……といっても、
もちろんアークナイツ基準の、ね。
「名前を呼ばれて」
突然に時間が崩れ去ったかのような、不安定な感覚。
冷たく、無機質な匂いが、私へと縋りついてくる。
重い。
体の奥に何かが沈んでいく。
音もなく、光もなく、ただ「縛られている」気配だけがあった。
息ができない。
けれど、それを怖いと思うより早く、
その感覚はもう、夢の底に沈んでいった。
声が聞こえた。
それは氷に覆われているみたいな寒さと、山の頂のような遠さを感じさせる。
「ナルシッサ、すまない」
誰?
……わからない。
記憶にもない。
次に訪れたのは、熱。
冷たさが、焼けつくような熱に変わっていく。
焼けつくような痛みが全身を走り、
骨の奥を削り取られるみたいだった。
視界は真っ白にかすみ、
そこに無数の針の影が重なっていく。
何かが弾けた。
胸の奥に押し込められていた何かが、
堰を切ったように溢れ出す。
――世界のすべてが押し出されていく感覚。
机、壁、装置、誰かの影。
それらが、
次々と宙に舞い上がり、
砕け散っていく。
私の中で意識が暴れている。
私の頭の中心から押し広げるように、
周りにあった、その全てへと形を保つことを許容しない。
「いや……いや……。
なんで……どうして!?
痛い……痛い……寒いよ!」
泣き叫ぶような声には覚えがあった。
でもそれは、すごく遠く感じる。
声はすぐに潰される。
私を囲んでいた檻は、耳を裂く轟音と共に塗りつぶされていく。
鋼鉄が折れ曲がる悲鳴。
瓦礫が崩れ落ちる音。
人の叫びも、すぐに何かに押し潰されるように途切れた。
私は見ているだけだった。
けれど、壊れていくものはすべて――私の力で。
砕けた天井の隙間から吹き込む風が、頬を切り裂く。
もう、私を囲んでいた檻に原形はない。
天災の後のように、なにもかも消え去った大地が広がる。
「いやだ……助けて……!」
その声には覚えがあった。
とっても嫌な声。
ずっと胸の奥で反響するように響いてくる。
世界を壊し、世界に守られることを望む、
醜く膨れたものを小さな箱に押し込めたような、横暴な匂い。
助けを求めても、誰も応えない。
「…………!」
世界が、崩れていく。
私のせいで。
「……ティス!」
ゴウン、と大地が揺れた。
今、私はどこにいる?
世界は崩れた。
でも大地は揺れている。
今の震動には覚えがあった。
――「ロスモンティス!」
「えっ!……えっと、ドクター?」
目が覚めた。
私の瞼の前には、いつものドクターの顔。
「ロスモンティス、うなされていたようだが大丈夫なのか!?」
汗で濡れた手に気づいた。
手はわずかに震えてもいる。
感覚が追いついてくる。
心臓は痛いくらいに跳ねていた。
胸の奥には冷たいざらつきだけが残っている。
地面の揺れを感じる。
荒野を走る車両の中、目の前にはあるのはドクターの顔。
周りを見渡せば、アーミヤや隊員のみんなの姿も見える。
心配そうにこちらを見ていたが、目が合うと小さく笑ってくれた。
その笑顔から、毛布に包まれた時のような温かさが届いてくる。
「……わからない。でも、
とっても気持ち悪くて、嫌な感覚だけが残っている。
それだけだよ」
ドクターは何も言わず、私の手を握ってくれた。
陽だまりのような匂いに包まれる。
何か怖い夢を見ていた気もする。
ただ分からない。
でも今はただ、ここにいる。
「ロスモンティス?」
そうだ。
私は――ロスモンティス。
家族や友達を守るもので、
ロドスの一員だ。
ロスモンティス
我らが小さき裁判官。
ドクターの膝
ロスモンティスのお昼寝スポット。
ロスモンティスはかわいい?
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かわいい
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かわいくない
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俺の嫁
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夢に良く出てくる
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幸せの象徴
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ただの兵器