握る。
「私は狛治さんとこれから先もずっと一緒にいたいです。狛治さん・・・約束してくれますか?」
俺は目を見開く。恋雪が俯いて不安そうにしている。俺はすぐに恋雪の手を握り返す。
「ああ、俺は誰よりも強くなって、一生恋雪の傍にいる。約束する。」
恋雪は俺の返答を聞いて満足したのか、不安げな表情から一転して顔を上げて笑顔になる。それを見てやはり俺は実感する。俺は恋雪の笑った顔が好きなのだと。
俺は満足げな笑みを浮かべて恋雪の手を引いて行く。
「さあ、帰ろう。俺たちの家に。」
「はい・・・狛治さん・・・!」
俺達は手を繋ぎながら、もと来た道を帰っていった。
続く
以下おまけ:
狛治と恋雪が手を握っていた瞬間、裏通りの陰で複数人の人影が顔を覗かせていた。
「あの~・・・慶蔵さん・・・こんな尾行紛いなことして本当に良かったんですか?」
「何を言っている? 親が娘夫婦の様子を見守るぐらい別に可笑しな話じゃないだろう?」
「いや・・・なら初めからついて行けばよかったのでは・・・」
「おいおい、それじゃあつまらないだろう? あいつら俺がいたらあんな風に気兼ねなく過ごすこともできないしな。恋雪ならいざ知れず、狛治は意外と恥ずかしがり屋だからなぁ・・・」
「はあ・・・後で岩柱様にバレても知りませんよ?」
「ガハハハッ! なあに、充分距離を取っているんだ。流石の狛治も俺達に気づく訳が・・・」
「師範・・・こんなところで何をしているのですか・・・」
「うおっ!!?? 狛治!? いつの間に!!??」
その後あっさり狛治に尾行がバレた慶蔵含む隠数名は、人目も憚らず道端で盛大な土下座を披露することになったのだった。
花菖蒲の内容は13.5話「求婚」のあとがきで触れた内容とほぼ同じです。『鬼と若者』で検索かけると『まんが日本昔話データベース』で詳しい逸話が読めます。地味に犬が出てくるのが狛治の狛犬要素あってポイント高いなって思ってしまいます。ワニ先生の猗窩座回りの設定の濃さ半端ないんよ・・・
童磨の再登場についてどう思いますか?
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有
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無
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狛治がしっかり倒すのなら有
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原作通り生き残らせてほしい