【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート   作:バブ辻オギャン

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 凄い勢いで感想がもらえるのが嬉しいからメイン連載ほっぽり出してこっちに浮気しちゃってる。


10.日輪刀の色

 山中に響き渡る絶叫。

 元柱と言えども、それは思わず身体を震わせる程の衝撃であった。

 一体なんだ。そう口にするよりも前に、左近次の前に件の二人は現れた。

 ダァンッ!と、扉がぶち破られると共に。

 

「鱗滝さァん!お医者さん連れてきて――ッ!!」

「…………」

 

 ――二人共、下着姿のままで現れた。

 

「……――――」

 

 鱗滝左近次。

 人生数十年の中で、一番の動揺を経験する。

 

「ちょ、早く水で身体冷やさないと!水?水どこだっけ?あれ!?」

「真菰、落ち着いて」

 

 顔面蒼白。

 どう見ても冷静さを失っている真菰は、右足と左足を交互に動かし、その場走りを繰り返していた。

 真菰の動揺は収まらない。

 

「いやそもそも、あれ?風邪の時ってそれで良かったっけ?いやでもこんな高温だと……!」

「落ち着いてってば」

「麗は何でそんな落ち着いてるの!?命に関わるんだよ!?」

「いやだから……」

「急患――ッ!!」

 

 つい先ほど聞いた叫び声が、また狭霧山全体を震わせた。

 

「熱凄いよ!?何が『全然疲れてない』なの!?辛いなら言ってよ!」

「本当に大丈夫だよ。これが平熱だし」

「そんな訳ないでしょ!?」

 

 重ねて説明すると、二人は下着姿のままである。

 人気が皆無な狭霧山かつ、今この場に居合わせているのが左近次だけだからいいものの、その絵面はあまりにも危ない。

 年頃、それもまだ十三歳の娘が二人だ。

 

「…………」

 

 一人、何の説明もされずに置いてけぼりの左近次だけが、半ば思考を放棄して成り行きを見守っている。

 しかし、彼は察しが良かった。

 会話の節々から、左近次は目の前の出来事を『麗の体温に驚いた真菰が、体調不良と勘違いして動揺している』のだろうと推理していたのだが、これは見事に的中している。

 左近次自身、老いて柱を引退した身と言えど、全集中の基本である『常中』は今も続けている。

 故に、真菰の言う『熱』や『高温』という反応、それに覚えがあったのだ。

 

「ほら、真菰も呼吸使ってる時は体温高いでしょ?それと同じ」

「全然違うよ!?私ここまで体温高くなった事ない!絶対身体のどこかがおかしいよ!」

「……えぇ…………」

 

 麗は飽くことなく、続いての爆弾を投下した。

 

「でも。僕生まれた時からこうだったし」

「何で生きてるの!?」

「辛辣じゃない?」

 

 正直、左近次もそれは思ったが、内心に留めておく事にした。

 と、そこでようやく。

 

「………あ」

 

 視線が合う。

 最初に左近次が見た、あの底知れない存在感を秘めた目とは違う。

 年頃の子供らしく、『どうしたものか』という感情がぐるぐると回っている目だった。

 そんな麗は、一言も発さずに硬直している左近次の方を見て。

 

「……えっと」

 

 沈黙は一瞬。

 すぐさま、麗はぺこりと頭を下げてから。

 

「どうも、お騒がせして」

「どうもじゃないが?」

 

 とりあえず、左近次は二人を家屋に戻してから、二人を並べて正座させた。

 年頃の娘がそんな恰好で外に出るんじゃない。としっかり言い聞かせたはいいものの。

 

 『はーい』と、ふわふわした笑顔で言う真菰と。

 その横で『心外!!』という顔をしている麗。

 

 左近次の言葉に効果があるかどうかは、言わずもがなであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから昼食の時間になって。

 左近次が用意した鍋を三人で囲いながら、麗は自分の身体について話した。

 

 異常な体温、心拍数。

 

 人より鼻の利く左近次はともかく、麗の口から語られるそれは。

 真菰は当然として、左近次の、これまでの長い人生の常識を打ち壊すものだった。

 ただ使うだけでも体力・精神力を消耗する全集中の呼吸。それを例え眠っている間も、文字通り常に行う『常中』。

 

 まだ本格的に鬼殺隊に入る前。

 『最終選別』の段階で、十三歳の子供がそれをできる事実。

 

 花柳麗。

 彼女の身体的特徴、呼吸の才能に驚く度に、ある事がどうしても気になって来る。

 必然的に、次の質問も決まっていた。

 

「麗。そう言えば、お前の『育手』の名は」

 

 これ程の逸材。

 一体どこで、そして誰が見つけ、ここまで磨き上げたのか。

 左近次は元水柱だ。最強、と自惚れる事はなくとも、その実力に見合った形の、それ相応の指導力は自負している。

 実際、同じく十三歳で岩を斬り、見事『最終選別』を突破した真菰。

 そして、その兄弟子に位置する冨岡義勇の存在が、左近次の教えの力を証明しているのだから。

 だが。

 

「……えーっと」

 

 麗は首を傾げる。

 しかし、それは答えに悩む素振りではなく、告げる言葉を厳選している素振り。

 ただでさえ、常識知らずの少女に何度も驚いた左近次であったが。

 その日、彼が最も大きな反応を見せたのは、麗の次に放った言葉だった。

 なんて事もないように、麗は言った。

 

()()()()()。『最終選別』には自分一人で行きました」

「――」

「刀は、六年前に出会った剣士の人と、父親との間で()()あって……それを持ってきました」

 

 その言葉が意味するのは、『育手』を介さない特別参加。

 常識知らず、否、もはや常識破りとしか形容できない彼女に対し、一体日に何度驚けばいいのか。

 ただでさえ、最初に出会った時に感じた『匂い』、その()()()の正体に辿り着けていないというのに。

 

「……そうか」

 

 いや、それよりも、もっと重要な事がある。

 『育手』がいない、教えを乞うていないのならば。

 今も尚続けている『常中』は当然。

 

 ――彼女はどこで、()()()()そのものを覚えた?

 

 耳を澄ませば聞こえてくる、この轟く呼吸音。

 左近次は人生において、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 呼吸は人によって適正が変わる。

 だからこそ、人に合わせて派生が生まれ、長い鬼殺の歴史に多くの呼吸名が刻まれる。

 当然、その中には一代限りの特別な呼吸もあった。

 しかしだ、なら麗の呼吸が『そう』であるのか?と聞かれれば、無条件に首を縦に振る事はできない。

 何故なら、彼女には『育手』がいない。

 つまり基礎の呼吸を知る機会がないのだから。

 

(逸材、なんて言葉では足りんな……)

 

 ならば、答えも必然的に絞られる。

 呼吸を教えてもらっていない、なのに未知の呼吸を当然のように扱える。

 長い長い鬼殺隊の歴史の中でも。

 ()()()()()()()()()()――。

 

「麗、ちゃんとお肉も食べないと駄目だよ」

「……分かった」

「あーっ!そう言ってまた野菜取ってる!」

 

 と、思案に耽る左近次の前で。

 真菰はせっせと鍋の具材を掬い、麗の器に具材を盛っていた。

 

「ちゃんと食べないと駄目でしょ?強い身体を作るのは美味しいご飯なんだから」

「これ、美味しい」

「でしょ?鱗滝さんの鍋だからね。……って、あっ!また(ネギ)だけ食べてる!」

「……美味しいから」

「お肉も食べなきゃ駄目!」

 

 ……だが、今はいい。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 今、左近次の目の前にいるのは、()()()()()()()()()()()()

 愛おしい我が子――弟子を救い、そして友として在るだけの、たった一人の小さな少女。

 数多の疑問。それを解消したいという思いはさっぱり消えた。

 今はただ、この温かい空気を堪能するとしよう。

 

「ほら、こっちの肉がいい具合だ。出汁も効いていて美味い」

「……はい」

 

 麗は控えめに笑って、両手で持った器を前に出す。

 そんな可愛らしい姿に、左近次は面の奥で、誰にも気づかれる事なく頬を緩ませた。

 しかし。

 

「あ、麗また口元に葱付いてる」

「……取って」

「はいはい……って取ってる途中に食べないでよ?狙いが定まらないよ」

「むぅ」

「動かないで、そのまま……はい取れた。我慢できて偉いね」

「ん」

 

 だがしかし。

 これでは友と言うよりは姉妹――。

 

「…………」

 

 それも、手のかかる妹を世話する姉では……と、そこまで考えてから。

 左近次は考えるのをやめ、自分の器に盛った分の食事に取り掛かる事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十五日後・狭霧山。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その男がやって来たのは、晴れた昼頃だった。

 

「失礼、ここに花柳麗という少女はおられるか?」

「……なんだと?」

 

 左近次はその男を知らない。

 正確には、男の名そのものは知らないが、その男が()()()()()()()()()()()()()()()()()

 鬼殺隊の刀鍛冶、その全員が付けるひょっとこの面。

 だからこそ、左近次は困惑する。

 

「私、鉄本中(てつもとなか)と申しまして。()()殿()()()()()()()()()()()()()()()

「…………そうか、分かった」

 

 『最終選別』から十日以上が経った現在、未来の隊士が選んだ玉鋼が刀に生まれ変わり、新たな持ち主の場所に届けられる。

 それはいい、左近次がかつて剣士になった時から変わらない、鬼殺隊の当たり前の流れだからだ。

 問題は――。

 

「真菰」

「なぁに?鱗滝さん」

 

 家屋の中から、可愛らしい声が聞こえた。

 

「麗を()()()()()()()、刀が届いた」

「――分かった!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 それがどれだけ不自然な事かは、真菰もすぐに理解したのだろう。

 あっという間に家屋から出て、山の上へ、上へと登っていく。

 

「すまんな。恐らく、今は山で遊んでいる頃だ」

「いえいえ、お気になさらず。もしや花柳殿の『育手』は……」

「訳あってな。儂はあの子の『育手』ではないが、暫くここに泊めてやってる」

「ほほう、なるほど」

 

 鉄本中はひょっとこの面を震わせて。

 実は……と、新たな会話の切り口と共に、小さく笑った。

 

「私の下に届いた玉鋼なんですが、これがまた中々に良い質でしてね、私も刀鍛冶として腕が鳴りましたよ」

「そうか」

「聞けば、あの玉鋼を選んだのは鎹鴉だって言うじゃないですか?いやぁ目利きの才能は下手をすれば、私以上かもしれませぬな」

「ふむ……」

 

 そんな会話を何度か繰り返し。

 時間にして一分にも満たず、真菰が麗を連れて帰って来た。

 欠伸を噛み締める姿と、頭に何枚かの葉を付けている様子を見るに、左近次の予想通り彼女は昼寝を、それも見事な爆睡を決めていたようだった。

 その後ろで、真菰がせっせと頭に付いている葉を取ってあげているのも見える。

 もはや見慣れたその光景に、左近次が特に何かを思う事はない。

 

「あなたが、僕の刀を作った人?」

「えぇ初めまして。私は鉄本中と申します」

「はい、初めまして。麗です」

 

 ぺこり、ぺこり。

 鉄本中と麗、二人は同じように頭を下げ、挨拶を交わした。

 

「これはこれは、いい子ですねぇ」

「挨拶は礼儀の基本だと、そう父から学びました」

「わぁすっごくいい子ですねぇ。ささっ、こちらをどうぞ」

 

 鉄本中が取り出し、麗に手渡す刀。

 その柄を握り、流れるように抜刀するのと、鉄本中の言葉は同時だった。

 

「日輪刀はですね、別名『色変わりの刀』と言いまして。その名の通り持ち主によって色が変わるのですよ」

「へぇ……」

 

 鬼殺隊が扱う刀、日輪刀。

 それの原材料は、この国で最も太陽に近い山『陽光山』。そこから採れる『猩々緋砂鉄』と『猩々緋鉱石』の二つ。

 陽光を吸収し、太陽の力を持つその特殊な刃には、摩訶不思議な現象がいくつもあり、その一つが、この変化する刀の色だった。

 麗が抜刀し、刀の切っ先を上に向け、静かにその変化を見守る。

 変化は一瞬だった。

 

 柄の部分から徐々に、刀身が煌びやかに変化する。

 それは、左近次ですら目が眩む程の。

 

 網膜に焼き付く、純粋な一色。

 ――金剛石をも凌駕する白色だった。

 

「おー……」

「わぁ……麗の刀、綺麗だね」

 

 麗と真菰の、子供らしい可愛い反応。

 それに続き。

 

「ほう……これは――」

「は!?白!!??」

 

 左近次の感嘆する声を上書きするかのように。

 声を荒げた鉄本中が、麗の手ごと柄を握り、まじまじと刀身を見る。

 その姿は、まるで先ほどまであった知性が溶けたかのようだった。

 

瓶覗(かめのぞき)……!?いや、これは白群(びゃくぐん)でも藍白(あいじろ)でもないッ!!」

「近いですよ、鉄本中さん」

「これに近しい色は、それこそ『霞の呼吸』の使い手に見られるが、違うッ!やはり違うッ!!これは霞の色じゃない!!」

「近い」

 

 ハァハァ、と。

 息を荒げて少女に近づくその姿は、傍から見れば事案のそれである。

 しかし、鉄本中の興奮は冷めやらぬまま。

 

月白(げっぱく)白菫(しろすみれ)色とも思ったが、これは間違いなく『白』だ!純粋無垢な『白色』ッ!まるで刃の向こう側が見えそうな程の透明で白い……!こんな色は見た事がないッ!!」

「もういいです?早く素振りがしたくて」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 そうして、鉄本中を振り払おうとするものの、当然鉄本中もそれに抵抗して、麗の手を離さない。

 ズルズルと身体が引っ張られる。

 当然麗の方が力が強い為、鉄本中は引っ張られる側だ。

 

「待ってくださいッ!もう少しだけ!後ちょっとだけ見せて下さいッ!!」

「だから、後でじっくり見せてあげますから。今は少しだけ素振りを……」

「後っていつ!?一時間!?一日!?そんな長い時を待っていられるとでも!?兎に角、もう一度だけその白を……」

「あ、なんか赤くなった」

「ハァアアアアアア!!??」

 

 鉄本中の暴走は止まらなかった。

 ただでさえ、今までの人生で一度も見た事がない色の刀に興奮していたのにも拘らず、それを超える爆弾発言が投下されたのだから。

 実際、鉄本中の視界には、確かに柄の部分から徐々に赤く変化する日輪刀が映っている。

 もはや誰にも止められない。

 

「教えてくださいッ!一体どうやってそうなったのですか!?」

「いや、僕に聞かれても……」

「必ず何かきっかけがある筈なのです!!どうかッどうかそれだけでもお教え下さいッ!!」

「……えっと」

 

 麗は悩む。

 実際、本当にきっかけが分からないのだ。むしろ刀が赤くなる事自体が、普通ではない事も今気づいたと言うのに。

 どうすればいい?

 どう説明すれば納得できる?

 この間、約一秒にも満たぬ刹那。

 ――花柳麗に、天啓。

 

「――分かりました。ではできる限り、先ほど起こった事を説明します」

「ッ、花柳殿!!」

「はい、さっき僕は……」

 

 嘘偽りなく、先ほどやった事、起こった事を説明する。

 それが、彼に対する誠意ある行動であると、麗は思ったからだ。

 そして――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こう、刀をぎゅっと握ると、ぐあっと赤くなったんです」

「…………」

「どうです?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブチ殺しますよ……?」

「えっ、何故……」




 鉄本中さん
刀鍛冶の里編で半天狗に追いかけられてた人。

主人公の将来的な身長はどれがいいか

  • 166cm
  • 172cm
  • 184cm
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