【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート   作:バブ辻オギャン

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 主人公の髪型は時透と縁壱を足して2で割った感じをイメージして下さい。
 そして本日も投稿。


9.帰還

 その姿が見えた時には、彼の身体は勝手に動いていた。

 

「ただいま」

 

 その一声がどれほど。

 その笑顔が、どれだけ待ち遠しいものだったか。

 着物こそ汚れているものの、顔や身体に目立った汚れや傷はなく。

 五体満足で、一週間前と変わらない姿のまま、我が愛おしい弟子は帰って来たのだ。

 

「ッ……」

「わわっ」

 

 自然と、抱きしめる腕に力が籠る。

 出会い頭に突然抱きしめられ、真菰は一瞬だけ動揺するも、すぐそれに適応し、同じく抱きしめ返す。

 その天狗の面に隠れた涙に、気づかないふりをして。

 

「……よく、生きて戻ったな」

「うん。ちゃんと帰って来たよ、鱗滝さん」

 

 また、いなくなってしまうと思った。

 今まで等しく愛情を、技術を注いだ子供たちは皆、あの『最終選別』を突破できなかった。

 帰るのに時間がかかっているだけだ、きっともうすぐ帰って来る筈だ。

 そう自分に言い聞かせ、八日、九日と日が過ぎる度に、何度心が締め付けられたか。

 

「本当に、よく……!」

「大丈夫、大丈夫だよ」

 

 生きている。

 怪我もなく、彼女は生きて帰ってきた。

 今まで堪えてきた感情、それが一気に溢れ出すのを、鱗滝左近次は実感する。

 

「怪我はないか」

「もう、大丈夫だって言ってるでしょ?どこも痛くないよ」

「本当にか」

「それも『匂い』で分かるでしょ?本当の本当」

 

 『それに』、真菰は続けて。

 

「鱗滝さん。私それにね、新しい友達もできたんだよ」

「そうか。友達、か」

「私、途中で疲れて動けなくなっちゃったから。あの子がここ(狭霧山)まで運んでくれたんだよ?」

「……」

 

 その少女の事には、最初から気づいていた。

 当然、その子供は左近次の知らぬ顔。

 だが真菰が行動を共にし、この狭霧山に帰ってきているという一点で、左近次は少女を不思議に思いこそすれど、警戒はしていなかった。

 そして、それは実際正しい。

 左近次が真菰の生還を喜ぶ傍、少女は一歩退き、こちらの空気を邪魔しないようにと気遣ってくれていたのだから。

 しかし。

 

「だから、こんなに早かったのか?」

 

 左近次は真菰に問う。

 先ほど彼女が口にした、『ここ(狭霧山)まで運んでくれた』という言葉に対し、無視できない要素があったからだ。

 うん。と、可愛らしく頬を緩ませながら肯定する真菰に、左近次は。

 

「何時からだ」

「えっと、藤襲山からずっとかな?」

「もっと正確には」

「……『最終選別』が終わって、すぐ?」

 

 ――()()()()()()

 藤襲山と狭霧山との距離は決して近くはない。

 実際、真菰は早朝に狭霧山を下り始め、藤襲山に到着したのは丁度夕方。それも体力が有り余る時でだ。

 そして『最終選別』による疲労。それは今まで通りの呼吸訓練や、打ち込み稽古のそれとは訳が違う。

 七日間もの間、藤の花の牢獄にて、過酷な環境を過ごす事による肉体・精神の摩耗は言葉では表せない。

 たとえ、左近次の全てを教え込み、立派に成長した真菰であっても。

 『最終選別』後は溜まった疲労により、身体は七日前とは勝手が違う。

 

「ありがとね、麗」

「いいよ、気にしないで。全然疲れてないから」

 

 麗。そう呼ばれた少女は、本当に気にしなくてもいいと、そんな風に返事をする。

 『匂い』からも、それは間違いなく本心だった。

 全くの疲労を感じさせない風体。

 あるいは、すでに疲れを癒したのか。左近次と言えど、そこまでの事は『匂い』だけでは判別できない……が。

 それでも、分かった事がある。

 

「麗、と言ったな」

「うん」

「歳は真菰と同じか」

「……うん」

 

 ――十三で、()()か。

 『匂い』で判別できるのは、感情の機微だけではない。

 その者が放つ圧……存在感の格、あるいは生命力とも言えるだろうか。

 左近次がこうして顔を合わせ、ようやく詳細に嗅ぎ取れた麗の『匂い』は、今まで感じた事がないものだった。

 

(まだ肉体の成長も不完全な十代……だと言うのに、この肉体の『匂い』は何だ?)

 

 鬼殺隊は、ごく一部の例外(鬼喰い)を除き、皆が呼吸で身体を強化している。

 左近次が扱う水の呼吸を筆頭に、炎や風、雷に岩も全て。

 『型』の違いこそあれども、身体の強化という一点のみ、全てに共通する技術である。

 当然、呼吸による強化は肺と心臓によって行われる。

 

 空気を取り込む、血の巡りを速くする。

 

 隊士はたくさん空気を取り込む為に、より肺を大きくする。

 速く巡る血に耐えられるよう、心臓は強い方が当然いい。

 たったこれだけの、単純な原理で人は文字通り、鬼のように強くなる。

 だからこそ、『その可能性』はより単純明快。

 生まれつきの身体的特徴。

 ――それは、常人より優れた心肺機能。

 

(この時点で既に、彼女の心肺機能は成人した男のそれを上回っている……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……)

 

 逸材。なんて言葉では到底表し切れない。

 才能の原石。

 しかも少女は、既に自身の特異性に気づいているのだろう、その佇まいと『匂い』から、それが分かる。

 自身に眠る、鬼狩りの才能という名の原石を、他ならぬ自分が加工し、より一層美しさを増している。

 見る者の目を魅了で染め上げる、金剛石の如き存在感。

 彼女は、新たな『流れ』を生み出す台風の目そのもの。

 

 鬼殺隊に属する者は、ほとんどが復讐者だ。

 

 悪しき鬼の首領、鬼舞辻無惨。

 彼が引き起こした悲劇の数々。

 それにより、本来は一生眠っていた筈の虎や龍を、無惨は起こしてしまったのだと、ある者は言う。

 決して許さない、決して逃がさないと、その復讐の炎は消えないのだと。

 だが、これは違う。

 

 違うのだ。

 目の前のこれは、()()()()()()()()()じゃない。

 

 左近次は初見、麗をまるで植物のようだと思ったが、それはとんだ思い違いだと確信する。

 覇気も、闘気も、殺気もない。

 確かにそれは、善良な人間の中でも滅多に見れない気配ではあるのだろう。

 だからこそ見誤った。

 大きく、あまりにも大きすぎる『それ』を、人間は自身の物差しで測れないだけ。

 あの、目があった一瞬、確かに――。

 

「麗。君が良ければだが、今日はここに泊まっていけ」

「えっ」

 

 左近次の提案。

 それに、隣で思わず、と言った風に真菰が驚く。

 

「いいの?鱗滝さん、むしろ私がそれ聞こうって思ってたのに」

「同い年同士で話したい事もあるだろう。それに二人は同期だ、こういう機会は無駄じゃない」

「――うん!」

 

 まだ予備の服が二着ほどあった事を思い出し、左近次はそれを真菰に告げる。

 麗はそれほどだが、特に真菰の服は汚れがかなり目立っていたから、いっそ二人共着替えたらどうか、と。

 真菰は嬉しそうに笑った後、麗の手を掴み、一緒に家屋に向かって歩き出して行った。

 

「…………」

 

 同年代、友。

 鬼殺隊の道は辛く険しいものだ。

 昨日の友が鬼に喰われる、身体の一部を失う、なんて事は珍しい事じゃない、日常茶飯事だ。

 左近次とて、現役の水柱として生きていた頃の友はもう、引退した頃には数える程しか残っていなかったし。

 何より老いという名の限界もあって、現在も関わりのある友人はそれこそ、二人か三人程度だ。

 だが――。

 

「ここが真菰の家?」

「そ、鱗滝さんの家でもあるけどね。早く行こっ」

「うん」

 

 心の通じ合う友を見つけ、談笑によって花を咲かせる若者は数え切れない程見た。

 それと同じ位、友を失い、折れてしまった者も見た。

 若者同士が友好を深める光景を見ても、長い鬼殺の人生故に、その『最悪』を想像してしまうのが当たり前だった。

 

「…………」

 

 だが不思議と、左近次の心は穏やかだった。

 今の左近次には、そんな『最悪』は浮かんでこなかった。

 

 ――あの、目があった一瞬。

 

 より鮮明に嗅ぎ取れた『匂い』。

 現役を引退し、僅かに衰えを見せていた超感覚がその瞬間、確かに最盛期のそれへと回帰した。

 その時浮かんだ想像。

 樹海に一人放り出されたかのような、深く底が知れない大きな『匂い』によって、左近次が見たもの。

 目があった瞬間、確かにそこにいた。

 

「真菰、いい友を得たな」

 

 ――自身を見下ろす、巨大な龍の姿。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家屋の中に入って、真菰がすぐに箪笥(タンス)の中から選んだのは、ある支給服だった。

 左近次が普段着ているのと同じ、波文様と瑞雲柄の服だ。

 真菰が現在着ている花柄の着物は、残念ながら一着しか余裕がなかった為、これを()()()のはいつかの機会にとっておこう、と真菰は内心で計画した。

 麗の分も含め、箪笥から二着服を取り出し、早速着替えようと服に手をかけ――。

 

「ア、終ワッタラ言ッテクレヨナ」

「…………」

 

 あの鴉、麗が『江檀』と名付けた鎹鴉が、そう言いながらそっと家屋の外に出た。

 この間、僅か一秒。

 その予想外の対応に、真菰は着物を半分ほど脱いだ姿勢のまま、思わず固まってしまった。

 部屋の中に、沈黙の間が降りる。

 思わず硬直した真菰に、怪訝そうな顔をした麗が問う。

 

「真菰?どうしたの?」

 

 言葉を話す鴉という時点で既に、色々と不思議が極まっているが。それは兎も角。

 あの無駄に気を利かせられる鴉の姿に、思わず言葉を失ってしまったのだ。

 あの凛とした態度だけを見れば、真菰も江檀を無条件に感心しただろう。

 しかしだ。七日前、『最終選別』開始前、麗に撫でられ、()()()()になっていた江檀。

 なまじその光景を見ていたのもあって、先ほどの光景を見た真菰は、形容し難い何かを覚えた。

 

「……いや、何でもないよ」

 

 何と言うか、食えない性格だ、鴉なのに。

 と、その時。

 

「真菰、脱いだ服はどこに置いたらいい?」

「あー、じゃあ畳んでこっちの方に――っ」

 

 振り返り、『それ』を見てからの一瞬は。

 真菰にとってはまるで、数分の時が流れたように感じた。

 

 ――痣。

 

 右胸を中心に、脇腹と腹部を染める、大きな赤い痣。

 炎が揺らめくような、大きい点対称の痣。

 真菰の動揺を()()麗は、表情を変えずに。

 

「これは生まれつきだから、別に何ともないよ」

「……そっ、か。ごめんね、少しだけ吃驚しちゃったから」

「気にしてない、むしろその反応が懐かしくて」

 

 揺らめく模様、点対称。

 身体の中心から広がるそれを見て、真菰はまるで太陽のようだと、そう思った。

 

「ねぇ、少しだけ触ってもいい?」

「どうぞ」

 

 そう言って真菰は、ゆっくりと、麗の胸に優しく触れた。

 初見で、真菰はそれを『痣』とは表現したが、実際触れてみた感想としては、『普通の肌と変わらない』、だった。

 柔らかい、自分のとそう変わらない、暖かい少女の肌がそこにある。

 物理的な皮膚の変化ではなく、触れているその箇所だけ、肌の色『のみ』が変わっているようだった。

 しかし、本当に熱い――。

 

「……ん?」

 

 ()()

 そう言えば、こうして手を当てている時に感じる筈の鼓動はどこだ?

 真菰がそれを意識した途端。

 ――ドクドクッ!と。

 

「……」

 

 ――ドクドクドクッ!!

 手から伝わるのは、そんな啄木鳥(キツツキ)の如き連打音。

 

「真菰?」

「ちょっとそのまま!」

 

 咄嗟に、麗の平べったい綺麗な胸に耳を当てる。

 聞こえてくるのは、トクン……トクン……何て生易しい音ではない。

 

「……?」

 

 じっと耳を澄ませる。

 一瞬、先程聞こえたそれを『聞き間違いかな?』とも思ったが、やはり違う。

 ドクドクドク……という轟音(?)が聞こえてきた。

 

「…………??」

 

 一度耳を離す。

 首を傾げ、もう一度耳を胸に当てて、それを聞く。

 

「…………????」

 

 その時聞こえてきた音は、やはり間違いではなかった。

 ドクドクドクドクドクドクッ!!という、心臓が奏でる爆音である。

 

「ッ!?」

 

 真菰の動きは速く、次は麗の額に向けて手を伸ばした。

 麗は相変わらず、七日前と変わらない『ぬぼーっ』とした顔のままだが、その額から発せられる熱は凄まじい。

 下手をすれば、四十度を超えていてもおかしくない――!

 

「急患――ッ!!」

 

 その瞬間、狭霧山が真菰の叫びで震えた。




 常時体温三十九以上、心拍数二百とかそりゃ死ぬに決まってる。

主人公の将来的な身長はどれがいいか

  • 166cm
  • 172cm
  • 184cm
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