人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
「─────はっ…!?」
その日、目が覚める。
目の前には、眩しい光。目にきつい程の。
「え…何かしら、ここ…」
あたりを見渡す。そこは殺風景な…
「手術台…?」
自分は、座らされている。そこに、手足を拘束されているようだ。縛られているといった方が正しい。
「あれ…、私…オルガマリー、よね…?」
思い返す。自分は何故ここにいるのか。どうして拘束されているのか?
自分は確か…カルデアスと話していて…。
「〜?」
思考を回す。一体どういったカタチでこんな事になっているのか?
そもそも……
自分は何故…
「どう見ても…ゲスト待遇の対応じゃ、ないわよね…」
座らされているし、拘束されているし…
「まるで実験動物…いえ、もっと言うなら…」
『宇宙人の被験体』のような扱いと言ってもいいくらいの…。
「!」
その時、扉が開く。
『おおっ!意識が戻ったみたい!』
『良かったです…。蘇生措置が功を奏しましたね』
慌ただしく、部屋に入ってくる白衣を纏った『職員』。
「え、ちょっと…!?」
その存在に、彼女は大いに見覚えがある。
「マシュ!?リッカ…!?」
そう。……本来の年齢より大人になった、親友二人。
「これはどういう…。──いいえ。これは…」
あの二人じゃない。似ているようで、異なる人だ。
それくらい、所長として違えない。
『辛抱強く、復活を願って良かった』
『はい、ようやく始められますね』
「あの、もしもし?」
『!信号出してる!』
『復活した証ですね!』
どうやら、自分の声は届いているが…信号としてしか把握されていないらしい。
「私はオルガマリー・アニムスフィア。その、あなた達は…地球人よね?」
『私達に何かを伝えようとしている…!』
『はい、間違いありません。これは信号を発しています。この『検体E』は…』
「け──」
検体、E?私が?
え、本当に宇宙人みたいな扱いなの?私?
『この信号を正しく把握すれば…』
『はい。私達人類は新たなるステージにへと向かえるはずです』
「あ、あの!私は地球人よ!地球人!あなたと同じ地球人なの!」
ガチャリ、と。
「っ…!」
見えたのは、鋭利な手術器具。
「そ、それ…まさか、嘘よね…?」
未知の存在、被検体に…
人類が成すべき事は、一つしかない。
「ま、待って…!待って!やめて!実験する気…!?同じ、同じ地球人よ!?いや、聖杯人間だったわ!いやでも人間!自認人間なの!」
拷問に耐えられる訓練は積んでいる。
最悪、聖杯をオーバーロードして自爆もできる。
だが、『この二人』なのが幸いであり最悪だ。
何があろうと、どんな状況だろうと…。
「マシュ!リッカ!話を聞いて!お願い、届いて…!」
『この二人を傷つけることなんて、選択できるはずがない』。
「私は人間よ!あなたたちと同じ人間なの…!」
そして。
【この二人からの拷問など、耐えられる筈がない】
『それじゃ、始めよっか』
無機質な声が響く。
「ひっ…や、やめて…。よりによってあなたたちが、あなたたちになんて…」
『はい、先輩。人類の未来の為に』
マシュが、リッカに器具を渡す。
『この検体は、信号を発している』
『なら、必ず仲間を連れてくるはずだよね』
「ひっ、ひぃっ──や、やめて、やめて…!お願い、いや、リッカ…!」
『実験を…』
『はい、初めましょう』
「い、いやぁっ─────!!」
実験が、始まった。
〜
「あ〜〜〜〜〜〜〜………」
リッカから施術を受ける。
それは、くまない全身マッサージ。
『リラックス反応を検知。この被検体は今、すっごくリラックスしています、先輩!』
『宇宙人にも労りの気持ちは通じる…ファーストコンタクトはやはり友愛路線。間違ってないかも』
「だから〜〜…私は地球人よ〜〜〜…」
ふにゃふにゃになりながら、施術を受ける。
〜
「クラシック…モーツァルト。鉄板よね…」
『脳波のリラックスを確認。骨抜きになっています。先輩』
ヘッドフォンを付けられ、音楽を聴かされる。
『感覚は人間と同じなんだね。いや、ほぼほぼ人間のフォルムなんだけど…』
(!もしかして、人間に見えていないの…!?)
認識の齟齬に、オルガマリーは気付く。
(となるともしかして、彼女達って…!カルデアスの…!?)
『次はキチガイレコードを流してみよう』
『解りました、先輩』
「あーーー!?何よこのなんとも言えない曲ーー!?」
『あ、嫌悪反応だ』
『やはり感性部分は私達ととても近いようですね…』
〜
「ふ〜〜〜〜〜…………」
オルガマリーは、特設スパランドの温泉に沈められていた。
「いい施設ね…」
『うーん。やっぱりそうだ。ほぼ私たちと感覚は同じじゃないかなぁ』
『はい。その見た目も、神秘的な巫女のようですし…』
(巫女…?)
〜
「それっ!」
オルガマリーは、バッティングセンターでボールを打っていた。
『おおっ、凄い動体視力とパワー!』
『180キロを軽々と打ち返しました!』
「あ、これも私に対する実験…なのね…?」
『次はボールを投げてもらおっか。運動能力や身体能力を測ってみよう』
『これでピッチャー適性もあったら…』
『身体女性っぽいし、女性オータニだね…』
(なんというか…)
ただの、スパランド観覧なんだけど…
腑に落ちないオルガマリーは、その後も様々な歓楽を楽しむこととなる。
〜
『うん、色々実験してみたけど…個体としての差異はともかく、私たちとほとんど変わらないね』
『はい、先輩。野蛮な実験なんてしていたらファーストコンタクトに失敗するところでした』
『ホントホント。人類は間違えなかったみたいで良かった〜』
そして戻される実験室。
(やっぱり、私を宇宙人と認識していたのね…)
ホッカホカの湯気を上げながら、ドライヤーを受けるオルガマリー。
(それにしても、流石リッカとマシュというか…驚く程理性的ね…)
あの実験器具を使って、解剖されるのかと気が気では無かったが…
蓋を開ければ、行なわれた実験とはスパランド漫遊となんら変わらないもので。
実のところ、非常にリラックスできたと自認する。
『じゃあいよいよ…』
『はい、先輩』
「ひっ!?」
やっぱり実験!?上げて落とす気なの!?
ビクリ、と跳ね上がるオルガマリーの拘束具が、外される。
「あ、あれ…?」
『手荒な真似をして、ごめんね』
そっと、リッカがオルガマリーの額に額を当てる。
『私たち人類は、あなたという隣人と相互理解を行いたいと考えています』
「!」
意味の解る、通じる言葉が頭に流れ込んでくる。
「えっと…そうね──」
意志は疎通を図られる。
「私は、ここの地球とは別の地球から来たの。そういう意味では、宇宙人…かしら?あ、でも私は…」
確かカルデアスが言うには、私はカルデアスの心臓だから…同類、なのかしら?
『私たちは、あなたとその同胞を傷つける意志はありません。ですので──』
「……?」
『私達の地球と人類、あなたの同胞や仲間たちに伝えてもらえますか?』
その言葉を最後に、彼女は様々な実験を受ける。
様々な施設、様々な歓待、待遇。
様々な術式、様々な実験を受けた彼女。
その果てに──。
「みんなーーーーーーー!!カルデアスはとっても良いところよーーーーー!!」
『宇宙親交親善大使』のたすきをかけたオルガマリーが、空に浮かぶ星々に向けて絶叫する。
「皆もいつか!!カルデアスにいらっしゃーーーーーーーい!!」
『先輩……!やりました!ファーストコンタクト、大成功です…!』
『私の故郷『オモテナシ』…!宇宙の隣人にも通じたんだ!ありがとうジパング!ありがとうジャパン、我が故郷…!』
「慰安旅行は!カルデアスで決まりよーーーーーーーー!!」
感涙に肩を組み合うリッカとマシュと共に。
オルガマリーは大量のお土産と共に、叫び続けた…──。
オルガマリー「─────はっ!?」
カルデアス『お目覚めですか』
オルガマリー「温泉卵は…!?」
カルデアス『今のはシミュレーションです。オルガマリーが、今のカルデアスに落ちた宇宙人…被検体Eとしての』
オルガマリー「すっごく歓待されたわ…」
カルデアス『はい。あれが私の目指す人類のサンプルケースです。『相互理解を図る、ファーストコンタクトを間違えない人類』…リッカとマシュを当てはめたのはそういう事です』
オルガマリー「な、成る程ね…」
カルデアス『どうでしたか?』
オルガマリー「……そうね…」
「いくらリッカやマシュでも、宇宙人をスパランドには連れて行かないと思う…わよ?」
カルデアス『そうですか?やるかやらないかでいえば…』
オルガマリー「…やりそうね、うん」
どうせファーストコンタクトするのなら…
そっちのほうがいいわね。
オルガマリーは、楽園の施設とはちょっと違う…
真化人類を目指す人類とのファーストコンタクトを、味わったのであった。