【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート 作:バブ辻オギャン
感想で言われて改めて字面がヤバいと感じた。
一度『正解の形』を見れば、技の理解度は格段に変わる。
拙く未熟な技であっても、何回、何十回と見れば。おのずと『正解の形』に近づいてくる。
ほんの僅かな手首の角度の違い。
足の運びの違い。
その中から、自分が欲しいものを。
今持ってる自分の動きから、いらないものを捨てる事で、本当に欲しいものに近づいてくる。
そう、麗は言った。
「今、何とか三つできたんだ」
真菰は、麗が編み出した技をつぶさに見た。
一つも取り零す事なく、その瞳に焼き付けた。
花柳麗が生み出した『型』は、息を忘れる程のものだった。
あまりにも華麗で、そして力強い。長い歴史が紡いだ剣術の極致を思わせた。
たった三つ。
そう卑下するにはあまりにも、あまりにもその技は、『技』として完成していた。
横薙ぎの一閃。
豪速の突き。
それぞれ『
藤襲山の『最終選別』で
だがその足運び、刀の構えから。
それはかつて狭霧山にて、左近次が使った水の呼吸の型を踏襲してる事を、真菰は理解した。
彼女からすれば、それはまだ『極めた技』ではないのだろう。
まだ『使える』ようになっただけ、先の領域には程遠い。
しかし、それでも――。
「真菰のも見せて欲しい」
「……うん」
麗の、こちらを見る目は真っすぐだった。
純粋な好奇心、相手を敬う優しい目。
それに応え、先ほどの彼女と同じように、真菰もその場で型を披露した。
当然、左近次のものに比べれば、真菰のそれはまだまだ拙い未熟者の技。
だが麗は、先ほどの自分と同じように、その技をつぶさに見た。
一つも取り零すまいと、その瞳に焼き付けた。
壱ノ型、弐ノ型、そして参ノ型。
一つ一つの動きを、彼女は黒曜石のような瞳でじっと見つめ続けた。
「――ッ。拾、ノ型……!」
全集中の呼吸は文字通り、人を鬼のように強くする。
だがその反面、
水の呼吸の型は合計で十種類、それを全て、全力で披露した時にはもう、肺が疲労で半分以上萎縮しているような錯覚がした。
ぜぇぜぇと息を乱し。
膝を震わせながらも、真菰は何とか倒れる事はなかった。
「どう、だった……?」
「綺麗だったよ」
いつの間にか、頭の上に鎹鴉――江檀を乗せたまま、麗はぼんやりとした顔で言った。
「速くて、正確だった」
「そう、かな……」
「うん。疲労で息は乱れてたけど、血の流れも骨の向きも、変に崩れる事がなかったしね」
「……?」
稀に。
こうしてなんて事のないように紡がれる彼女の言葉に、真菰は言い様のない違和感を覚える時がある。
会話の流れに、一見すると不自然な所はない。
だからこそだろうか。自分でも理由が分からないその違和感に、むず痒さを抱きながら。
「ねぇ真菰。さっきの肆ノ型なんだけど」
「肆ノ型……あぁ『打ち潮』の事?それがどうしたの?」
「打ち込む前、肺が一度大きくなる時の動きと、腕の血管を収縮させる時間にズレがあったのは、二撃目の予備動作だったりする?」
「…………」
思わず、息を吞んだ。
「よく分からないけど……もしそれを同時にできたら、どうなるの?」
「分からない。僕は『水の呼吸』の常識を知らないから」
「良かったら、実践して見せて欲しいな。麗の考える、作った技と
「……」
ぬらりと立ち上がり、麗は真菰と位置を入れ替えるようにして、庭の中心に立つ。
真菰は縁側に腰かけて、麗の動きを見る事に集中した。
コォォォォォ――と、あの音がまた聞こえる。
いや、正確には
鞘から抜いた日輪刀は、あの時見たのと同じ、目が眩む程の純白。
そして、それが纏う炎もまた、金剛石を凌駕する純白の炎。
「星の呼吸 壱ノ型
最初に見せた『
だが、今見せた技『
しかし、二連撃。
自分の右半身と左半身を交互に囲うようなそれは、正に先ほど話題にあげた『打ち潮』特有の、斬撃同士を繋げる動きそのもの。
技は、技術とはその者への『適応』である。
他ならぬ、呼吸法がそれの証明でもあるのだから、即ち『型』も例外ではない。
たった一度見て、そして身につけたその力は、間違いなく立派な『型』そのもの。
派生とはいえ、新たに完成した技。
それを噛み締めるように、麗はゆったりとした動きで刀を鞘へ仕舞うと、頬を綻ばせた。
「どうだった?」
「綺麗。凄く」
それは、心からの本音だった。
「凄い、本当に凄いよ。麗」
「ありがとう。そう言ってくれて嬉しい」
足運び、刀の持ち方こそ違えど、その肉体の使い方は間違いなく『正解の形』そのもの。
彼女が自分の技を見て学んだと言うのなら、逆もまた然りだろう。
心からの賞賛と尊敬を胸に、真菰は『どうしてあのような芸当ができたのか』と問うた。
すると、麗は少しだけ得意げに。
「
この時、真菰は確信する。
今まで感じていた違和感の正体は
彼女が今までに見ていた、瞳に映る世界の差異。
生まれつきの痣と同じ、生まれつきの特別な視覚。
そして、それに即応できる身体能力、心肺機能を持っている。
あぁやはり、彼女は特別だったのだと、そう納得すると同時に。
今まで以上に――彼女の事を知りたいと思った。
藤の花の家紋の家。
その昔、鬼狩りに命を救われた一族であり、彼らは鬼狩りであれば無償で尽くす。
活動範囲が広く、過酷な環境に身を置く隊士にとって、彼らの存在はとても大きい。
鍛錬の終わり。わざわざ風呂まで沸かしてくれた家の者に感謝を伝え、汗を流した二人はその後、浴衣に着替え、夕食をとっていた。
何より、真菰は聞きたい事があった。
当然、それは麗の特別な視覚について。
その事を改めて話題に出すと、麗は懐かしむように、箸を止めて語る。
「昔から、人の身体が透き通って見えるんだ」
そのせいで、幼少期はそれなりに苦労したのだと言う。
その理由は当然、個人の判別がつかないからだ。
筋肉や骨は当たり前。更に歳を重ねると、内臓や神経までが透き通って見える。
人の顔、髪や鼻といった個人を形成する要素が除外され、皆が人型の同じ『何か』にしか思えない。
異常な体温と心拍数についても、かつて産婆を務めた女性がそれに気づき、腰を抜かして慌てた話もしてくれた。
真菰は思わず。
「大変だったでしょ?」
「最初だけね。ある程度調整ができるようになって、ちゃんと人の顔が分かるようになってからは……むしろ、嬉しかったな」
「……?嬉しい?」
「うん、人の役に立てたから」
人とは違う力。
それを生まれつき持っていたとしても、疎外感を感じる事はなかったのだと彼女は言う。
ある時は、本人ですら自覚できていない病を見抜き。
またある時は、村の老夫婦の肩を叩き、その腕前を褒められた事も。
その全てが、この透明な世界を見れる特別な視界のおかげなのだと、嬉しそうに麗は語る。
真菰は、それが――。
「優しいね、すっごく」
その言葉に、麗はかぶりを振った。
「そんな事ない。真菰に比べれば、僕はただ自分本位でしかない」
「…………」
静かに。
部屋に満ちる静寂を波立てない、小さな風が吹くような声だった。
「僕が鬼殺隊に入ったのは、ただ
「……好かれたかった?」
「お父さんは昔、僕に『飾らないお前が好きだ』って言ってくれたから。それからずっと、僕は自分の気持ちを偽らなかった。だけど」
虚空を見つめ、まるで諳んじるかのように。
「鬼殺隊と鬼の存在を知って、鬼殺隊に誘われて。だけどお父さんは『自分の意思で決めろ』って言ったから、考えた」
「……」
「考えて考えて、何日も何週間も考えて。……そうして何年も考えてる間に『自分があの時すぐに決めていたら』って、何度も頭に過ぎって。……その度に、『自分はまだ考えてる途中だから』って言い訳をして、なかった事にしたんだ。――そんなの、お父さんが好きだって言ってくれた『飾らない自分』じゃない」
「……――」
「僕は真菰みたいに優しくない。憎悪じゃなくて、純粋に誰かを思いやって、刀を振るう。……そんな事ができるような、良い人間じゃないんだよ」
「そんな事ないよ」
思わず、その言葉に力が籠る。
「そうやって悩める程、麗は誰かを思いやれるんでしょ?なら充分過ぎると思うな。そうやって自分を卑下しちゃ駄目」
「…………」
「麗のお父さんだって、自分に自信がある麗の方が好きだと思うな」
暫く、目を見開く麗。
だが数秒して、ふっと小さく笑ってから。
「……そっか」
その一言だけを零した。
「そこまで言ってくれるなら、ちゃんと自分に自信を持たないと失礼だね」
「これでも私、麗にかなり感謝してるんだよ?助けてくれたし」
「こっちこそ。さっきの言葉でかなり救われたよ、ありがとう」
「いえいえ」
それから、また黙々と食事に戻る。
提供された食事はどれも、高級宿のそれと遜色がない立派なものだった。
目の前に広がるご馳走を改めて見て、真菰は再び息を吞む。
まだ下から二番目の階級の隊士に出すのが『これ』か……――と、謎の緊張すら覚えてしまう。
ふと、その時。
「そういえば、麗」
「ん?」
口の横に米粒を引っ付けたまま、麗は反応した。
二人同時に箸を置いて、真菰は続けた。
「人の身体が透けて見えるって事は、当然私のも見えてる……って事だよね?」
「そうだけど、何か気になる事が?」
「今、
そう言って、真菰は自分の胸……肺を指さし、首を傾げた。
真菰が気になるのは、今の自分の肺の現状がどのようなものか……だった。
人体が透き通る特別な視界。
そんな彼女の目を借りれば、今の自分が無意識にしてしまっている『悪癖』や『無駄』を、ここで修正する事ができるのでは?と、そう思ったから。
「……」
じっと、麗の持つ真っ黒な瞳が真菰に向けられる。
その様子に、思わず真菰も無言になり、麗の両目の瞳孔を注視する。
麗はまず、真菰の顔を見る。
それからすっと視線を下に、鼻と口の間を見据えた次は、首の近くをじっと見る。
そして、胸を――。
「……」
「……」
じ――――っ、と。
そこから一言も発さず、麗は真菰の胸辺りに視線を集中させていた。
見ているのは多分、心臓か肺なのだろうが、それでも。
「…………む」
何だか妙に恥ずかしくなって、真菰は両腕で胸を隠すように組んだ。
が、それより早く。麗の伸ばした手が、真菰の腕をするりと掻い潜り。
「……ここ?」
「ひゃっ――」
そのまま流れるように、麗は浴衣の地衿に手を突っ込み、真菰の無防備な胃上部の付近、柔肌を直接突いた。
「ここ?いや違う……こうかな?」
「ひっ!?ち、ちょっと……!」
「うーん……ここを触れば……」
「んっ……ひっ――」
ふわり、つうっ……と、まるで羽毛を指で弄ぶような動き。
真菰は思わず大きな声を上げるが、麗は真顔のままだ。
彼女からすれば、至極真面目に体内の観察をしているだけなのだろうが、触られている真菰からすれば堪ったものではない。
そうして二度、三度と麗が真菰の肌を撫でまわしてから。
――重く突く。
「――ここ」
ズンッ――。と、今までの動きは、まるで児戯だったと告げるように。
何の前触れもなく。突然指を深く、肋骨の下から掬いあげるように突き上げ――。
「真菰から見て右。右肺の下葉、そこに必要以上に空気が行き届いてる」
あの日、狭霧山で見た可愛らしい気配と語彙ではなく。
冷たさすら覚える程に無機質な言葉と、それに比例する真っ黒な瞳。
「逆に、それ以外の場所に空気が行き届いてない。――あの時の、体力の無駄な消費は多分これだ。これを解決すれば、今の真菰なら水の呼吸の型を壱から拾まで、きっと三周はできる」
「――――」
「背筋を伸ばして。そう、ゆっくり」
言われた通りに背を伸ばす。
が、麗は追い打ちをかけるように、ぐっと更に一歩近づき、肺の付近を突いたまま。
「――違う。息を吸って背を伸ばすんじゃなくて、背を伸ばしてから息を吸うんだ。そうすればふいごみたいに、肺は大きくなる準備をしてくれる」
「――フ、ぅ……」
「頑張って。癖になってるせいで最初は苦しいけど、一度でも正しい息の吸い方をすれば、後は時間が解決してくれる」
喉に水が詰まったかのような圧迫感。
こうしている間も、麗は指を深く突いた姿勢のままで、このまま耐え忍んでも、この息苦しさは解決しない。
解決する方法はただ一つ、正しい呼吸を覚えるだけ。
無駄を省き、必要な感覚のみを掴み取り、
そうすれば自ずと、
「――フ、ゥゥゥ……」
重い、鉛を吐き出すかのように苦しい息を吐き終わり。
型を全て見せたあの時以上に、肺が悲鳴を上げるのを感じた。
「よし、これで大丈夫」
「ゥっ、ふっ……ふうっ……!」
だが、それ以上の爽快感があった。
今まで吸っていた空気は、実は澱んだものであったと言われても信じてしまう程に。
麗の指が離れて、真菰が次に吸った空気はそれだけ、今までのものとは違った。
麗は、そんな真菰の疲弊した肺を、柔肌越しに撫で続けながら。
時折、思い出したかのように残る手を使い、夕食の残りを頬張っていた。
「ふーっ……ふーっ……」
「よしよし」
と、その時。
「失礼します。鬼狩り様」
ぴしゃっ。と襖が開き、家の人間が入ってきて。
こぽこぽ……と、茶碗に新しくお茶を入れてから。
「新たにお茶をお入れしました、ごゆっくりどうぞ」
ぴしゃりと、何事もなかったかのように奥へ戻っていく。
客観的に見れば。
今の真菰は息を荒らげ、浴衣も乱れ。
しかも赤くなった肌を晒す色々危ない絵面である。
しかし悲しきかな、肝心の真菰にそれを直す余裕はなく。
麗の方も当然、そんな事をいちいち気にする訳もないし、する情緒が育っていなかった。
鎹鴉たちもこの事を察してか、いつの間にか部屋の外に出ている為、当然今の絵面に突っ込んでくれる者は誰もいない。
結果として。
「っ……!〜〜っ……!!」
「痛い。真菰、痛いよ」
後に正気に戻った真菰により、麗は数分間ポカポカと殴られ続けるのだった。
まだまだ毎日投稿は継続。
主人公の将来的な身長はどれがいいか
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166cm
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172cm
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184cm