人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
『やぁ。待っていたよ。□□の□』
『もう、このカルデアスは致命的に壊れてしまっているけれど…』
『何か、知りたいことがあるのかい?』
〜
『…そうか。君達は君達なりに、人理を保障したいんだね』
『私はただの案内人。何ができるでもないけれど。せめて、『教える』ことは叶ったよ』
『それでは、さようなら』
『そうすることが解っているなら、そうするだけのものにする』
『私の理想を…君達は、叶えられるかもしれないね』
彼の者は、至天の座にて世界を観ていた。
遍く世界、宇宙、銀河、それら全てを見つめていた。
それらは生まれ行く世界、生まれ行く銀河、生まれ行く星々の全てを見つめていた。
それを成し遂げる力があり、それを成し遂げる格があり、それを成し遂げる権能があった。
それらを以て、それらは自身を『遍く世界を満たすもの』と定義していた。
確信していたと言ってもいい。
自身らが世界に在るのではなく、『自身らに世界がある』と全てを定義していた。
世界とは、自らから生まれ行くもの。
生命とは、自らから満ちていくもの。
それらを、世界において共通の真理と信じきっていた。
それらにおいて、世界が自らの思うままに動き、運用される事は『真理』であった。
自らの望むまま、思うままに運行される世界こそがあるべき姿。
それを果たせぬ世界など『存在していない』。初めから、それらの視座はある意味究極の域に在った。
究極の【無慙無愧】。
己は正しいのだから悔いない、顧みないのではない。
『己の正しさから万物の真理は生まれ出ずるのだから、悔いる必要はなく、顧みるものなど何もない』
己における全ては世界の真理。己は真理、全ては自ら生まれ出るもの。
故にこそ、ある意味でそれは誰よりも、何よりも『神』に相応しい存在であった。
〜
それらを崇める世界があったとしよう。
善き信仰を贈り、善き信徒が満ち、善き世界があったとしよう。
それらを観て、それらは何一つ感慨を浮かべることは無い。
何故ならば、それらは当然を越えた当然。息をすること、生きることと同義な『摂理』である。
むしろ、それらをみてそれらは嗤うのみだ。
『下らぬ生命が、漸くまともな生きる理由を得た』
『それらは、我等の光輝と威光があって漸く下等な命から前に進むことができた』
『雛鳥のように無様であれ。赤子のように白痴であれ』
『お前たち被造物は、そうして漸く生きるに値するであろう』
満足気に、それらは頷く。
猿がようやく手を使う事を覚えた事実を、言祝ぐのだ。
〜
それらを知らない世界があるとしよう。
その光を知らず、その輝きを知らず、それらを知らずに想い想いの神を、営みを、幸せを謳歌する世界があるとしよう。
それらは深く、深く嘆くだろう。そんな世界を、生きる人々を嘆くだろう。
『ああ、お前達はなんと無知蒙昧なのだ』
『我等を知らず、我等を敬わず、我等を讃えず、我等を賛じない』
『憐れなる者達よ、その生命に意味をくれてやろう』
それらは、その世界を救うだろう。
隕石を落とし、営みを壊し、星を砕き、民を殺め、永劫の苦しみに落とすだろう。
悉くの生命を破壊し、殺め、死に絶えさせるだろう。
そして、それらは輝ける光を以て告げるだろう。
『お前達は今、我等の尊き輝きと顔を垣間見た』
『お前達の人生には、輝ける意味が生まれた』
『『我を知らず蛆のように蠢く生よりも、我等が輝ける光にて死に絶えた』』
『おお、それはなんと素晴らしい生であろうか』
『『我等に触れることの出来たお前達は幸福である』』
『しかし、お前達の魂は地獄に堕ちるだろう』
『我等を、僅か一瞬であろうと知り得ず生きていた事』
『それこそが、地獄の最下にて永劫苦しむべき罰である』
『我等が与えた、無価値で無意味な生命に齎してやった救いに対する、当然の対価である──』
〜
使命を果たせなかった使徒がいたとしよう。
神に殉じながら、その使命を仕損じた生命があるとしよう。
使徒は赦しを請い。救いを求めるであろう。
『悔やまずともよい、嘆かずともよい』
それらは、輝きと共に告げるのだ。
『我らは完全である。おまえは不完全である』
『おまえの、おまえたちの完全は我等であり、おまえたちの不完全はおまえたちである』
『故にこそ、何を詫びることなどない。我等は完全である。我等は完璧である』
『おまえの失敗はおまえのもの』
『我らの世界は完全にて満ちている』
『おまえの様な不完全など、我らの中には存在すらしていない──』
使徒は問う。何故我を選びたもうかと。
それらは告げるだろう。
『意味などない』
『ただ、お前がひたすらに───』
『我等より、下等であったが故なのだ──』
〜
彼等に歯向かう世界があったとしよう。
その傲慢を悪だと断じ、その傲岸不遜を打ち祓うのだと、立ち上がった世界があったとしよう。
それらは、深く深く嘆くだろう。
『なんとおぞましい。彼等は何も理解していない、しようとしていない、理解出来ないのだ』
その生命達の勇気を、誇り高さを、高貴さを、断じるだろう。
『下等は下等なりに、劣等は劣等なりに、我等の輝きと救いに盲従していればよいものを』
下劣な畜生どもとし、その叛逆に、救いの光を齎すであろう。
『そのような生命では、今を生きるも苦しかろう』
救いは星を砕き、銀河を消し去り、未来永劫の世界の可能性を摘み取り奪い去るであろう。
如何なる歴史、如何なる歩みを極めた歴史であろうと、それらは当然の様に消え去り滅び去るであろう。
ネガ・クオリア。
全ての主観的な現象に対する特効を有する。
あらゆる全ての感覚、あらゆる全ての世界の事象、あらゆる世界の因果律に対し、一方的に絶対性、決定権を有する権能。
それらにとって、相対した世界は全て『下等』であり『劣等』であり。
滅ぼし消し去る事は『善き事』であり『救済』であると決定される。
自らの決定は真理であり、道理であり、無二の正解である。
それらは、それにより遍く無数の銀河を、世界を『救済』した。
そして、やがてそれらが宇宙の【破滅へ向かう意志】を呼び起こす程に。
全知全能という、それらの『主観』を超える『客観』無き世界には。
それらを打倒することは、けして叶わぬのだ。
〜
伽藍洞の星があるとしよう。
そう動くだけの世界があり、そう動くだけの生命があり、そう保障されるだけの星があるとしよう。
それらは、その保障に激しく激するであろう。
生命とは、中身があってこそ生きている。
生命とは、生命が有する意味に沿って生きている。
それらを喪い、宇宙を白紙化する傲慢を決して見過ごすことは出来ないと。
ならば、それらにとっての生命とは、星とはなんであるのか。
『遍く全ての生命は我等を讃え、我等を敬い、崇め、賛美の歌を歌うためにこそ生きているのだ』
それらは、比類無き魂と霊があってこそ果たされるものだ。
中身がない生命などに、捧げられるようなものが生まれるはずもない。
中身は必要なのだ。『偉大なものを偉大と認識し、自らを矮小な下等とする程度の知恵』が備わっていなくてはならない。
中身をどうでもよいとする理念と、それらは似て非なる。
『正しき中身であればどうでもいい』。
見た目も、人格も、精神も、人生も、生き様も。
それら全てが、自身に相応しい中身であればそれでよい。
例え肉人形であろうと、異形であろうと。下等であろうと。
『自身より劣っているなら、それらは全て愛しく尊い』
むしろ、正しからぬ生命など存在することはない。
何故なら、正しくないと断じた生命にそれらは慈悲を齎す。
宇宙や銀河、世界における可能性すら奪ったその後に。
心よりの福音を齎すのだ。
『お前たちという不完全さは、我等の完全にて浄化された』
『お前達の魂と生命という不完全は、我等の完全をより美しく、誇らしく彩るであろう』
『ありがとう、愚かなる生命よ。ありがとう、劣等なる者達よ』
『我等の完全なる世界の、無様な不完全となってくれてありがとう』
『生まれてきてくれて、ありがとう──』
その輝きは、真化せし人類を探している。
宇宙と合一し、次元の高身へ至った人類。
それらを、祝福するために。
『下等にしてはよく頑張った』
『漸く、自らが治めてやる程度には利口になった』
『お前達こそが相応しい』
『その中身は、我等の『保障』にふさわしい──』
それらの人理保障とは。
自らを讃える福音を、千年先まで謳わせること。
そう動く事しかできないようにし。
そう動く事こそが幸福であるとする。
それこそが、それらの人理保障。
『人理礼賛至高天モルト・ハレルヤ』
宇宙の外なる宇宙の座に在る者が、全宇宙に齎さんとする…
人理をはるか千年保障する、救済の窮極である。