__貴方の人生で最も美しいと思った光景は何ですか?
それを聞かれた時、貴方は何だと答えるのだろうか。ある人は愛する人がこちらに笑いかける姿と言うし、ある人は故郷を照らす夕焼けだと答える。もしかすれば黄金がありえないほど積み上がった姿だとか、誰かが苦しみもがく姿と言うのかもしれない。けれど監督生にとって、『美しい光景』とはそんなものではなかった。
監督生はこの世界の住民ではない。当然、頼れる存在も不思議な力もなければ金も権力もない、吹けば飛ぶようなあまりにちっぽけな子どもであった。…とは言っても、監督生はその事実に屈して『どうして私はこんな所にいるの!?お家に帰りたい!』といった感じで慟哭するほど脆くもなければ弱くもない。なんだったら喧嘩を売ってきた輩に対して『…お前、知ってる?人体っていうのは急所を突けば動くなくなるんだよ?テメェが獣人だろうが人魚だろうが急所はおんなじなんだよ潰すぞ鳩尾もしくはタマを。』…なんてことをノンブレスで言い切る程度には心が強ぇ人間であった。さすが主人公といったところであろうか、闇の鏡もサバナクローへの入寮を検討してもいいレベル。これにはマブもにっこり。が、しかし、現実はそう簡単にはいかない。この世界…というかこのエリートの集う世界最高峰の魔法学園(笑)は『魔法が使えずんば人権はあらず』『他人の不幸と喧嘩は学園の華』『人の嫌がることを積極的にやります(言葉通りの意味で)』が標語として掲げられても信じるレベルには治安ゴミカス学園である。スラム街かな?辞めちまえ学園名乗るの。…想像してみてほしい、精神だけで見ればいくら不屈の精神にピッタリフィットではあっても、対抗策ゼロの矮小な存在である彼/彼女に向かって威力極高の炎やら雷やらが飛んできた場合、ソイツに勝ち目はあるか否か。答えなぞ分かりきっている。『無理!以上!閉廷!』…この言葉に尽きる。それがわかっているが故に、今まで監督生はなるべく一人にならないよう心がけていた。なにせ彼/彼女には頼れる親分も、河川敷クロスカウンターならぬ学園シャンデリアクラッシャーの結果マブになった友人もいたのだから。…まあ、勘のいいガキな皆様方はお気づきだろう、何でこんなことを説明しているのか。
「おいテメェ、何いつも調子乗ってんだよ?」
「お優し〜い俺たちがわざわざテメェなんかに言ってやってんだぞ?なんか言えよ?あぁん?」
答え=目の前のこいつら。Q.E.D.証明終了。…体育館裏でかっこいい女子/男子に壁ドンされる妄想はしたことはあれど、学園裏でこんなケモミミの生えたムッさいムキムキ男たちに壁ドン(?)される妄想なぞしたことないしされたくなかった。自分が総理大臣ならケモミミは美少女しか生やしてはいけない法律を作っていたところである。なんなら自分の壁ドン童貞/処女はタッパとケツとムネがデカい美人に奪われたかった。…そんな阿呆なことを考えている彼/彼女ではあったが、こんな事態になったのには一応訳がある。可愛いモッフモフの親分は『昼メシだけじゃ物足りねぇんだゾ!』と言ってオンボ…ウルトラゴージャス寮に一足先にツナ缶を食べに帰って不在、愛すべきマブ共は今日はどちらも部活で不在、結果として一人になった監督生、16歳、魔力なし、戸籍なし、守ってくれる存在なしのカモへと突入しない
「っけっ、無視かよ。」
「まあしゃーねーだろ。魔力無しサマとやらは忙しいんだろ?俺らなんかに構ってなんかいられないもんなぁ?」
「違いねぇ。まあ?その『魔力無し』のご立派な肩書とやらもどうせ教師に金でも積んで手に入れたんだろ?」
「なんなら魔力無しサマとつるんでるヤツらにケツでも掘ってもらって稼いんだんじゃねえの?」
「うっわ〜、サイテー!あいつら2人一年生から飛ばしてんな。ああいう奴らが負け組って奴になるんだろうな〜。」
意識を明後日の方角に飛ばしていた監督生の耳に飛び込むは、下衆な笑い声に汚い言葉。大方魔力無しだからといって色々配慮をしてもらっていることへの妬みといったところであろうか。_お?喧嘩か?ならばこちらも抜かねば無作法というもの…。監督生は一応自分だけをバカにしても許しはする(許すとは言ってない)平和主義者ではある。だって魔法なんてもんがあるヤツに魔力の無い自分が喧嘩を売るのは、拳銃を持つ人間に真っ裸で挑むようなもの、それこそ馬鹿の所業なんだし。…が、何事にも例外は存在するもので、監督生は懐に入れたものに非常に甘い。では地雷原にてタップダンスを踊りながらフラメンコの準備をノリノリで行うことに等しい所業をマブ共を馬鹿にする=地雷の監督生の眼の前で行えばどうなるのか。_俺は長男/長女だから我慢できなかったけど次男/次女だとしても我慢できなかった。どこぞの鬼狩りから忍耐力をひいて物騒さをプラスしたようなことを思いつつその黄金の右手が火を吹くか否か、という所までいった時、
「あれ?そんな所で何をなさっているんですか?」
誰かの柔らかな声が監督生の耳に飛び込んできた。姿を現した彼はピクニックでもするかのように穏やかな様子で、少なくとも誰がどう見ても『カツアゲ現場』の判定を下すであろうこの状況には少しも似つかわしくなかった。
「あ?なんだおめえ?…ってなんだ、アルアジームかよ。」
「見てわかんねえのか?生意気な後輩にお優しい俺等がお灸をすえてやってるとこだよ、邪魔してんじゃねえぞ。」
…あれ?これこの先輩らしき人利用すればコイツらノーダメでぶん殴れるのでは?まさしく悪属性の鏡みたいなことを思いついた監督生は声を張り上げる。
「た、助けてください!ボク、この人達に襲われそうになってて…!」
今にも狩られそうな子兎のように身を震わせ、涙で顔をいっぱいにするという俳優も裸足で逃げ出すような演技力を見せつける監督生。腐っても闇の鏡に選ばれし者である。
「う〜ん、そうなんですか?」
「は!?な、何だよ文句あんのか!?」
「…おい、コイツもろともやっちまおうぜ!アジーム家のボンボンともなりゃあとんでもない金持ってるんだろ!」
…監督生は唖然としていた。2対1、普通ならば1の方が多少は苦戦するであろう。ならば、目の前で起きているこの蹂躙劇は何であろうか。
「チッ、なんで当たんねえんだ!」
「な、なんで金持ちのお坊ちゃんが物理でこんな強いんだよ…!」
赤い瞳の彼は変わることなき笑顔を浮かべながら、屈強な男たちのパンチや蹴りをそよ風が身体を掠めでもしたかのように軽々と避け、ついに当たらぬことにキレた男たちが繰り出した魔法攻撃ですら、彼の髪の毛一筋に至るまで傷をつけることは叶わなかった。そうして監督生がこの華麗なダンスに目を奪われているうちに、ふと気がついた時にはすべてが終わっていた。
「ぐ、ぐは…。」
「畜生!お、覚えていやがれ!」
瞬く間に叩きのめされ、死体となっていた(死んでません)オヤサシイ先輩(自称)がしぶとくも立ち上がり、急ぎ足で去っていった場に残るはにっこりと微笑んでいる銀髪の彼と、何処となく『プリなキュア頑張れー!!』とペンライトを振っている大きなお友達のような目を向ける監督生のみであった。
「行ってしまわれましたね〜。」
「エッ、アッ、ハッ、ハッ、ハヒ…。」
後に出会うことになる蒼い限界オタクのパイセンのようにドモりながらも、恋する乙女の如く頬を赤らめる監督生の様子を気にもとめず、彼は続ける。
「怪我はありませんでしたか?」
「アッハイ、大丈夫デス…。」
「あはぁ、なら良かったです〜。」
「ホ、ほわぁ…。」
「じゃあ、僕は失礼しますね。貴方も、もう絡まれないようお気をつけくださいね〜。」
そう言って、最初と同じように余裕を保った様子でこの場を離れていく彼の後ろ姿をいつまでも見送っていた監督生はポソリと呟く。
「か、格好いい…!」
心からの本音をぶちまけた監督生、その瞳に宿るのは_某餡のパンな顔を持つ『僕の顔をお食べよ』のヒーローを見る幼子のような、はたまた気になっているゲームで性癖にぶっ刺さったキャラを見つけた時のヲタクのような、そんな焔であった。
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【監督生】
注意事項:突飛な行動、心を抉るような悪態
この世界に飛ばされてきたとされる異世界人及びに■■■■■■■■■■たる主人公です。屈強な精神の持ち主であり、普通であれば心が挫けるような状況にあっても構わず突き進むことが可能ではありますが、魔法は使用不可能かつ肉体的には通常の人間と同様であるため、戦闘能力には期待できません。一方、人心掌握能力及びに指揮能力に優れています。
この世界で出会った友人・魔獣との初対面時の印象との落差、吊り橋効果、助けられた事実、彼/彼女にとって好ましい外見…といった複合的要因が合わさり、□□□のことを監督生様及び管理人様の言葉でいうところの『推し』と呼称されるものに定めたようです。この後、友人や先輩に彼のことを尋ねて回る等をして、彼との再度の接触を図っているようです。
チキチキ☆囚人達による新米管理人及び監督生向けのプロムン世界観解説講座☆
ダンt…うえっほん、管理人により命じられたが故、このコォナァを始む。このクォナァは、監督生と呼ばれたる鏡の世界の方々と新米管理人がためにプロジェクトゥムゥンの世界?…あな、私たちの住たるかたのことなりや…を紹介すが本意なり。…む?ダンテ、いかがせり?…ええと、このことわりには主観多く含まるれば話半ばに聞きたまへ、と仰せなり。
__ちょっと待って、監督生って何?私が知らないだけ?
__言葉の意味であれば、学校において、生徒を指導・監督する役割を担う生徒を指す。
__ムルゥ〜、ごめんねそういう意味じゃなくて…。
__鏡の世界の…ってところが分からないんだが…。
__その単語は秘匿事項です。説明は現段階ではできませんね。
__あ〜はいはい。いつものやつね。
…話を戻さむ。第一回の議題は都市と巣、翼につきてなり。私たちは二十六つの区域たる巣に分かれし巨大なる『都市』に住ており、区域ごとに技術などの文化の差は千差万別なり。例へばN社の管轄する十四区には録画しすること及びに、録画されし映像を見るが禁忌とされたる一方、U社の管轄する二十一区には「大湖」と呼ばれたる巨大なる湖の規則を媒体に記すが禁忌とされたり。禁忌を破らばすぐさま処刑を含む処罰が下るが故、これを読めるそなた等が巣に訪るる際は各巣の禁忌を一度は読むこと勧めたてまつる。
__そう、その通りなんですよ。なのに何でいつも私しか巣のガイドブックを読まないんですか。自分が昔住んでた巣とかならともかく訪れたことすらない巣に。
__す、すまぬ、私は…その、巣に入るや否やというときに限っていつも新たなるフィクサー雑誌が発売されて…し、仕方がなかったのだ!これで読まぬはフィクサーのフゥァンとしての名折れになるが故…!い、言い訳ではありませぬ!
__いいじゃねえか、いっつも読まなくても何とかなってきたんだしよ。
すまぬ、イシュメール嬢。日ごろ読まむとは思へれど、私はバスに本を読むといかがすとも酔ひぬれば…
__はあ、もういいです…。
あっ、けほん。え〜、先ほども述べし通り、都市内の二十六区域が『巣』であり、すべての巣の住民は『翼』より恩恵を受けたり。『翼』とは巣を管轄する二十六のいと巨大なる大企業であり、各社がおのおの持つ『特異点』といふスゥパァテクノルォジィに基づきて人々は暮らせり。例へば同じ回復系の『特異点』にもK社の場合はHPアンプルといふ名であり、脳より外が木っ端微塵になるとも再生するが能ふ。一方■■■君の住たりしH社の場合、丸(ワン)といふ薬を使ひて治す他、身体改造施術によりさらに強くなる事能ふ。ただし、一つばかり注意点にて翼が折れる…すなはち倒産せる場合、その露の間より巣の中は無法地帯となり、みづからの身の息災を保障するものは誰もあらずなることは念頭におきたまへ。
__芸・湧・恩・言。ふっ。
__なんて?
__『芸術の材料が斬れば斬るほどいくらでも湧いてくるのは確かに恩恵と言うべきだろうな』って言ってますね…。
…第一回のクォナァは以上なり。