【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート   作:バブ辻オギャン

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 前回含め、元々は「RTAパートにして会議はごっそりカットしてもいいかな」という考えもあって、本来なら今章は存在しませんでした。
 それでも色々と、無限城編とその前の○○戦を含めて考えて「この話(麗ちゃんの心情の変化)は書くべきだ」と至ったのでそれなりのオチは用意してあります。
 楽しみにしていてください。


47.柱合会議・中編

 事の始まりは最初の挨拶に続き、不死川実弥が切り出す事となった。

 

「畏れながら、柱合会議の前にこの竈門炭治郎なる鬼を連れた隊士について、ご説明頂きたく存じますがよろしいでしょうか」

「……そうだね」

 

 まず大前提として、彼ら()に鬼を見逃す選択肢は存在しない。

 実弥の問うた内容も、あくまでも『わざわざ柱合会議を始める理由』と、この場にわざわざ炭治郎ら兄妹を呼んだ意味の確認である。

 煉獄杏寿郎が言った『裁判の必要もない』というのも、一人の違反者を処罰するのにわざわざ産屋敷邸を使う理由。

 そして一族の『呪い』で、より病弱になっている耀哉に足を運ばせるのも心苦しいものだからだ。

 しかし、そんな彼らの予想は大きく覆される。

 

「驚かせてしまってすまなかったね。――炭治郎と禰豆子の事は私が容認していた」

 

 その言葉はよりによって、この世で最も(鬼舞辻)を憎み、怒っているであろう男の口から放たれた。

 

「そして、皆にも認めて欲しいと思っている」

『――!?』

 

 当然、それへの反応も、過半数は既に決まっていた。

 

「嗚呼……たとえお館様の願いであっても、私は承知しかねる……」

「俺も派手に反対する。鬼を連れた隊士など認められない」

 

 岩柱・悲鳴嶼行冥――反対。

 音柱・宇髄天元――反対。

 

「僕は……お館様が言うのなら、それで」

「それは……しかしお館様、私たちはもう少し、彼らを見定める時間が必要ではないでしょうか?」

「…………」

 

 霞柱・時透無一郎――賛成。

 花柱・胡蝶カナエ――保留。

 水柱・冨岡義勇――無言。

 

「……普段の規律とは訳が違うんです。それを認めてしまえば最後、もう我々(鬼殺隊)に『芯』はない、考え直してください」

「心より尊敬するお館様であるが理解できないお考えだ!!全力で反対する!!」

 

 月柱・時透有一郎――反対。

 炎柱・煉獄杏寿郎――反対。

 

「……有一郎の言う通りです。鬼の存在を容認する事は、隊員同士の喧嘩云々とは訳が違う。組織の長として、その選択は悪手かと」

「鬼を滅殺してこその鬼殺隊。竈門・冨岡両方の処罰を願います」

 

 煌柱・花柳麗――反対。

 風柱・不死川実弥――反対。

 

 賛成と反対、どちらにも属さないカナエと義勇を除いた七人だけで見ても、賛成意見は無一郎のみ。

 皆がそれぞれ、鬼への憎悪や組織としての存在意義、いくつもの懸念を理由に、自分たちの頭でもある耀哉を否定する。

 だが、彼らの鋭い視線を一身に受けて尚、耀哉は表情を変えることなく、穏やかなままだった。

 

「……では手紙を」

「はい」

 

 持って来させたのは、ある一通の手紙。

 既に引退し、元・水柱として今は『育手』に専念している鱗滝左近次からのもの。

 娘である事は関係なく、耀哉の組織の長としての命令に、小さな少女は淡々と。

 

「一部抜粋して読み上げます。『炭治郎が鬼の妹と共にある事をどうか御許しください――』」

 

 そこに書かれていた内容は、先ほど炭治郎が柱に告げた内容とほとんどが同じ。

 ある日、炭治郎を除いた家族全員が鬼に襲われ、妹の禰豆子だけが生き残り、そして『鬼の血(無惨)』によって鬼に変貌した事と、二年以上血肉を喰らわず、眠り続けていた事。

 手紙に書かれていた内容をすらすらと。

 

「『俄には信じ難い状況ですが、紛れもない事実です。もしも禰豆子が人に襲い掛かった場合は――』」

 

 言葉を詰まらせる事なく。

 

「『――竈門炭治郎及び、鱗滝左近次・真菰、冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します』」

「……――」

 

 元柱、そして現役の柱と、それに準ずる二名の重すぎる命を懸けた宣言を読み上げて見せる。

 自分たちを信じ、命を懸けてくれる恩師たちの存在に、炭治郎はぽろぽろと涙を流した。

 

『――――ッ』

 

 そんな炭治郎とは逆に、ギリッ――と強く歯を食いしばる()()()()

 歯を食いしばった一人、実弥にとって真菰は友人という訳でもないが、逆に言えば決して他人という訳でもない。

 そして何より、実弥は一人の『柱』として、『梁』に選ばれた質の高い剣士である彼女が、勝手に命を懸ける意味を理解できなかった。

 忌々しさを半分、柱としての合理的な思考を半分。

 

「……切腹するから何だと言うのか、死にたいなら勝手に死に腐れよ。何の保証にもなりません」

「不死川の言う通りです!人を喰い殺せば取り返しがつかない!!殺された人は戻らない!」

 

 実弥と杏寿郎の言葉に、否定できる箇所はどこにもない。

 ただ間違いを起こした、だから責任をとる予定だと宣言した所で、もう『その時』には取り返しがつかない事は誰にでも分かる。

 

「確かにそうだね。人を襲わないという保証ができない、証明ができない。――ただ、人を襲うという事もまた証明ができない」

 

 今、この場で重要視されるのは懸けられた命ではなく、命を懸ける行為そのもの。

 

「禰豆子が二年以上もの間、人を喰わずにいるという事実があり。その禰豆子の為に四人の者の命が懸けられている」

「…………」

 

 ここにいる柱は全員、炭治郎の口から二年間もの歳月において、禰豆子は一度も飢餓状態に陥る事も、人を襲ったりもしていない事は既に聞いた。

 だがそれは、あくまでも『二年間食人をしていない』訳ではなく『二年間ずっと眠っていただけ』に過ぎない。

 それ即ち。鱗滝左近次からの手紙でも、その空白期間を『証明』にする力は存在しなかった。

 

「耀哉様」

 

 左近次からの手紙に、歯を食いしばったもう一人、麗はゆっくりと顔を上げる。

 

「……竈門炭治郎の証言によれば、竈門禰豆子は二年間昏睡状態に陥っていただけに過ぎません。実際に意識を覚醒させたまま、人の肉や血をその目で見て、その後に発生する飢餓状態に抗った訳でもない。……禰豆子の自我の証明には足りないと思います」

「…………」

「証明の前提が不確かな以上、その手紙に意味はない。……命を懸ける意味も、必要も」

「その通り」

 

 ――そのままでは、左近次らの宣言が『証明』になるには一歩足りない。

 耀哉はまるで、()()()()()()()()()()()()()()()、『証明』の後押しをした。

 

「一切飲まず食わずのまま二年以上眠る。確かにこれは『異常』だ。しかし同時にこれだけでは、鬼を連れた隊士を認める『理由』には足りない。……うん、そうだね」

「……」

「だけどね、ただ眠っていただけじゃないんだよ。禰豆子は実際に二年前、義勇の刀で負傷した際に重度の飢餓状態に陥ったのにも拘らず……炭治郎を助ける為、義勇に立ち向かったのを()()()()だ」

「……!」

 

 一瞬、耀哉の言葉に義勇が眉を動かした。

 まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()――。

 

「その上で麗、実弥。さっき言った通り禰豆子には今四人の命が懸けられているんだ、これを否定する為には、否定する側もそれ相応のものを差し出さなければならない」

『――――っ』

「それに……」

 

 なんて事ないように、耀哉はそれを付け加えた。

 

「炭治郎は()()()()()()()()()()

『――!?』

 

 懐疑的だった者、無表情を貫いていた者を含め全員。

 その場にいた柱が皆、耀哉のその言葉に目を大きく見開き、そして今までとは違う視線を炭治郎に注いだ。

 鬼舞辻無惨。

 それは鬼の始祖であり、全ての不幸の元凶とも言える男の名。

 今代を含め、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 約千年以上もの間、謎に包まれた元凶の情報。それは先ほどまで耀哉に反対し、禰豆子へ敵意を向けていた柱でさえ、この瞬間だけはそれを忘れ、炭治郎に問い詰めようとする程だった。

 

「…………」

 

 すっ、と人差し指を口元に寄せ、耀哉は思わず立ち上がろうとする柱たちを抑え込む。

 

「……鬼舞辻はね、炭治郎に追っ手を放っているんだよ。これは初めて彼が、鬼舞辻が見せた尻尾であり、そして『弱点』でもある」

『…………』

「同様に、恐らくは禰豆子にも彼にとって『予想外の何か』が起こっているんだと思う」

『――――』

 

 耀哉は最後に『わかってくれるかな?』と、いつも以上の優しい笑みを浮かべ、柱たちに問うた。

 鬼の滅殺を第一とした組織において、前代未聞の『鬼を認める』行為に、あまりにも充分過ぎる『賭ける価値』を提示され、皆は押し黙った。

 実際、最初は反対の姿勢を見せたほとんどが、先ほどの耀哉の言説と、炭治郎自身の価値、何より懸けられた三人の命の価値に、何も言い返す事ができなかった。

 ここにいる柱には、命を懸けて擁護された禰豆子を否定する為の、こちらが差し出せる何かを今は持っていないのだ。

 勿論、厳密には彼らとて、心の底から納得した訳ではない。

 それでも、彼らの理性的な思考が、ここで否定を貫く合理性を見出せていないのだ。

 

「……分かりませんお館様」

 

 だが、人間は決して、理性と合理性が全てではない。

 あまりにも強く歯を食いしばりながら一人、実弥は強く否定を超え、拒否の姿勢を貫き通していた。

 

「人間ならば生かしておいてもいいが鬼は駄目です、承知できない……!」

『…………』

 

 実弥の言葉に、柱たちは何も言わない。

 彼の過去を知る者は当然として、逆に知らぬ者であっても、普段の彼が鬼に憎悪の炎を滾らせ、荒ぶる獣の如く戦う姿を見てしまえば、その『過去』を察してしまう。

 感情の問題なのだ、普段は柱として強く己を律している実弥でも、一人の人間に過ぎないのだ。

 

「おい麗」

「……なに?」

 

 偶然にも、その時動いたのは二人。

 それも、最初左近次からの手紙の内容を知り、個々が内心で渦巻く激情を堪え切れず、歯軋りをした仲間。

 実弥は音もなく、緑に染まる日輪刀を鞘から抜き、麗が傍に置いた箱――禰豆子を血走った目で睨み、立ち上がる。

 

「その鬼を寄越せ」

「…………」

 

 刀を手に立ち上がる行為。

 たとえ言葉にせずとも、その『次』に起こすであろう実弥の行動は、麗以外も察した。

 だが、その上で。

 

「実弥、麗――」

「――耀哉様、無礼ですがご承知を」

 

 実弥以上に、縮んでいるとはいえ少女一人が入った箱を静かに持ち上げ。

 麗は耀哉のいる方向に、即ち日光の当たらない家内に向けて――()()()

 

「――ッ」

「お館様」

 

 同時に。

 息を吞む炭治郎の隣、強く俯いた実弥が絞り出すように。

 

「――失礼(つかま)る」

 

 ドン!と地面が破裂したような音が一つ。

 辺りに響いた次の瞬間には、実弥は放り投げられた箱を手で掴んだ。

 実弥はそのまま、重力に任せて思い切り刀を突き立て、刺す。

 

「っ禰豆子ォ!!」

 

 箱から流れる血。

 口枷でくぐもった、痛みを堪える禰豆子の声に、炭治郎の理性が消し飛んだ。

 両腕の拘束などお構いなしに、激情に駆られるまま実弥に襲い掛かろうと――。

 

「やめ――」

 

 した時。

 ギュゥと、小さく鈍い音が()()()()()()()

 

「ギ――ぅ――――」

 

 身体中に走る激痛を一瞬で忘れてしまう程の圧迫感。

 まるで突然、冷水を浴びせかけられたかのように血管が収縮し、炭治郎の呼吸が止まる。

 身体の自由を奪う神経の圧迫と、呼吸を瀕死にさせる、それは文字通り悪魔の手腕。

 

「有一郎、それは少しやりすぎじゃないか?」

 

 あまりにも容赦のない一手に、思わず杏寿郎も苦言を呈する。

 炭治郎の頸を圧迫するのは、炭治郎よりも小さな体躯と手をした柱。

 月柱・時透有一郎の右手によるものだった。

 

「……これでも充分弛めてるんですが」

 

 有一郎は不満そうに言う。

 

「抑え込むならまだしも、頸は不味い!最悪後遺症が発生するだろう!」

()()、どう思います?」

 

 普段滅多な事では使わない呼称と喋り方で有一郎は問う。

 麗は、それに対して悩む時間すらなく。

 

「大丈夫ですよ、あれくらいなら神経への悪影響はないと思います」

「……むぅ」

「まぁ、これでも無理に暴れるなら……話は変わりますが」

 

 酸欠で苦しむ炭治郎の前では、変わらず実弥が禰豆子を攻撃し続けていた。

 一度では収まらず、二度、三度箱ごと禰豆子を突き刺し続けた実弥は、ここからが本番だと言わんばかりに、景気よく箱の外装を破壊し。

 

「ハッ!()()()()()()()()()()()、だァ?」

 

 実弥は自分の腕を斬り、流れ出る血を禰豆子に見せつける。

 奇しくも、これで話で聞いた二年前の、禰豆子の自我を試す光景が再現される事となる。

 ――そして。

 

「……ほら喰いつけ、テメェの大好きな人間の血だぜ」

 

 その検証は、実弥にとっても忌むべき過去を想起させるもの。

 かつて、鬼に変貌した実弥の母は、子供だった実弥を含め、他の幼い兄弟も皆、ただの食料としてしか見なかった。

 暗闇の中、必死に手繰り寄せた刃物で自衛をし、傷をつけた時。

 より狂暴に変化し、呻き声を涎を垂れ流しながら襲い掛かって来た光景を、彼は一生忘れない。

 

 人を喰わない。

 家族を認識する。

 飢餓状態にならず、自分を守ろうとする?

 

 鬼になったら最後(自分の母は何だった?)、そこに救いなんてない。

 ほら、現に。

 

「ッ――フゥ……フゥ…………」

 

 実弥の『稀血』を嗅いだ途端、一気に鼻息が荒くなった。

 今にも腕にかじりついてきそうな具合。

 このまま実弥が何もしなくても、禰豆子は鬼の本能に負けるだろうと思う。

 少しずつ。

 少しずつ、禰豆子の顔が実弥の腕に近づ――。

 

「――――――っ」

 

 ――()()()()()

 視線を泳がせる禰豆子が見たのは、頸を絞められ、酸欠で顔を青くする炭治郎の姿。

 その瞬間、禰豆子は実弥の事を完全に無視し、駆け出した。

 

「ッ、ムー!ムー!」

 

 本当なら、今にでも炭治郎の傍に寄りたいのだろう。

 だが、鬼は日の下を歩けない。故に禰豆子は日光が当たる寸前で止まり、そこで両目に涙を浮かべながら、あわあわと両手を動かしていた。

 それはどう見ても、禰豆子は実弥の血に興味がない事の証明でもあり。

 禰豆子の自我は、家族の絆は鬼の飢餓状態を超えたという事実の――。

 

「――――――ァ……?」

「…………」

 

 実弥の小さな吐息。

 それに混じった数多の感情を、耀哉のみが聞いていた。




『……命を懸ける意味も、必要も』

 一体麗ちゃんはどんな思いをしながらこの台詞をひねり出したんでしょうね(暗黒微笑)。
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