狛治外伝 ~誰が為に振るわれる拳~   作:科学大好き人間

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狛治視点です。嫉妬してる女の子って可愛いですよね(え)。


55話 見舞い

「二人とも、見舞いに来たぞ。差し入れも持ってきた。食欲があるのなら遠慮せず食べろ。」

 

「あ! 狛治さんお疲れ様です! まあ、こんなに沢山の果物頂いて良いんですか? ありがとうございます!」

 

「狛治殿!! かたじけない!! 有難く頂戴します!!」

 

 

俺は旧花柱邸である現草柱邸へと足を運んでいた。ここは元々鬼殺隊の診療所のような立ち位置に当たる屋敷なので、負傷した隊士は基本的にここで治療を行う。

 

病棟に該当する部屋へ移動すると、薬箱を片手に長寿郎の治療をしていたさやか殿が俺たちに気づき挨拶をしてくる。一拍遅れて病床より上体を起こした長寿郎がはきはきと返事をしていた。

 

さやか殿はあちこち打ち身の負傷はあれど、特段その他の怪我を負っていないため、既に甲斐甲斐しく長寿郎の看護を行っていた。

 

同じ攻撃を受けた長寿郎は全身打撲に骨折だらけだったにも関わらずにだ。

 

正直その事実に、阿修羅鬼(あしゅらき)を討伐した直後、俺は面食らったのを今でも覚えている。

 

彼女に理由を尋ねると、『彼岸朱眼と言いまして、花の呼吸には一時的に視力を上げる奥義があるんです。咄嗟にそれを使ったので命拾いしましたね、アハハ・・・』と返答された。

 

正直前任の花柱である咲殿と任務で組んだことがないから手の内はまるで把握していなかったのだが、まさか花の呼吸にそのようなとんでもな奥義があるとは思わなかった。

 

周囲の動きがゆっくりに見えるほどの動体視力を発揮できる点では、俺が漸く掴んだ透き通る世界の領域とほぼ同等の代物の様に思える。

 

しかしその奥義を使用すると、相当に重い代償を払わなければならないらしい。

 

 

「さやか殿。やはり右目はもう使えないのか?」

 

「え? あ、はい。診療室でちゃんとした検査したらほぼ失明してましたね。まあ片目だけで済んだので良かったです。ただ、暫く距離感掴むのに苦労はしそうですけれども・・・」

 

「そうか・・・」

 

 

花の呼吸の奥義は想像以上に目に負荷が掛かるらしく、今回両目を失わなかったのは奇跡だったらしい。どうやら一瞬の使用だったことが幸いしたようだった。

 

 

「任務は暫く無理そうですけど、隊士達の治療や看護くらいなら平気そうです。すみません、なるべく早く復帰しますので・・・」

 

「いや、この際長期休暇だと思ってしっかり休むべきだ。さやか殿は以前の俺に似て仕事熱心過ぎるきらいがある。余り無理をし過ぎると身近な人にも心配をかける。

 長寿郎も暫くは任務に復帰は無理だろう。二人が抜けた穴は気にするな。俺と左近次殿と慈悟郎殿の三人で肩代わりぐらいしておいてやる。」

 

「狛治さん・・・えっと・・・申し訳ございません・・・ありがとうございます。」

 

「狛治殿!! お心遣い痛み入ります!! 俺もなるべく早く復帰しますのでどうかご辛抱下さい!!」

 

「こら、しっかり休めと言っただろう。こっちのことは気にするな。それよりも今日は二人に紹介したい連れがいるんだ。少しばかりいいか?」

 

 

俺は二人の傍に見舞い品を置き、畳に腰を下ろし胡坐をかく。恋雪も二人に会釈をしたのちに俺の隣で正座をする。

 

 

「えっと・・・もしかしてそちらの方は・・・」

 

 

二人が恋雪に視線を移すので俺は答える。

 

 

「紹介する。妻の恋雪だ。二人にはまだ会わせていなかったと思ってな。今後よろしく頼む。」

 

「初めまして。妻の恋雪です。狛治さんがいつもお世話になっております。今後とも宜しくお願い致します。」

 

 

恋雪が丁寧に挨拶をすると、さやか殿は嬉しそうに声を上げた。

 

 

「まあ! 貴方が恋雪ちゃんですか!? 師範から一度だけお話聞いてたんです! 今日はお見舞いに来てくれてありがとうございます! 私とても嬉しいですよ?」

 

「こちらこそお会いできて嬉しいです! 狛治さんからお二人のことは良く聞かされていたので、会える日をずっと楽しみにしていたんですよ?」

 

 

恋雪もさやか殿と話せて嬉しそうだ。今日連れてくることができて良かったと俺は満足げに笑う。

 

 

「おお! まさか今日狛治殿の奥方に会えるとは! 今までお会いした女性の中で一番の別嬪さんだ!! 恋雪殿が来てくれてから幾分傷の痛みが和らいだ気がします!!」

 

 

さやか殿が長寿郎の一言を聞いた瞬間突如固まる。一瞬で顔から表情が抜け落ちる。その様子を見て俺は恋雪を連れてきたことを心底後悔した。

 

 

「おい、長寿郎・・・」

 

「あ・・・えっと・・・」

 

 

俺は苛立ちの声を上げ、恋雪は居たたまれなさそうにオドオドし始める。

 

 

「え? お二人ともどうされたんですか? 俺何か変なこと言いましたか?」

 

 

当の本人はこの時何が起きているのかをまるで理解していないようだった。俺は内心悪態をつく。

 

長寿郎・・・お前本当にそういうところだぞ・・・命が惜しければもう少し空気を読むということをいい加減覚えろ。

 

おい。不思議そうに首を傾げるのをやめろ。無自覚にお前の傍に居る人間の地雷を踏み抜くな。

 

そう念じながら俺は長寿郎に視線を送るが一向に奴は反応を変えない。

 

駄目だ。目で訴えても微塵も伝わらん。どうしてくれるんだ、この重々しい空気を。

 

俺は心の中で呆れかえっていると、やがてさやか殿が自嘲気味に息を吐きながらブツブツと呟き始めた。

 

 

「そうですかそうですか。長寿郎君は私のような平凡な容姿の小娘に看病されたところで痛みは和らぎませんか。いいですともいいですとも。まあ私は微塵も気にはしていませんが・・・」

 

 

駄目だ。さやか殿の目が徐々に死んでいく。不意に胃に痛みが走った気がした。頭が重い。

 

それと長寿郎。いい加減首を傾げる仕草をやめろ。何もわかってない風な態度を今すぐやめろ。本当に腹立つなコイツ。

 

俺は居ても立っても居られず、恋雪に耳打ちする。

 

 

「さやか殿の方は頼んだ。俺は一度長寿郎にガツンと説教しておく。暫くの間連れ出してくれ。」

 

「わ、わかりました・・・では狛治さんお願いしますね。」

 

 

すると恋雪は立ち上がり、果物の入った籠を持ち上げる。

 

 

「さやかさん。宜しければ台所で果物の皮を剥くの手伝ってもらえませんか? 量が多くて人手が欲しいんです。」

 

「あ、はい・・・私で良ければ・・・」

 

 

さやか殿は力無く恋雪の指示を聞き、その場を二人で去っていった。

 

俺はそれを確認したのち、長寿郎に向き直る。

 

 

「あれ? 狛治さん。一体どうされたんですか? そんな神妙な顔をして・・・」

 

「長寿郎・・・そこになおれ。」

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は柱の先輩としてではなく、人生の先輩として、コイツには女心を理解してもらわねばならないと、この時思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




長寿郎は鼻の利かない炭治郎みたいなものです。つまりヤバイ・・・

童磨の再登場についてどう思いますか?

  • 狛治がしっかり倒すのなら有
  • 原作通り生き残らせてほしい
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