【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート   作:バブ辻オギャン

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 作品のあらすじにも麗ちゃんのイラストを掲載しました。
 いやぁ本当に可愛い、全ハメ民に見て欲しい。
 真っ黒だけど暗くない、まさに黒曜石って感じの目もそうだし、髪色のグラデーションがマジで凄いし絵師様サマサマって感じでもう凄い。
 もういっその事最新話の感想よりあの最高の絵を褒め((殴


41.狭霧山にて

 ――禰豆子は違うんだ、人を喰ったりしない。

 

 昔、同じような事を言って喰われた奴がいた。

 

 例外はなく、たとえ最初は自我を残し、鬼の本能に抗えたとしても、それは叶う筈のない一縷の望みに変わりない。

 一度『飢餓状態』に陥れば、親だろうが兄弟だろうが関係なく、人を喰う。

 

 鬼とはそういう生き物だ。

 救いようのない、哀れな存在なのだ。

 

 情けをかける選択肢はない。

 もしも。――は万が一にもあり得ない、認める訳にはいかない。

 だが、もしかしたら。

 

 もしかしたら、こいつらは何か違うかもしれないと。

 『水柱』冨岡義勇は、雪の降る山での決断……『例外』を思い出し、考える。

 

 

 

 

 あの時の自分は、本当に正しかったのか?と。

 

 

 

 


 

 

 

 

 濃く、重みすらも肌で錯覚する程に多い霧。

 それが辺りに立ち込める狭霧山。

 男二人は、見事な正座を見せていた。

 

「ねぇ、これどういう事なの?」

 

 彼女がいる事が偶然か必然かで言えば、必然としか言い表せないだろう。

 義勇にとって、この山とそこに住む左近次は、ある意味『故郷』でもあるし、育手兼『父』でもある。

 昔、共に同じ鍋をつつき合った事もある親友――錆兎もそうであったから。

 

「ねぇ、鱗滝さん?」

「………………」

「聞いてる?」

 

 水の呼吸の使い手であり、『(はり)』に選ばれた未来ある隊士。

 義勇本人の意思は除き、誰しもが彼女を――真菰の事を鬼殺隊の次の『柱』に相応しい逸材であると断言する。

 同じ師と、育った居場所。

 義勇と真菰は初対面という訳ではなく、以前とある任務にて、偶然左近次繋がりの会話を交わした事がある……位だ。

 だが今、こうして無表情でこちらを――正座を続ける左近次と義勇を見下すその顔には、以前見たほわほわとした空気はどこにもない。

 

「流石に説明して欲しいな。というか、今すぐに説明して欲しいんだけど」

「こいつらは違うと思ったからだ」

「ごめん、義勇さんには聞いてない」

 

 説明して欲しいと言ったのに。

 そんな考えを読まれたからか、真菰は大きいため息を一つ。

 

「だって、義勇さん口下手すぎるし、鱗滝さんの方が説明上手でしょ?」

「俺は口下手じゃない」

「……」

 

 義勇の反論を無視した真菰が落とす視線は、その時二人には向けられていなかった。

 それが向けられるのは、部屋の隅に敷かれた布団の上で、寝息一つ立てずに眠り続ける少女。

 ――それは、誰がどう『見』ようと分かるもの、鬼。

 

「じゃあ説明してみてよ。……あの子、鬼だよね?」

 

 新たな型を作り出し、水柱にもなった男が義勇だ。

 自分とは違い、明確に鬼に幸せを奪われ、鬼を憎む。そんな鬼殺隊にとっての『当たり前』の一人の筈だ。

 そんな彼が、ただ同情で鬼を庇うとは到底考えられないし、何かしらの深い理由があると見るのが当然。……だが。

 

 冨岡義勇という男に限っては。

 真菰は信頼半分、疑い半分の思いを抱いていると、そう強く気配が言う。

 

 そもそもの話、あの『禰豆子』なる鬼と、それの兄である炭治郎がここ『狭霧山』にやって来た原因は義勇なのだ。それを義勇は否定などできない。

 

「炭治郎はいい子だよ」

 

 先ほど山の中で出会ったから分かると、そう真菰は付け加えた。

 少し話しただけでも充分に理解できる程の善人、太陽のような温もりを感じさせる少年だったと。

 本当に優しく、対話をするだけで心が洗われるような気すらもしたと、そう言った。

 

「でも、その優しさにつけ込んだつもりなら……私は許さないから」

 

 だからこそ、冷酷な判断を下す覚悟を真菰は持っていた。

 彼が一時の気の迷いで、家族への情で鬼に全てを奪われる、それは絶対にあってはいけないのだから。

 自分とそう変わらないとはいえ、間違いなく年下の少女。

 だというのに、その目に宿る覚悟は重く、綺麗でもあった。

 

「ねぇ、義勇さん」

 

 ――だがそれは、左近次とて同じ思いだろう。

 左近次は『元水柱』であり、潜った修羅場の数や鬼への怒りだけなら、義勇ですら遠く及ばない。

 経験が違う、人生の厚みが違う。……だがそれでも、彼も一人の『人間』なのだ。

 

 それ即ち、左近次とて『情』には弱い事。

 炭治郎と禰豆子をここに来させた原因、義勇に対する疑いの目。

 

 真菰の目には、左近次の弱さにつけ込んだ義勇の懐疑が。

 

「どういう事?教えてよ」

 

 そして、もう一方の――禰豆子の可能性への懐疑、その二つの思いが宿っていた。

 で、あるならば。

 

「…………」

 

 全てを伝え、理解してもらう他ないだろう。

 鬼殺隊としては当然、自分が下した判断は『間違い』そのもの。

 しかしあの時、自分が見た可能性……希望を見据えた自分の意思そのものを、義勇は嘘偽りなく、文字通り全てを伝えるべきだと判断した。

 

「…………分かった」

 

 全てを話すとなると、それはもう長くなるだろう。

 理解してもらえない可能性は当然、だがそれでも、伝えなければならない。

 あの日見た光景を、自分の心を。

 

「……――」

 

 長く、義勇は考えた。

 それはもう長く、数十秒の溜めを行い。

 それからしっかりと、真菰と目を合わせ、そうして意を決し――。

 

 

 

 

「あれは確か一年と半年前……」

「あ、鱗滝さん説明お願いね」

「分かった」

 

 義勇の言葉を遮り、そのままとんとん拍子に真菰と左近次が会話を交わす。

 

「…………」

 

 『目は心の窓』である、故に目を通じ合わせれば心は伝わる……

 そんな思いから発する、義勇の誠実な眼差しによるキラキラを、真菰も左近次も完全に無視していた。

 

 

 

 


 

 

 

 

 だが、それはそれとしてだ。

 鬼殺隊になる以上、決して避けられぬ問題がある。

 左近次が用意した『霧雲杉』で作った、岩漆による加工が施された背負い箱。

 日中、そしてよっぽどの事がない限りは夜間も箱に妹を入れ、鬼殺隊として炭治郎は活動する予定だ。

 しかし、それで防げるのは人の目だけ。

 ――鴉の目は防げない。

 

「この事は、既にお館様に通達済みだ」

「…………」

「と言っても、これはあくまで仮の報告書だ。禰豆子が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 返って来た答えは、真菰の予想の範疇。

 むしろ、元とはいえ『水柱』にまで至った左近次が、その可能性を考えない筈もない。

 

「返事は……って聞かなくてもいいか、だったら今頃……」

「うむ」

 

 だがその結果は、真菰の予想を大きく裏切るものだった。

 簡単に終わらせたが、これは鬼殺隊の長い歴史を大きく変える、または汚す可能性のある、重要な事。

 お館様――産屋敷耀哉は禰豆子を認めた。

 それ即ち、今まであってはならなかった存在――『味方の鬼』という概念を、新たに生み出したと同義。

 今はまだ仮であるとはいえ、これはとんでもない事だ。

 しかし。

 

(でもなんだろう、違和感……)

 

 本来なら無条件で喜ぶべきそれに、真菰は何かが引っかかるような、そんな思いをした。

 人を喰わないならそれでいい。……そんな戯言で全てがまかり通る筈もなく。

 であるのなら、産屋敷耀哉は左近次が『元柱』である事を注視したのか?

 

(そもそも……)

 

 ――『()()()()』。

 真菰はそれが気になった。

 

(鬼を庇うだけなら、それこそお館様の一言で強引に行える……けど、多分それじゃ他の()が納得しないから、庇うに値する理由と証明を欲しがってる……?)

 

 左近次の話によると、禰豆子はある日からずっと眠り続け、今日で一年半。

 たとえ老いようと、左近次の実力は並大抵の鬼を捻り潰せる程であるのだから、突然目を覚ました禰豆子に……という間違いは起こらない。

 だが、それで一年半だ。

 一年半も……

 

(お館様は、()()()()()()()()()()……?)

 

 鬼に対する……いや、鬼舞辻無惨という全ての元凶に向ける憎しみや怒りなら、この世で誰よりも大きい筈の男。

 そんな彼が、禰豆子という『例外』を受け入れ、それどころか今もこうして、狭霧山に匿い続ける事すらも許可している。

 聡明なあの方の事だ。

 きっと何か、()()()()()()があるに違いない――。

 

「それより真菰」

 

 思案に耽る真菰に、左近次の方から問いが来る。

 

「麗にこの事は伝えるのか?」

「…………」

 

 『煌柱』となった友人。

 遠く離れて鬼を狩りつつ、今も尚律義に手紙を送ってくれる、優しい子。

 彼女はこの事を知らない。

 左近次の言葉からそれを察した真菰は、悩む。

 

「……そうだね」

 

 正直に言えば、真菰か左近次のどちらかが説明をすれば、彼女はきっとすぐに味方してくれる。

 自分で言うのは少し気恥ずかしいが、麗は自分の事を好きでいてくれているし、左近次の事も同じ位、大切な人だと認識してくれている。

 何より、彼女も真菰と同じように、鬼に関する悲劇の過去がない。

 だから……

 

「……信用できるのか?」

 

 悩む真菰に、義勇は問う。

 その疑問はごもっともだが、よりによって言うのが義勇なのもあって、真菰は眉を顰めた。

 

「……友達だもん」

 

 悪意がないのは分かるが、それはそれとして。

 麗の事を知らない、ただ同じ『柱』なだけの彼が。

 大切な彼女にそんな疑惑を抱いている事に、友人として僅かに不愉快な思いを抱いてしまう。

 

「……同じ柱なんだから、義勇さんの方がよく会ってるでしょ、最近は」

 

 以前と違って疎遠になった自分と、肩を並べて戦う柱仲間。

 理不尽だとは自覚しつつも、そんな小さな嫉妬心から思わず、口から零れてしまった意趣返しの言葉。

 だが、義勇は相変わらずの鉄仮面の如き表情で。

 

「花柳とは話した事がない」

 

 真菰は頭を抱えた。

 よく見れば、左近次も義勇の今の言葉を聞き、むぅと天狗の面越しにくぐもった声を出していた。

 

「ねぇ義勇さん、ちゃんとやれてるよね?」

「……?」

「いや『どうして今そんな事を聞かれるのだろうか』って顔やめて」

 

 致命的とも言える言葉足らずな義勇。

 一見するとこちらに対して関心がないような姿勢も、たまに癪に障るような発言といった欠点全てに、本人の悪意がない事だけが唯一の救い。

 で、あるのなら。自分程ではなくとも、それなりに相手の気持ちを察せられる麗であれば、もしかしたら上手くいくのでは?と考えたのだが……

 

「前に話したよね?麗の事」

「あぁ」

「話しかけてみてね、って言ったよね?」

「どうして俺が話しかける必要がある?」

 

 義勇は続けて。

 

「俺に話す理由がない」

 

 ……この言葉も、一見すると『俺は仲良くするつもりはない』とも受け取れるだろう。

 だが真菰は知っている。この冨岡義勇という男は、その実力の高さと反比例するような自己評価の低さを秘めている事を。

 しかしそんな事、大抵の人間は知った事じゃない。

 何より本人が、そんな誤解をされてしまっても、それを自ら解こうと動く事がないのも、余計に人間関係の悪化に拍車をかけている。

 

「……義勇さん、本当にそういう所だよ」

 

 真菰は頭が痛くなってきた。

 いや、元から義勇の言葉足らずを実感する度に、頭痛自体はしていたのだが、今回はそれが一層酷いような気がしてくる。

 『柱』同士はよく分からないが、他の一般隊士からも、義勇への印象はあまり良くない。

 純粋に見た目の圧が凄まじい、岩柱と風柱のような『畏怖』とは違う、純粋にどのような人間かを知らないが故の印象。

 

(この調子だと、カナエさんも手を焼いてるんだろうなぁ……)

 

 誤解しないで欲しい……とは口が裂けても言えない。

 実際、本当にこの言葉足らずはどうにかした方がいいと、真菰は純粋に思っていた。

 

「同じ『柱』なんだから、もっと距離を縮めてみよう?」

「心配はいらない」

 

 ――心配してるから言ってるんでしょ……

 言ったところで、この男はそこまで気にする事なく会話を続けるだろうから、真菰は内心に留めておく事にした。

 が。

 

「そもそも、花柳と仲良くしようと思えない」

「――」

 

 そんな真菰の気遣いを無視する、義勇の爆弾発言。

 左近次も思わず絶句する程のそれ。

 

 文字通り、空気が凍った。

 

 真菰の顔から、先程まであったふわふわとした気配が消え、形だけの、まさにお手本のような「作り笑い」が浮かんでいた。

 

「……今なんて?」

 

 頬がひくつく。

 分かっている、これはまたいつもの『言葉足らず』だ、誤解せず真意を探れ……

 と、頭では分かってはいても、どうしても沸き立つ事を抑えられない、沸騰し続ける内心を鉄の理性で抑え込みながら、真菰は聞いた。

 

「今、なんて……?」

「仲良くしようと思えない、する意味がない」

「…………ねぇ、義勇さん?」

「俺は水柱じゃない」

 

 再び爆弾発言。

 これには思わず、隣で聞いていた左近次も、思わず息を吹き出した。

 ――だが、冨岡義勇は止まらない。

 

「ちょっと待って義勇さん??」

「俺は水柱に相応しくない」

「本当にちょっと待って??」

「義勇、少し話がある」

 

 この後、義勇はめちゃくちゃ怒られた。




 冨岡語録解説


「どうして俺が話しかける必要がある?」
まだ親しい仲でもないのに、仕事以外でこっちから話しかける必要はないと思います、向こうも困惑するでしょう?

「俺に話す理由がない」
先ほど言った通り、私はまだ彼女とは仲良くありません。なのでそういった会話は事前に仲を深めてからの方がいいでしょう。

「そもそも、花柳と仲良くしようと思えない」
第一、俺は水柱に相応しい人間ではありません。立派な煌柱である彼女と仲良くしようなど思い上がれないです。

「俺は水柱じゃない」
俺は水柱じゃない。
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