【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート   作:バブ辻オギャン

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 ここ数日、押し入れから引っ張り出した妖怪ウォッチ(初代)にドハマりしてました。
 ……でも残ってたセーブデータを見てびっくらこきましたよ、はい。
 最後にやったのが十二年前……??うせやろ……??


39.歯車

 どれだけ善良に生きていたって、神も仏も何もしない。

 助けてなんてくれないし、何時だって変わらずに、『何か』をするのは自分たちだ。

 誰だって自分が精一杯。

 『他人に優しく』、これができる人間は、決して当たり前ではない。

 

 人に優しくできる人はいつだって特別だ。

 

 血も、関わりもない他人を憂いて、悲しむ事ができる。

 それは一緒に喜ぶ事よりも難しくて、しかし同じ位に尊い事。

 

 『誰かを助けてあげたい』。

 

 弟は――無一郎はたったそれだけの理由で刀を手に、あっという間に有言実行を果たして見せた。

 その身に宿る才覚を覚醒させ、鍛え上げた力と技術で、見知らぬ他人を救って見せた、立派な『剣士』になって見せた。

 

 それに比べて自分はどうだ。

 自分は、果たして『ここ』にいていいのだろうか?

 

 有一郎は時に悩む。

 自分が刀を手にした理由は、結局は『身内』の為でしかないのだ。

 無一郎のように。

 それどころか、他の鬼殺隊隊士のように、善良な『他人』の為に命を懸け、立派に生きるその姿と比べて。

 自分はあまりにも、刀を振るう理由は薄っぺらい。

 

 当たり前の話だが、鬼殺隊に入る動機は人それぞれだ。

 鬼への復讐や義侠心。

 自分の居場所を見つける為、もしくは鬼殺隊から支給される高額の報酬を目当てにする者。

 理由こそ違えど、結局『他人』の為に戦えている時点で、刀を振るう時点で彼らは尊く、誰かの為に戦える選ばれた存在だ。

 

 兄として。

 『人を救う』弟を孤独にしない為だけに刀を振るう自分は果たして、彼らと釣り合うのか?

 

 こんな事を誰かに聞けば、返って来る言葉は当然『気にする事じゃない』とか、当たり障りのない肯定の言葉だ。

 既に覚悟を決めた身、もう鬼殺の道を降りる事はない。

 だがどうしても、こうして時に考えてしまうのだ。

 

「君は立派な人間だよ、有一郎」

 

 だから。

 その『お館様』からの言葉に思わず、有一郎は言葉を失った。

 

「人を助ける行為に、理由も才覚も……他人も身内も関係ないんだよ」

「……」

「君は刀を振るった。結果として、それで救われた誰かがいる。その事実が、私はとても嬉しいんだ」

 

 人を救えない時もある。

 間に合わず、取りこぼした命の数は、決して少なくはない。

 だけどそれは、心のどこかでは『仕方がない』と、僅かな後悔こそあれど、真に心を痛める程ではない。

 弟とは違う。

 自分は他の立派な『剣士』たちとは違って、真に誰かを救える人間ではない。

 ――そんな自分への評価を、まるで知っていたかのように。

 

「弟と同じくらいに自分を誇りなさい。君の生き方は君にしかできない、他の何にも代え難い素晴らしいものだから」

「…………――はい」

 

 半年に一度、()()()()()()()()

 そこに呼ばれる事が『許される』のは当然『柱』のみ。

 ……だが、今この場において、()()の存在に疑問を呈する者は誰一人としていない。

 

「……これからは、以前より賑やかになるだろうね」

 

 鬼舞辻無惨の勢力は依然強まるばかり。

 鬼の出現も、犠牲となる一般人の数も、去年とは比べ物にならない。

 まだ育っていない若手の剣士は、恐ろしい早さで殺されていき、必然的に頼りになるのは『柱』になる。

 だが肝心のその柱も、本来の定員は九名であるというのに。

 現状、まだ七名しか揃っていなかった。

 

 たった二人、されど二人。

 

 柱が一人いるだけで、何十から何百の人間が救われる事を考えれば、二名の欠員は決して軽いとは言えないだろう。

 しかしたった今より――その欠員は埋まる事となる。

 

「無一郎、有一郎」

 

 鬼殺隊当主・産屋敷耀哉。

 聞く者の心を和らげる、春風のような声色には喜びが宿っていた。

 

「隊士となって二ヶ月、その間にたくさんの鬼を倒し、『(きのえ)』になった事」

 

 そして。

 

「……兄弟揃って、十二鬼月の下弦を討伐した事実は、他の誰にも否定できない立派な『実績』だ」

『…………』

 

 現役の柱直々に、一年間の鍛錬を見てもらった事を加味しても。

 『柱』とはそう簡単に、そして早くなれるものではない事は当然。

 歴史上でも、それこそ『始まりの呼吸の剣士』が記した()()の中でも、きっと他に例など存在しないだろう。

 

 血筋による才覚の保証は当然。

 あらぬ疑いは元より、可能性すらなく。

 

 相応しい『実績』があるのなら。

 彼らに与えるべき『地位』は、既に――。

 

「無一郎には『霞柱』として」

 

 それは、二名同時の『柱』任命。

 

「そして有一郎には『月柱』として、これからも鬼殺隊を支えてくれるかい?」

『――御意』

 

 『始まりの呼吸の剣士』その子孫である双子。

 更にその兄は、戦国の時代で失伝した流派『月の呼吸』の後継者。

 彼らに、一体誰が疑惑など抱こうものか。

 

 ――少なくとも()()()()()()

 

 今ここには、自分たちと同じく『鬼殺隊』を背負う、頼れる仲間の誕生を喜ぶ者しかいないのだから。

 

「二人とも」

 

 柱合会議の終わり。

 他の誰よりも、先に声をかけてきたのは、自分たちがこの鬼殺隊に入るきっかけとも言える人物だった。

 

「昇格おめでとう、これからもよろしく」

「……あぁ」

 

 煌柱・花柳麗。

 自分たちが彼女にとって初めての『継子』である事は、鬼殺隊でもそれなりに周知されていた。

 いつもは頭を撫でてくるが、周りにはまだ親しくない者がほとんどの現状。

 麗はこちらの心境を察し、撫でる真似はしてこなかった。

 ……そういう所では空気を読める性格、それも有一郎にとっては呆れる対象の一つであった。

 

「なに?」

「……なんでも」

 

 耀哉も去り、柱合会議による厳粛な空気が瓦解した今。

 まだまだ『子供』な、しかし将来有望な新たな柱を前にして。

 ()()()()が、話しかけない筈もなかった。

 

「おいおい、見た感じまだまだガキじゃねぇか。花柳よ、こいつらの歳は?」

「もう十一だね」

「紛う事なきガキだな!」

 

 音柱・宇髄天元。

 彼は自分の半分と少ししか生きていない筈の子供が、自分と同じ『柱』になる事実に好奇と歓喜の視線を向ける。

 当然、当たり前の話ではあるが。

 宇髄は好奇心こそ抱きこそすれど、ガキだ何だという言葉とは裏腹に、彼自身にこちらの力を疑うような素振りは一つもない。

 

「こんにちは。……お久しぶり、二人とも」

 

 花柱・胡蝶カナエ。

 彼女もまた、他の者と同じく、相手の力を疑うような素振りは見せず。

 背負う称号に相応しい、花が咲いたような笑みを浮かべ。

 

「嗚呼……これほどに若き子が二人も……」

 

 岩柱・悲鳴嶼行冥。

 彼はまだ、誰にも打ち明けていない過去の『傷』による心。

 同時に『柱』として組織を支える、柱の中でも最年長者としての心による言葉。

 二つの複雑な心境を綯い交ぜにしたそれは。

 かつて胡蝶姉妹に向けた、訳もない苛立ちと悲しみとどこか似通っていた。

 

「…………」

「ケッ」

 

 水柱・冨岡義勇、彼は一人ぽつんと孤立したままの無言を。

 風柱・不死川実弥は、ただ挙げられた『実績』を信用し、これから二人を見定める姿勢へと。

 

 ――()()()()()()

 

 今、ここにいない『彼』に触れたのは、麗だった。

 

「そういえば、炎柱……愼寿郎さんは?」

「…………」

 

 かつての『彼』と、今の『彼』の両方を知る者の気配が変わる。

 悲鳴嶼と宇髄はまるで、かけるべき言葉を選ぶかのように押し黙り。僅かな無言の時間が広場に降り立つ。

 麗は、それで大体の事情を察した。

 

『…………』

「……今回も、ですか」

 

 柱にとっての『柱合会議』の場は、ただの情報共有では収まらない。

 柱が会議に出席する事は、一隊士として、組織を支える重要な立ち位置である事を、本人がどう捉えているかを推し量る意味もある。

 

 長い歴史に。

 鬼殺隊を常に支えてきた水と炎、その一方の継承に致命的な傷が生じる寸前。

 

 しかし後継者も、何より肝心の本人が、それを育てる義務すらも放棄している今。

 口には出さずとも、その場の皆が必然的に。

 歴史ある『炎柱』の終わりを、薄々と察していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一年半後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前で、少年が()()()()()()()()()()()()()()

 素面でなら、それがただの気の迷いか見間違いを。

 もう一つの可能性としては、鬼の異能、血鬼術による物理法則の歪みがあるだろう。

 

「…………」

 

 数ヶ月ぶりに帰って来た故郷。

 数年ぶりに、自分以来の弟子をとったと告げたという()の報告に驚いたのも束の間。

 昔、自分も世話になった山の修行場に足を運んで見えた光景が、それだった。

 

「…………」

「……………………」

 

 年の頃は十四辺りだろうか。

 地面に倒れ、気絶しているのは、自分より年下の額に痣がある少年。

 筋肉のつき具合や、真剣を手に倒れている現状を見れば、答えは必然的に絞られる。

 十中八九、彼が父の……左近次が新たにとった弟子なのだろう。

 

「君は、まだいるんだね」

 

 何もない虚空。

 自分と、倒れている少年の寝息以外何も聞こえない、存在しない無音。

 もう自分には見えないが。

 もう何も感じられないが、()()()()()のだと、何となく分かる。

 

 

「真菰」

 

 風が吹く。

 

「後は任せるぞ」

「……うん」

 

 もう、自分は大人になってしまったけれど。

 同じ『子供』ではなくなったから、二度と会う事も、会話を交わす事もできないけれど。

 かつて自分を鍛えてくれた『彼』が言いそうな事、それが何となく分かる。

 

「大丈夫、分かってるよ」

 

 もう死んでしまった彼。

 その意思を、想いを汲み。――真菰は少年が起きるのを待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一度『正解の形』を見せて貰えば、理解度が格段に変わる。

 まだ精度も粗く、無駄の多い動きではあるものの、『型』としての最低限の形がなっているのであれば、後はそれを繰り返すのみ。

 

「全集中の呼吸はね、身体中の血の巡りと心臓の鼓動を速くするの」

 

 少年、竈門炭治郎に真菰はかつて、自分も錆兎に教えてもらった事を教える。

 数年間の『実戦』で身に着けた、言葉以上の価値があるそれを、惜しげもなく。

 

「とにかく肺を大きくして、たくさんの血を、より速く、疾走くするの」

「ど、どうすればできますか……?」

 

 炭治郎の言葉はごもっとも、というやつだろう。

 ただ息を吸い、吐く以外を知らない彼に、いきなり『全集中の呼吸』を教えても、身体も意識も突然追い付く筈がない。

 

「……ふふっ」

 

 頭上に疑問符が浮かび上がってそうな炭治郎の顔に、真菰は思わず笑みが零れた。

 

 ――()()()()

 

 左右も、前も後ろも分からない感覚。

 肺を大きくする、口で説明するのは簡単だ。

 問題は、身体がそれをできるまでには、一体『何をすればいい』のか、炭治郎の疑惑はそれだろう。

 

 一部の天才を除いた凡人。

 自分も含めた、そんな存在に許される事、できる事。

 

「死ぬほど鍛える。結局それ以外に、できることないと思うよ」

 

 ただひたすらに頑張るだけ。

 結局は、これだけだ。




 時透兄弟
齢十一と少しでまさかの柱ルート、彼らの同期は自分との才能の差に泣いてもいい。
ちなみに、お館様セラピーの効果で無一郎より有一郎の方がお館様に対する忠誠心が高かったりする。

 音柱
彼の麗に対するあれこれは後に……

 酒柱
今回も柱合会議をバックレ。
久々に本編と外伝を読み返し、そのあまりの堕落&クズっぷりに作者も引いた。
最終的に持ち直せて良かったね。

 冨岡さん
ボッチ。
カナエさんより話しかけてくれるであろうしのぶさんが柱じゃないので、この世界では余計にボッチが加速している。

主人公の将来的な身長はどれがいいか

  • 166cm
  • 172cm
  • 184cm
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