さて、序章は明治時代編ということでスタートです。サブタイトル通り酒柱が登場します。一人は皆様お馴染みのCV小山力也のあの方です。そしてもう一人は狛治の息子である冬治です。
今話の文体は第三者視点です。一般的な小説って感じですね。読みにくかったらすみません。
明治34年。鬼殺隊最高位にして最強の隊士、柱。その中でも特に古参の二人がとある藤の花の家紋の家で晩酌をし語らっていた。
「槇寿郎。つい先日次男坊が生まれたそうじゃないか。確か、千寿郎と言ったか?」
「ああ。これは済まない。冬治殿」
炎の羽織を着て盃を片手に酒を注がれる方を煉獄槇寿郎、花菖蒲の半袖羽織を着て酌をする方を素山冬治と言った。今代の炎柱並びに岩柱である。
「めでたいな。お袋が知らせを聞いて大層喜んでいたぞ? 一方で俺は叱られた。いつまで嫁を貰わずのらりくらりしているつもりだと。本当に良い迷惑だ」
冬治は言葉こそ憎まれ口だが、口元は笑っていた。純粋に戦友の吉報を喜んでいるようにも見える。一方で槇寿郎は苦笑いだ。
「それはお前が悪い。四十にもなって独り身など一体どういう腹積もりだ? そんなに嫁を取るのが怖いか?」
「ほう。酒で口が達者と見える。今なら貴様の後生大事に抱える悪鬼滅殺の日輪刀も鈴割で叩き折れそうだ。抜いてみろ」
「ほんの戯れだ。お前こそもう酔いが回っているんじゃないか? 冬治の酒乱は洒落にならんからな」
「ふん。俺はただの酒好きだ」
「よく言う。若い頃は酔った勢いで屋敷を一つ倒壊させおった癖に」
「ほう。やるか? 今ここで」
「やめろ。ほんとに洒落にならん」
二人は談笑しながら酒を酌み交わす。やがて槇寿郎が冬治に問いを投げかける。
「だが昨年、お前は行く当てのない母子を引き取り、そして今でも屋敷で面倒を見ているのだろう? その者を嫁に取るつもりはないのか?」
「呆けたことを。俺は三十過ぎで相手は二十少しの
「しかし・・・嘴平と言ったかその母子は。今でも行く当てがないのだろう? 婚儀も交わさないでずっと屋敷で面倒を見るつもりか?」
「面倒を見ているのは俺ではない。屋敷で抱えている隠達だ。それと俺の門下生達だな」
「結局は同じことだ。お前はどうしたいのだ? お前の母親、恋雪殿もお前が身を固めればさぞ安心するだろう。余り親不孝をするでないぞ? 存外家族を持つのも悪くないものだ」
「風来坊の俺が家族をな。これは笑える。それが似合わぬ男であるとお前は知っているのでは?」
「むう・・・しかし余り母親を心配させるものでは・・・」
「ふん。なら戯れに今度聞いてみるか。俺の嫁とならんかとな。まあ、十近い歳の差の男と一緒になろうなどと、酔狂なことを若い女が望むとは思えんが」
「いや、あながち酔狂でもないのでは? なにせ命を救った娘なのだ。相手もお前に少なからずの好意を持っているはずだろうに」
「鬼から命を救った者など今まで数え切れない程に居る。勿論若い娘も大勢な。それを皆嫁にしては如何にお館様から給金を貰おうとも足りぬわ。阿呆が」
「むう・・・」
槇寿郎は腕組みをして唸る。なぜ、目の前に居る戦友はここまで頑なに嫁を取ろうとせぬのかと。ただ、付き合いは長いので、槇寿郎はその理由に一つ心当たりがあった。
「冬治。お前は強い。俺も相当に腕に自信はあるがお前ほどでは無い。拳だけで上弦と渡り合える隊士など、現役の頃の狛治殿とお前くらいなものだろう。親子揃って傑物だ。故に嫁を未亡人にする心配など要らぬ心配ではないか?」
そこで冬治の盃の酌が止まる。彼は酒瓶を脇に降ろし、静かに答えた。
「槇寿郎。知っているだろう? 黒死牟は俺の命を狙っている。奴は親父達ですら殺せなかった鬼だ。いつ対面するかもわからん。家族など、俺が取ったところで悲しませるだけだ」
「しかし! 現にお前は隊士となってから十年以上の間生き残り続けている! なぜあの時お前は縁談を断った!? もしあの時断って居なければ今頃俺と同じように子宝にも恵まれていたはずだ!!」
「あの時にも言ったはずだ。俺には痣が出ていた。老い先短い身で家族など持てるはずがないであろう。だから俺は一人で鬼殺に明け暮れる道を選んだ。俺を育ててくれた両親、お館様、そして鬼殺隊に報いるためにな」
「だが現に今のお前は痣の寿命を克服しているではないか!! 二十五で死ぬと言われてからもう何年になる!? お前は俺とは違う!! 特別なのだ!! 俺は純粋にお前が自身の人生を蔑ろにしていることに苛立ちを覚えているのだ!!」
「そうか。それは済まなかったな。まあ、そう言わず酒でも飲め。これは鬼殺しと言って、かの有名な酒吞童子すら酔い潰したという縁起の良い酒だそうだ。鬼舞辻無惨もこれを飲んで潰れてくれるといいのだがな」
「冬治・・・!!」
槇寿郎は立ち上がる。それを冷静に見上げる冬治。二人の間には明確な温度差があった。
「槇寿郎。お前は最近余裕がなさそうだな。もしかして瑠火の身に何かあったのか?」
冬治の指摘は見事に的中していた。槇寿郎の表情が驚きの色に染まる。
「なぜ・・・それを・・・」
「お館様だよ。この間の柱合会議でお前を一瞥しただけで気が付いたそうだ。やはり当代当主の輝哉様は傑物だよ。それに比べて先代は本当になぜあのようなことを。同じ鬼殺を志す者として理解しかねる」
「・・・・・・」
槇寿郎は座る。そして苦々しく弱音を吐きだした。
「瑠火は・・・千寿郎を産んでから数ヶ月経たないうちに不調を訴えるようになった・・・正直産後で体調が優れない為だと思っていたのだが・・・」
「違うと?」
「わからん。だがわからんからこそ不安なのだ。すまん。こんなことお前にしか言えん」
「良いさ。好きなだけ吐け。愚痴など一晩中聞いてやる」
「・・・冬治・・・すまん・・・」
それから日を跨いでも尚、槇寿郎の弱音は延々と続いた。冬治はただ黙って戦友の吐露を聞いていた。
「本当に済まない。巡回任務を放棄してまで・・・」
「良い。今夜はどの道酒でも飲んでのらりくらり夜道を駆け回るだけの予定だった。雑魚鬼程度酔っていても殺せる。下弦もな。上弦は流石にきついが・・・」
「ははっ! 本当にお前は! 酒を飲みながら任務をだと!? 他の隊士が聞いたら卒倒するぞ!!」
「良い。寧ろ皆も緊張が解けて鬼を狩りやすくなるかもしれんしな。俺はただその手本となっているだけだ」
「詭弁だな」
「そうか? 大真面目なんだがな」
やがて二人は談笑を終えて立ち上がる。片や日輪刀、片や鎖分銅と手甲を携えて。
「行くか。夜明けまではちゃんと働かねばな。ただで酒を飲んでおきながら任務を放棄したと親父に知られれば、素流の奥義で滅多打ちにされかねん」
「狛治殿は未だにそんなに動けるのか? 俄かには信じられんが・・・」
「仮にも親父は上弦の壱をあと一歩のところまで追い詰めた人だからな。多少の後遺症があったところで一般隊士は相手にもならんよ」
「お前は一般隊士ではなかろうが。俺と同じ現役最古参の柱の癖に何を言う」
「そうか? やれやれ、歳だけは取りたくないものだ」
「抜かせ」
そう言い、二人は巡回任務に赴く。二人は酒気帯びながらも、夜道を駆ける速度は正しく疾風のようだった。
続く
所々新情報を盛り込んでます。嘴平親子とか痣とか諸々。楽しんで頂けてると幸いです。因みに冬治のキャライメージは狛治さん似でやや不良気質って感じです。ただ産屋敷邸で育ってるのでやや喋り方が上品です。不良で上品とはこれ如何に・・・
最低でも月一以内には更新したいと思っています。別で投稿してる鬼滅SSがひと段落若しくは完結したらこっちでも毎日投稿するかもですね。モチベはあるので未完にはしないつもりです。続きが気になる方は、お気に入り登録、高評価して頂けると励みになりますのでよろしくお願いします。