狛治外伝 ~誰が為に振るわれる拳~   作:科学大好き人間

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狛治視点です。引き続き原作おまけページのエピソードです。また狛治の得意技お披露目回でもあります。
報告になりますが、先日日間ランキング44位で載ってました。また、お気に入り登録者数が100を超えました。応援して下さる皆様には本当に感謝しております。この場をお借りして御礼申し上げます。


8話 試合

「それではこれより素流道場との交流試合を始める。勝負は門下生同士の勝ち抜き戦とする。但し、素流道場には門下生が一人しかいないため、特別に師範の慶蔵殿も参加可能とする。一同よいな?」

 

「「「はいっ!!!」」」

 

「・・・はい。」

 

「それでは一試合目。はじめっ!!!」

 

 

俺は隣接する剣術道場へと来ていた。

 

先日この道場の跡取り息子が半ば強引に恋雪を連れ去出し、容体を悪化させた挙句置き去りにした事件については、師範からここの道場主に話を通してある。

 

道場主もその話を聞いて頭を悩ませていたらしいが、師範から交流試合の提案をされ、向こうも悩みの種を解決するいい口実になると判断したらしく、快く引き受けてくれた。

 

俺達が勝てば金輪際奴らは俺達素流道場に手を出せなくなる。そのように道場主は約束してくれた。一方、向こうが勝ったら大人しく素流道場を引き渡す。そういう約束だ。

 

向こうの道場主は引退もそう先の話ではないので、こちらの道場を手に入れることなど然程執着がなかったらしい。しかし、こうでも約束しないとあのドラ息子が突っぱねるからとこのような取り決めになったとのことだ。

 

その割にはこちらは俺と師範の二人、対して向こうは70名近い門下生で応戦すると言うのだから、道場主の男も心の底では俺たちの素流道場は我が物にしようと企んでいるのでは?

 

審判も向こうの道場主の男が取り仕切っている。全てあちら側の匙加減一つでどうとでもなる気がするのは俺の気のせいだろうか?

 

師範は人が良過ぎる。騙されている気がしてならなかった。だがそれでも問題はない。

 

ようは俺がこいつら70名弱を連戦で叩き伏せればいいだけの話だ。一本勝負。それを70回弱繰り返すだけ。その程度でへばる様な生半可な鍛え方などしていない。

 

俺の身体は人並み外れて辛抱が利くのだから。それよりもうっかり怒りで一人ぐらい殺してしまわないかの方が気がかりだった。当身をするときはくれぐれもやりすぎないように注意したい。

 

俺がそう考えながら脱力して棒立ちする中、一人目の男は木刀を中段に構え俺をあざ笑っている。

 

 

「その入れ墨。罪人のお前が試合など甚だ図々しいな。恥ずかしくないのか? 本来であれば真っ当に生きることもおこがましいというのに。」

 

「何が言いたい?」

 

「なに。さっさと道場を明け渡して遠くの田舎にでも引っ越せとそう言っているのだ。罪人風情が。」

 

「そこ! 試合中に何を話し込んでいる! 早く始めろ! 日が暮れてしまうぞ!?」

 

 

道場主の男が試合を催促する。審判として表面上だけでも中立の立場を取ってくれるようだ。それについては有難かった。

 

俺が左手の掌をかざし右拳を引く素流の構えを取ると、一人目の男は木刀を振り上げ唐竹割を放ってくる。しかし・・・

 

 

「ぐがっ!!」

 

「そこまで!!」

 

 

奴の打ち下ろしが振るわれる前に俺は肉薄し軽く拳で鳩尾を突いた。それだけで男は床に転がり動かなくなる。

 

 

「次!」

 

 

道場主の一声で次の門下生が俺の前に立つ。一人目は既に誰かに引きずられ、道場の端まで運ばれていた。

 

 

「ふん。うまく間合いの内側に滑り込んだだけで調子に乗るなよ? 間合いの外からでは剣相手に拳で戦える訳がないのだから。」

 

「二試合目、はじめっ!!!」

 

 

二人目の男は正眼の構えを取ったままじりじりと寄ってくる。さっきの男のように馬鹿正直に近づいてこない。少しは頭が回るようだった。

 

とは言え時間が惜しい。日が暮れる前に決着をつけたい。俺はそう思い、すり足で一気に距離を詰める。

 

 

「はっ!!」

 

 

正眼の構えからの喉に向けての突き。予備動作を極力減らした不意打ちのような迎撃。しかし俺はそれを首を傾けるだけで躱し、そのまま懐に入ってさっき同様鳩尾を小突く。男は倒れて動かなくなる。

 

 

「そこまで!! 次!!」

 

 

三人目の男は大柄だった。背は六尺に届くかもしれない。俺よりも頭一つ以上でかい。それ故、俺を侮っていた。

 

 

「ふっ、一撃で叩き伏せてやるよ!」

 

「三試合目、はじめっ!!!」

 

 

こいつらは試合の度に挑発めいたことをしないと気が済まないのか? それを何故ここの道場主は許している? 武を磨く前に心構えとかいろいろと教えなければならないことがあるだろう。

 

俺が胸中で呆れていると、大柄な男は上段に木刀を構え、全力で俺に打ち込んでくる。大口叩くだけあって相当な一撃のように思える。だが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー素流体術 脚式 冠先割ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は下段からの蹴り上げで木刀を打ち上げる。目の前の男もまさか蹴りで打ち下ろしが弾かれると思わなかったのか驚きと反動で僅かに硬直していた。

 

その一瞬で距離を詰め、鳩尾に拳を打ち込む。大きな音を立ててその男は床に倒れ込む。

 

 

「そ、そこまで! 次!!」

 

 

周囲から息を飲む気配がする。他の門下生が今の技を見て驚いたのだろう。しかし俺たちは自身の肉体全てを武器にする。蹴り技ぐらいで驚かれても困る。

 

そうこうしているうちに四人目の男。小柄で木刀を下段に構えている。守りの姿勢。こいつは攻める気がないのか?

 

 

「四試合目、はじめっ!!!」

 

 

一向に動く気配がない。目を見れば俺に対する恐れのような感情が見て取れる。

 

俺はため息を溢しそうになるが堪え、ゆっくりと近づいて行く。

 

 

「うぁああああ!!!」

 

 

下段から俺に向けての振り上げ。牽制を兼ねた一撃か、それともただの威嚇か。どちらにしても今までの三人の方がまだマシだった。

 

大した威力の一撃でもない。俺はそれを手で払い、手刀を男の頸筋に打ち下ろして失神させる。

 

 

「そこまで!! つ、次!!」

 

 

それ以降、似たり寄ったりの怖気づいた奴、無駄に自信のある奴、虚勢を張ってるだけの奴と有象無象ばかりだった。

 

こんな奴ら相手に、師範から教わった俺の武が後れを取るはずもない。

 

瞬く間に9人勝ち越し、道場はざわめき声で溢れかえる。

 

すると痺れを切らしたのか、道場の跡取り息子が奥の方で喚き散らし始めた。

 

 

「ええいっ!! 何をしているんだ!!! たかが武術をかじっただけの罪人風情に後れを取るなどお前ら恥ずかしくないのか!? 誰でもいい!! 早くあいつを叩き伏せろ!!!」

 

 

俺は眉間に皺をよせ、低い声でそいつに語り掛ける。

 

 

「他の奴らをけしかけてばかりいないで、いい加減お前も剣を握ったらどうだ? 何なら真剣でも構わんぞ?」

 

 

すると跡取り息子はみるみるうちに頭に血を昇らせて俺を睨み激昂する。

 

 

「よく言った!! 男に二言はないな!? 今すぐ罪人のお前など俺が斬り捨ててやるっ!!! 覚悟しろ!!!」

 

「こ、こら!! やめんか正十郎・・・」

 

「五月蠅い!! 親父は黙ってろ!!!」

 

 

道場主の父親が諫めるも空しく、奴は奥から本当に真剣を持ち出して俺の前で抜刀する。

 

 

「そもそも初めからお前のことは気に食わなかったんだ!! 罪人の癖に善人面しやがって!! 恋雪も馬鹿な女だよな!?

 俺が折角気にかけてやって狭苦しい部屋から連れ出してやったってのに!! 特別に街で遊ばしてやろうと思ったのに!!

 俺の親切心を無下にして勝手に倒れやがって!! まるで俺が悪いみたいじゃないか!! 病人だからって優しくしてやれば図に乗りやがって!!!」

 

「・・・は?」

 

 

俺は怒りを通り越して呆れかえってしまう。こいつは何を言っているんだ? 頭に脳味噌が詰まっていないのか?

 

恋雪がいつお前に連れられて街に遊びに行きたいと言った?

 

勝手に倒れただと? 恋雪は以前に比べ元気になったとは言え、咳が今だに止まらないんだぞ?

 

それをお前はあろうことかその場に置き去りにして逃げやがった。それについて申し開きの一つもできないのか?

 

 

「死んで当然の罪人風情が!!!」

 

 

そいつは真剣をやたらめったらに振り回す。道場全体で悲鳴のような声が聞こえるが、怒りが頂点に達した俺は一周回って酷く冷静だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー素流体術 鈴割りー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は頭蓋に振り下ろされる刃の一撃を完全に見切り、側面から裏拳を放ち殴り折った。甲高い音がし、折れた切っ先が道場の床へと突き刺さる。

 

 

「「「なあっ!!??」」」

 

 

一拍遅れ、道場に居た全ての者から驚愕の声が上がる。師範を除いてだが。俺は何事もなかったかのように構えを解く。

 

 

「なっ・・・なっ・・・なんて・・・奴だ・・・」

 

 

俺は酷く冷たい目で眼前の男を射貫くように見つめる。

 

 

「ひっ・・・」

 

 

すると男は一気に青ざめてその場にへたり込んでしまった。俺は見下ろしながら静まり返った道場の真ん中で宣言する。

 

 

「お前のような弱者、殴る価値もない。今後一切、素流道場と恋雪に関わるな。」

 

「う・・・うう・・・」

 

 

その後は道場主が俺の放った素流の技に甚く感銘を受けたようで、道場同士の試合の負けを認めた。

 

跡取り息子の再三の無礼を詫び、その日から俺たちの道場への嫌がらせはなくなったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

束の間の安穏の日々が訪れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




もしこの場に恋雪ちゃんが居たら、恋柱の蜜璃ちゃんみたいに胸キュンしてたかもしれませんね。尚この時は危険なので素流道場でお留守番してます。
因みに狛治の技は今後ずっと「破壊殺」ではなく「素流体術」と呼称させて頂きます。何故なら破壊殺という言葉には風水曰く「全ての予定が破壊されるが、命だけは助かる」というとんでもない意味があるので本小説では使いたくなかったからです。
いやね・・・吾峠呼先生・・・だからその・・・人の心とかないんか?(ドン引き)
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