【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート   作:バブ辻オギャン

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 前編・後編の内容は鬼滅の刃小説版『風の道しるべ』の重大なネタバレ要素を含んでいる為、ご注意ください。
 今日はいつもよりちょっと遅めの投稿、ごめんね。


21.VS姑獲鳥・前編

 あれから大分時が過ぎた。

 初めての出会い、貸し上げた道場での出会い。

 それらは片手で数えられる程でしかないものの、その出会いと出会いの間には、数十年分の濃密な『蓄』があった。

 鬼殺隊の『き』の字も知らない頃、刀を握って本格的に鬼狩りを開始した、まだまだ新人の『(みずのと)』だった頃。

 それから数え切れない数の鬼を殺し、仲間を失って。

 傷ついては強くなり、残ったものは何なのか。

 時折、それを想起する余裕がある程には、自分は本当の意味で『強く』なれたと思う。

 

 不死川実弥の階級は現在、十段階ある中の最高地位である『(きのえ)』。

 現在、鬼殺隊を支える『柱』が数名欠員したままな事を踏まえれば。

 後は功績という名の後押し次第で、実弥はいつでも『風柱』として迎え入れられるだろう。

 

 しかし、それは実弥一人に限った話ではない。

 

「薄気味悪ィ家だぜェ」

「全くだ」

 

 眉根を寄せた実弥の言葉に、隣に立つ『兄弟子』は同意した。

 

「あーあ、久々にお前と稽古したかったんだがなあ」

「さっきも言ったろ、この任務が終わってからやればいいじゃねぇか」

「つい言葉に出したくなるんだよ」

 

 粂野匡近。

 彼の階級もまた、実弥と同じ『(きのえ)』であり。

 更に扱う呼吸も実弥と同じく、『風の呼吸』である事。

 これらの要素から、次期『風柱』の候補が実弥一人に限った話でない事の証明でもあった。

 

 鬼殺隊は一枚岩ではなく、頂点に『お館様』なる存在こそあれ、彼自体に戦闘能力は一切ない。

 何度も鬼との戦いで壊滅に追いやられ、それでも尚復活を続けてきた鬼殺隊。

 それを支えているのは、選ばれし九人の『柱』なのだ。

 

 その重い責任を背負う立場になる条件。

 粂野匡近という男もまた、それに近い男であった。

 

「それに、お前も俺も()()で丁度だろ?」

「ハッ、それはお前だけだろォ?俺はもうとっくに六〇は殺ってるぜェ」

「なら、ここが正念場って感じだな」

 

 柱に最も近いと言っても過言ではない『(きのえ)』が複数、しかも共同任務と来たものだ。

 上の判断は、今回の標的である鬼がそれ程の強さを持っているであろう事。

 生半可な強さではない鬼が、それこそ下手をすれば、『十二鬼月』がこれから待ち受ける可能性すらある。

 

 常に死と隣り合わせな毎日なのだ。

 油断や慢心など、母を殺めたあの日から一度もした事はない。

 

 一層気を引き締め、より黒く濁った憎悪を固める実弥。

 しかし一方で、匡近は最初の出会いから何も変わっていない、屈託のない笑顔を浮かべていた。

 

「この分じゃ、先に『風柱』になるのは俺だなァ?()()

「あっ、また言ったな!絶対先に俺がなってやる。そしてお前に牛鍋を奢らせてやる……!」

「じゃあ、まずは俺に稽古で勝ち越せるようにならないとなァ」

 

 実弥がこのお節介な兄弟子を、『粂野』ではなく『匡近』と呼ぶようになってから。

 今まで、彼がしつこい程に見せた笑顔は気のせいでなければ、呼び方を変えた途端にそれを見せる頻度が高くなったような気もする。

 以前はとことんイライラし、()()()()()()と、この男から遠く距離を置こうとしたというのに。

 

 いつの間にか、彼とこうして話しても、以前は感じていた苛立ちが綺麗さっぱりなくなっていた事。

 口には決して出さないが、彼もまた大切な『友』の一人である事。

 

 他の誰にも話した事のない過去、母を殺めた昔の出来事を、知り合いの中で最初に話した存在である事は。

 それらは決して口には出さず、彼にも伝えずに内心にしまい込んでいた。

 

「ぐぐぐ……カブト虫相撲なら俺の方が……」

「ハッ、それもついこの前負けたばっかじゃねぇかよォ。なぁ兄弟子サマ」

「お前~っ!ホント、本当に可愛くないぞ最近!もっと兄弟子を立てろって!」

「ハイハイ」

 

 面倒臭くなって、適当に返事をする。

 当然、匡近は面白いくらいに頬を膨らませた。

 実弥は鼻で笑い。

 

「確かになぁ、お前の方が功績も上だし、強いし。それでも俺は兄弟子として……」

「ハイハイ」

「確かにお前の方が女の子にモテるし、背も高いけどな?昔は俺より低かった癖に、今じゃお前の方が背が高いけどな?確かにそうだけどな……?」

「……まさか、俺に背丈で負けた事根に持ってんのかァ?」

 

 思っていたより、この兄弟子の器量はみみっちいのかもしれない。

 そんな事を考えながら、隣でああだこうだと言い続ける匡近を見ていると。

 

「――仲いいなぁ」

 

 くすくすと、鈴を転がすような声で。

 もう一人、実弥の背後に立っていた少女は、匡近に負けない笑顔を顔に浮かべていた。

 

「まぁ、兄弟弟子だからなあ。最近は昔みたいな可愛げがなくなったけど!」

「えー、そうなの?昔はどんな感じ?」

「うーん。そうだなあ、俺らがまだ『(つちのえ)』だった頃に、一緒に甘味処に行ったんだがその時……」

「オイ匡近ァ」

 

 任務へ向かう途中だというのに、まるで緊張感も何もない有り様だ。

 しかしながら、久しぶりに会えた『友』と『知人』の存在は、実弥に口調とは裏腹の、穏やかな顔を浮かべさせるには充分だった。

 

「余計な事言ったら、分かるよなァ?」

「おいおい、俺は兄弟子だぞ?弟弟子の可愛い所を喋って何が悪いんだ?」

「よぉしそこに座れェ、腕慣らしに一発いいのをくれてやるよォ」

「あはは、やっぱり仲いいね」

 

 少女はまた、実弥と匡近のやり取りを見て笑う。

 『仲がいい』。少女のその言葉を否定し、実弥は彼との関係を拒否する事ができない。

 今の実弥は、かつて持っていた筈の拒否の姿勢、自身の鋭利さを忘れてしまった。

 この温かい会話を非情に終わらせる術を、既に綺麗さっぱり忘れてしまった。

 

「……チッ」

「ほら、いい奴だろ?見た目で勘違いされがちだけどな」

「うんうん。分かるなぁ、その感じ」

「……」

 

 少女の気配は、匡近が持ってるものに近いと思う。

 それは、昔の実弥にとってはある意味で忌むべきもの。

 自分という、血に塗れた男が近づく事によって、汚してはいけないとさえ思う、陽だまりのような人間性。

 

 優しい笑顔。

 

 もうとっくに過去のものになってしまった『普通』の人生。

 それを想起する笑顔を持ち続けられる事が、どれだけ難しいか実弥は知っている。

 

 昔、一度だけ泣いているような笑顔を浮かべた匡近。

 いや、それは彼だけじゃない。例え時に馬鹿な話題で盛り上がり、笑みを浮かべる同じ鬼殺隊の隊士でも。

 彼らが刀を腰に携え、悪鬼滅殺の下に息をしているだけで、心に負った傷がどれだけ疼いている事か。

 

 かつて、実弥が匡近の笑顔に救われたように。

 実弥もまた、匡近が心に負ったものを知り、彼を救いたいと思う。

 勿論、彼が実弥と同じように、心に傷を負ったという()()()()()()。もしも、それがあるのなら――。

 この事も当然、まだ彼の前では、決して口にはしないつもりではあるのだが。

 

「そういえば、真菰が前に言ってた『友達』はどうだ?……元気か?」

「うん。勿論元気だよ、むしろ元気じゃない日がないくらいにはね」

「そっかあ、それなら良かった」

 

 少女、真菰は実弥にとって、『匡近が増えた』といった印象が強い人間だった。

 こちらの気を削ぐ柔らかい気配や声、そして良く見せる笑顔は、ほとんどが復讐に身を燃やす隊士の中では本当に希少で。

 そんな彼女が、隊士間での『そういう話題』において名が上がらない日が存在しない事にも、凄まじい説得力を醸し出している。

 実弥からすれば、いくら自分と同じ、階級『(きのえ)』の強い剣士だろうと。

 一歳年下の『少女』な時点で、『そういう話題』で真菰の名を上げる男たちの気がしれなかった。

 確かその時は、やれ『聡明で美しい』だの『儚い』だの五月蠅い雑音を道場で響かせていたが……

 

「この前もね、今度の休みに『久しぶりに遊ぼう』って誘われたんだよ」

「おっ、いいなあ!前は確か、最近できた甘味処に一緒に行ったんだっけ?今度はどこに行くんだ?」

「ちょうど隣町にある、最近できた甘味処」

「……前も、だったよな?」

「うん」

「…………俺の間違いじゃなければ、前の前もそうだったよな?」

「そうだよ?」

 

 どこが『聡明』だと、実弥は心底本気で思う。

 人に触れられるのは嫌であるが、実弥自身おはぎを筆頭とした甘味は嫌いではないし、むしろ好きな方ではある。

 しかしだ、いくら何でも他にこう……あるだろうと、実弥は心の中で突っ込まずにはいられない。

 

「……その後は?」

「うーん……一緒に昼寝?」

「…………花畑の中で?」

「そうそう。麗はいつもね、私が花冠作る時に、じっと犬みたいに見てくるんだぁ」

「………褒め言葉だよ、な?」

「当然だよ?私犬好きだもん、可愛いし」

 

 匡近以外で、まともな人間関係を築けていない自分が言う資格はないだろう。

 だがそれでも、実弥は内心で強く思った

 

(もっとこう……あるだろォ?)

 

 この女のどこに『聡明』の要素があると言うのだろうか。

 容姿にしか注目していないせいで、もっと重要な所を見逃しているんじゃないか。とか。

 実弥自身は『そういう話題』に心底興味が湧かないし、詳しくもないが。

 それでも、自分の感想は間違ってないだろうという事だけは分かる。

 

(ってか、こいつもこいつだが、相手も相手だよなァ……)

 

 先ほど真菰の口から出た『麗』という名前。

 その名前も隊員間での『そういう話題』で、真菰の次に出てくる名前、即ち人気のある少女である……という印象を持つ存在だった。

 階級はこれもまた、実弥と同じ『(きのえ)』であり。

 彼女もまた、功績次第で欠員状態の『柱』にそのまま就任されるだろうと噂されている。

 

 しかし、それだけだ。

 

 匡近は知らないが、実弥自身はその『麗』という少女に出会った事はなく。

 容姿に関する情報は、いくつか頭の片隅にはあれど、あくまでも『情報』は『情報』でしかなく、それ以上の何かを抱く事はない。

 冷たい言い方にはなるが、真菰にとっては大切な友人の一人であっても。

 実弥からすれば、麗は一度も出会った事のない、結局どこまでも、赤の他人の内の一人でしかないのだ。

 

「さて。緊張を解すのはこれくらいでいいだろォ、お前ら」

 

 これ見よがしな、強く気合いを入れ直す意味を込めた低い声で、実弥は言う。

 

「……だな」

「うん」

 

 匡近と真菰も、先ほどまでの緩んだ空気を一瞬で払拭し。

 鞘に手を添えてから、実弥の後を追うように歩き出す。

 

 目の前に広がる件の屋敷。

 それは町の外れに位置するのもあって、人の気配はやはり皆無。

 

 周囲に生い茂る木々によって、静謐な印象を受ける反面、非常に陰気臭くもある。

 何より、実弥が鍛え上げた『勘』もあって、目の前の屋敷からは、形容し難い嫌悪感をひしひしと感じるのだ。

 男女の区別はなく、消えるのは決まって子供。

 実弥たちを除く、数名の隊士がこの屋敷に足を踏み入れ、そして三人を除いて消える違和感。

 何かがいる。

 だが、その『何か』とは当然鬼ではあるのだが、しかし。

 

(本当に気味悪ィ……なんだァ、この……)

 

 ――ここにいる『何か』は、今までの鬼とは何かが違う。

 既に何名もの隊士が犠牲になっているのだから、それだけの強さがある鬼なのは確か。

 だが、ただ強いだけの鬼なら問題はない。

 実弥はこの数年でもう、大量の数を相手してきたのだから、膂力自慢しか能のない鬼はもう敵ですらない。

 だが、この違和感、()()()の正体は――。

 

「行くぞォ」

「ああ」

「うん」

 

 ――と。

 三人で声をかけ合い、屋敷の中に足を踏み入れた瞬間。

 

「……アァ?」

 

 今までに嗅いだ事のない匂いが、実弥の鼻腔を擽り。

 ――次の瞬間実弥と真菰を残し。

 ――匡近だけが、その場から姿を消した。




 ちなみに投稿が遅れた理由は、数年ぶりに友達と集まってずっっとエアライドしてたからです。
 背後から飛来する友人のレックスウィリー如きに負ける己の『油断』。

 お前が憎い、殺したい。

主人公の将来的な身長はどれがいいか

  • 166cm
  • 172cm
  • 184cm
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