【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート   作:バブ辻オギャン

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 改めて、この作品はゆう31様の『【実況】鬼滅の刃RPG【祝100周目】』リスペクト作です。
 なので……


4.運命

「こんな所で百年待っても、お前の親は迎えに来ない」

「…………」

 

 あれは、雪の降る寒い日だった。

 今思えば、そんな景色も悪いあの日だからこそ、自分は連れてこられたのだろうと思う。

 

「それでも待ち続けるか、骨になるまで」

「……でも」

 

 それでも、自分はきっと信じたかったんだろう。

 だから、指が凍えて腐る寸前になっても、そこから動こうとはしなかったし、迎えが来ることを期待してた。

 

「迎えに来るって、言ったから」

「それは嘘だ」

 

 ――優しい人。

 かけられる言葉とは裏腹に、目の前に立つ男に対し、少女が抱いた印象はそれだった。

 顔は()()()()を付けているせいで分からないが、言葉の抑揚から伝わる印象は偽れない。

 

「ここにお前を捨てて行って騒がれたり、泣かれたりすると面倒だから嘘を吐いたんだ」

「……」

「そうでなければ、とうの昔に迎えが来ている。三日も放置しない。帰り道が分からないように連れてこられたろう」

 

 雪。

 今日、この日に自分を外に連れ出したのは、『万が一』すらも起こらないように……なのだろうか。

 元より少女は、ここに至るまでの道のりは分からない。

 しんしんと降り続ける雪は、見事に少女の視界を埋め尽くしていて、もはや自分がどの方角から来たのかすらも、分からなくなっていた。

 

「……家族が、兄弟か姉妹が多かったんじゃないか」

「……………うん」

 

 口減らし。

 答えは単純、たった一つの単純で、残酷なもの。

 生活の為、子供が多かったから、()()()()使()()()()()()()()()のだ。

 この時代ではありふれた、しかし悍ましい答え。

 

()()、指が凍えて血が通わなくなる前に」

「……」

「お前と同じ境遇の子供を預かる場所に行くか、儂と一緒に来るか、それともまた別の道を探すか」

「……もし」

 

 少女は問う。

 

「もし、一緒に行く道を選んだら?」

「……――」

 

 男は答える。

 

「本物の不幸に見舞われた人は、自らの意思で何かを選ぶ事などできない」

「…………」

「だが、この道を選んだのなら。――不幸に負けぬ強さを手にできる」

「――――」

 

 少女の答えは、もう決まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鬼殺隊、その数およそ数百名。

 政府から()()()()()()()()()()()組織。

 だが古より存在していて、今日も鬼を狩る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女に手を差し伸べた男、名を鱗滝左近次。

 彼曰く、自分は山ほどいる『育手』の一人であり、少女に課した修行の全ては()()、鬼殺隊の隊士を育てる為に使うものであると。

 重要なのは――彼は孤児(みなしご)であった少女を拾ったが決して、少女を()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼には過去、たくさんの弟子がいた。

 等しく愛情を注ぎ、技術を叩き込んだ愛おしい子供たちだ。

 

 だが誰も、鬼殺隊に入る条件である『最終選別』を突破できず、骨も残らず消えてしまった。

 皆が鬼の腹の中、弔う事もできない哀れな末路。

 それから、左近次は弟子を取ろうという気持ちがなくなっていた。

 未来ある子供に鬼殺の未来を示し、命を燃やす道を半ば強制させておいて、子供の死に苦しむ二律背反。

 彼は歳をとり過ぎた。使命や復讐、昔は溶岩のようにぐつぐつと燃え滾っていたそれらは、加齢によって落ち着いてしまい。

 結果として、今まで無視できていた心の内、良心の呵責とも言うべきそれらを。

 今まで通り無視できる熱量を失ってしまったのだ。

 だから、教えこそすれど、本当の意味で弟子には取らないと、そう決めていた。

 

 唯一の誤算。

 それは新たに引き取った少女の、親代わりとなった自分への愛情と敬意――何より、剣士としての才能である。

 

 少女は()()()()()

 例え修行をつけ、力を手にしようとも、『最終選別』にさえ行かせなければいい。

 そんな左近次の甘い考えを、文字通り少女は一刀両断して見せた。

 彼女には無理だろうと、本来のものより二回り大きい岩を用意したというのに、少女は左近次の予想を裏切った。

 十三歳、修行をつけてたった一年だった。

 

「お前を『最終選別』に行かせるつもりはなかった。……もう、子供が死ぬのは見たくなかった」

 

 だから、絶対に斬れないであろう大きい岩を用意したのだと告げた。

 少女は変わらず、ふわふわとした表情のままだった。

 

「よく頑張ったな」

「……えへへ」

 

 それから左近次は、少女の為に面を作った。

 『厄除の面』という、今まで育てた弟子にも贈った狐の面だ。

 少女の着物は、桜色の可愛らしいものであったから、面もそれに負けず劣らずの、可愛らしいものにするべきだろう。 

 左近次は彫り終えた狐の面の口元に、少女の着物と同じ、花の模様を付け加えた。

 

「ありがとう、行ってきます!」

 

 少女はまるで、野遊びにでも行くかのような気楽さで駆け出していく。

 最後に、左近次の方を振り返って。

 

()()にもよろしくね!」

「――――――」

 

 少女の言葉に、左近次は目に見えて固まる。

 だが、少女はもうとっくに山を本格的に下り始め、左近次の方を見ていない。

 故に、その様子も。

 その後の言葉にも、気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……()()、何故お前が」

 

 ――死んだあの子の名を知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 藤襲山(ふじかさねやま)、この場所で『最終選別』は行われる。

 山の中には、生け捕りにされた鬼たちが放たれており、七日間生き延びた者だけが、鬼殺隊として認められる。

 険しく苦しい道。

 悪鬼滅殺に命を燃やす存在への志望、その動機は復讐かそれとも――。

 

「……こんなに」

 

 少女――真菰は眼前に広がる光景に思わず、そんな声を洩らした。

 季節外れの藤の花が狂い咲く下には、真菰と同じか、僅かに年上であろう子供たちが皆、刀を手に黙している。

 人によって、その様子は様々だ。

 これからの『戦い』に怯えて肩を震わせる者、または己か家族か、それへの復讐を果たせる機会を待ち望み、武者震いするもの。

 一つ、言えるのは。

 誰も彼も、息の詰まる『怒り』の気配を身に纏っている事だ。

 

「…………」

 

 しょうがない、のだろう。

 真菰は孤児だが、それの原因は単純な家庭環境のものであり、鬼による悲劇ではない。

 この『最終選別』の為に集まった者は、そのほとんどが何かしらの形で幸せを鬼に壊され、復讐と使命感で身を奮い立たせる者だから。

 むしろこれが当然で、鬼に対する嫌悪感がそこまでな自分こそが、この場において『()()()()()()のだろう。

 

(まだ始まるまで時間があるのかな……?)

 

 まだ立会人らしき人物の姿は見当たらず、皆が静かに待機を続けている。

 どこもかしこも『怒り』の気配に満ちていて、息が詰まりそうになりながらも、真菰はどこか座れる場所がないか探した。

 『最終選別』は七日間、例え些細な時間であっても、体力を温存するのは悪手ではない。

 人と人の隙間を掻い潜り、真菰はより奥へ、奥へと歩を進めていく。

 その時。

 

「おい、何だあれ」

 

 ひそひそと、誰かが話し合う声が聞こえてくる。

 

「あれも一応鬼殺隊志望のやつだよな?」

「刀持ってるし、ここにいるし……まぁそうだろ?」

「いや、でも……」

 

 困惑している。

 同じく『育手』による苛烈な訓練を経ている筈の彼らが、困惑している。

 

(なんだろう……?)

 

 悪いものではない、気配がそれを教えてくれる。

 声は小さいが、内容は陰口のそれではないし、何より、彼らが発する声の抑揚からは『蔑み』や『怒り』ではない、純粋な『困惑』のみが込められている。

 一体、何が。

 真菰は身体が小さい為、人の垣根を掻い潜る事はできても、背筋を伸ばしても、彼らの上から覗く事ができない。

 故に、ひょいと身体を横に傾け、それを見た。

 

 そこには、自分より年上の少女が地面に座っていた。

 

 刀を傍に置き、黒曜石のように美しい瞳が陽光のように輝いていた。

 だが、表情はどこか抜けている。

 真菰はその時、少女の背後に『ぬぼーっ』という謎の効果音を幻視した。

 何より。

 

「…………」

 

 少女の周りには、凄まじい数の動物が集まっていた。

 いや、動物だけではない。虫も大量に少女の周りに集まっている。

 拳大ほどの蝶が少女の頭に居座り、まるで髪飾りのようになっていて。

 更に胸元には、思わず二度見してしまうほどの、それはもう立派なカブトムシが居座っていた。

 しかも三匹。

 まるで整列でもしているかのようなカブトムシたちの姿に、真菰は服の留め具を想起した。

 

「ここがいい?」 

「カァ~~ッ!」

 

 少女の周りには、狸や狐だけでなく鳥までいた。

 しかもその内の一匹は、先程から妙に人間みたいな声で鳴く鴉で、少女の腕に抱かれている。

 そんな鴉はと言うと、少女に頭を優しくさらり、さらりと撫でられる度、恍惚の声を洩らしている。

 周りの困惑は一層止まらない。

 

「カァ、クカァ……」

「気持ちいい?」

「ソ、ソコモット撫デテ……」

「はいはい……」

 

 しかも喋った。

 どうやら人間というのは、予想外が同時に何個か襲い掛かってくると、最低限の反応すらできなくなるらしい。

 何故鴉が喋るのか、それに言及する者は一人もいなかった。

 と、その時。

 

「……あ」

 

 そこでようやく、少女は自分の周りを囲う人々に気づいたらしい。

 皆が皆、『困惑』の文字を顔に浮かべて、自分を見下ろす現実。

 きょろきょろと右へ左へと視線を動かして。

 ピタリと、真菰の方を見て固まった。

 

「……」

「……」

 

 ぺこりと、少女はお辞儀。

 

「……どうも?」

「どうも」

 

 ついそれに釣られて、真菰も同じようにお辞儀。

 命を賭けた『最終選別』の始まりの直前にあった。

 何とも締まらぬ一幕である。




 メインヒロイン登場。
 彼女の過去は『鬼殺の流』に出てくる流の過去オマージュです。
 鰐先生の作風ってこの頃から既に面白いっすね(特に過狩り狩り)。

主人公の将来的な身長はどれがいいか

  • 166cm
  • 172cm
  • 184cm
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