人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
エンジェウーモン『…!』
ボルバルザーク『力は弱いが見識は中々のものだな!故に後は、その見識がカタチを結ぶかどうか…』
『さぁ来るがいい!デジタルモンスターの底力!カルデアに示してみろ!!』
『柔肌の乙女だからと手心は期待するなよ?女子供もろとも焼き払ったからこその異聞帯なのだからな!!』
飛び入り乱入を果たしたエンジェウーモン、そしてキラナ。ボルバルザークのレイドバトルを勝利で終わらせるために果敢に飛翔し、戦う。
ボルバルザークの超回復はもう無い。それ故彼の体力を削り切るか、納得させられるかすれば此度のイベントは成功だ。先のトレーナーとポケモンとの波状攻撃にて、そのラインは現実的なものになってはいるが…。
『っ…!』
嵐のように振り回される攻撃、怒涛のように叩き付けられる破壊。レイドバトルの名に恥じぬ強力なボスの威厳を、ボルバルザークはまざまざと見せつける。
『どうしたエンジェウーモンとやら!究極体とやらには進化せぬのか!』
『…今は、出来ないのです…!』
『手負いか。それで尚我が前に立った勇気は見上げたものだが…』
ボルバルザークが更に、闘気を膨れ上がらせる。手負いでありながら、強大な覇気に翳りはない。
『手加減は期待してくれるなよ!戦場において万全な状態など、ほんの僅かな時にしかないのだからなァ!!』
光波や斬撃、それらを徹底的に叩き付け、嵐を巻き起こす。それらは完全体のエンジェウーモンが受ければ即座に戦闘不能へと追いやられる無慈悲なる極限。
『はぁぁぁあっ…!!』
エンジェウーモンはキラナを擁しながら、必死にその嵐を掻い潜る。その身のハンデを押すように。
(確かに私は今、究極体にはなれぬ身…。しかし、それでもこの介入は無謀ばかりの特攻であるつもりはありません)
懸命に矢を放ち、ボルバルザークに抗いながら、エンジェウーモンは戦う。
(ロイヤルナイツの皆様には、一人での力だけでなき道を。カルデアの方たちには、デジモンの可能性を示すために…)
『頑張れ、エンジェウーモン!一緒だよ!』
傍らのキラナの声援を受けながら、エンジェウーモンは示す。
(力を合わせることの意味と真価を示すために、この戦いに身を投じたのですから…!)
掻い潜る攻撃の最中、エンジェウーモンは見出す。嵐の如き攻撃、その目たる間隙を。
『あそこだよ、エンジェウーモン!』
そして同時にキラナも、その間隙に叩き込む攻撃の位置を示す。彼女の指示と同時、エンジェウーモンは動いていた。
『ぬぅっ!?』
それは、ボルバルザークの攻撃の懐。大胆不敵にも、彼の眼前、その中心。
『一矢報いる。人の示した言葉です』
『なんと…!』
そして、放つ。必殺の一撃。
『ホーリー!アローッ!!』
聖なる力を込め、放たれしエンジェウーモンの全身全霊。
『ぐっ!!』
それは深々と片角に刺さり、これを貫く。完全体たるエンジェウーモンが、確かにボルバルザークに手傷を負わせて見せた。
『やった!』
『いいえ、まだです!』
キラナの喜びも束の間、ボルバルザークの闘志が更に膨れ上がる。
『いいぞ、デジモンと人の絆!!それが究極体のロイヤルナイツ共と同じ真価を発揮してみせた!そうでなくてはな!!』
がばり、とボルバルザークは口を開く。
『───!』
『まずは受け取れ!返礼の一撃を!!』
そして放たれる、渾身の火焔。ドラゴンならではの技能が、万を持して照射される。
『くぅぅうっ…!!』
『エンジェウーモン!』
キラナが素早く光輪を展開し防御に入るが、それでも減衰はしきれない。彼女の手を、身体を火傷に追い込んでいく。
『そして───ぬうっ!!?』
瞬間、ボルバルザークが全く予想だにしない方向から攻撃が飛び、ボルバルザークのブレスを中断させる。
『いいぞ、飛び入りか!これは──』
人の技ではなく、ポケモンの技でない。これを放った存在は、エンジェウーモンの傍らに。
【大天使はいけすかない奴かと思ってたけど、意外と熱くて柔軟な部分もあるのね。見直したわ】
それは、レディーデビモン。大天使たるエンジェウーモンと対を成し、対立関係にあるデジモンだ。
『レディーデビモン…!やはり、カルデアには既に七大魔王の手が…!』
【まぁ、そういうのは後回しにしましょ。ロイヤルナイツがカルデアにノーセンキューなんて真似は避けるべきでしょ?お互いに】
レディーデビモンは、キラナに問う。
【どう?あなたの不調なパートナー…アタシの力を重ねて補ってみない?】
『ほぇ?』
【エンジェウーモンと、レディーデビモン…進化とはまた違う『ジョグレス進化』ってのができるのよ。パートナーありきの方法でね】
『……』
『フッ、井戸端会議とは余裕だな。いいだろう、暫し待ってやる。そして──』
ボルバルザークは、初華に合図を見やる。
【本来の力に追従できるかは未知数だけど、少なくともエンジェウーモンの姿だけでやっていくよりはマシなはず。どう?やってみる?】
それは、レディーデビモンの提案にして謎の目論見。キラナは彼女自身に問う。
『エンジェウーモンは、どう?』
デジモンには個体差が存在する。在野のエンジェウーモンとは格が違う、三大天使の内の一体たるエンジェウーモンの彼女が、対抗種族たるレディーデビモンと一つとなること。それは一般デジモンの進化とは訳が違う。
故にキラナは問うた。それは、彼女のアイデンティティに類するものだから。
『───私の心は、決まっています。キラナは、アジ・ダハーカやアンリマユたる者達とも手を取り合っていた』
そしてカルデアとは、善悪を越えて大義を成す組織。そう信じ、自身はデジタルワールドを越えてきた。
『そのキラナをパートナーとして選んだ私が、どうして貴方を拒めましょうか。レディーデビモン』
【それじゃあ、やるのね?】
『はい。このカルデアに在籍する時のみ…私はこの身に、闇を受け入れると誓いましょう』
オファニモンには今、天使型のデータを掌握されたが故に進化できない。
ならば、自らの矜持ではなく本当に大切なものを護れる力を有する。
【ふふん。あの高慢ちきなセラフィモンや不安定なケルビモンじゃこうはいかなかったでしょうね。それじゃあ──】
その時、初華よりキラナに、ボルバルザークを害した報酬が送られる。
『おぉー!』
それは、清く輝くデジヴァイス。エンジェウーモンの力を引き出す、大切なツール。
〈それを、使って〉
『ありがとう!よーし!』
キラナがデジヴァイスを、高々に掲げる。それに呼応し、エンジェウーモンとレディーデビモンが飛び立つ。
『エンジェウーモン!』
【レディーデビモン!】
キラナのデジヴァイスが光り輝き、二人のデジモンを包む。
『【ジョグレス進化─────!!】』
光と闇、ワクチンとウィルス。種族の垣根を越えた、新たなる道。
『──────マスティモン!!】
デジタルワールドに未曾有の危機が訪れたとき、相容れない天使型デジモンと堕天使型デジモンが手を取り合い、ジョグレス進化を果たした姿で現れるという天使型デジモン。
右は聖なる力、左は邪悪な力を有する12の羽を持つ、マスティモンがここに顕現する。
『ぐはははははははァ!!そうだ、それだ!!一人で及ばぬ力を、力を合わせて更に限界を越える!!それこそが、モンスターの醍醐味だ!!』
ボルバルザークは喝采と共にマスティモンを歓迎する。それこそが、カルデアが求めているもの。超克であると。
『貴方は粗野に見えて…私達を信じてくださっていたのですね】
『共に戦うに相応しいかを見極める。それが此度のレイドバトルの本質よ!異なる種族が起こす奇跡!我等にはない力を見出だせて何よりだ!』
そしてレイドバトルは、ポケモンとデジモンの真髄を見出しクライマックスを迎える。
『さぁ見せてみろ!!宴の締めに相応しい力をなァ!!』
『キラナ。行きますよ!】
『おー!』
カルデアのみの究極体、マスティモン。
善悪超克の誓いが、ボルバルザークへと飛翔する──
アグモン「そうか…!忘れていたよ!」
ガブモン「オレたちも、ああやって人と力を合わせてたよな」
ブイモン「カルデアに入れたら、まずは皆と話し合わなきゃね!」
ギルモン「うん!」
「ならば今は、マスティモンに続くため…僅かなれどの助力を!」
カルデアス『サーバー・イグドラシルより要件を受諾』
『ゼボリューション、開始いたしますか?』
『『『『『おうっ!!』』』』』
『了解。X抗体プログラム──起動』