狛治外伝 ~誰が為に振るわれる拳~   作:科学大好き人間

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恋雪ちゃん視点です。一旦狛治と初めて会った日から数ヶ月経った日までを描写します。

※今話には介護の経験がある人にとって不快に思われる内容が含まれる可能性があります。無理そうであればブラウザバックしてください。


6話 私を悩ます問題

「あ・・・あの・・・貴方のお名前は・・・?」

 

「狛治・・・狛治です・・・これからよろしくお願いします。恋雪さん。」

 

 

初めて会った時は腕に入れ墨があって驚いたのを覚えている。何か事情があって刑罰を受けた人なのだろうか。私と殆ど変わらない歳なのに。

 

しかし会話をしてみたら冗談も言うし、私が咳をして気にかけてくれるような優しい人だとすぐにわかった。

 

見た目だけで警戒してしまった自分に少しばかり罪悪感を抱く。

 

加えてそれからの日々で私にとっての彼の印象は確固たるものとなった。

 

本当に優しい人だった。それにとても忍耐強い人だった。私の看病はとても大変なはずなのに、この人は文句も言わず、嫌な顔もせずに淡々とこなす。

 

入水する直前の母なんて、見てるだけで心が痛むくらい辛そうにしてたのに。

 

 

「ごめんね・・・」

 

 

ふいに看病される時にそう呟いてしまう。本当に申し訳ない。私のせいでこの人は自分の時間を持つこともできず、自由に外へ出かけることもできない。

 

ご飯なんていつ食べてるんだろう。私は狛治さんがゆっくり食事をしてるところを見たことがない。心苦しい。

 

しかし、彼は私が漏らした言葉に対して、

 

 

「父の看病を今よりもずっと幼い頃からやってました。恋雪さんは身体も小さいですしそんなに負担ではないです。」

 

 

そうさらりと答えるだけだった。まるでなんでもないと言わんばかりに。

 

それでも自分の時間が取れなくて息が詰まるのではと尋ねるも、

 

 

「父の時は日に日に容体が悪化してたから、その時に比べたらずっと気が楽です。それに以前は金子の用意と看病、家事を両立してやっていましたので、それに比べたらどうってことないですね。」

 

 

本当になんでもないことのようにあっさりと答える彼の優しさが本当に温かくて、私は度々泣いてしまっていたように思う。

 

その度に狛治さんから居心地の悪さを感じてるような気配がするが、私は涙を堪えることができなかった。

 

でも狛治さんは気まずいからといって、私から距離を置くような人ではなかった。

 

私が落ち着くまでの間、静かに目の届くところでじっと待ってくれるような人だった。

 

 

「お水飲みますか?」

 

 

気遣いに気遣いを重ねたような振舞に、私はまた泣きそうになるのをぐっと堪えて、彼の問いかけに対し頷く。

 

こまめに水を飲ませてくれる。手拭いを替えてくれる。お粥を作って食べさせてくれる。その度にやはり申し訳ないと思うものの、狛治さんの看病に私の心はじわじわと温まる。

 

そんな狛治さんに対して何一つ不満はない・・・と言いたかったのだけれど、実は二つほど頭を抱えるくらい私を悩ます問題があった。

 

一つは汗のふき取りや寝巻の交換の度に肌を見せなければならなかったこと。

 

看病してもらってるのだから文句など言えるはずもないのだけれど、やはり歳の近い男の人に身体をまじまじと見られたり、手拭い越しとは言え触れられるのはかなり抵抗があった。

 

 

「では後ろに回って汗を拭き取ります。俺も早く慣れるよう努力しますのでご容赦下さい。」

 

 

でも彼は私の悩みに気づいたのか、そういった気遣いをしてくれた。

 

それに、後ろに回って拭き取れない部位については、目をつむってできるだけ手間取らずにさっと終わらせてくれるようになった。

 

最初こそ緊張したものの、狛治さんの徹底した振舞に徐々に私は心を許し、今では全身を強張らせるほどのことはなくなった気がする。だからこちらの悩みは徐々に改善されていくのだろう。

 

今では狛治さんへの恋心を自覚してしまい、別の意味で緊張してしまうようになったけれども。

 

しかし、身体のふき取り以上に私を悩ます問題がある。それは私が催した時のことだ。

 

以前はお母さんが厠まで運んでくれて、下の世話まで全部してくれていたけれど、流石に異性の狛治さんにそこまでしてもらう訳にはいかなかった。断固として。

 

なので最初厠まで運ばれた時、私は必死に断った。一人でできると。

 

狛治さんは心配していたけれど、私の必死な懇願に折れてくれたのだった。

 

しかし、今までお母さんにつきっきりでお世話してもらっていたことを、急に一人でできるはずもなく、私は初日に醜態を晒してしまった。

 

私はことが済んだ後、ほんの一瞬気を抜いてしまい、ふらついて倒れてしまった。

 

そしてその物音に狛治さんがすぐ反応して駆け寄る事態となり、床に突っ伏し醜態を晒したままの私はそのまま抱きかかえられることとなった。

 

狛治さんが駆け寄ってきた時の私は腰まで着物をまくってあったし、多分見られるところは見られてたと思う。

 

あの時の私は全身から火が噴き出しそうになるくらいに羞恥心で身を焦がしていた。

 

しかしそれでも、私の身体は言うことを聞かずにぐったりするばかりで、成すがまま狛治さんに運ばれてしまうのだった。

 

うう・・・お母さんやお父さん以外に見せたことなかったのに・・・これが所謂お嫁に行けないと思う心情なのだろうか・・・

 

加えて狛治さんへの恋心を意識するようになった今は、思い出すと同時に悶え始めてしまうので、極力考えないように努める日々だった。

 

しかし、私が一人でできるようにならないうちは、このような醜態を度々晒すに決まっているので、それからの私は、もうあんなことには決してなるまいと強く強く決心し、厠に運ばれる際は一瞬たりとも気を抜くようなことはあってはならないと自身に言い聞かせ続けた。

 

一日でも早く、一人でできるようにならなければいけなかった。狛治さんに毎回傍で付き添ってもらうなんて、私の羞恥心が間違いなく限界を超えてしまう。

 

最初のうちは同じように倒れてしまうことが多々あった。しかし、不思議なもので何度か繰り返してるうちに見事私の身体は順応した・・・!!

 

私の努力の甲斐もあって、今では狛治さんに抱きかかえられ、救出されることもなくなったのだ。

 

とは言え、依然として一切気の抜けない問題のため、私を大いに悩ませる頭痛の種であることに変わりはない。

 

早く病気を治して、自分のことは自分でやりたいと私は固く決意するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その結果、ここ数ヶ月で体質はみるみる改善したように思う。狛治さんのおかげとは言え、私は物凄く複雑だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 




書くかどうか迷ったんですけど強行しました。もしかしたら後日投稿を取り下げるかもしれないです。恐らく筆者同様気になってた人はいるかと思います。そもそも年頃の女性が男性に下の世話まで介護されるって自尊心が傷つくレベルの話じゃないと思うんですよね。それでも恋雪ちゃんは狛治に心を許しきっていたんでしょう。複雑な心情だとは思いますが・・・

因みに余談なのですが、原作の巻末おまけページに掲載されてる鬼滅学園では、二人のあだ名は「狛治殿」と「姫」になっています。最初は狛治が恋雪ちゃんから片時も傍から離れず守り通す様からついたあだ名だと思ってました。しかし、江戸時代までの大名等の姫たちって下の世話まで全部付き人にやらせていたから自分でできなかったらしいんです。即ち姫のあだ名を持つ恋雪ちゃんも・・・ゲフンゲフン! 吾峠呼先生がそこまで意識して設定練っていたとしたらもう恐怖する他ないですね・・・無駄口が過ぎました。
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