【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート   作:バブ辻オギャン

28 / 61
 個人的に作者が好きな技は捌ノ型の『回向塡星(えこうてんせい)』です。
 どんな挙動の技かが一目で分かる字面(回向)と、それに釣り合う同じ仏教用語である『輪廻転生』の『転生』と、土星を表す『填星』で掛けてたりします。


28.VS童磨・後編

 ――これは夢なのか?

 思わず、胡蝶カナエは内心で疑問視する。

 

「壱ノ型 輪舞(りんぶ)双星(そうせい)

枯園垂(かれそのしづ)り」

 

 瓦礫が飛び交い、砂埃に混じって散布される冷気を的確に処理し続けながら、その少女は動き続けていた。

 

「伍ノ型 明星(みょうじょう)白蓮華(びゃくれんげ)

()蓮華(れんげ)

 

 ひとたび鬼が扇を振るえば、まるで雪崩でも発生したかのような、肺まで凍りそうな冷気が生まれる。

 もうひとたび振るえば、骨まで凍る冷気を蔓に圧縮し、鞭のように振るわれる。

 それが自分に向かう前に――少女が先に叩き潰す。

 

 まるで地面が崩れ、震えているような錯覚は。

 あの十二鬼月の――上弦の弐と、助太刀に来たと言う『(きのえ)』の少女が、地面を蹴って移動する音。

 

 ――()()()()

 最初こそ、余裕をもって彼らの姿を捉える事ができたカナエだったが。

 それが上弦の『弐』にとっては、ただの『お遊び』に過ぎない程度のものだったのだと、理解できた。

 できて、しまった。

 

(なんて物量の攻撃……!)

 

 十二鬼月、上弦。

 百年近く変わらない彼らの顔触れは。

 それ即ち、百年近く鬼殺隊は、彼ら上弦の頸に刃を届かせる事ができなかったという、敗北の歴史そのもの。

 『柱』と同等か、あるいはそれ以上に入れ替えが発生する『下弦』とは違い、その上位に位置する()()の『上弦』、その頂点に最も近い『弐』。

 その存在を認識するだけで息が乱れる。

 その乱れた息を狙うかのように、少しでも吸えば『死』が近づく霧の散布が始まる。

 少女――麗に向けられたものとは違う、カナエに向けられた二体の『結晶ノ御子』が、その矛先を向けた。

 

(ふゆ)ざれ氷柱(つらら)

「弐ノ型 御影梅(みかげうめ)――!」

 

 冷気に混じって襲い掛かる、上空からの鋭い氷の刃を斬り伏せる。

 日輪刀の効力により、斬られた刃は空中に滞留する事なく、バキンと音を立てて地面に落ちる。

 だが、刀でしっかり斬れる大きな氷とは違い、気体に近い微小の氷『粉凍り』は『御影梅』でも防ぎ切れなかった。

 型の隙を潜り、冷気がカナエの身体に近づき、効力を発揮する。

 僅かに掠った冷気が隊服を凍らせ、更に冷気は隊服だけに留まらず、そのままカナエの身体まで凍らせようと勢いを失わない。

 隊服が凍り、次に肌を――。

 

「参ノ型 雅星彩(みやびせいさい)

 

 瞬きはしていない。

 だが、そのあまりの移動速度に、カナエの動体視力が付いていけなかった。

 気づいた時には、隊服に付着した冷気がカナエの肌を侵食するよりも先に。

 麗が放った豪速の突きによって、隊服ごと冷気が空中で分散した。

 

「気をつけてください。あの鬼の放つ技全てに、小さい霧のようなものが付随しています」

 

 赫色に染まる刀を振り回し、辺りの冷気を融解させながら。

 

「少しでも吸えば、心肺機能に何かしらの影響を及ぼすでしょう。幸いにも日輪刀は通用するので、念入りに斬撃を放てば溶けます」

「でも、あなたは――」

「僕は大丈夫です、では――」

 

 ――あぁ、でも。

 

 思わず、カナエは頭に一瞬浮かべてしまった。

 

 ――これがせめて、夢ならば。

 

(なんて不甲斐ない……!私と同じくらいの子に、しかも下の階級に、逆に助けられるだなんて――)

 

 残酷な力の差。

 鬼殺隊として、『花柱』として決して短くはない期間を生きてきて、それに苦い思いをした事は、たくさんある。

 どうしようもない男女の筋力差、年季の差。同じ『柱』ではあるものの、自分より遥か上の実力を持った仲間と、何度も背中を預け合って戦ったからこそ覚えた感情。

 

 ――かつて自分たちを救ってくれた、巨岩の如き最強の柱である岩も。

 水や音、そして自分より遅れて『柱』になった――風も、実力はカナエより遥か上。

 同じ『柱』に向けるそれは、僅かな悔しさと、しかしそれを上回る安心感があった。

 

 だが、今はどうだ?

 

 あの鬼が寄越した分身体『結晶ノ御子』は合計で五体。

 しかも、その内カナエに向けられたものはたったの二体だけで。

 残る三体は全て、『柱』であるカナエではなく、『(きのえ)』の麗に集中している。

 

 しかも、彼の興味はカナエではなく――麗にのみ集中している現状。

 

 たった二体の『結晶ノ御子』でこのザマだ。

 仮にあの鬼の興味が麗ではなく、自分に向けられたら、きっと――。

 

「わぁ凄い凄い!」

 

 そんな、カナエの内心の葛藤とは裏腹に。

 こちらの方には一度も目を向けずに、楽しそうに笑う鬼はケラケラと、麗を集中して見続ける。

 

「君、その呼吸は何て言うのかな?白くてぴかっと輝いて……」

「…………」

「改めて自己紹介しようよ、俺は童磨。君は?君の口から聞きたいなぁ、君の名前」

「………………」

「ねぇってばぁ」

 

 童磨の問いに答える事なく、麗は童磨本体と、『結晶ノ御子』が出し続ける冷気を適切に処理し続ける。

 そうして、また辺りに充満した『粉凍り』を弐ノ型の『夜摩熒惑』で消し去ってから。

 

「……さっき、名前言ったと思うんだけど」

 

 麗は無表情で、童磨の問いに嫌々と答えた。

 童磨は笑い。

 

「あっ!やっと喋ったねぇ!ねぇねぇ、なんでさっきは無視してたの?ちょっと傷ついちゃったよ」

「まだ霧が充満してたから、あそこで喋ったら肺が壊れるでしょ?」

「……バレてた?」

「バレてたよ」

 

 あの一瞬で、より極小に加工した『粉凍り』を見抜く麗も。

 それを仕掛けながら、実にいやらしい話術も同時に行う童磨も。

 柔らかい声色とは裏腹に、絶対的な強者の振る舞いそのものであった。

 

「……いつから?」

「…………最初から」

 

 一旦戦意を抑えた童磨に倣うように、『結晶ノ御子』も機能を停止する。

 両者の間に降りる、僅かな平穏。

 それまでの苛烈な戦いとの不気味な温度差に、カナエは緊張で吐き気を覚えた。

 

「え~……結構自信作だったんだけどなぁ、まさか初見で見切られるとは……」

「強いて言えば。僕以外には多分誰も見切れないと思うから、できれば二度とやらないで欲しいかな」

「えっ、それはやだ!」

 

 ケラケラと、相変わらず人形のような作り笑いを童磨は浮かべ、麗は無表情にそれの返答を続ける。

 扇を広げたまま、依然として()()()()()()()()童磨と同じく。

 麗もまた、()()()()()()()()()()()()()、隙だらけの童磨に斬りかかる素振りを見せていない。

 

(……おかしい)

 

 残像すら残さない速度で動き続けて、しかも童磨本体とも戦って。

 更には、たかが分身体に手一杯の、こちらの救援も成したというのに、僅かな息の乱れもない。

 

 だからこそ、カナエは分からなかった。

 

 童磨の話を聞く理由。

 何より、ここで童磨に斬りかからない理由が、彼女にはない筈なのだ。

 それこそ、身体に溜まった疲労を僅かでも解消する為、あえて相手の話に乗っかる意図があるのならまだいい。

 しかしカナエからして見れば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 何より、カナエの直感が正しければ、麗は――。

 

「ねぇねぇ、君は『極楽』についてどう思う?」

「……いきなり何の話かな」

「まぁまぁ、こっちが一方的に喋るのもあれだろう?それに、俺もそれなりに気持ちは分かるつもりだぜ?その髪色……何より一瞬見せた反応。()()()()()に絡まれた経験があると見た」

「どうでもいい」

 

 まるで、()()()()()()()()()()()()()――。

 

「別に、信じたいなら信じればいい。鬼に語るのは変な話だけど」

「いいや!それはそれでいいと思うよ、俺は」

「こっちこそ聞きたい。……その反応、君教祖か何かやってるの?」

「お、鋭いねぇ」

 

 緊迫した空気――ではない。

 童磨は相変わらず、氷のように冷たい虚無の気配を纏っていて。

 相対する麗も、戦いの中とは思えない程柔らかな、()()()()()()()()を纏っている。

 

「うーん……流石に『あの方』に怒られるから、詳しくは言えないんだけどなぁ」

 

 百年以上、何の情報も残さなかった上弦。

 容姿か能力、そのどれか一方は残っていておかしくないというのに、不自然にも鬼殺隊に、『今残っている上弦』の情報は残っていない。

 

 遠くから戦況を観察する鎹鴉の存在もあって、何故情報が残っていないのか。

 どうして、上弦の鬼と対峙した隊士だけならともかく――鎹鴉まで殺されるのか。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 残念ながら、その真相に辿り着ける者は、ここにはいなかった。

 

「まぁ一応、俺は色んな人を救ってきたんだぜ?それはもうたくさんさ」

「……あっそ」

「死んだら無になるだけ、何も感じなくなるだけ。なのに()()は皆揃って『極楽』なんて信じるんだぜ?可哀想だよねぇ」

「…………」

「そんな単純な事も分からないのかなぁ?どうしてかこの世には、そんな気の毒な人が多いんだ。だから俺はそれを残さず()()()()()()、そうして救ってあげてるんだぜ、普段は」

「…………で」

 

 まるで明日の天気でも語るかのような、そんな声色で語る気色の悪い言葉の羅列を前にしても。

 麗は表情を変える事はなく。むしろ、首を傾げて。

 

「それを、どうして僕に言うのかな?」

「え~なんでだと思う?」

 

 ――動け。

 せめて、少しでも距離を――。

 

「知らない、別に知りたいとも思わないけど」

「それはねぇ~」

「おい」

 

 じっと、その時。

 久しく――童磨の視線が、再びカナエを射抜いた。

 

「――そこの子」

「――――ッ……!」

 

 ――たったそれだけで。

 最初、屈託なく笑っていた時とは違う――ゾッとするような無表情に変化した童磨によって、カナエは全身の筋肉が硬直した。

 

 動けない。

 冷気はもう残っていないのに、まるで身体が凍り付いたかのようだった。

 

 最初に、そして今までに童磨が見せていたものは。

 所詮は『表層』にしか過ぎないのだと理解した。

 冷たい人形、そんな生易しい表現には収まらない。

 全てを飲み込む、底なしの虚無を――カナエは童磨の背後に幻視した。

 

「そこの子がね、俺に対して『()()()()』って言ったのさ」

「あぁ、感情の事?確かにさっきから脈が一切乱れてないしね」

「……君も君で、ずけずけと来るなァ」

 

 ピシャン!と、勢いよく扇を畳んで、童磨は麗を見た。

 ――変わらず、無機質で冷たい無表情のまま。

 

「俺たち、()()()()()()()()()()()()()()と思ったんだけど、どう?」

「いや、違うと思うけど……?」

 

 沈黙。

 

「……違くないよぉ」

「違うよ」

 

 およおよと、変わらず()()()()()()()をする童磨に対し、麗は自分の調子を崩さなかった。

 ゆっくり、目を閉じて沈黙し。

 それから。

 

「僕は別に、誰かを憐れんだ事はないよ」

「…………」

 

 言葉と、そしてずっと待ち続けた『それ』と同時に、麗は動く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘開始から一時間五分経過。

 ――即ち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――夜明けの時が来る。

 それと同時に、辺り一帯の家屋の壁が崩壊する音が鳴り響く。

 

「ッハハ!そう来たかぁ!!」

 

 音の原因は言うまでもない。

 あの一瞬、童磨が陽の光の予兆を感じ取り、影に姿を隠すよりも早く、麗は辺りの『物陰』になるものを斬り刻んだのだ。

 屋根が崩れ、地面に衝突するよりも先に、空中で拳より小さくなるよう更に斬り裂く。

 

 壁を斬り、板が剥がれ落ちる前に斬る。

 岩も、木も、辺りに『影』を作るものを全て、あの赫色の刀で斬り伏せた。

 

 純白の炎が、辺りを陽光の如く照らし尽くす。

 童磨は笑いながら駆け出そうとするが、そのまま()()()()()()()

 あの一瞬で、自分は両足を切断されたのだ。

 それを感じながら童磨は、そのまま地面と熱い接吻を披露し、土の味を堪能する。

 

「星の呼吸――」

 

 ――死。

 ここまで、明確なそれを感じ取ったのは何十年ぶりだろうか?

 そんな事を考えている間に、今度は両腕が切断され。

 また、あの()()()()()()()()()()()()が四肢を襲う。

 同時に、童磨は()()()()()()()()()()()()()()()()()()と、そう強く確信した。

 

「ハハッ、やっぱり……」

 

 まるで、火山が爆発するかの如く。

 切断された足の断面から、腕の断面から。

 今までにない、凄まじい濃度の冷気を放出しながら、童磨は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()

 

 ベンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()の次にカナエが聞いたのは、鼓膜まで凍りそうな大音量の凍結音。

 水晶を削って作られたような、粗削りな造形の巨大な氷柱が、まるで四方八方に根を伸ばすかのように、そこにあった。

 鋭く、見ているだけで恐怖を覚える程のそれは一瞬、空の雲にすら届く程で。

 ぐんぐんと伸び続け、しかし血鬼術によって作られたそれは、途中で日光によって分解され、消滅した。

 ――()()()()()()()()()()()()()()()

 

(日光に晒される中で()()なら……きっと町も……)

 

 何より、()()()()()()()()()――。

 

(――――何てこと)

 

 そこまで考えてから、カナエは思わず喉をヒュッと鳴らした。

 

 途中、麗が不自然に頸を斬ろうと動かなかった理由。

 何より、あの小さな霧を見破れる彼女なのだ。童磨の体内の異変を、この巨大な『置き土産』にいち早く気づいてもおかしくはない。

 それに麗は、おもむろに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ではないか。

 

(――ッ、とにかくあの子の様子を……)

 

 だがそれでは。

 彼女が心配していたのは、そしてお荷物となっていたのは――。

 もしそうなら、情けないなんて話ではない。

 ズキリと痛む自尊心を無視して、カナエはもう半分以上溶けた氷柱の本元に向かって駆け出した。

 そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいのようせいさん?」

「違うよ」

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 そこに、ちょこんと座る三歳程の幼女に、髪を弄られている麗がいた。

 当然彼女たちの周りだけは、最初から氷などなかったかのような、霜の降っていない本来の地面。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()

 

 カナエの抱いた疑問、その全ての答えが収束する。

 

「…………はぇ?」

 

 だが、ある意味で自身の予想を裏切るそれを前に。

 思わず、カナエは素っ頓狂な声を上げてしまった。








 童磨が最後にやったのは、妓夫太郎が『遊郭編』で見せた最後っ屁の強化版です。
 仮にあのまま頸を斬っていたら、その分大量放出される冷気によって町が完全に終わっていました(その場合は『麗だけ』が助かる)。
 ちなみに、この時に拾ノ型が完成していれば、童磨の最後っ屁を気にする事なく直ぐに勝負はついてました(作中視点だと大成功だけど、走者視点からすればバッドエンド確定)。

 あ、拾ノ型の技名はビッグバンでも波紋疾走でもブラックホールでもスターバーストストリームでもないです(食い気味)。
 割と簡単な部類の、しかも既存の単語の組み合わせなのでモチーフ(星)的にも予想しやすいかも……?

主人公の将来的な身長はどれがいいか

  • 166cm
  • 172cm
  • 184cm
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。