狛治外伝 ~誰が為に振るわれる拳~   作:科学大好き人間

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前半慶蔵視点、後半狛治視点です。万世極楽教の寺院に潜入したところから始まります。


61話 潜入

「・・・という経緯で・・・こちらの寺院を訪ねてまいりました・・・俺はもう・・・疲れてしまいまして・・・」

 

「うんうん。そっかぁ。折角武術を磨いてきたのに娘夫婦を近隣の道場主に毒殺されるなんて可哀そうに。辛かったね。苦しかったね。でも大丈夫。

 そんな気の毒で可哀そうな人たちを救うことこそが、万世極楽教の教祖である俺の役目だからね?

 気が済むまで、ここでゆっくりと余生を過ごすといい。いずれ時が来たら俺が手ずから救ってあげる。だから安心しておくれ?」

 

「ありがとう・・・ございます。」

 

 

俺は名前を伏せたまま、娘夫婦が毒殺され心を病み、現実から逃れたくてこの宗教の門を叩いた旅人の振りをして、鬼の教祖の住まう寺院へと潜入していた。

 

狛治が言う通り、教祖の振りをしているこの童磨という鬼は、白橡(しろつるばみ)の頭髪に虹の瞳をした上背六尺をゆうに超える美丈夫だった。

 

第一印象は好青年で懐も大きく慈悲深いといった如何にも教祖らしい男だった。しかし狛治が嫌悪する理由もわかる位、人間らしさが感じられない男でもあった。

 

どこか無機質で、感情の熱が一切感じられない瞳。耳障りの良い声音でうまくごまかしているが、そこには人の情のようなものは籠っていないと俺の長年の勘がそう告げている。

 

正に人外の鬼がうまく人間に擬態して真似事をしているといった様子だった。こんな奴に優しく語り掛けられても狛治なら癇に障るだろうことが容易に想像できる。

 

 

「さて、ここでの生活の仕方は他の信者に聞くと良い。もう下がっていいよ?」

 

「はい。失礼します。教祖様。」

 

 

俺は軽く会釈し、その厳かな部屋を退出する。

 

有難いことに童磨という鬼は俺に対し、それ程強い関心を抱いていない様子だった。

 

狛治から聞いた話では、女を好んで喰らう鬼とのことなので、俺のような中年の歳を越した男など気にも留めないのだろう。

 

一方でもしこれが恋雪だったらと思うと全身が総毛立つ。思わず身震いしてしまう。

 

つくづくあのような鬼を恋雪に近づけてはならないと父親ながら思うのだった。

 

俺は万世極楽教の寺院で他の信者同様穏やかに過ごしながら、日中人目を盗んで鎹烏に手紙を括りつけ情報を流し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「師範の報告によると、童磨は日中大半の時間を教祖の間で新規既存問わず信者の応対をして過ごしているらしい。そして夜になれば消息を絶つのだとか。

 恐らく近場の街を徘徊して、女性を見かける度に喰らっているのだろう。相変わらず胸糞悪い奴だ。」

 

「とりあえずお父さんが無事で良かったです・・・少しだけ安心しました・・・」

 

 

俺と恋雪は岩柱邸の客間のちゃぶ台に、師範の報告内容が書かれた手紙を広げて額を集めて話し合っていた。内容をある程度読み込んだ後、同室で座っている長寿郎とさやか殿が問いを投げてくる。

 

 

「そうなると、夜寺院に柱全員で押し掛けても肩透かしを食らう可能性が高そうですね。 なら昼間に突入するようにしますか? 場所も教祖の間に居座っていることが割れていますし・・・」

 

「待て、さやか。それでは何の罪もない他の信者たちを戦いに巻き込んでしまう。鬼殺隊の柱として、犠牲者はなるべく抑えなくては・・・」

 

「でもそうこうしているうちに童磨は信者の人や街中を歩いている人達を大勢喰い殺すことになる訳よね? なら一刻も早く奴を殺す方が犠牲者が少なくなると思うのだけれど・・・」

 

「それはそうだが、さやか。君は目の前で市井の人達を人質に取られた場合、童磨の頸に斬りかかることができるのか? 俺には無理だ。」

 

「そう。でも私ならできるわ。師範を殺した糞野郎は早急に殺すべきよ。例え数人犠牲になったとしてもこの際仕方ないことだわ。」

 

「さやか!! 柱である君がそのようなことを言うべきじゃない!! 復讐のために何の罪もない人の命が奪われることがあってはならない!!」

 

 

突如、長寿郎とさやか殿で意見の食い違いにより口論となる。俺は黙ってその様子を見守るが、やがてさやか殿が不満そうに口を開いた。

 

 

「長寿郎君は良いよね。もう仇討ち果たしてるんだから。なんとでも言えるよね。」

 

「なっ!? さやか!! それはどういう意味だ!!!」

 

「言葉通りの意味よ。もし長寿郎君の仇の阿修羅鬼(あしゅらき)が生きていて、市井の人達が周囲に大勢いた場合、同じこと言えるのかしら?」

 

「そ、それは・・・」

 

 

二人の様子に恋雪がおろおろと狼狽え始める。俺は見てられず口を挟む。

 

 

「いい加減にしろ。一般人からは犠牲者は出さない。童磨も確実に殺す。それが一番人死人が出ないはずだ。その為の議論を今しているんじゃないのか?」

 

「も、申し訳ございません・・・狛治さん・・・つい頭に血が昇ってしまいまして・・・ごめんなさい・・・長寿郎君・・・」

 

「いや、俺もさやかの気持ちを蔑ろにしていた。済まない。今後気を付ける。」

 

 

仲裁が出来たところで俺は議論を進める。

 

 

「昼間は周囲を巻き込む可能性から討伐は決行できない。となると夜だが、どこに出歩くかわからない神出鬼没な奴を追跡するのは容易なことではない。そもそも取り逃がす可能性もある。

 だが、夜間であっても確実に奴の居場所を特定し待ち伏せできる機会は存在する。」

 

「えっ!? 本当ですか!? 狛治さん!! 勿体振らずに教えてください!!!」

 

「おい!! 少しは落ち着けさやか!! それでその機会とはいつなのですか? 狛治殿。」

 

 

俺は腕組みをし直し回答する。

 

 

「奴が寺院を離れて山を降りる時と、街で食事を済ませ寺院へと帰って来る時だ。特に後者は日の出が近い時刻の可能性も高く、うまく行けばそのまま陽の光で灼き殺すことだってできるかもしれない。」

 

「確かに!! 仮に頸を斬れなくてもそうやって殺せばいいんですね!! わかりました狛治さん!! 私俄然やる気が湧いてきました!!!」

 

「もし仮に取り逃がしたとしても、奴は日中寺院に戻ってこれないので、その間に信者たちを説得して避難させることもできますしね!! そうすれば奴の根城を潰したも同然です!!」

 

 

俺の提案に二人はご満悦のようだ。俺は頷き決定事項を述べる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では明後日の明け方、万世極楽教の寺院で潜伏し童磨を待ち伏せする。柱が三人もいて且つ朝日を味方につけられるのなら、流石の上弦もひとたまりもないだろう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




さやかちゃんの殺意がこれ以上にないくらい膨れ上がってる・・・
これについては原作のしのぶさんを思い浮かべてもらえればイメージしやすいかと思います。まあさやかちゃんの場合毒じゃなくて筋力による剛腕で潰し殺すつもりでいるので原作以上に絵面が地獄絵図になりそうですが・・・(汗)

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