【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート   作:バブ辻オギャン

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 最近追ってる石流の呪術二次がめっちゃおもろいという独り言を前書きに記します。
 こっちも負けてられん。


54.VS猗窩座・前編

 例え夢だと分かっていても、そこにある感覚はどれもが『本物』だった。

 肌を擦る布の感触、現実だからこそ感じる空気の粘性。

 香り、身体を流れる血の音も、全て。

 

「――――ッ!!」

 

 これは偽りの感覚であると。

 所詮作られたものだと、頭では分かっていても、その『痛み』は筆舌に尽くしがたい。

 頸を抉る刃の感触。

 吹き出す血潮と、痛みに絶叫する肉体の神経。

 甘露寺は、現実とそう変わらない『痛み』によって薄れゆく意識と。

 その先に訪れる偽の『死』でようやく目を覚ました。

 

「ッ、状況……!」

 

 夢。

 恐らく血鬼術か、と気づいた辺りで、甘露寺蜜璃はようやく真横から凄まじい眼力を秘めた男が覗き込んでいる事。

 その距離は正に『一寸先』である事。

 それは自分の師範である、煉獄杏寿郎である事を認識した。

 

「起きたか甘露寺!!」

「ひゃわあっ!?」

 

 見慣れ、耐性の付いた眼力ではあるが、寝起き早々に見るとなるとやはり凄まじい。

 思わず変な声を出してしまった蜜璃だが、それに反して鍛え上げた肉体は、自動的に戦闘準備を開始した。

 四十数名もの人間が消えたこの列車で、のうのうと眠っていた不甲斐なさ。

 それを払拭する為にも、夢の中での『死』の余韻を堪え、動く。

 

「し、師範!?」

「言葉は省く!この汽車全体が『鬼』かその一部!竈門少年と猪頭少年は現在、急所を探しに前方へ!」

「――はいっ!」

 

 スパン!と瞬く間に、蜜璃の近くにいた乗客を襲おうとする肉塊が刻まれた。

 ゆらりと宙を舞う桃色の日輪刀は、他ならぬ蜜璃の『恋の呼吸』の適正色そのもの。

 それを振り回し、流れるような動きで戦闘を開始した蜜璃。

 

「――状況は!」

 

 その問いに杏寿郎はすぐ答えた。

 

「この汽車は八両編成だ!俺は後方半分の四両を守る!甘露寺は前方の竈門妹と黄色い少年を頼む!」

「分かりました!」

「うむ!任せたぞ!」

 

 ドンッ!と本日二度目の衝撃が列車全体を揺らす。

 炎柱・煉獄杏寿郎と梁・甘露寺蜜璃の全力の踏み込みによる移動が、列車の八両に赤と桃の二色の線を結ぶ。

 一秒が限りなく、長く感じる極限の集中の下に。

 

(列車全体が敵!なら少しでも多く斬って再生を遅らせないと!)

 

 移動する間、蜜璃は今も尚眠る彼らを見た。

 恐らく自分と同じように、血鬼術によって夢の世界に閉じ込められているのだろう。

 近くの窓、天井、そして床からゆっくりと鎌首をもたげるようにしてうねる、醜い鬼の肉塊。

 

「させないわ!」

 

 それら全てを、とくと斬り刻む。

 

「恋の呼吸――」

 

 壱ノ型 初恋(はつこい)のわななき。

 すれ違いざまに迸る柔く鋭い斬撃。

 鞭のようにうねる、制御の困難な日輪刀を手足のように扱う蜜璃。

 

 柔い刀と柔い肉体。

 女体であるが故の『しなり』に加え、常人を凌駕する膂力を秘めた特異体質。

 

 これらが合わさる事で、蜜璃は列車内という刀を振るいにくい閉鎖空間であっても、最低限の動作と力で肉塊を斬り刻む事ができる。

 何より、必要以上に身体を動かす意味がない分、消耗する体力も最低限で済む。

 蜜璃にとってこの戦場は、不利どころか有利ですらあった。

 

「禰豆子ちゃん!あと善逸くんも!」

 

 小癪にも足元から音もなく忍び寄る肉塊も斬り、蜜璃は彼女らと再会を果たす。

 鬼に変化し、それでも人間を守る為に戦う少女の禰豆子。

 そして、最初出会った時こそ、顔を赤く染め上げつつ、自分に雨の如き褒め言葉(主に容姿)をぶつけてきた騒がしい少年の善逸。

 

「ム!ムー!」

「…………」

「ムー!!」

「ねずっ……ふがっ、ガガッ…………」

 

 口を塞いでいるせいで物理的に話せない禰豆子。

 今も尚眠ったままである為、譫言のような言葉でしか反応を示せない善逸。

 戦況こそ逼迫しているのに、肝心の彼女たちの反応はあまりにも拍子抜けするそれである。

 

「そうよね!大丈夫っ私たちならきっと守れるわ!」

 

 が、残念ながら。

 ある意味ここに常識人はいない為、それに突っ込む者は一人もいない。

 蜜璃自身、言葉になっていない禰豆子の声と善逸の声に対し『二人共お揃いでキュンキュンしちゃう』ぐらいにしか思っていない。

 戦場で気を緩めるな、と普通の人間ならば苦言を呈するものだろうが、甘露寺蜜璃は他ならぬ『梁』、現在の『柱』が九名で満員状態の為、柱になれていないだけの存在。

 何かしらの要因で『柱』に欠員が生じた場合、一切の議論を挟む事なく、蜜璃は『恋柱』として迎えられる立場。

 

 そんな強者が、『戦場で気を緩めてはいけない』という初心を忘れる筈がない。

 

 口先でこそ緩やかな気配を保ってはいるが、日輪刀を振るう速度は勿論、鬼の肉塊を抉る様子には一切の容赦がない。

 むしろ、雰囲気こそぽやぽやとしている癖に、一切躊躇する事なく肉塊を斬り刻む姿は逆に、見ている者に恐怖を与えるだろう。

 

「大丈夫だからね……!」

 

 深い眠りに落ち、起きる気配のない一般人。

 そんな彼らに言い聞かせるように、蜜璃は叫びながら狭い車両内を跳躍する。

 

「絶対守るからね――!」

 

 ()()()()()

 全集中の呼吸のように、誰しもが努力して得られる力とは違う、甘露寺蜜璃がこの世に生まれ、同時に()()()()()()()()()

 女であるが男より強く、女の身で男よりも上背があり。そんな、常人離れした膂力に比例するようにして持った食欲。

 鬼殺隊という組織においても、自分は他と違うと気づくのにそう時間はかからなかった。

 

 だが、いたのだ。

 

 自分と同じ、いやそれ以上に特異な力。

 より強大な『大いなる力』を持った人が。

 そして、それは自分がかつて、鬼という存在を知るよりも前――初めて出会った時から既に、その力を誰かの為に振るっていた事を。

 左右から襲い掛かる肉塊、一般人を喰らおうと蠢く肉塊。

 全てを斬り伏せ、走り、また別の車両へ移動する。

 

(斬ってもキリがない、どれだけ攻撃しても目立った何かもない。……となるとやっぱり前方の……炭治郎くん達が向かった先が急所!)

 

 信じる。

 あの、真っすぐで優しい少年の事を、彼らの実力を。

 彼らがこの『無限列車』に潜む鬼、悲劇の元凶を屠る事を。

 そして、その時は来た。

 

「ギャアアアア!!!!」

 

 肌を突き刺すような不快な絶叫。

 ガタガタと危険な揺れを生じる列車と、恐らく頸を断たれたのであろう鬼の声。

 それらが共振するように高まり、高め合い。

 轟!と、線路上を走っていた列車はとうとう、脱線を引き起こして横に倒れる――。

 

「ッ、恋の呼吸!」

 

 参ノ型 恋猫(こいねこ)しぐれ。

 跳び上がると同時に足元へ刀を振るう。

 三日月状の斬撃が車両の底、側面に至るまでを繊細な動きで断絶。

 列車と同化を果たした鬼がうち回る動きと、一般人のいる車両の動きを『斬り』離す事で、列車の横転による二次被害を抑え込む。

 だが、まだ。

 

「恋の呼吸 壱ノ型!」

 

 抑え込めなかった分、頭上から降って来る別車両の残骸。

 一瞬の時、蜜璃の目に映ったのは空中を舞う車両と車両を飛び交い、一般人を抱えて救助している杏寿郎の姿。

 剣士としての直感、そして師範への信頼の下に。

 蜜璃は上から降って来るそれらに日輪刀を振るう。

 

初恋(はつこい)のわななき・(ばく)!」

 

 巨大な列車の残骸を二つ、三つに分解。

 その後刃の側面を使って、斬った残骸を一つに縛り、その後身体の捻りと共に一気に力を解放。

 眠る一般人。そして他ならぬ蜜璃自身をまるで自ら避けるように、左右に分かれて自然落下する。

 

「恋の呼吸!」

 

 再び轟音。

 痛みに苦しみ、のたうち回る鬼の抵抗は、列車と融合している分凄まじい。

 更に面倒な事に。

 

「陸ノ型――!」

 

 これがただの鬼の肉体であれば。

 目前に迫る別車両を見て、蜜璃はそう思わずにはいられない。

 これが、融合などしていない純粋な鬼の肉体なら、日輪刀で斬ったその瞬間から、それは崩壊が始まる。つまり斬った後の事を、ある程度は考えなくても良くなるのだ。

 

 しかしこれは列車。

 

 鬼と融合し、鬼の身体でありつつも、同時に列車という無機物そのものでもある。

 故に日輪刀で斬っても、崩壊までに少し時間がかかるのだ。

 降り注ぐ鬼の肉片や列車の残骸。

 別車両から飛んでくるそれと同じものも含め、蜜璃は細かく刻み、斬撃で横転の衝撃も殺し続ける。

 呼吸で身体能力を向上させている自分ならまだしも、一般人にとって列車の横転とは死に届くもの。

 

「参ノ型――」

 

 ドガガガガッ!と、数秒の間に何十もの斬撃が辺りの空間を埋め尽くす。

 

「伍ノ型――!」

 

 その光景はまるで、蜜璃の身体を中心とした半円状の膜が形成されているかのようだった。

 加速する日輪刀はより速く、より柔く軌道を滑らかに変化させ、斬撃の跡から規則性を消していく。

 まるで()()()()のように。

 桃色の剣跡が人々を、そして背後に立っていた禰豆子と善逸を守り切る。

 頸を斬られ、のたうち回る鬼から動きがなくなるまでの数秒。

 蜜璃にとって、数十分にも匹敵する濃密な一瞬。

 それが、ようやく終わりを迎えた。

 

「…………終わった?」

 

 横転した車両が地面を揺らす。

 ズゥンと、重い低温が耳に響く。

 それの余韻を最後に、訪れるのは静寂だった。

 

「ムー!」

 

 蜜璃の独り言を肯定するように、背後の禰豆子が嬉しそうな声を上げる。

 右拳を上に、安堵の笑みを浮かべるその姿を見て、蜜璃もようやくほっと息を吐けた。

 

「そうだ、師範……それに炭治郎くんも」

 

 夜はまだ続いている。

 確かに、この列車に巣食っていた鬼は倒された。

 だが、夜はまだ終わっていない。続いているのだ。

 鬼は待ってくれない、いつどこから、闇の中から出でるか分からない。

 蜜璃は咄嗟に周囲を探る。そしてそう遠く離れていない場所に、件の二人を発見した。

 炭治郎は疲労困憊。

 顔色こそ悪いものの、近くに立っている杏寿郎の顔を見るに、こちらが思う程に深刻な状態ではないのだろう。

 そして当然の如く、杏寿郎には一切の傷も疲労もない。

 

「良かった……」

 

 二人に駆け寄ろうとして。

 

「しは――」

 

 ドオン!と空からそれは降ってきた。

 砂埃が舞い、隠れる者。

 だが見なくても、見えなくても肌が、これまでの経験が発する危険信号が。

 乱入者の『鬼気』を証明する。

 

「ッ――!」

 

 不穏を孕む空気。

 『闘気』背負いし背中は誰――。

 

「………………上弦」

 

 蜜璃の疑惑に、その鬼はすぐ目で答えた。

 右目に刻まれた『上弦』の文字。

 それの対となる左目にあるのは――『参』。

 

 十二鬼月・上弦の参。

 

 鬼殺隊、数百年の歴史において、あらゆる『柱』が敗北を喫した存在。

 相対した全ての()が、一切の情報を持ち帰る事すら叶わないまま、彼によって殺されてきた。

 

(嘘でしょ……どうしてよりによって、今この時に――!)

 

 直接対峙している訳でもない。

 ただ遠目に、その鬼を見ているだけなのに震えあがる身体。

 足がすくむ。

 手が震えそうになる。

 こうしている間にも、目の前では今すぐにでも新たな決戦が始まろうとしている。

 

(――でも、私は)

 

 呼吸を整える。

 意識を深く沈め、理性のすぐ近くにある恐怖心から目を逸らす。

 

 それは決して『逃げ』ではない。

 怯えは『弱さ』ではない。

 

 そんな事、もうとっくの昔に知っている。

 身をもって味わった、それを糧に自分は、今日ここまで刀を振るってきた。

 ――『()()()()()』を得た者の義務として。

 

(私、頑張るからね)

 

 自分と同じく、だがそれ以上に強い力を持って生まれた『彼女』のように。

 甘露寺蜜璃は――()()()()()()




 (余談)
甘露寺さんの精神の核ですが、実は破壊実行役がいません。
魘夢側が部下の数を増やすのも面倒だし不都合(これ以上目立たない用にする意味)だし、それにちゃちゃっと他の鬼殺隊の核を破壊した人間が続いて残った方もやればいいっしょ、的な感じ。
まぁ皆さんご存じの通り、他の人間は善逸やら伊之助やらの無意識領域があるので……


 頑張れ猗窩座殿。
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