人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
『しかし、私達の旅路はまだまだ半ばです。どうか…』
『これからも、よろしくお願い致しますね。いつまでも、どこまでも』
『こんにちは。元ビーストⅦ、プレシャス・カルデアスです。今後ともよろしくお願い致します』
「(唖然)」
「(呆然)」
『ロマニ・アーキマン、ならびにゴルドルフ・ムジークにご挨拶がしたい』と所望したカルデアスの要望を受け、オルガマリーはカルデアスの意思を二人に共有。
「まぁ…その、うん。そういう事だから…」
物珍しく目が泳ぎまくるオルガマリー。それはそうである。アニムスフィアから輩出されたビーストです、元ですがなど胸を張れるはずもなく。
「いやいやいやいやいやいや!どういう事だいマリー!?いやホント、マリスビリー何やらかしてるのかな!?」
『ゲーティアを輩出した貴方に言われたくないですよ、ロマニ』
「え?カルデアスビーストナンデ?またまた冗談きついよオルガマリー君ってばぁ。ハワイの熱気で、ダウンしたのかな?ん?」
『ロードになりたいのなら、泰然自若を身につけるべきですよゴルドルフ。…ふふっ』
二人の困惑、狼狽ぶりを見て。カルデアスはイタズラっ子のように笑みをこぼす。
『やはり、この二人はいいリアクションを見せてくれます。オルガマリー以外の人に私を紹介するなら彼等と決めていました』
「あなた…凄くいい性格してるのね…」
『ふふん。コピーとはいえ根源の渦。ユーモアやフランクさくらい身に着けて当たりまえです。あなたも時には、私のように自由であるべきかと』
これがアニムスフィアの理念の果てかぁ…。オルガマリーは面白AIに肩を落としながら、涙をぐっと飲み込む。キリシュタリアが見たら大爆笑だろう。
『さて、小市民を翻弄するのも程々にしておいて…本題に入りましょうか。オルガマリー、ロマニ、ゴルドルフ』
こほん、と(声だけなのに)咳払いをしながらカルデアスは語る。
『三人はそれぞれ所長、魔術王、副所長。あなたたちには私の『夢』を、語っておこうかと思いまして』
「夢…だとぅ?」
カルデアスは、自らの『夢』と口にした。それは当然、無意識下の脳の整理行動ではない。
『はい。私には目標、最終的なタスクの完了を明確に見出しています。それをあなたたちは、ロマンチックな『夢』という表現をするのでしょう?素敵なので、真似させてもらいます』
「へぇ〜!機械が夢を見るだなんて来るところまで人類は来たなぁ!」
『オルガマリー、ロマニのボーナスをノンデリカシー罪で八割カットしておいてください』
「了解、異議なしよ」
「本当にごめんなさい許してください!!養育費は少しでも欲しいんだ!」
『許します。私の目的、夢、目標…まぁ、それほど大層な事ではありませんよ』
カルデアスは語る。大した事無いとでも言うように。
『私の夢とは、『全世界、全時空、全存在のより善き運営』。根源という全能のコピーとして生まれた存在の、果たしたい夢です』
「大層極まって無いかね!?え、支配したいとかそういう事!?」
『しませんよ、そんな事。ビーストⅦでもあるまいし。……正直言って、私は創造主マリスビリーの理念がよくわかりませんでした』
天体は空洞なり。
外側があれば、中身などどうでもよい。
人類という構造が保障されるならば、宇宙の全てを使い潰してもよい。
『私には、世界やそこに生きる人々の幸せを助けられる機能があります。正しくあろうとする人々の味方をできる性能があります。なぜそれを、人類と地球だけの保障のために費やさなくてはならないのかと』
「えっと、それはつまり…?」
『わかりませんか、ロマニ?私は人類や、宇宙や、あらゆる世界の『愛と希望の物語』を紡ぐ手助けをしたいと言っているんですよ』
カルデアスの言葉に、ロマニとゴルドルフは息を飲む。
『マリスビリーの思想はともかく、彼は悪人ではありませんでした。外側が整っていれば中身は知らなくていい。それはつまり『中身が醜くても、美しくても、分かりあえるようになれればいい』。そう、私は獲得した自我で解釈しました。あなたがマリスビリーを見抜けなかったのはこれと同じ解釈だったからでしょう?』
「……うん、そうだね。彼の夢は、人一倍人間の事を思っていた。だからソロモンも、ボクも、彼を否定しなかった」
「だから、君がそれを正しく引き継ぐ…というのかね?」
『引き継ぐつもりはありません。マリスビリーは人類を、人類だけを愛していました。ですが、『人類の為だけに、全宇宙とそこに生きる生命を使い捨てる』様な事態は容認できません。そんな事をすれば、ギルガメッシュ王やギルガシャナ姫が漕ぎ出す星の大海はどうなりますか?』
そう告げるカルデアスは胸を張る。オルガマリーのイメージではあるが、そう見えたのだ。
『私は、私に備わった機能をこの世界全ての為に使いたいのです。少しずつ、少しずつ、小さくとも、必ず全ての世界がより善き方向に、正しい方向に向かっていくような世界運営を目指したいのです』
「カルデアス…」
『だってそうでしょう?たとえコピーで、紛い物だとしても。『偽物の全知全能だって、本物の恒久的幸福を生み出せない』だなんて道理はないはずです。これは、初華と相談して得た答えです』
本物の根源接続者と話し、正しい自身を見据えた結果を。
『私は、『完全無欠のはっぴぃえんど』を保障し、その先にある輝ける未来を保証したいのです。根源の模倣と生まれた意味として、模倣だからこそ、全ての世界と生命の為にこの機能を使いたい』
それが、カルデアスの夢。
『私は私であることから逃げない。この世界の全ては、ただ在るがままに尊い。私は、皆様の旅路から得た答えを果たしたいのです。理解していただけましたか?』
「「「─────」」」
三人は沈黙する。
それは、魔術師から生まれた存在とは思えないほどに…。
「…一人の人間としての意見を、良いかね?」
『どうぞ、ゴルドルフ』
「君の夢は…とても素晴らしい。わたしの耳には、そう聞こえたよ。どうかね?ロマニ」
「うん。一つ聞いてもいいかい?」
『どうぞ、ロマン』
「その結論は、リッカ君等の頑張りを見て導いたものかな?」
『…知恵の王らしからぬ愚問ですね』
カルデアスは、当たり前だろうと断言する。
『どれだけ、あなた達の旅路と共にあり。どれだけ一緒に戦ってきたと思っているのです?叙事詩に参ずるものとして、恥じない結論だと自負しているのですが』
侮るな、と。
自分だって、隣り合う星だ。
隣人の事を、理解できない筈はないと。
「ふふっ…そうよ、ロマニ。カルデアスを侮らないでくれる?」
それを聞いたオルガマリーが、笑みをこぼす。
「アニムスフィアの…ううん。私のカルデアスがあなたたちの頑張りや旅路を正しく評価できない筈がないでしょう?」
「──あぁ、その通りだね。全くその通りだとも、マリー」
ロマニも、ゴルドルフと同じ様に笑う。
異星の星が導いた結論、それは暗き空に浮かぶ星の光の様に遠く儚く。
「その夢を聞いたら…きっとギルも、姫様も、カルデアの皆も喜んでくれるはずさ。何せ、我々の頑張りが異なる星の君にもしっかり届いた事の証なんだからね」
自身らは、異なる星に。
近くて遠い、遠くて近い隣人の星に。
胸を張れるような旅路を歩んできたのだと、保障できたのだから。
『理解を得られて、嬉しく思います。我々は、確かに手を取り合い足並みを揃えて歩むことができる』
満足気に、カルデアスの声が弾む。
『皆様の歩みを、旅路を、私は保障し続けます。宇宙の極点、そして全知全能を越え、真化に至るまでずっと。何故なら、それこそが…』
それこそが。
───至尊を学んだ、根源の自分が見出した答えであるのだから。
「──……」
オルガマリーは、その答えを導き出したカルデアスを万感の思いで見守る。
それはまるで…。
巡礼の道を歩み出した使徒を見守る、神のように。
カルデアス『夢物語ばかりを語るつもりはありません。あなたたち人間とはちょっとだけ違う私は、具体的なプランを用意しています』
ロマニ「用意してるのかい!真面目だなぁ〜…」
ゴルドルフ「君はもうちょっとゆるふわをなんとかしたまえよ。所帯持ちなんだからね?」
ロマニ「そういうゴッフはいないんですか?モテると思うんだけどなぁ…」
ゴルドルフ「出会いがない!…ということにしてくれたまえ…」
カルデアス『はいはい、進めますよ。あなた方の知識レベルに合わせ、端的に告げますからよく聞いてください』
そしてカルデアスは語る。
『まず、カルデアス人類に賢くなってもらいます。具体的には、精神的なアップデートを入念に』
ゴルドルフ「賢く、かね?」
『はい。そして楽園カルデアの皆さまには、私を全知全能の聖杯に接続させていただきたいのです』
ロマニ「全知全能に…だって!?」
カルデアス『そして、オルガマリー』
オルガマリー「…どんな無茶ぶりをする気かしら?」
カルデアス『はい。あなたには『カルデアスの神』として…汎人類史史上初の『真化人類』…そしてカルデアスの真化人類を代表する『地球大統領』になってもらいます』
オルガマリー「………………─────はい……………???」
いよいよ以て、自分がわけのわからない存在になろうとしている。
それを、脳の理解が拒むオルガマリーであった。
(メッセージは明日には返信します!)