【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート   作:バブ辻オギャン

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 CV高橋李依の僕っ娘にオギャってバブるCV田中秀幸の鴉。
 感想で言われて改めて字面がヤバいと感じた。


15.『透き通る世界』

 一度『正解の形』を見れば、技の理解度は格段に変わる。

 拙く未熟な技であっても、何回、何十回と見れば。おのずと『正解の形』に近づいてくる。

 

 ほんの僅かな手首の角度の違い。

 足の運びの違い。

 

 その中から、自分が欲しいものを。

 今持ってる自分の動きから、いらないものを捨てる事で、本当に欲しいものに近づいてくる。

 そう、麗は言った。

 

「今、何とか三つできたんだ」

 

 真菰は、麗が編み出した技をつぶさに見た。

 一つも取り零す事なく、その瞳に焼き付けた。

 

 花柳麗が生み出した『型』は、息を忘れる程のものだった。

 

 あまりにも華麗で、そして力強い。長い歴史が紡いだ剣術の極致を思わせた。

 たった三つ。

 そう卑下するにはあまりにも、あまりにもその技は、『技』として完成していた。

 

 横薙ぎの一閃。

 豪速の突き。

 

 それぞれ『輪舞(りんぶ)』、『雅星彩(みやびせいさい)』と名付けたその技たちは、真菰にとって初見のもの。

 藤襲山の『最終選別』で見せた技(星雨光芒)とは違う、この一ヶ月の間に生まれたであろう技。

 だがその足運び、刀の構えから。

 それはかつて狭霧山にて、左近次が使った水の呼吸の型を踏襲してる事を、真菰は理解した。

 

 彼女からすれば、それはまだ『極めた技』ではないのだろう。

 

 まだ『使える』ようになっただけ、先の領域には程遠い。

 しかし、それでも――。

 

「真菰のも見せて欲しい」

「……うん」

 

 麗の、こちらを見る目は真っすぐだった。

 純粋な好奇心、相手を敬う優しい目。

 それに応え、先ほどの彼女と同じように、真菰もその場で型を披露した。

 当然、左近次のものに比べれば、真菰のそれはまだまだ拙い未熟者の技。

 

 だが麗は、先ほどの自分と同じように、その技をつぶさに見た。

 一つも取り零すまいと、その瞳に焼き付けた。

 

 壱ノ型、弐ノ型、そして参ノ型。

 一つ一つの動きを、彼女は黒曜石のような瞳でじっと見つめ続けた。

 

「――ッ。拾、ノ型……!」

 

 全集中の呼吸は文字通り、人を鬼のように強くする。

 だがその反面、()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()

 水の呼吸の型は合計で十種類、それを全て、全力で披露した時にはもう、肺が疲労で半分以上萎縮しているような錯覚がした。

 ぜぇぜぇと息を乱し。

 膝を震わせながらも、真菰は何とか倒れる事はなかった。

 

「どう、だった……?」

「綺麗だったよ」

 

 いつの間にか、頭の上に鎹鴉――江檀を乗せたまま、麗はぼんやりとした顔で言った。

 

「速くて、正確だった」

「そう、かな……」

「うん。疲労で息は乱れてたけど、血の流れも骨の向きも、変に崩れる事がなかったしね」

「……?」

 

 稀に。

 こうしてなんて事のないように紡がれる彼女の言葉に、真菰は言い様のない違和感を覚える時がある。

 会話の流れに、一見すると不自然な所はない。

 だからこそだろうか。自分でも理由が分からないその違和感に、むず痒さを抱きながら。

 

「ねぇ真菰。さっきの肆ノ型なんだけど」

「肆ノ型……あぁ『打ち潮』の事?それがどうしたの?」

「打ち込む前、肺が一度大きくなる時の動きと、腕の血管を収縮させる時間にズレがあったのは、二撃目の予備動作だったりする?」

「…………」

 

 思わず、息を吞んだ。

 

「よく分からないけど……もしそれを同時にできたら、どうなるの?」

「分からない。僕は『水の呼吸』の常識を知らないから」

「良かったら、実践して見せて欲しいな。麗の考える、作った技と()()()()()

「……」

 

 ぬらりと立ち上がり、麗は真菰と位置を入れ替えるようにして、庭の中心に立つ。

 真菰は縁側に腰かけて、麗の動きを見る事に集中した。

 コォォォォォ――と、あの音がまた聞こえる。

 いや、正確には()()()()()()()()その音が、より大きく、より轟くように重く、鋭いものに変化した。

 鞘から抜いた日輪刀は、あの時見たのと同じ、目が眩む程の純白。

 そして、それが纏う炎もまた、金剛石を凌駕する純白の炎。

 

「星の呼吸 壱ノ型 輪舞(りんぶ)双星(そうせい)

 

 最初に見せた『輪舞(りんぶ)』は、刀を両手で持ち、自分を囲う円を描くような斬撃を放つ技だった。

 だが、今見せた技『輪舞(りんぶ)双星(そうせい)』が描くのは半円。

 しかし、二連撃。

 自分の右半身と左半身を交互に囲うようなそれは、正に先ほど話題にあげた『打ち潮』特有の、斬撃同士を繋げる動きそのもの。

 

 技は、技術とはその者への『適応』である。

 他ならぬ、呼吸法がそれの証明でもあるのだから、即ち『型』も例外ではない。

 

 たった一度見て、そして身につけたその力は、間違いなく立派な『型』そのもの。

 派生とはいえ、新たに完成した技。

 それを噛み締めるように、麗はゆったりとした動きで刀を鞘へ仕舞うと、頬を綻ばせた。

 

「どうだった?」

「綺麗。凄く」

 

 それは、心からの本音だった。

 

「凄い、本当に凄いよ。麗」

「ありがとう。そう言ってくれて嬉しい」

 

 足運び、刀の持ち方こそ違えど、その肉体の使い方は間違いなく『正解の形』そのもの。

 彼女が自分の技を見て学んだと言うのなら、逆もまた然りだろう。

 心からの賞賛と尊敬を胸に、真菰は『どうしてあのような芸当ができたのか』と問うた。

 すると、麗は少しだけ得意げに。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 この時、真菰は確信する。

 今まで感じていた違和感の正体は()()だったのだと。

 彼女が今までに見ていた、瞳に映る世界の差異。

 

 生まれつきの痣と同じ、生まれつきの特別な視覚。

 

 そして、それに即応できる身体能力、心肺機能を持っている。

 あぁやはり、彼女は特別だったのだと、そう納得すると同時に。

 今まで以上に――彼女の事を知りたいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 藤の花の家紋の家。

 その昔、鬼狩りに命を救われた一族であり、彼らは鬼狩りであれば無償で尽くす。

 活動範囲が広く、過酷な環境に身を置く隊士にとって、彼らの存在はとても大きい。

 鍛錬の終わり。わざわざ風呂まで沸かしてくれた家の者に感謝を伝え、汗を流した二人はその後、浴衣に着替え、夕食をとっていた。

 何より、真菰は聞きたい事があった。

 

 当然、それは麗の特別な視覚について。

 

 その事を改めて話題に出すと、麗は懐かしむように、箸を止めて語る。

 

「昔から、人の身体が透き通って見えるんだ」

 

 そのせいで、幼少期はそれなりに苦労したのだと言う。

 その理由は当然、個人の判別がつかないからだ。

 筋肉や骨は当たり前。更に歳を重ねると、内臓や神経までが透き通って見える。

 人の顔、髪や鼻といった個人を形成する要素が除外され、皆が人型の同じ『何か』にしか思えない。

 異常な体温と心拍数についても、かつて産婆を務めた女性がそれに気づき、腰を抜かして慌てた話もしてくれた。

 真菰は思わず。

 

「大変だったでしょ?」

「最初だけね。ある程度調整ができるようになって、ちゃんと人の顔が分かるようになってからは……むしろ、嬉しかったな」

「……?嬉しい?」

「うん、人の役に立てたから」

 

 人とは違う力。

 それを生まれつき持っていたとしても、疎外感を感じる事はなかったのだと彼女は言う。

 ある時は、本人ですら自覚できていない病を見抜き。

 またある時は、村の老夫婦の肩を叩き、その腕前を褒められた事も。

 その全てが、この透明な世界を見れる特別な視界のおかげなのだと、嬉しそうに麗は語る。

 真菰は、それが――。

 

「優しいね、すっごく」

 

 その言葉に、麗はかぶりを振った。

 

「そんな事ない。真菰に比べれば、僕はただ自分本位でしかない」

「…………」

 

 静かに。

 部屋に満ちる静寂を波立てない、小さな風が吹くような声だった。

 

「僕が鬼殺隊に入ったのは、ただ()()()()()()()からだ」

「……好かれたかった?」

「お父さんは昔、僕に『飾らないお前が好きだ』って言ってくれたから。それからずっと、僕は自分の気持ちを偽らなかった。だけど」

 

 虚空を見つめ、まるで諳んじるかのように。

 

「鬼殺隊と鬼の存在を知って、鬼殺隊に誘われて。だけどお父さんは『自分の意思で決めろ』って言ったから、考えた」

「……」

「考えて考えて、何日も何週間も考えて。……そうして何年も考えてる間に『自分があの時すぐに決めていたら』って、何度も頭に過ぎって。……その度に、『自分はまだ考えてる途中だから』って言い訳をして、なかった事にしたんだ。――そんなの、お父さんが好きだって言ってくれた『飾らない自分』じゃない」

「……――」

「僕は真菰みたいに優しくない。憎悪じゃなくて、純粋に誰かを思いやって、刀を振るう。……そんな事ができるような、良い人間じゃないんだよ」

「そんな事ないよ」

 

 思わず、その言葉に力が籠る。

 

「そうやって悩める程、麗は誰かを思いやれるんでしょ?なら充分過ぎると思うな。そうやって自分を卑下しちゃ駄目」

「…………」

「麗のお父さんだって、自分に自信がある麗の方が好きだと思うな」

 

 暫く、目を見開く麗。

 だが数秒して、ふっと小さく笑ってから。

 

「……そっか」

 

 その一言だけを零した。

 

「そこまで言ってくれるなら、ちゃんと自分に自信を持たないと失礼だね」

「これでも私、麗にかなり感謝してるんだよ?助けてくれたし」

「こっちこそ。さっきの言葉でかなり救われたよ、ありがとう」

「いえいえ」

 

 それから、また黙々と食事に戻る。

 提供された食事はどれも、高級宿のそれと遜色がない立派なものだった。

 目の前に広がるご馳走を改めて見て、真菰は再び息を吞む。

 まだ下から二番目の階級の隊士に出すのが『これ』か……――と、謎の緊張すら覚えてしまう。

 ふと、その時。

 

「そういえば、麗」

「ん?」

 

 口の横に米粒を引っ付けたまま、麗は反応した。

 二人同時に箸を置いて、真菰は続けた。

 

「人の身体が透けて見えるって事は、当然私のも見えてる……って事だよね?」

「そうだけど、何か気になる事が?」

「今、()()()()()?」

 

 そう言って、真菰は自分の胸……肺を指さし、首を傾げた。

 真菰が気になるのは、今の自分の肺の現状がどのようなものか……だった。

 人体が透き通る特別な視界。

 そんな彼女の目を借りれば、今の自分が無意識にしてしまっている『悪癖』や『無駄』を、ここで修正する事ができるのでは?と、そう思ったから。

 

「……」

 

 じっと、麗の持つ真っ黒な瞳が真菰に向けられる。

 その様子に、思わず真菰も無言になり、麗の両目の瞳孔を注視する。

 麗はまず、真菰の顔を見る。

 それからすっと視線を下に、鼻と口の間を見据えた次は、首の近くをじっと見る。

 そして、胸を――。

 

「……」

「……」

 

 じ――――っ、と。

 そこから一言も発さず、麗は真菰の胸辺りに視線を集中させていた。

 見ているのは多分、心臓か肺なのだろうが、それでも。

 

「…………む」

 

 何だか妙に恥ずかしくなって、真菰は両腕で胸を隠すように組んだ。

 が、それより早く。麗の伸ばした手が、真菰の腕をするりと掻い潜り。

 

「……ここ?」

「ひゃっ――」

 

 そのまま流れるように、麗は浴衣の地衿に手を突っ込み、真菰の無防備な胃上部の付近、柔肌を直接突いた。

 

「ここ?いや違う……こうかな?」

「ひっ!?ち、ちょっと……!」

「うーん……ここを触れば……」

「んっ……ひっ――」

 

 ふわり、つうっ……と、まるで羽毛を指で弄ぶような動き。

 真菰は思わず大きな声を上げるが、麗は真顔のままだ。

 彼女からすれば、至極真面目に体内の観察をしているだけなのだろうが、触られている真菰からすれば堪ったものではない。

 そうして二度、三度と麗が真菰の肌を撫でまわしてから。

 ――重く突く。

 

「――ここ」

 

 ズンッ――。と、今までの動きは、まるで児戯だったと告げるように。

 何の前触れもなく。突然指を深く、肋骨の下から掬いあげるように突き上げ――。

 

「真菰から見て右。右肺の下葉、そこに必要以上に空気が行き届いてる」

 

 あの日、狭霧山で見た可愛らしい気配と語彙ではなく。

 冷たさすら覚える程に無機質な言葉と、それに比例する真っ黒な瞳。

 

「逆に、それ以外の場所に空気が行き届いてない。――あの時の、体力の無駄な消費は多分これだ。これを解決すれば、今の真菰なら水の呼吸の型を壱から拾まで、きっと三周はできる」

「――――」

「背筋を伸ばして。そう、ゆっくり」

 

 言われた通りに背を伸ばす。

 が、麗は追い打ちをかけるように、ぐっと更に一歩近づき、肺の付近を突いたまま。

 

「――違う。息を吸って背を伸ばすんじゃなくて、背を伸ばしてから息を吸うんだ。そうすればふいごみたいに、肺は大きくなる準備をしてくれる」

「――フ、ぅ……」

「頑張って。癖になってるせいで最初は苦しいけど、一度でも正しい息の吸い方をすれば、後は時間が解決してくれる」

 

 喉に水が詰まったかのような圧迫感。

 こうしている間も、麗は指を深く突いた姿勢のままで、このまま耐え忍んでも、この息苦しさは解決しない。

 解決する方法はただ一つ、正しい呼吸を覚えるだけ。

 無駄を省き、必要な感覚のみを掴み取り、()()()()()()()()()()()

 そうすれば自ずと、()()()に辿り着ける――。

 

「――フ、ゥゥゥ……」

 

 重い、鉛を吐き出すかのように苦しい息を吐き終わり。

 型を全て見せたあの時以上に、肺が悲鳴を上げるのを感じた。

 

「よし、これで大丈夫」

「ゥっ、ふっ……ふうっ……!」

 

 だが、それ以上の爽快感があった。

 今まで吸っていた空気は、実は澱んだものであったと言われても信じてしまう程に。

 麗の指が離れて、真菰が次に吸った空気はそれだけ、今までのものとは違った。

 麗は、そんな真菰の疲弊した肺を、柔肌越しに撫で続けながら。

 時折、思い出したかのように残る手を使い、夕食の残りを頬張っていた。

 

「ふーっ……ふーっ……」

「よしよし」

 

 と、その時。

 

「失礼します。鬼狩り様」

 

 ぴしゃっ。と襖が開き、家の人間が入ってきて。

 こぽこぽ……と、茶碗に新しくお茶を入れてから。

 

「新たにお茶をお入れしました、ごゆっくりどうぞ」

 

 ぴしゃりと、何事もなかったかのように奥へ戻っていく。

 

 客観的に見れば。

 

 今の真菰は息を荒らげ、浴衣も乱れ。

 しかも赤くなった肌を晒す色々危ない絵面である。

 

 しかし悲しきかな、肝心の真菰にそれを直す余裕はなく。

 麗の方も当然、そんな事をいちいち気にする訳もないし、する情緒が育っていなかった。

 鎹鴉たちもこの事を察してか、いつの間にか部屋の外に出ている為、当然今の絵面に突っ込んでくれる者は誰もいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果として。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ……!〜〜っ……!!」

「痛い。真菰、痛いよ」

 

 後に正気に戻った真菰により、麗は数分間ポカポカと殴られ続けるのだった。




 まだまだ毎日投稿は継続。

主人公の将来的な身長はどれがいいか

  • 166cm
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