【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート 作:バブ辻オギャン
抜いて来たぜ!!
意外と呆気なかったのでこれから抜くって人は怖がらなくていいですよ。
紆余曲折あったものの、無事『柱合会議』……否、『柱合
一人、蚊帳の外の炭治郎は例外だが、同じ柱であれば実弥の『稀血』が鬼にとってどれ程強烈なものかは知っている。
――後に、上弦の壱ですら千鳥足にさせる程の稀血。
稀血の中でも更に希少な血。それへの誘惑に見事耐えきった自我の強さ、耀哉の言う通り、それは見事なまでの『証明』であった。
当然、それでも禰豆子が鬼である事に変わりはなく、炭治郎も含めて、これからは相応に厳しい目で見られる事は明らか。
つまり、ここから
「それじゃあ、そろそろ柱合会議を始めようか」
炭治郎関連の話は終わり。
耀哉やそれ以外の柱にとっての、本来の意味での『柱合会議』の開始を告げる耀哉の発言によって、ようやく空気がある程度弛緩する。
そう、あくまでも今やっていたのは『裁判』であって『会議』ではない。
本来の柱合会議とは柱たちが一堂に集まり、これまでの半年間の報告と、次の半年間の方針を定める『話し合い』なのだ。
まだ、全てを飲み込めていない者も多くいる。だが既に、裁判は終わったものなのだ。
「下がっていいよ」
「それでしたら、私の屋敷で竈門君は預かりましょう」
耀哉の言葉に続いて、カナエが提案する。
実際、それは数ある選択肢の中でも最善のものだった。
見た目では分かりにくいが、今の炭治郎は顔面及び腕・足に切創擦過傷が多数、更には下顎の打撲とボロボロの状態だった。
むしろ、顎の骨が割れた状態で柱たちに啖呵を切って見せた炭治郎の我慢強さを褒めるべきなのだろうが、割愛。
以前に元・下弦の陸と戦った炭治郎は肋骨を折り、藤の花の家紋の家で療養した事があるが、あの時とは怪我の酷さが違う。
勿論、ただの骨折と言えども筆舌に尽くしがたい程の激痛が走るし、重傷なのは間違いない。こればかりは『骨折』が他の怪我と比べて軽く見られがちな今の価値観がおかしいだけだろう。
話が逸れたが、要は今の炭治郎の怪我の酷さは、藤の花の家紋の家だけで何とかできるものではない。
人間は鬼とは違って、怪我を治すのにも時間がかかり、更には肉体も衰え、以前の調子を取り戻すのにも一苦労。
だからこそ、怪我の療養と体力を元に戻す『機能回復訓練』を同時に行える、胡蝶カナエの運営する『蝶屋敷』が丁度良いのだ。
「っ、あの!待ってください」
「前失礼しまァす!!」
「ちょっと待ってください!!」
カナエの目配せを合図に、残像を映す勢いで炭治郎の身体をズルズルと引っ張る隠。
しかし哀しきかな、炭治郎はまるでセミのように近くにあった木に抱き着き。
「その傷だらけの人に頭突きさせてもらいたいです絶対に!」
「ちょっと黙ってろ!!」
「禰豆子を刺した分だけ!絶対に!」
「黙れ黙っとけ!!」
顔を真っ青にした隠が力加減を忘れ、炭治郎の頭をボコスカと殴るが、炭治郎の抗議は止まらない。
その、あんまりな絵面に思わず、柱のほとんどが実弥を含め、ポカンと呆けてしまっていた。
「頭突きなら隊律違反には"ァっ"!?」
ドガガガガッと、まるで散弾銃の如く
それが、炭治郎の顔面を余す事なく平等に強打し、炭治郎は初弾以降の呻き声を上げる隙すら与えられず、そのまま一瞬で失神した。
「…………」
おそるおそる、といった表情で隠が視線を向けた先には。
隊服の袖を肩まで捲り上げ、如何にも『全力で投げました』と言わんばかりの姿勢の無一郎であった。
「――うるさい」
バギッ!と、右手にいっぱい握りしめた石たちを握力で粉に還し、一言。
今まで静かに、しかし自分の意見もしっかりと述べ、穏やかに裁判を進めていた筈の無一郎が、初めて見せた不快の表情であった。
「も、もももも……申、申し訳……!」
「とととと、と時透様……!お館様……!ほ、本当に申し訳ありません……!」
その怒気に、隠の男たちは自分に向けられた訳でもないというのに、顔を真っ青にしてしなくてもいい平謝りを続けていた。
ただ冷ややかな視線で、無一郎は。
「……はぁ、さっさと下がって」
「は、はいィイイ!!」
その言葉で、完全に気絶してしまった炭治郎を二人掛かりで持ち上げ、そのまま脱兎の如く駆けていく隠たち。
剣技の才に恵まれず、呼吸の才もない彼らがこの時だけは初めて、隊士並の速度を出していた。
そんな彼らの後ろ姿を完全に見失うまでの間、自然と柱たちは視線をそちらに集中させてしまっていた。
故に。
「
その、ある『人物』の名を口にする耀哉に誰も。
麗ですらも、聞く事ができなかった。
裁判が終わり、始まる真の『柱合会議』。
それの最初の議題を切り出したのは、実弥であった。
「最近、隊士の質が信じられない程に落ちてやがる」
『…………』
それを否定する者は一人もいない。
竈門炭治郎、そして竈門禰豆子の詳細が露わとなった件の『那田蜘蛛山』、そこには十二鬼月・下弦の伍がいたという報告があった。
だがそれと同時に、問題となったのは犠牲者の数。
先行部隊、そして本隊を含めてもだ。
しかもそれら犠牲者のほとんどは下弦の伍にやられた訳でも、ましてやそれの直接的配下である『家族』でもなく、それが操る『傀儡』によってやられたもの。
鴉からの報告によれば、中には鬼への恐怖に心が挫け、命令に従わず勝手な敗走を、――味方を盾にした者も少なくなかった。
「育手の教育が悪いのか、そいつがろくでもねぇだけなのかは知らねェが……どっちにしろ詳しく聞き出す必要はあるだろうなァ」
「南無……」
事の重大さを認識し、一層哀憫の涙を流す(いつも通りである)行冥は置いておき。
「百歩譲ってさ、いや勿論駄目には決まってるけどさ。鬼から逃げようとして……で、結局誰一人として逃げ切れてないのはどういう事なのかな」
「…………無一郎の言う通り、当然逃げ腰は話にはならない。しかし、だからといって『逃げ』すらまともにできないのはどうかと」
「むぅ……」
無一郎、有一郎の二人の言葉に杏寿郎は苦い顔をする。
模範的な熱血漢でもある杏寿郎にとって、やはり鬼狩りでありながら我が身可愛さに逃げる行為には色々と思う所があるのだろう。
仮に、それでも鬼から逃げ切って見せたのなら、それは生きて『情報』を持ち帰った事に変わりはなく、後ろ指を指されこそすれど、間違いなく次には活かせる。
だが結果は『これ』であり、下弦の伍は水柱・冨岡義勇が討伐、その他配下も花柱・胡蝶カナエとその妹である胡蝶しのぶが討伐。
強いて言えば、人間を蜘蛛に変える毒の使い手である兄蜘蛛の鬼だけは一般隊士である我妻善逸が討伐していたのだが、それ以外は言うに及ばずだろう。
平均的な実力、それが圧倒的に足りていないのだ。
「実際、血鬼術持ちの鬼の対処を最近はほとんど『梁』がやってる」
「『柱』の備えができている事はいいとして……それ以外が育っていない現状は確かに、見過ごせないかもしれないわね」
天元、カナエの二人が表情を硬くする。
「ならやっぱ、まずやる事は死んだ隊士とそれの育手の特定か?」
「後は生き残りからの仔細報告もだな。確か一人だけ、五体満足で帰って来た者がいただろう?」
「あぁ、他の生き残りは皆が重傷。それも一定数は血鬼術で身体を蜘蛛に変えられていたらしいなァ」
「竈門隊士とも僅かながら交流があったとも聞く、持っている情報は決して少なくないだろう」
「そいつ呼ぶか」
「うむ!それがいいだろう!」
実弥、杏寿郎の二人が流れるようにその後の流れを決め、一つの議題は終わりに近づいていく。
尚、この場で唯一生き残りの隊士――村田を知る義勇だけは、その後の彼の苦労を想像し、僅かな同情心を抱いているが。
それ以外はそんな事を知る由もない為、また新たな議題を誰かが切り出してくるまでの間、沈黙を一貫させる。
「…………」
一人。
まるで何かを思い詰めたかのように
それを、天元はどうしても無視する事ができなかった。
――『得体の知れない』。
最初、宇髄天元がこの印象を誰かに抱いたのは、岩柱・悲鳴嶼行冥との邂逅の時。
忍としても、自分が常人からは明確に逸脱した存在であると自負する程に、天元の背丈は大きい。
『最終選別』や呼吸法の伝授といい、忍顔負けの過酷な訓練が当たり前な鬼殺隊の人間でも、天元の身長には及ばないのだから。
だが、そんな天元の身長をも優に超え、更には剣士としても、そして『人間』としても上の存在だと認めざるを得ないのが、悲鳴嶼行冥という男だった。
後にも先にも、このような存在は現れないだろうと、無意識の内に思い込んでしまう程に。
――もう一人。
あの日、花柱・胡蝶カナエが上弦の弐との戦いから生還した日。
それと同時に、新たな『柱』を任命した日、そこで天元は悲鳴嶼と同じ――否、それ以上の『人間』を見た。
自分よりも三つ下、更には少女としか言えないその風貌でありながら、秘められた生物としての『圧』は、他に見ない。
神や仏の存在など、とっくの昔にいないものとして受け入れた天元でさえ、花柳麗という人間の仕組みを前にして思わず『神々の寵愛』という言葉を思い浮かべる事は少なくない。
『得体の知れない』。だが、いつからだろうか――。
「花柳」
最初見た時は、その『人間』としてはありえない音に、異常な心肺機能に驚いた。
それから何度か顔を合わせて、柱合会議の度に話をして、今度は逆に、その飾り気のない心根に驚いた。
普段、彼女は感情を乱す事はない。
柱間での交友もそれなりで、時透兄弟程ではないにしろ、『年下』という事もあってカナエと杏寿郎を筆頭にした長女・長男の二人からは大層気に入られているようにも見える。
天元自身、父親の生き写しとなってしまった弟や既に亡くなった七人の姉弟の事もあり、彼らの穏やかな空気に割り込むのに抵抗はあるものの、その空気は好きだった。
だから。
「……天元さん?」
彼女の様子がおかしくなったのは鱗滝左近次からの手紙――いや、その前の。
冨岡義勇との会話に出てきた『真菰』という名を聞いてからだった。
その時からずっと、何かを思い詰める
「…………」
どう、何の言葉を投げかければいいのだろう。
柱合会議が終了し、皆がそれぞれの持ち場に戻ろうとする中で、自分から彼女を呼び止めておいて、これだ。
振り返り、こちらの言葉を律義に待つ麗は、こてんと首を傾げて、自分の事を見上げて固まる。
結局。
「……愚痴があるなら聞くぜ」
数秒考えて、ようやく出てきた言葉がこれであった。
三人いる嫁の内、三人が脳内で揃って『それはない』と突っ込んで来る幻聴が聞こえてきた程である。
だが、これはあながち間違った言葉ではないのだろう。
多少仲は良いとはいえ、天元は結局花柳麗という少女の事を、彼女の過去や交友関係の全てを把握している訳ではないし、それを打ち明けて貰えるような間柄でもない。
何も知らない、蚊帳の外にいる人間からの一方的な言葉は、ただ煩わしいだけ。
だけど。天元は昔、自分の過去に苦しむ自分自身を肯定し、受け入れてくれた産屋敷耀哉。
彼の真似事であろうとも、それを今、誰かにしてみたくなった。
「もう大丈夫ですよ」
麗は笑った。
それは、天元が会議の前に見たものとは違う、嘘偽りのない笑み。
「まぁ、色々考えていたのは事実ですけど。もう呑み込みましたから」
「そうか」
「まぁ確かに、思い返せば冨岡さんの言う通りですし。これは左近次さんを含めた一門の話で、僕は親密な関係だけど、あくまでそれだけ」
それに。
「冷静に考えて見れば、あれは冨岡さんなりに僕を庇ってくれたんじゃないかって」
「……はぁ?」
「いやだって、あの人『お前は違う』って言ってたじゃないですか。あの人の事だから、竈門禰豆子と僕に繋がりはないって事を、他の人にも伝わるように、ああいう言い方をしたんじゃ……」
「……」
――思い返してみれば。
確かに冨岡義勇という男はいつも根暗で、いつも葬式みたいな顔をしていて。しかも絶望的に口が足りていない。
それの反応が顕著なのは実弥や有一郎の二人だが、そんな彼らに対して臆する事なく口下手を炸裂させようとも、しかし絶対的な『否定』や『拒否』の言葉は出てきていなかった。
――だが、あの時の義勇の言葉は。
『俺たち』や『他人』……これは言葉の裏を読み取るのなら、そのまま水の呼吸一門とそれの関係者か否か。
今は認められたからはいいものの、しかし。あの時と場合に関しては意味が異なる。
つまりあの時、義勇の選んだ言葉が妙に刺々しかった理由とは――。
「確かに最初は……その、あれでしたけど。でもあの人は悪い人じゃないから、きつい言葉を選んだのにはちゃんと理由があるんだろうなって思って、それで考えてみたら、多分そうなんだろうなって……」
(いや分かり難すぎるだろ……)
目が見えない分相手の感情を読み取る事に長けた行冥とは違って。
よくもまぁここまで、あの口下手の真意を読み取れたものだと、天元は心の底から感心してしまった。
「ま、まぁそれならいい(?)けどよ……よくそこまで分かるな?」
「僕だけなら多分怪しかったですよ、あの人の事を教えてくれた友人がいるので」
「……その友人ってのは」
「はい、竈門禰豆子の万が一が起こった際、腹を切ると決めた人間の中にいた……真菰です」
その事も。
悩みを払拭し、キリッとした表情のまま、麗は天元を見上げながら。
「どうして黙っていたのか、一体どこで
「この後?」
天元の疑問に答えるように、麗は決意を新たに。
「これからその
「……そうか、まぁ頑張――」
「皆で鮭大根を食べます」
「何て??」
「勿論冨岡さんの奢りで」
「おう百杯ぐらい食ってこい」
本格的に就活が始まるまでには完結させたい所存……時間作って頑張ります。