人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
今回は同時イベントの先行プロローグです!
本編は明日から始まります!
雷が、閃いていた。
夏の折か、楽園の預かり知らぬ場にて、数多の雷が閃いていた。
『くっ───』
様々な色の雷。苛烈なる色の雷。
それらが交わり、そして怒号が如き雷鳴を穿ち、荒れ狂っていた。
『おおあぁぁーーーーーっ!!』
『くぅっ……!』
一際激しい雷と、赤き雷が交わり轟音を放つ。
『─────、─────!!』
『───────!』
その雷は言葉を交わしていた。何を語ったか、何を話したかは定かではない。
ただ、片方の雷は、鳴り響く雷鳴よりも激しく苛烈で。
片方の雷は、けして譲らぬよう鳴り響いた。
やがて幾度となく交差した雷は荒れ狂い、天地を引き裂くが如き強さと勢いを以て烈光を示す。
それらは永遠の如き一瞬。一瞬の如き永遠。
数度の瞬きの内に、それは起きた。
『ああっ─────!』
片方の雷が、荒れ狂う閃光を以て赤き雷を捉え下した。
赤き雷が、幾多に分かれた小さな稲光になって四散する。
それは所謂、『致命傷』と呼ばれるものであった。片方の雷は、それをまともに受けたのだ。
『っ、くっ─────』
赤き雷は、様々な色の雷に追い詰められていた。
『────!!───!!』
食らいついていた雷が一層荒れ狂い、いよいよ以て世界を打ち砕かんとばかりに煌めく。
『────まだ、ここで死ぬわけには…』
赤き雷は、逃げおおせ身を隠した。
『ここから、機を脱さないと…』
それは、賭けであった。
多勢に無勢に孤立無援。ここから逃げおおせるは十全で叶わない。
大いに無茶を、賭けに近い勇気が必要となる。
『………────』
それが上手く行く保証はない。
誰かの下に届くかもわからない。
ただ、ここでは死ねない理由がある。
なんとかして逃げ延びなくては、果たさなくてはならない事がある。
『宝具を……─』
この場を乗り切るには、これしかない。
赤き雷は弓矢を番え、天に構える。
『っ───』
しかし、その矢は。その宝具はあまりにも不確定かつ、届いた地に不和をもたらす恐れがある。
仲睦まじい誰かの仲を引き裂く事になりかねない、いや、その可能性の方が高い。
『───………』
己の生命をおいてでも、彼女はその不和を恥じ放つのを躊躇う。
『─────!!!』
『!』
再び、数多の雷が猛り狂う。探しているのだ、トドメを刺すために。
『…………っ』
己のために、他者の幸福を踏み躙る可能性を悔やみ、恥じながらも。
どうしても、ここから出たい。
どうしても、ここではない何処かへ。
どうしても、私は私でいたいのだと。
『───!』
その赤き雷は、決断した。
『宝具、解放───』
数多無数の雷が迫りくる。
裏切り者の赤き雷を討ち果たさんが為に。
『っっ───!!』
裏切り者であろうとも。
愚かなるものであろうとも。
それでも行きたい。
辿り着きたい。
あの母のように。
世界を救う旅路にて、誰よりも愉快で偉大な母のように。
自身にも、輝ける何かが。
自身にも、輝ける何かを。
あの遠く煌めく、星のように──。
『─────!!』
極限まで魔力を込め──
『丹塗矢よ…!』
その宝具を────
『玉依姫尊に届け─────!!』
渾身の力で、解き放った。
『!!!』
数多の雷は、それを垣間見た。
赤い流星が、雷を切り裂き天に飛び立つさまを。
『─────!!!』
大地を切り裂く天雷が如き絶叫が響き渡るが、時は既に遅い。
赤き雷は、その場より逃げ果せていた。
既に、その気配は消え去っていたのだ。
『──────────!!!!!』
怒りに次ぐ怒り。赤き雷を追っていた雷は狂乱の破壊を繰り返した。
『あらあら……私達から、いえ私から逃げ出してしまうなんて…困った子ねぇ』
『何故だァァァァァッ!!何故だ、何故だ!何故、何故何故何故何故ぇぇッ!!火雷ィイィイィイィイッ!!』
怒り狂う雷を、柔らかき檻のような慈愛がなだめる。
『許してあげましょう?彼女は何をしているか、解っていないのよ』
『フーッ!フーッ……!!』
『私達は永遠に一つ。偉大なる大母より生まれた者たち。離れるなんてできないわ。そうよね、皆?』
雷たちは、その言葉に反応を示す。
『あら、あなたも…?』
その時、一つの雷もまた空へと飛び去っていく。
『やりたいことがある、だなんて……やんちゃなんだから、もう…』
『火雷……!火雷……!!』
『もう、仕方ないわね。なら私達が、作ってあげましょうか』
柔らかき声音が、有無を言わさぬ慈愛を以てそれを作る。
『私達は未来永劫一つのもの。離れ離れになんて決してなれない』
その地───黄泉の世界において、それらは作られる。
『私達こそが正しき存在。未来永劫、永遠に私達は一つである。いくら離れ離れになっていても、未来永劫それだけは変わらないのよ』
『フゥーッ!フゥーッ!!』
『さあ、お願いね?作り上げましょう、私達の、私達だけの大切な世界の創造を』
その言葉と共に、魔力は高まりを見せ限界を越えて空間を満たしていく。
『どこに行っても、逃げられないわ。私達姉妹は一つ。私達姉妹は一緒』
その空間は完全に秘匿され、そして今はなんの影響も及ぼさない。
『私達のいる場所はここなの。ずっとずっと、永遠に…』
暗き黄泉の空にて。
鮮やかな雷達が瞬いた。
そして、夏イベ当日。
リッカ「よ、よーし!今年の夏は楽しむぞー!……ん?」
夏イベントに臨むリッカの下に…
「……ナニコレ?」
一つの弓矢が、もたらされた。