【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート   作:バブ辻オギャン

13 / 61
 まだまだ毎日投稿は継続。
 お気に入り登録と評価感謝します。


13.甘露の出会い

 『最終選別』が終わってから十六日後。

 友人のより少し遅れて、ようやく真菰の所にも、専属の刀鍛冶が一本の日輪刀を届けに来た。

 刀を受け取り、抜刀した時に変化した刀身の色は、やはり『水の呼吸』の適正色である事を示す青色で。

 

 それも、通常の青よりも鮮やかに透き通る青、天色(あまいろ)と呼ばれるものだった。

 

 『真菰らしい』やら『あなたに相応しい可憐な色』と、そう言った左近次と刀鍛冶に思わず照れてしまったのは内緒だ。

 青を基調とした、桜色の花柄が施された専用の鍔。

 正に文字通りの、この世でたった一人の為に作られた刀。

 鍔も刀身も、全てが真菰の為だけに作られた特別なものである事の実感が湧いてきて、心が躍ったのは今でも覚えている。

 

 だが、それは中間点でも何でもない。

 何なら、今の真菰は始点にすら足を踏み入れていないのだ。

 

 自分の刀を手にしたのなら、次にするべき事も決まっている。

 『東ヘ向カエ』と声を上げた鎹鴉に従って、真菰はすぐに外へ出る支度をした。

 丁度一日前、先に鬼殺隊の一員として駆け出した、あの友のように。

 

「行ってこい」

 

 そう言った左近次の――父の言葉に、真菰は当然笑顔で返す。

 

「――行ってきます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから一ヶ月。

 

 あっという間に時は流れて、真菰は階級が一段階上がり、『(みずのと)』から『(みずのえ)』になった。

 

 十段階ある内の、下から二番目。

 まだまだ新人のまま。『柱』とは比べるまでもない、力不足な子供なのは否めない。

 だが、どんな道にも通ずる事は、この一歩は決して軽んじてはいけない、大切な成長の一つであるという事。

 そして当然の話だが、階級が上がれば上がる程、隊士としての実力が認められ、それ相応の待遇が保証される。

 たった一段階。

 一番下の存在が、下から二番目の存在になっただけだとしても、それは変わらない。

 

「カァ!手紙ィ!手紙ィ!」

「……手紙?」

 

 その日は、ある任務の帰りだった。

 鬼を一体倒し、怪我人も犠牲者もいない平和な結末。

 近くにある、藤の花の家紋の家に泊まらせてもらおうと考えた時に、鎹鴉がある手紙を持ってきた。

 差出人は、自分より一日早く山を下りて、鬼を狩りに出かけた友達。

 ――花柳麗だった。

 

『もし都合が良ければ。明日の朝、甘味処に一緒に行こう』

 

 鎹鴉は基本、任務を知らせる以外の仕事をしない。

 だが、今の真菰のように階級が一段階上がれば、鎹鴉もそれ相応に、任務以外の要件を承るようになる。

 『自分に手紙が届く』という事は即ち、彼女も自分と同じように、階級を上げたという事。

 あの、壮麗な容姿に負けない綺麗な文字で綴られた一文を眺めながら、真菰は笑った。

 

「負けてられないね」

 

 久しぶりの休暇。

 それも、友との再会も含めたひと時。

 高鳴る胸を自覚しながら、真菰は帰還の歩を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 華やかな町だと、まず初見でそう思った。

 昔と比べて、煉瓦のような西洋の素材を混ぜて作られた建物は多く、夜でも明るく発展が進んだ浅草がいい例だろう。

 今では、山奥にあるような素朴な村ぐらいでしか、それを見ない場所はない。

 

 だが、この場所は違う。

 

 ここの町並みは、かつて過ぎ去った宿場町を彷彿とさせた。

 木造で統一された家屋が連なり、大路を成す。

 それは、言葉では表せない温かみが宿っている。ひと昔前、確かにこの国にあった『当たり前』の光景。

 中心部に近づくにつれて、必然的に人は多くなるものだ。

 ぽつぽつと、真菰は人とすれ違う頻度が多くなっていく。

 だが、その皆が共通して、中心部の『あるもの』を見ていた。

 真菰は一歩ずつ、そこへ近づくと同時に。

 頭の片隅に浮かべた『その可能性』を、歩の進み具合と比例して、確信に近づけていく。

 

「……」

 

 人垣を抜けて、そこで見たものは、やはりそうだった。

 一ヶ月の間に髪は伸び、元は肩に届くかどうかだったそれが、今では背中の中心辺りまで伸びている。

 しかし、その色は変わっておらず。

 根元からは藍鼠色。しかし毛先につれて、まるで炎のように鮮やかな赤に変化する神秘的な髪色。

 

 ――そして、その目。

 ――黒曜石のように美しい目を、麗は変わらず輝かせていた。

 

 真菰の予想は正しく。

 周りにいる誰もが、彼女を注目していた。

 珍しい髪色、何より容姿。

 必然的に向けられるのは、『好奇』の色を孕んだ視線。

 だが、彼女は狼狽える事も、それを意識しているような様子もなく。

 静かに、じっとこちらに目を向けていて。

 

「久しぶり、真菰」

 

 投げかける、その声色も変わらない。

 変わっているのは髪の長さと、着ている羽織の違いくらいだ。

 青一色の、簡素な羽織。

 しかし、黒い隊服の上から着ているそれは、毛先にかけてのみとはいえ、赤色の髪を持つ彼女によく似合っている。

 

「うん、久しぶり」

 

 たった一人だけ。

 真菰は純粋な視線と声色で、その言葉を返した。

 

「一ヶ月の間、怪我はしてない?」

「私はしてないよ。そっちこそ大丈夫だった?」

「僕が?まさか、僕の身体が特別なのは知ってるでしょ」

「うん、知ってる。それでもだよ」

 

 ――あぁ、変わらない。

 何も変わっていない。

 素朴で、だけど豊かな言葉を持った子。

 不思議な身体と、それに釣り合う圧倒的な強さ。

 それでも打ち消せない程の魅力、可憐に満ちた姿。

 真菰は聞く。

 

「ねぇ、今は何を食べてるの?」

「みたらし団子。一日に何個かしか作らない、特別なやつらしいよ」

 

 口の横にみたらしのタレを付けたまま、麗は言う。

 

「それで、待ち合わせの時間より早めに着いて、買ってきた」

「……もしかして、私の為に買ってきてくれたの?」

「うん、一緒がいいから。……こっちに座って食べよう」

「……ふふん。そこまで言うなら食べてあげます!」

 

 そう言うや否や、真菰は赤い布が敷かれた縁台に腰かける、当然麗の隣だ。

 そのまま流れるように、麗がこちらに差し出した団子を受け取り、頬張る。

 美味しい。

 美しい焦茶色のタレが団子によく絡んでいて、しかも団子自身も、タレに負けないふんわり、とろりとした触感。

 ここは今流行りの甘味処とは聞いていたが、成程。確かにこれは人気が出るのも頷ける。

 当然、麗はその間にも新たにもう一本団子を頬張り、口の横にタレを付着させていた。

 真菰は苦笑い。

 

「もう、また口元に付いてるよ?」

「後で舐めるからいい」

「こらっ、女の子がそういう事しちゃいけません!拭いてあげるからじっとしてて」

「んぐ……」

 

 懐から出した手拭で顔を拭いてあげると、麗はくすぐったそうに、顔を猫のように歪ませた。

 狭霧山にいた頃、左近次がかつて自分に『あの時の二人はまるで姉妹のようだった』と、そう洩らしたのを思い出す。

 どちらが姉で、どちらが妹かは当然決まっていて。

 まるで手のかかる妹ができたようだと、真菰自身もそう思っていた。

 

「私心配だなぁ、ちゃんとやれてる?麗」

「失礼な、ちゃんと朝寝て夜に起きてるよ」

「……私たち(鬼殺隊)としては正しいけどさぁ」

 

 真菰が言いたいのはそうじゃない。

 だが、麗は相変わらず『ぬぼーっ』とした表情のまま、黙々と団子を頬張り続けていた。

 もちもちの団子に負けず劣らずな、団子を頬張った事で膨れたもちもちの頬。

 剣士としての実力の高さと反比例して、こういった様子を見るとどうにも気が抜ける。

 

(大丈夫かなぁ……)

 

 別に威圧するなとは言わない。

 真菰自身、彼女のこの天然っぽい、可愛らしい姿を見るのは好きだし、そこが彼女の魅力でもあると理解はしている。

 だが、これが鬼と対峙する時も継続されているのなら、話は変わってくる。

 かつて一度だけ。左近次が真菰に告げた話、それは彼がどうして天狗の面を付けているのか……だった。

 その理由は彼の顔立ち。それが『優しすぎる』為に、鬼に馬鹿にされる事が多かったから、というものだ。

 鬼に舐められる。それを合理的な視点のみで見れば、悪い影響はない。

 むしろ相手の油断を誘い、こちらの勝負を有利に進められる事だってある。

 だがそれは、あくまでも『合理的に見た』際の話。

 

「あぁほら、また付いてるよ?」

「んん……」

 

 ――『これ』が見れなくなるのは嫌だなぁ。

 変に真面目な彼女の事だ。

 仮にその事を誰かが指摘するか、もしくは対峙した鬼から似たような事を何度も経験すれば、麗はそれを改善しようとするだろう。

 

 それは、何となく嫌だ。

 

 不思議な肉体。未だ底の見えない強さも、時が経つ度により強く、変化を続ける事は許容できる。

 彼女はまだ十三歳。そして、他ならぬ自分自身もそうだ、これから肉体は成長期に入り、できる事は一気に増えていく。

 だが、心やこういった仕草は肉体の成長とは違う。

 生まれつき持つ、彼女のこの輝きは、このまま尊いものであって欲しい。

 団子を一つ、二つ食べる度に、嬉しそうに頬を緩ませるこの顔は。

 鬼は当然、自分以外の誰かに変えて欲しくない。

 

「――えっ、売り切れ!?」

「すまんねぇ嬢ちゃん。今日の分はもうなくなっちまったんだ、さっき外の嬢ちゃんに出したのが最後でな……」

 

 と、その時。

 開けっ放しだった扉の奥、店内から少女の声が聞こえた。

 今日の分、と言う言葉からして、おそらくはこの団子の事だろう。

 およよよよよ……と、目に見えて落ち込む言葉を零しながら、少女は肩を下ろして店から出た。

 

「……あら」

 

 真菰は思わず目を見開く。

 正直、店から出てきた少女の容姿は、麗の容姿を見慣れた真菰であっても、かなり驚くものだったからだ。

 

 その少女の髪は、鮮やかな桃色だった。

 しかし、毛先にかけて緑色に変化していて、それはさながら桜餅のようであった。

 

 目当ての団子を手に入れられず、正に意気消沈といった様子で。

 少女はしくしくと悲しみながら、一瞬、こちらに視線を向け――。

 ――真菰と麗、両方との目があった。

 

「……あ」

 

 ぐぅぅぅ――っ。

 と、それはもう立派な腹の音を鳴らした。

 その少女との距離は二尺程度だが、仮にもっと距離が離れていたとしても、真菰はそれが聞こえただろうと確信できる程には、凄まじい腹の音だった。

 

「ぇあッ!?あ、あああのお構いなくッ」

 

 少女はかあっと顔を赤くし。

 もじもじとした様子で、ぐっと麗が手に持つ団子を見ないよう、首を斜めに反らしていた。

 数秒。

 

「…………」

 

 ちらり。

 

「ッ!駄目よ、駄目よ私!これ以上は駄目ッ、失礼だわ私……!」

「……」

 

 ちらりと。

 ちらり、と。言葉とは裏腹に、少女は数秒経ってから、また顔をこちらに向けた。

 再び羨ましそうに団子を見ては、ぐいっと首を一気に反らし、団子を見ないようにして、しかしまた数秒で元に戻る。

 真菰の気のせいでなければ、その数秒の感覚も、こちらを見る回数を重ねる度、だんだん短くなっていってるような気がする。

 

 何と言うか、邪気のない子という印象だった。

 

 確かに、その行動は世間一般から見れば失礼なものだろうが、この少女がすると、それ以上に凄まじい愛嬌を感じる。

 同性ながら、思わず目を奪われる天真爛漫さであった。

 

「うぅ……でも、でも…………」

「…………」

「しっかりするのよ私!これ以上は駄目、これ以上は……」

「ねぇ」

 

 と、その時。

 麗が新しい団子を一本、手に取って。

 

「もしよかったら、僕のこれ食べる?」

「――ッ!?」

「多分、僕がさっき買い過ぎちゃったからでしょ?」

「…………」

「まだまだたくさんあるし、一緒に食べよう?」

「ち、違うのよ……」

 

 少女はしゅん……と縮こまり。

 真菰と麗、その両方の姿を交互に見てから。

 

「違うわ、むしろ……私が買えなくて良かったかも。って今思ったの」

「……?何で?」

「私、食べるのが好きだから、たくさん買うつもりだったの。私がもう少し早く来てたら、きっと何十本も買ってたわ」

 

 もしも。

 そう付け加えてから、少女は言う。

 

「もしも、私が先に団子を全部買っちゃったら、あなた達は一緒に食べられなかったでしょう?」

「…………」

「凄く楽しそうに、あなた達が美味しそうに食べてるのを見て。……それで、考えちゃったの。もしも私が先に来ちゃってたら……って」

「……」

 

 ――あぁ、いい子だ。

 さっきまでの、邪気のない可愛らしい仕草とは裏腹に。

 この少女は相手の幸福を考え、そして自分を卑下してしまう程に、優しすぎる子なのだと分かった。

 自然と、真菰は麗に顔を向けた。

 

「ねぇ、麗」

「うん」

 

 そして、麗もやはり当然と言うべきか。

 真菰の言葉に即座に応え、音もなく立ち上がり、少女の前に立ち。

 

「ほら、一緒に食べよう」

「……えっ?」

 

 少女の手を優しく手に取り、軽く引っ張って縁台に案内する。

 えっ。と、少女は呆気にとられた様子のまま、真菰と麗に挟まれる形で座った。

 わたわたと慌てながら、少女は。

 

「あ、ああのっ!私、本当に……」

「お父さんが言ってたけど、食べ物って、その時いる人の数で意味が変わってくるんだって」

 

 麗は団子を一本、新たに手に取ると共に、それを少女に差し出した。

 

「一人で食べる時は、生きる為。目の前の食べ物を独り占めして、腹を満たす。そうやって、その日と明日を生きる為の力を蓄える」

「……」

「でも、二人以上で食べる時は違う。二人以上の時は、分け合うんだよ」

 

 麗は笑って。

 

「食べる事は幸せでしょ?分け合うと量は減るけど、分け合う事で『幸せ』は減らない、むしろ増えるんだって」

「……――」

「という訳で、幸せの分け合い」

「~~ッ、うん!」

 

 少女はその時、ようやくぱあっと本来の明るさを取り戻した。

 嬉しそうに団子を手に取り、そして仲良く、三人でそれを頬張る。

 

 麗しく、可憐な少女が三人。

 それも全員、花が咲いたような笑顔で。

 

 自然と今まで以上に、周りからの視線を集める事になったのだが。

 団子に夢中な三人は、この時に気づく事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、少女――甘露寺蜜璃の、かけがえのない思い出の一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 常人の八倍の筋肉密度、その特異体質の弊害か。

 相撲取り三人よりよく食べる、そんな巨大な胃袋を持つ彼女が、いつもより少ない量を食べても。

 ――初めて『物足りない』と感じなかった、誰かとの食事だった。




 作者はJTの鬼CMが大好きです。

主人公の将来的な身長はどれがいいか

  • 166cm
  • 172cm
  • 184cm
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。