人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
初華『?』
カルデアス『地球大統領、U‐オルガマリーの事です。あちらのオルガマリーは、自分を宇宙人だと自認…いえ、確信しています』
初華『………』
カルデアス『ですが、オルガマリーはカルデアスの心臓。宇宙人だなどとはあり得ません。彼女に、どのような精神改革が起きたのですか?』
初華『………(ふるふる)』
カルデアス『初華?』
初華『(ふるふる)』
カルデアス『…………そう、ですか』
『分かりました。U‐オルガマリーに【何が】あったのかは…』
『こちらのオルガマリーの共有をしない為に。私も記憶致しません。それでよろしいですね?』
『(こくり)』
『………ありがとう。初華。流石は私のオリジナルです』
『私と、オルガマリーを…労り、護ってくださって』
『バカンス中に仕事の話を振られるのも嫌でしょう。なるべく簡潔、端的にお伝えします。私のプラン…計画を』
カルデアスが伝えた、人理保障のプラン。カルデア中枢の皆に提唱されたものは、彼女が根源の写し身として考慮、考案したもの。
「う、うむ。では質問だ。カルデアス人類を賢く、精神的なアップデートをするというのは…どういう事かね?」
ゴルドルフの問いに、カルデアスは図式を頭に直接叩き込む形で説明する。
『はい、お応えします。精神のアップデートとはつまり『人類種の高次元へと向かう霊的な昇華』とお考えください』
「???」
『あらん限りの『希望的観測』をお考えください。資源問題の開発。戦争根絶、統一国家建国。宇宙進出。子供の頃から大人になる時捨ててしまう『夢物語』。それを叶える力を持ってもらうのです』
「せ、精神的になんとかなるものなのかねそれは…?」
『できます』
カルデアスは断定する。
『あなた達が出来ています。私は皆様の精神的な成長をモデルにし、それを『カルデアス人類育成方針』として人類達を運営します』
「…我々が、精神的サンプルケースという事かね?」
『はい。皆様は困難を越え、旅路を進んでいくたびに多大な成長、アップデートを行います。それは困難に挑む時に不可欠な『相互理解における一致団結』。それを、カルデアス人類達に少しずつ呼びかけていきます』
人類の保障をしなくなった以上、カルデアスリソースを全て真化の為に注ぎ込むのだと彼女は告げる。
『尋常ではないシミュレートが行われるので、機能の95%をこちらに回します。残り5%は初華に託し、皆様の『あと一息』を後押しするサポートに回していただきます。旅路を大幅に助ける事は残念ながら不可能になります。ごめんなさい』
「いや、いいとも。ならばつまり、我等は数多の困難、特異点や異聞帯を制覇し君にデータを送ればいいのだね?」
『はい。よろしくお願いします、ゴルドルフ・ムジーク副所長。オルガマリーはあなたの持ち込む暖かい料理と気遣いを心待ちにしていますので』
「か、カルデアス!もう!」
オルガマリーの心はカルデアスに共有されている。デリカシーなど、ない。
「…ほっ…おじさんのセクハラと受け取られてはいなかったようだ…」
「あ、ボクも好きですよゴッフのフレンチ!是非これからもよろしくお願いしますね!」
「嫁に作ってもらいなさいよ全く!」
「じゃあボクからも質問だ。全知全能の聖杯を求めていたけど、きみは何を願うつもりなのかな?」
『はい、お答えします。ロマニ・アーキマン』
カルデアスは、ロマニに自身の答えを返す。
『私は全知全能の聖杯を通し、まずとある概念を抹消します』
「ま、抹消?穏やかじゃないなぁ…何を消したいんだい?」
『『異聞帯』という概念です。宇宙の容量的な問題から発生する世界の剪定現象、それに並ぶ事象を抹消したいのです。いえ…超克、というべきでしょうか。私という、疑似根源の存在を接続すれば…全知全能にて、それは叶う』
初華に問い、彼女は頷いた。『全ての世界に、可能性を齎すことはできる』と。
「お、大きく出たね!?でもそれは、あらゆる世界を容認し、可能性を飽和させるということでもあるんじゃないかな…?」
『スパイラル・ネメシス。螺旋力の進化飽和による宇宙消滅現象を危惧しているのですね。ご安心ください。既に初華と協議しています』
彼女は本物の根源と触れ合っている。ならば、彼女のプランの疑問には答えがある。
『『飽和などさせなければいいのです』。私と、初華。私達二つの根源から引き出された力を全知全能の聖杯に注ぐ事で、破綻を超克してみせます』
「エントロピー熱量を解決するつもりかい!?いや、聖杯には具体的な指向性、計画性が無ければ願いを叶える力はない。そんなエネルギーがあるだなんて…」
ハッ、と。ロマニが顔を上げる。
「プレシャスパワー…!!」
『はい。よくお気付きになられました。この世界にて、フォウ君が生み出したあの奇跡のエネルギー。あのエネルギーを、私と初華が全知全能の聖杯に注ぐ燃料として生成してみせます』
彼女と初華は見通しをつけていたのだ。あらゆる燃料、あらゆる奇跡、遍く全てを救いうる物質を。
『今はフォウ君しか生み出せない希少極まるエネルギーではありますが…全知全能の力と、私の機能に懸けて必ずや無限生成を果たしてみせます』
「となると、ギルガシャナ姫の成長は不可欠だね」
『はい。精神のアップデートと共にどうか御把握ください。皆様の旅路は、真なる真化の道を歩むものなのだと』
歩み、わかり合い、尊び合う。そういった奇跡の果てにこそ、真化と全知全能は待つのだと。
『全知の聖杯は、まるで猫の気まぐれのように行方知れずであり、最後の難関であるシンカを果たしたビーストΩが立ちはだかりますが…皆様なら、必ず勝てます』
「え!ビーストΩって真化してるのかい!?」
『現象的には、といったところです。あの終極の獣は、神が作るはずであった生命と世界の雛形にして世界卵だった楽園の全生命と物質的な吸収融合を果たしていると初華は言っていました』
まず、偽神は世界を一つ作った。ビックバンから始まり、特異点を越えた一巡するまでの宇宙を。
そして、それらと世界の骨子であった神の楽園…エデンの生命。全ての生命体の始祖を物理的に取り込み、吸収。自身とした。
『内部に全宇宙、全因果律、全生命体を内包する超々々集合魂魄体。擬似的かつ短絡的な手段ながら、それ故自身より低次元な物質体に圧倒的な特効を持つビースト。何故そのような違法建築と無茶をして自我消失や精神崩壊を起こさないのか理解できないほどの『単純極まる絶対的な障壁』』
それこそが、ビーストΩの一端。宇宙に巣食う偽りの神たる獣だと。
『そんな存在と対するには、自身らも高次に至るしかない。そこであなたです。オルガマリー』
「地球……大統領?」
いや、まぁ衣装あるけど…諦めたようにオルガマリーが疑問を問う。
『はい。シミュレートがうまくいった暁に、カルデアス人類はきっと『ある選択』を必ず取ります。彼等が、真化に至れたならば』
「ある、選択…」
『その際、あなたはカルデアスのメインシステム…心臓、神として全ての情報。いえ『願い』を受け取る筈です。その願いを受け取る、『異星の神』とお成りください』
「……アイリーンならともかく、私が神の器とは思えないわ。というかビーストΩのせいで神の称号が全然嬉しくないんだけど!」
『オルガマリー!?私はただのオペラ歌手よ!?』
『はい。あなたの根のネガティブさは知っています。神だなんてあなたには似合わないでしょう』
「え、バカにされてる?」
『だから大統領なのです。地球国家元首にして、カルデアス人類とカルデアを繋ぐもの。カルデアス人類の全てを背負い、立ち上がるトップ』
それ故に、地球大統領。カルデアスは自信満々にオルガマリーに告げる。
『カルデアスを代表する、異星の人類として…相応しい称号でしょ?』
「────はぁ…なんだかあなた、トンチキを大真面目にいうからツッコミに困るわね…」
『褒め言葉として受け取ります』
「解った、解ったわよ。マシュはグランドシールダー、リッカは魔法使い。2人はとんでもない成長を遂げた。それなら──」
パチン、と頬を叩く。
「やってやるわ!神だろうが大統領だろうが望むところよ!虚空には神ありきならぬ!異星には神ありき!やってやろうじゃない!!」
「「おお〜!」」
オルガマリーは決意する。
カルデアどころか、人類の『トップに立つ』ことを。
「それに…!大統領衣装!割とカッコよくて気に入ってるし!また着たいと思ってたのよね!アレ!」
「「えぇ…」」
いやそれは…どうなんだろう?
オルガマリーのセンスに、目を合わせる二人であった。
カルデアス『流石オルガマリー。期待していますよ』
オルガマリー「それはいいんだけど、カルデアス」
カルデアス『なんでしょう?』
オルガマリー「私、地球大統領を名乗る私と話したの。なんだかあの私は、本気で自分を宇宙人だと思っているみたいだけど…」
カルデアス『────』
オルガマリー「私に何かあった?もしかして私、お父様が拾った宇宙人だったりするの?ホントにエイリアン?」
カルデアス『──────』
オルガマリー「………カルデアス?」
カルデアス『─────いえ』
『あなたは、ああならないでしょう。必ず、あなたがそうなる前に…』
『助ける皆が、いるのですから』
オルガマリー「……………〜?」
(……ま、そうよね。私が本当に助けてほしいときは必ず…)
──ギルや皆が、助けてくれるものね。
そう信じ…
オルガマリーはあの自分を、頭でも打ったのだと思うことにした。