【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート 作:バブ辻オギャン
つまり必須タグのあれはそういうことです、はい。
その赤子が産まれたのは小さな村だ。
防柵の類が少なく、来るもの拒まずの小さな村。
焼杉に見られる独特の黒い赤褐色、それがいくつもの家屋を築き、人間が住んでいる温かみを印象作る。
人の手、人の存在で自然から切り離されてはいるものの、また一方で、自然と共に歩んでいく。
そんな、いつしかの町並みは長閑で、麗らかで。
彼女はそこに生きていた。
「……」
日没は遠く、燦燦たる白光が肌を撫でる。
村の住民は二十数名、血のつながりこそないものの、皆が皆を家族と思い、慕う温かい居場所。
そこは、家族と静かに過ごせる場所。
あるのは小さな家だけで、布団を敷き詰めれば床に余りはない。
だけど、静かに眠れる場所。
手を伸ばせばすぐに繋げる、届く距離。
そんな温かい場所で、赤子は少女に成長していた。
「……………」
肩の辺りまで伸びた藍鼠色の髪、その先端はまるで、燃えるような赤みがかかっている。
そんな少女は、静かに、前方に広がる青い海を眺めていた。
理由は一つ、少女はそれが好きだったからだ。
肌を優しく包むような日差しを自覚しながら、波の動きを一つ一つ目で追い、時間を忘れる。
村の人間も、最初はあまり喋らない少女に対し、どう距離を取ろうかと悩んでいた。
しかし、今はもうそんな人間はいない。
少女の身体に生まれつきあった痣、それを不気味であると――そう口にする者も、誰一人としていない。
「あらぁ、花柳さんの所の……」
程よい大きさの切り株に腰かけ、ぼーっと海を見つめる少女。
昼食の時間が終わり、大人たちが晩飯の準備に取り掛かるまでの数時間、ずっと切り株から動かない光景。
本来なら、それは『普通』ではないのだろう。
しかし、そんな『普通』ではない少女に対して、大人たちが向ける視線には慈しみが込められていた。
「おはようさん、今日も見てるのかい?」
「…………」
少女はこくりと、小さく頭を動かして反応する。
少女は『普通』ではなく、
だがこの村では、それを誰一人として疎ましく思う者はいない。
大人たちは、各々がするべき事をしながらも、切り株の上でじっとする少女の事を、まるで我が子を気に掛けているかのようだった。
「…………」
少女は再び、視線を海に戻した。
その後。
「おーい!
どんっ、と背中に衝撃を与えながら、数名の子供が少女に体当たりし、無邪気に抱き着く。
少女の歳は既に七つではあるが、今、体当たりした子供たちの歳は五つ程。
僅か二年、されど二年離れたが故の身体能力の差。
少女はまるで、大地に深く根を張る巨木の如き安定感で受け止めた。
「ねぇねぇ、今日も一緒に遊んで!」
「ねぇ、もう一度竹とんぼ飛ばして!新しいの持ってきたの!」
子供たちは、一人も余す事なく笑っていた。
右胸から広がる、炎のようにうねる痣だ。
普段は服に隠れて見る機会がなく、それを知る機会も、知っている人間も限られている。
だが、出産に立ち会った産婆から波紋のように噂話は広がり、今ではもう、村でそれを知らない者はいない。
少女は孤独ではない。
人の声を聞くのが、誰かが楽しそうに笑う姿を見るのも好きだ。
「うん、分かったよ」
少女はくすりと笑って、子供の手から竹とんぼを取り、立ち上がる。
「一緒に遊ぼう。次は何をする?何で遊ぶ?」
「かくれんぼ!今度こそ見つからないからね!」
「双六やろ!私あれ大好き!」
「お、俺は!あれを――」
村も、そこに住む人間も決して裕福ではない。
好きなものを好きなだけ食べられる、そんな幸福は限られた機会で、大人たちはその日その日を懸命に生きている。
子供たちも、そんな大人たちの手伝いをするし、こうして時間を気にせず遊ぶ事も、限られた時間の一つだ。
村一同、皆が家族。
『普通』ではない少女を受け入れ、等しく愛を注ぐ者たち。
今日も、村では子供たちの笑い声が絶えなかった。
男の名は、花柳廉太郎と言った。
元は浅草生まれ、浅草育ちの都会に生きる男である。
そんな男が、今では人の気配が限られる小さな村で、男手一つで子供を育てるようになったのは何故か。
単純な話、一目惚れという名の弱みである。
昔、廉太郎には妻がいた。優しく、しかしどこか抜けている、そんな妻が。
子供との戯れでやる
だからこそ、廉太郎は彼女と共に、自然に生きる事にした。
手を握るだけで満たされた。
髪を撫でると、まるで鈴が転がるような笑みを浮かべる人。
ある夜、一緒に星を見ようと言って、
絶対に守る。
二度と失わない、失ってたまるか。
廉太郎は唯一残された、妻との愛の結晶である赤子を抱き。
その、曇りのない眼を見て、覚悟を決めたのだ。
子供の名前は麗。花柳麗にした。
赤子であった麗はまたたくまに少女に育ち、より一層妻に似たと廉太郎は思う。
目の色以外、顔つきや髪色が瓜二つで、時折我が子の背後に、いつしかの妻の幻覚を見る事もある。
だがそれでも最後は、『やっぱり俺の子供だ』と、そう納得してしまう。
我が子の目は、まるで黒曜石のように深い黒。しかし、そこに小さくある陽光のような輝きは、しっかりと母親譲りだ。
だが、同時に。
この子は『特別』だと、そう強く確信もした。
廉太郎にとっての妻は、野原に咲く一輪の花を思わせた。
決して強くはない、しかし挫けぬ、無視できぬ存在感を纏った可憐な花。
しかし、この子はどうだろう。
年月が過ぎて、すくすくと育つ我が子を見て思った事は、存在感の違いだ。
子供だ、確かに見た目は普通の子供だ。
生まれつきの不思議な痣があろうとも、それは変わらない。しかしまるで巨木の如き圧迫感を兼ね備えている。
何より、時折妙な言葉を口にするのだ。
それは、今も変わっていない。
「お父さん、腕が痛いの?」
今日、確かに廉太郎は村の漁師を手伝っていたから、腕に疲労が溜まっていた。
しかし、それに気づかれるような仕草をした覚えはない。
何故気づいた、どうしていきなり。――そんな疑問は湧かず、廉太郎はむしろ喜びの感情を抱いた。
普段あまり喋らない我が子が、久しぶりに口を開いて問う。
しかもそれは、自分を心配してくれたもの。
我が子の頭をわしわしと撫でながら、廉太郎は問い返した。
「んや、気にしなくていい。ありがとな」
「……んっ」
子供にしては妙に安定感のある身体だが、廉太郎は気にしなかった。
我が子は可愛い、それでいい。
上機嫌のまま、廉太郎は続けて。
「にしても良く分かったなぁ、俺そんな辛そうにしてたか?」
「いや。……顔の筋肉がいつもとは違う動きしてて、それで何となく」
「へー」
わしわしと、頭を継続して撫でながら。
「凄いなぁ。麗はもう、その歳で人の心が分かるのか」
「いや、ただ見ただけだから。右腕の筋肉の収縮とか、それの速度とかが普段とは違うのも……」
「へぇ~」
廉太郎に難しい事は分からない。
その後も、我が子は色々な事を話してくれたが、正直どれも分からない。
やれ骨の向きがどうとか、内臓の位置がどうのこうのとか、色々な話を。
そもそも、どうして筋肉の動きが見えるのだとか、外から見ただけで何故、骨の向き云々の話に繋がるのかは知らない。
廉太郎は深く考えるのをやめた。
「へ~凄いなァ」
廉太郎は我が子に甘かった。
それはもうべらぼうに甘かった。
我が子が『見えた』と言ったのだから、実際にちゃんと『見えた』だけ、それ以外何の答えがあるのだろう。
村の人間も気にしていない、彼女が『透けて見える』と言ったのだから、本当に透けて見えるんだろう。
『そうかい、凄いねぇ』、これだけだ。
ここでは誰も、『普通』ではない事を気にしない。
「じゃ、今日も本を読んでやるよ。何がいい?」
「……『こころ』がいい」
「よし分かった、少し待ってろ」
今日も今日とて、父は娘にべらぼうに甘かった。
・大正コソコソ噂話
麗の飛ばす竹とんぼは凄い。
目撃証言によると「あれ多分山まで行ったんじゃないか?」との事、村では良い笑い話だそうだ。
主人公の将来的な身長はどれがいいか
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166cm
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172cm
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184cm