追記:本日休日出勤のため感想への回答は退勤後になります。ご了承ください。
「う~ん・・・粘るねぇ狛治殿。そんなに鬼になりたくない?」
「ハァ・・・ハァ・・・当たり前だ・・・何度でも言うが俺は鬼にはならない。」
岩柱邸・・・だった建物の敷地の傍で、俺は僅かに呼吸を乱して童磨と対峙していた。
俺の周囲には4体もの結晶の御子と呼ばれる氷の人形が付かず離れずの距離で取り囲んでいる。ギリギリ俺の鎖分銅が届かない距離でだ。
更にそれら人形よりも離れた位置で童磨がケラケラと笑っており、優雅に扇で自身を仰いでいた。
「でもさ狛治殿。もうわかっただろう? 俺の結晶ノ御子が相手じゃ狛治殿の透き通る世界は相性が悪いって。いい加減諦めなよ? じゃないとそろそろ氷漬けにしちゃうよ?」
「ふん。できるものならやってみろ!!」
俺は赫刀の持続時間が切れた鎖分銅を再び自身の手前で打ち付ける。甲高い音を合図に周囲の御子共が扇を構える。
ー岩の呼吸 壱ノ型 蛇紋岩・双極ー
俺はもっとも近くで陣取っていた御子に分銅を打ち放つ。
しかしその御子は紙一重で躱し更に距離を取る。それと入れ替わるように他の御子が俺に肉薄してくる。
ー血鬼術 蓮葉氷ー
扇の一閃と共に周囲にまき散らされる氷の粒子。俺は口元を押さえたまま、地を跳ね、宙へと逃げる。
ー血鬼術 冬ざれ氷柱ー
ー血鬼術 蔓蓮華ー
宙へ舞い上がった俺の更に頭上から氷柱の雨が降り注ぎ、加えて大地からは触手のように氷の蔓が俺へと殺到する。
ー岩の呼吸 参ノ型 岩軀の膚ー
咄嗟に鎖を周囲に打ち振るい上下より迫る血鬼術の飽和攻撃を何とか凌ぐ。赫刀と化した分銅により、触れた氷は瞬く間に溶け蒸発する。
ー素流体術 砕式 万葉閃柳ー
着地に合わせて手近な御子へと拳を振り落とすが、御子はすぐさま回避行動に移る。結果、轟音と地鳴りが周囲へと鳴り響き土煙が舞う。
ー血鬼術 枯園垂りー
滑り込むように御子の一体が俺へと肉薄し扇を打ち振るう。俺は空を切った後も残り続ける冷気の軌跡に反撃の手を阻まれ退避せざるを得ない。
「クソッ!! こいつら血管どころか関節も筋繊維もないのか!? これでは透き通る世界で視界が透けても意味がないっ!!」
「人形なんだから当然でしょ? やっぱり生き物じゃないと動きを事前に察知するのは難しいみたいだね。黒死牟殿の言う通り御子の構造を人体に寄せなくて正解だったよ。」
「くっ!!」
ー血鬼術 凍て曇りー
俺の前方に位置した御子が距離を詰め、瞬時に周囲を氷結させる煙幕を俺にぶつけてくる。
ー岩の呼吸 肆ノ型 流紋岩・速征ー
縦横無尽に前方へと鎖を振るい、冷気の煙幕を引き裂きつつ御子の頭蓋を粉砕しようとした。しかし御子は予め俺の動きを読んでいたのか、血鬼術発動後すぐに退避行動に移っていた。
「その対応の仕方さ、前回戦った時に見せてたよね? だから攻撃の来る瞬間とかわかっちゃうんだよね~。」
ー血鬼術 冬ざれ氷柱ー
ー血鬼術 蔓蓮華ー
お返しとばかりに二体の御子の血鬼術が俺に殺到する。俺はすぐさま大地を踏みしめる。
ー素流体術 奥義 終式 青銀乱残光ー
全ての氷柱と氷の蔓を拳打で粉砕しはじき返す。跳ね返った氷塊が術を放った御子二体に衝突し諸共砕け散る。
「わあ! まさか血鬼術はじき返しちゃうなんて驚いたなあ。すぐに新しいの作らないと・・・」
「させるかっ!!!」
俺はすぐに童磨本体へと接敵を試みようとするが、既に俺の四方に女神像を模した氷像が設置されていることに気が付く。
ー血鬼術 寒烈の白姫×弐ー
その瞬間、俺に冷気の奔流が左右より吹きつけられる。一瞬で周囲は氷の噴煙で埋め尽くされる。
「前任の上弦の弐を倒した時と同じ手順でとどめを刺したけど、ちょっとやり過ぎちゃったかなぁ。まずいまずい。狛治殿が死んじゃう前に早く血を入れないと・・・」
ー素流体術 鈴割りー
俺は攻撃を受ける直前宙へと退避していた。加えて童磨本体の背後へとそのまま降り立ち振り向きざまに裏拳を放つ。
童磨は
「っ!!!」
童磨は振り向くことなく見もせずに俺の裏拳を畳んだ扇で防御していた。信じられない。確実に裏をかき隙を突いたはずの必殺の一撃だったのに・・・
「甘いよ狛治殿。後ろを取ったくらいじゃ俺は殺せないよ?」
ー血鬼術 枯園垂りー
「くっ!!!」
俺は驚愕で動きを止めてしまっていたが、透き通る世界に入っていたおかげで童磨の筋繊維の動きをいち早く察知し背後へと逃れることができた。俺のいた場所には童磨の扇が通り過ぎ冷気が滞留していた。
「駄目じゃないか狛治殿。戦闘中にぼうっとしてちゃ。」
「な・・・なぜ俺の攻撃を防げてたんだ・・・完璧に意表を突いた一撃だったはず・・・一体なぜ・・・」
すると童磨は自慢げに腰に手を当てて胸を張り、鼻高々にネタ晴らしをしてくる。
「まあもう勝ったも同然だし教えてもいいかな。それはね、俺が生み出した結晶ノ御子の視覚は全て本体の俺と共有してるんだ。だから一体でも狛治殿を眼で捉えていれば俺には見えてるも同然なんだよ?
狛治殿ほどの使い手なら、これが戦いにおいてどれ程の優位性を持つかわかるだろう?」
俺は唖然とした。即ち童磨は分身に背後を見張らせておけば死角など存在しないと言っているのだ。奴は現状最大で四体もの御子を生み出せる。即ち奴の視界の広さは本人を含め通常の五倍ということになる。先ほど俺の動きに対応できたのも、女神像を生み出した御子二体が残っていたからだ。俺は奥噛みする。
「どうだい狛治殿。漸く実力の差を思い知れたかな? 黒死牟殿からの助言で結晶ノ御子は透き通る世界相手でも動きを察知されないよう設計済みだし、俺本体に近づいても死角共有で隙なんてない。
加えてその赫刀だっけ? 持続時間短いのかわからないけどもう赤熱してないみたいだし、そんなんじゃ俺の血鬼術防ぎきるのも難しいんじゃないかな?」
「っ!!」
俺はすぐさま鎖分銅を旋回させその場で打ち付ける。甲高い音と共に赫刀は再び発現するが・・・
「そんなことしても時間稼ぎにしかならないよ? 少し考えればわかるだろう? 戦闘中にそんな隙何度も見せてさ、俺相手に最後まで生き残れると思っているのかい? 次にその赫刀がもとに戻った時が狛治殿の命運が尽きる時だね。」
俺は童磨に肉薄しようとするが、周囲より御子の放った氷柱や氷の蔓に行く手を阻まれる。俺はどんどん距離を離され勝機を失う。
「まだ諦めないなんて気は確かかい? まさかここまで狛治殿の頭が悪いなんて思いもしなかったよ。残念だなぁ。」
ー血鬼術 結晶ノ御子×弐ー
再び御子は四体まで増える。状況はますます悪化するばかりだった。やがてどういう訳か童磨は一転し涙を流し嗚咽を漏らし始める。
「ああ、なんて可哀想な狛治殿。
どうあがこうと人間では鬼には勝てないのに。こんな単純なことも受け入れられないんだね。頭が悪いとつらいよね。
ああ、気の毒な狛治殿を幸せにしてあげたい。助けてあげたい。あの御方の命令がなければ今すぐ救ってあげるのに。
救済はしてあげられないけど、せめて狛治殿が鬼になった後も俺がずっと傍で見守って上げるよ。だから大人しく鬼なると言っておくれ。」
理解した。俺はコイツを体の芯から受け付けないのだ。金属に爪を立てるような神経に障る嫌悪感。不協和音に吐き気がする。
恋雪のためだけじゃない。俺はコイツを、童磨を確実に葬らねばならない。気が付けば俺は拳を握りしめていた。
続く
独自解釈というよりは設定改変なのですが、本作では結晶ノ御子を上方修正しております。理由は単純で、童磨が狛治との再戦を見据えて何の対策もしないとは考えにくいからです。鬼滅世界では珍しい軍略家や策略家キャラなのでこれくらい準備するかなと思ってこのような展開にしました。加えて透き通る世界習得者との戦い方も黒死牟からレクチャーされてます。つまり原作以上に童磨は狛治にとって凶悪な敵キャラとなっています。
あと筆者がNARUTOの自来也VSペイン六道とかメッチャ好きなのが理由でもあります。魔王が勇者一行を相手するのとは逆で、敵キャラが主人公一人に対して数と策略の暴力仕掛けてくる展開実は好きだったりします。最近だと呪術廻戦の乙骨VS夏油、もしくはチェンソーマンのポチタ(=黒チェンソーマン)VSマキマとかですかね。人によってはストレス溜まるバトル演出かもしれませんが、もう数話筆者の性癖にお付き合いください。
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