狛治外伝 ~誰が為に振るわれる拳~   作:科学大好き人間

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狛治視点です。久々に氷柱を出します。彼をきっかけに狛治は例の世界に一歩近づきます。


第七章:黎明編
44話 至高の領域


「息災か、凍三郎殿。会うのは一年振りくらいだろうか。」

 

「・・・・・・」

 

 

俺は奥多摩地方の山奥で暮らしている凍三郎の新居を訪ねていた。

 

鎹烏で事前に連絡はしていたが彼からの返事はなかった。正直会えるか怪しかったが、運がよかったのか、道中でばったりと再会した。彼は現在杣人として生計を立てているようでその時は丁度木を切っていた。彼は溜息を吐きながらも新居に案内してくれた。

 

 

「狛治さんだったからまあ家まで招いたけど、できれば今後は控えて欲しいな。もう鬼殺隊の人とはなるべく関わりたくないんだ。」

 

「押しかけるような真似をしたことについては謝る。済まなかった。ただ、今日はどうしても頼みたいことがあって来たんだ。他ならぬ凍三郎殿でなくば無理な願いだ。」

 

「頼みだって? 今更僕に何を頼むって言うんだい? いくら以前庇い立てしてくれた狛治さんとは言え、あまり図々しい頼み事は御免だよ?」

 

 

凍三郎殿の気配が剣吞なものに変わる。俺は尻込みするが、その空気を和らげるかのように一人の女性が俺たちに湯呑を運んで間に入ってくる。

 

 

「まあまあそう言わずに、凍三郎さん。折角こんな山奥までお知り合いの方が訪ねてきて下さったんですから。お茶菓子でも食べて機嫌直して下さいね?」

 

「・・・美冬・・・」

 

 

凍三郎殿が名を呼んだ美冬という女性は、ニコニコとしながらほうじ茶とヨモギ団子を出してくれる。

 

俺が会釈するとそのまま奥の台所へと引き返していった。

 

 

「えっと・・・」

 

「ああ、美冬のことかい? 古傷の痛み止めに行きつけにしてた薬師の家の娘さんでね、ある日鬼に襲われてたから助けてあげたんだ。それ以来家まで来てくれるようになってね、こうして日中は俺の身の回りの世話をしてくれてる。ご飯も毎日作ってくれるんだ。とても感謝しているよ。」

 

「・・・・・・」

 

「何? どうしたの狛治さん? 何か気になることでも?」

 

「それって・・・所謂通い妻みたいなものなんじゃ・・・」

 

「え? いやいや、違うけど。まさか狛治さんからそんな浮いた冗談聞くことになるなんてね。正直驚いたよ。」

 

「いや待て。一人暮らしの男の家に若い女性が足蹴く通ってるってことは詰まるところそういうことだろう? 凍三郎殿に向ける美冬殿の眼差しを見れば薄々勘付くと思うんだが・・・まさか気づいていないのか・・・?」

 

「うーん・・・わかんないや。なんでも美冬は親御さんから言われて俺の家に度々来てるんだって。てっきり命を助けたことへの恩返しだと思ってたんだけど・・・」

 

「いや・・・それってつまり・・・親御さんぐるみで外堀埋められてるんじゃ・・・」

 

「え? そうなの?」

 

「まさか・・・一度も疑問に思わなかったのか・・・?」

 

「えー・・・そうなのか・・・どうしよう・・・今更断るのも悪いしなぁ・・・」

 

「はあ・・・もう成り行きに身を任せたらどうだ? 俺もまあ・・・成り行きで恋雪と夫婦(めおと)になったようなものだしな。」

 

「あ、確かに以前そんなこと言ってたね。うーん・・・そうだね・・・まあ向こうが乗り気だったら考えておくよ。」

 

「はあ・・・美冬殿の胸中は察して余りあるなこれは・・・」

 

 

俺は呆れかえる。この朴念仁に惚れたであろう美冬殿に同情を禁じ得ない。台所で作業をしてる彼女を一瞥すると、頬を赤く染めながら気まずそうに笑っているのが見て取れた。

 

このまま俺が二人の仲を取り持ってもいいが、しかしここは今日訪れた本来の目的を果たすことの方が優先だ。俺は一度咳ばらいをする。

 

 

「話が逸れたが本題に移らせてもらう。凍三郎殿に教わりたいことがある。」

 

「ん? 教わりたいこと? 何のことかな?」

 

 

俺は襟を正し今日来た本来の目的を伝える。

 

 

「凍三郎殿が・・・あの日阿修羅鬼(あしゅらき)との戦いで辿り着いた至高の領域・・・その再現の方法について俺に教えて欲しい。俺はもっと強くならなければならない。それこそ上弦よりも。凍三郎殿にしか頼めない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凍三郎殿の新居を訪ねて一刻後、俺たちは道行く道をひたすら進んでいた。道案内をしてくれる凍三郎殿が道中で話をしてくれる。

 

 

「結論から言うと・・・俺じゃ教えられないかな。俺はあの視界が透けて見える状態に入ることはできるけど、どうやったら入れるかまでは自分でもよくわかっていないんだ。なんかめっちゃ集中すると入れるってことしかわかっていなくてね。役に立てなくてごめんね?」

 

「・・・いや・・・そんなことは・・・」

 

 

俺は凍三郎殿に気を遣わせたくなくてそう返すも、内心では落胆していた。一方で凍三郎殿は耳寄りな話を続ける。

 

 

「確かに俺じゃあ狛治さんの役には立てないかもしれないけど・・・俺の代わりに教えられそうな人なら知ってるよ。最近お得意様になってくれた人なんだけど、雪取山の麓に住んでいる炭焼き家業の人がそうなんだ。彼はなんでも俺と同じ視界が見えることがあるらしくてね。そろそろ着く頃だと思うんだけど・・・あ、見えた。あそこだね。」

 

 

そうして凍三郎殿は山の麓の民家を指差す。俺はそれを確認しつつ凍三郎殿と一緒に目的地へと訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「御免ください。御贔屓にさせて頂いております。白峰凍三郎です。竈門炭悟郎さんはご在宅でしょうか?」

 

 

至高の領域へと踏み入るために、俺は凍三郎殿を訪ねた。そして俺は彼の伝手を頼りに、その方法を知る手がかりへと漸く辿り着くに至った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




竈門一家登場です。もうね、透き通る世界って言ったらこの人たちですよ。次回狛治と竈門一家との邂逅です。お楽しみに。

童磨の再登場についてどう思いますか?

  • 狛治がしっかり倒すのなら有
  • 原作通り生き残らせてほしい
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