狛治外伝 ~誰が為に振るわれる拳~   作:科学大好き人間

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狛治視点です。前回の引きでダブルデート描写を期待してた方はすみません。江戸時代のデート内容がまるで想像できなかったので、ただのお食事会になります。その代わりおめでたいエピソードを入れます。今話にて恋雪ちゃんの今までの努力が漸く実りますので。

追記:今後は月、水、土の週三投稿を暫定で続けて行こうと思います。


第九章:童磨再来編
57話 新たな命


「どうですかここの定食屋は! こんなに山盛りで出してくれるところ他にないでしょう!? さあ思う存分平らげてください! 狛治殿!」

 

「・・・・・・正気か?」

 

 

ここはとある定食屋だった。俺は目の前で積み上げられた莫大な量の米と料理に圧倒される。

 

一週間もしないうちに長寿郎は出歩けるまでに回復し、その結果俺はこいつの快気祝いがてら長寿郎一押しの定食屋へと連れ出されていた。

 

とは言えこのような事態になったのには理由がある。それは恋雪からの提案だった。

 

あの日、長寿郎に女心についての説教をかました日、一方で恋雪はさやか殿から相談を受けていたそうだ。どうすれば長寿郎に女として意識してもらえるか、と、そういった内容だった。

 

その結果、恋雪は俺を巻き込み夫婦二人掛かりで彼女の恋路を後押ししようと言い出したのだった。

 

まあ俺もいい加減、長寿郎の鈍感さには嫌気もさしていたし、早くさやか殿とくっつけと内心呆れかえっていたから別に反対する理由もなかった。

 

とは言え、二人の恋路の後押しの第一歩がまさか大盛り定食屋でのお食事会だとは。

 

最悪俺は気合と根性で胃に押し込めるが、恋雪では天地がひっくり返っても完食などできないだろう。俺は途方に暮れる。

 

 

「えっと、恋雪ちゃん? ここの定食他のお店よりちょっと量が多いけど食べきれそう?」

 

 

俺と同じく目の前の食事量に圧倒されていた恋雪に対し、さやか殿がそう心配げに質問してくる。

 

さやか殿にとってはちょっとなのか・・・どう見ても力士すら食いきれるかわからん量なのだがな・・・恋雪の小さな胃に収まりきるとは到底思えない。

 

俺が恋雪に目線を移すと不意に目が合った。恋雪は苦笑いをする。

 

 

「狛治さん。もしかしてですけど長寿郎さんとさやかさんって、相当に食欲旺盛な方々なのでしょうか?」

 

「今頃気づいたのか・・・時すでに遅しな気もするが・・・」

 

「だ、だって! 狛治さんが長寿郎さんは美味しいお店一杯知ってるって言ってたからそれでっ!」

 

「まあそうだな・・・今更あれこれ言ったところでしょうがないか。俺がもっと引き留めるべきだった。済まない。」

 

「あ、いえ・・・狛治さんが謝ることでは・・・」

 

 

意気消沈する俺達二人を見て長寿郎とさやか殿が気にかけてくる。

 

 

「あの~・・・お二人とも食べきれなかったら残しても大丈夫ですよ? 私と長寿郎君はもともとお代わりするつもりでしたので。」

 

「成る程! 狛治殿は残してしまうことを憂いていたのですね!? 心配ご無用です!! もともと俺たちはこの倍は平らげるつもりでしたので!!」

 

「・・・お前らの胃袋の構造はどうなっているんだ・・・」

 

 

俺は更に呆れかえる。この二人が俺以上の剛腕を持っている理由がわかった気がした。結局のところ、鬼も人間も良く食う奴が強くなるということなのかもしれない。

 

 

「まあいい。飯が冷めては台無しだ。頂くとしよう。」

 

「そうですね狛治さん。いい加減箸をつけましょうか。」

 

 

そうして俺達四人は食事に移る。

 

俺と恋雪が控えめに食べ進める傍ら、二人に視線を移すと、凄まじい勢いで盆の上の料理が消え去っていくのを目の当たりにした。

 

 

「うまい! うまい! うまい!」

 

「やっぱりここは食べ応えがあるわね! 長寿郎君に感謝だわ!」

 

 

気が付けば二人は完食していた。俺たちが用意された料理の二割も食べきらないうちに。

 

俺も可能な限り食べ進めようと必死になったところで、恋雪が箸をおいた。

 

 

「うっ・・・すみません・・・食べ過ぎちゃったみたいでちょっと吐き気が・・・」

 

「あらいけない! 恋雪ちゃん付き添うわ! 御手洗いは確かあっちに・・・」

 

「いや、俺が恋雪の付き添いをするから二人は残りを平らげてくれ。少し席を外す。背負うぞ恋雪。」

 

「うっ・・・」

 

 

俺は手早く恋雪をおんぶし店の奥へと移動する。店主に一声かけて廃棄同然の桶をもらう。

 

 

「しかし妙だな。日頃と比べてまだそんなに食べてもいないように思えたんだが・・・」

 

「うっ・・・はい・・・寧ろ食事前はいつもより食欲があった気がしたんですけど・・・うっ・・・」

 

 

俺は店から借りた桶の前に恋雪をしゃがませて背を擦る。しかし一向に吐き出す様子はない。俺は疑問に思う。

 

 

「恋雪、平気か? 苦しくないか?」

 

「は、はい・・・落ち着いてきました・・・寧ろお腹が空いてきたんですけどもう食べない方がいいですよね・・・」

 

「まあそうだな。嘔吐してしまえば身体への負担にもなるだろう。やめておいた方がいい。」

 

「はい・・・狛治さん・・・うっ・・・」

 

 

すると再び恋雪が口元を押さえ苦しそうにするので俺は必死に恋雪の背を擦る。俺はその様子に妙な違和感があった。

 

 

「恋雪。少し診るぞ。何か良くない病気だと困るからな。苦しいかもしれないが一度立ち上がって正対してくれ。」

 

「は・・・はい・・・」

 

 

俺は呼吸を洗練し透き通る世界に入る。凍三郎殿も言っていたが、透き通る世界は診察をする上でも非常に便利な技能なのだ。

 

俺に高度な医学知識はないが、それでも血の巡りや内臓の動きの不調程度はわかるので、恋雪の体内の様子を一通り透ける視界で確認することにした。しかし俺は首を傾げる。

 

少なくとも胃の痙攣等ではない。血流も正常だし血の滞りの可能性も低い。貧血を疑う余地もないな。一体何が原因なのか。ただの食べ合わせの問題なのか・・・ん??

 

俺はふと違和感を感じ恋雪の前で跪く。恋雪は怪訝な様子で俺を頭上より見下ろしていた。

 

 

「は、狛治さん? 何か気になることでも?」

 

「これは・・・なんだ?」

 

 

俺は恋雪の下腹部を透かして観察する。俺が凝視してると恋雪は恥ずかしそうにその部分を手で隠そうとする。

 

 

「は、狛治さん/// 一体どこを見てるんですか///? あの・・・そこって・・・///」

 

 

恋雪が両手で押さえるも視界が透けているので余り意味はないのだが・・・とそんな下らないことを一瞬思ったが、そんな思考はすぐに消え去り、俺は立ち上がって恋雪の肩を両手で掴む。

 

 

「恋雪・・・! 最近月のものってあったか? ふと思ったんだがここ数ヶ月一切なかった気がするんだが・・・!」

 

「えっ? あ、そう言えば・・・てことはもしかして・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日、俺たちは急いで屋敷に戻ったのち医者を呼んだ。診察してもらった結果、恋雪の腹の中には新たな命が宿っていることがわかった。

 

祝言を上げて一年と九ヶ月。遂に俺と恋雪は子を授かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




おめでたいエピソードとは要するにおめでたのことです。遂に恋雪ちゃんご懐妊です。正直これまでの描写的にもっと早く孕んでないとおかしいだろとツッコミ受けそうな気もするのですが、筆者の独断と偏見で恋雪ちゃんの身体が弱いうちは妊娠し辛いかなと思ったのでここまで長引くに至りました。
まあ本音としては、妊娠のタイミングは童磨の影がチラつく本章こそ相応しいと判断したのが一番の理由ではありますが(え)。
一応バッドエンドにするつもりもないので引き続き二人の行く末を見守って頂けると嬉しいです。
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