【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート 作:バブ辻オギャン
そして本日も投稿。
その姿が見えた時には、彼の身体は勝手に動いていた。
「ただいま」
その一声がどれほど。
その笑顔が、どれだけ待ち遠しいものだったか。
着物こそ汚れているものの、顔や身体に目立った汚れや傷はなく。
五体満足で、一週間前と変わらない姿のまま、我が愛おしい弟子は帰って来たのだ。
「ッ……」
「わわっ」
自然と、抱きしめる腕に力が籠る。
出会い頭に突然抱きしめられ、真菰は一瞬だけ動揺するも、すぐそれに適応し、同じく抱きしめ返す。
その天狗の面に隠れた涙に、気づかないふりをして。
「……よく、生きて戻ったな」
「うん。ちゃんと帰って来たよ、鱗滝さん」
また、いなくなってしまうと思った。
今まで等しく愛情を、技術を注いだ子供たちは皆、あの『最終選別』を突破できなかった。
帰るのに時間がかかっているだけだ、きっともうすぐ帰って来る筈だ。
そう自分に言い聞かせ、八日、九日と日が過ぎる度に、何度心が締め付けられたか。
「本当に、よく……!」
「大丈夫、大丈夫だよ」
生きている。
怪我もなく、彼女は生きて帰ってきた。
今まで堪えてきた感情、それが一気に溢れ出すのを、鱗滝左近次は実感する。
「怪我はないか」
「もう、大丈夫だって言ってるでしょ?どこも痛くないよ」
「本当にか」
「それも『匂い』で分かるでしょ?本当の本当」
『それに』、真菰は続けて。
「鱗滝さん。私それにね、新しい友達もできたんだよ」
「そうか。友達、か」
「私、途中で疲れて動けなくなっちゃったから。あの子が
「……」
その少女の事には、最初から気づいていた。
当然、その子供は左近次の知らぬ顔。
だが真菰が行動を共にし、この狭霧山に帰ってきているという一点で、左近次は少女を不思議に思いこそすれど、警戒はしていなかった。
そして、それは実際正しい。
左近次が真菰の生還を喜ぶ傍、少女は一歩退き、こちらの空気を邪魔しないようにと気遣ってくれていたのだから。
しかし。
「だから、こんなに早かったのか?」
左近次は真菰に問う。
先ほど彼女が口にした、『
うん。と、可愛らしく頬を緩ませながら肯定する真菰に、左近次は。
「何時からだ」
「えっと、藤襲山からずっとかな?」
「もっと正確には」
「……『最終選別』が終わって、すぐ?」
――
藤襲山と狭霧山との距離は決して近くはない。
実際、真菰は早朝に狭霧山を下り始め、藤襲山に到着したのは丁度夕方。それも体力が有り余る時でだ。
そして『最終選別』による疲労。それは今まで通りの呼吸訓練や、打ち込み稽古のそれとは訳が違う。
七日間もの間、藤の花の牢獄にて、過酷な環境を過ごす事による肉体・精神の摩耗は言葉では表せない。
たとえ、左近次の全てを教え込み、立派に成長した真菰であっても。
『最終選別』後は溜まった疲労により、身体は七日前とは勝手が違う。
「ありがとね、麗」
「いいよ、気にしないで。全然疲れてないから」
麗。そう呼ばれた少女は、本当に気にしなくてもいいと、そんな風に返事をする。
『匂い』からも、それは間違いなく本心だった。
全くの疲労を感じさせない風体。
あるいは、すでに疲れを癒したのか。左近次と言えど、そこまでの事は『匂い』だけでは判別できない……が。
それでも、分かった事がある。
「麗、と言ったな」
「うん」
「歳は真菰と同じか」
「……うん」
――十三で、
『匂い』で判別できるのは、感情の機微だけではない。
その者が放つ圧……存在感の格、あるいは生命力とも言えるだろうか。
左近次がこうして顔を合わせ、ようやく詳細に嗅ぎ取れた麗の『匂い』は、今まで感じた事がないものだった。
(まだ肉体の成長も不完全な十代……だと言うのに、この肉体の『匂い』は何だ?)
鬼殺隊は、
左近次が扱う水の呼吸を筆頭に、炎や風、雷に岩も全て。
『型』の違いこそあれども、身体の強化という一点のみ、全てに共通する技術である。
当然、呼吸による強化は肺と心臓によって行われる。
空気を取り込む、血の巡りを速くする。
隊士はたくさん空気を取り込む為に、より肺を大きくする。
速く巡る血に耐えられるよう、心臓は強い方が当然いい。
たったこれだけの、単純な原理で人は文字通り、鬼のように強くなる。
だからこそ、『その可能性』はより単純明快。
生まれつきの身体的特徴。
――それは、常人より優れた心肺機能。
(この時点で既に、彼女の心肺機能は成人した男のそれを上回っている……
逸材。なんて言葉では到底表し切れない。
才能の原石。
しかも少女は、既に自身の特異性に気づいているのだろう、その佇まいと『匂い』から、それが分かる。
自身に眠る、鬼狩りの才能という名の原石を、他ならぬ自分が加工し、より一層美しさを増している。
見る者の目を魅了で染め上げる、金剛石の如き存在感。
彼女は、新たな『流れ』を生み出す台風の目そのもの。
鬼殺隊に属する者は、ほとんどが復讐者だ。
悪しき鬼の首領、鬼舞辻無惨。
彼が引き起こした悲劇の数々。
それにより、本来は一生眠っていた筈の虎や龍を、無惨は起こしてしまったのだと、ある者は言う。
決して許さない、決して逃がさないと、その復讐の炎は消えないのだと。
だが、これは違う。
違うのだ。
目の前のこれは、
左近次は初見、麗をまるで植物のようだと思ったが、それはとんだ思い違いだと確信する。
覇気も、闘気も、殺気もない。
確かにそれは、善良な人間の中でも滅多に見れない気配ではあるのだろう。
だからこそ見誤った。
大きく、あまりにも大きすぎる『それ』を、人間は自身の物差しで測れないだけ。
あの、目があった一瞬、確かに――。
「麗。君が良ければだが、今日はここに泊まっていけ」
「えっ」
左近次の提案。
それに、隣で思わず、と言った風に真菰が驚く。
「いいの?鱗滝さん、むしろ私がそれ聞こうって思ってたのに」
「同い年同士で話したい事もあるだろう。それに二人は同期だ、こういう機会は無駄じゃない」
「――うん!」
まだ予備の服が二着ほどあった事を思い出し、左近次はそれを真菰に告げる。
麗はそれほどだが、特に真菰の服は汚れがかなり目立っていたから、いっそ二人共着替えたらどうか、と。
真菰は嬉しそうに笑った後、麗の手を掴み、一緒に家屋に向かって歩き出して行った。
「…………」
同年代、友。
鬼殺隊の道は辛く険しいものだ。
昨日の友が鬼に喰われる、身体の一部を失う、なんて事は珍しい事じゃない、日常茶飯事だ。
左近次とて、現役の水柱として生きていた頃の友はもう、引退した頃には数える程しか残っていなかったし。
何より老いという名の限界もあって、現在も関わりのある友人はそれこそ、二人か三人程度だ。
だが――。
「ここが真菰の家?」
「そ、鱗滝さんの家でもあるけどね。早く行こっ」
「うん」
心の通じ合う友を見つけ、談笑によって花を咲かせる若者は数え切れない程見た。
それと同じ位、友を失い、折れてしまった者も見た。
若者同士が友好を深める光景を見ても、長い鬼殺の人生故に、その『最悪』を想像してしまうのが当たり前だった。
「…………」
だが不思議と、左近次の心は穏やかだった。
今の左近次には、そんな『最悪』は浮かんでこなかった。
――あの、目があった一瞬。
より鮮明に嗅ぎ取れた『匂い』。
現役を引退し、僅かに衰えを見せていた超感覚がその瞬間、確かに最盛期のそれへと回帰した。
その時浮かんだ想像。
樹海に一人放り出されたかのような、深く底が知れない大きな『匂い』によって、左近次が見たもの。
目があった瞬間、確かにそこにいた。
「真菰、いい友を得たな」
――自身を見下ろす、巨大な龍の姿。
家屋の中に入って、真菰がすぐに
左近次が普段着ているのと同じ、波文様と瑞雲柄の服だ。
真菰が現在着ている花柄の着物は、残念ながら一着しか余裕がなかった為、これを
麗の分も含め、箪笥から二着服を取り出し、早速着替えようと服に手をかけ――。
「ア、終ワッタラ言ッテクレヨナ」
「…………」
あの鴉、麗が『江檀』と名付けた鎹鴉が、そう言いながらそっと家屋の外に出た。
この間、僅か一秒。
その予想外の対応に、真菰は着物を半分ほど脱いだ姿勢のまま、思わず固まってしまった。
部屋の中に、沈黙の間が降りる。
思わず硬直した真菰に、怪訝そうな顔をした麗が問う。
「真菰?どうしたの?」
言葉を話す鴉という時点で既に、色々と不思議が極まっているが。それは兎も角。
あの無駄に気を利かせられる鴉の姿に、思わず言葉を失ってしまったのだ。
あの凛とした態度だけを見れば、真菰も江檀を無条件に感心しただろう。
しかしだ。七日前、『最終選別』開始前、麗に撫でられ、
なまじその光景を見ていたのもあって、先ほどの光景を見た真菰は、形容し難い何かを覚えた。
「……いや、何でもないよ」
何と言うか、食えない性格だ、鴉なのに。
と、その時。
「真菰、脱いだ服はどこに置いたらいい?」
「あー、じゃあ畳んでこっちの方に――っ」
振り返り、『それ』を見てからの一瞬は。
真菰にとってはまるで、数分の時が流れたように感じた。
――痣。
右胸を中心に、脇腹と腹部を染める、大きな赤い痣。
炎が揺らめくような、大きい点対称の痣。
真菰の動揺を
「これは生まれつきだから、別に何ともないよ」
「……そっ、か。ごめんね、少しだけ吃驚しちゃったから」
「気にしてない、むしろその反応が懐かしくて」
揺らめく模様、点対称。
身体の中心から広がるそれを見て、真菰はまるで太陽のようだと、そう思った。
「ねぇ、少しだけ触ってもいい?」
「どうぞ」
そう言って真菰は、ゆっくりと、麗の胸に優しく触れた。
初見で、真菰はそれを『痣』とは表現したが、実際触れてみた感想としては、『普通の肌と変わらない』、だった。
柔らかい、自分のとそう変わらない、暖かい少女の肌がそこにある。
物理的な皮膚の変化ではなく、触れているその箇所だけ、肌の色『のみ』が変わっているようだった。
しかし、本当に熱い――。
「……ん?」
そう言えば、こうして手を当てている時に感じる筈の鼓動はどこだ?
真菰がそれを意識した途端。
――ドクドクッ!と。
「……」
――ドクドクドクッ!!
手から伝わるのは、そんな
「真菰?」
「ちょっとそのまま!」
咄嗟に、麗の平べったい綺麗な胸に耳を当てる。
聞こえてくるのは、トクン……トクン……何て生易しい音ではない。
「……?」
じっと耳を澄ませる。
一瞬、先程聞こえたそれを『聞き間違いかな?』とも思ったが、やはり違う。
ドクドクドク……という轟音(?)が聞こえてきた。
「…………??」
一度耳を離す。
首を傾げ、もう一度耳を胸に当てて、それを聞く。
「…………????」
その時聞こえてきた音は、やはり間違いではなかった。
ドクドクドクドクドクドクッ!!という、心臓が奏でる爆音である。
「ッ!?」
真菰の動きは速く、次は麗の額に向けて手を伸ばした。
麗は相変わらず、七日前と変わらない『ぬぼーっ』とした顔のままだが、その額から発せられる熱は凄まじい。
下手をすれば、四十度を超えていてもおかしくない――!
「急患――ッ!!」
その瞬間、狭霧山が真菰の叫びで震えた。
常時体温三十九以上、心拍数二百とかそりゃ死ぬに決まってる。
主人公の将来的な身長はどれがいいか
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166cm
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172cm
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184cm