人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

114 / 204
被検体E

「─────はっ…!?」 

 

その日、目が覚める。

 

目の前には、眩しい光。目にきつい程の。

 

「え…何かしら、ここ…」

 

あたりを見渡す。そこは殺風景な…

 

「手術台…?」

 

自分は、座らされている。そこに、手足を拘束されているようだ。縛られているといった方が正しい。

 

「あれ…、私…オルガマリー、よね…?」

 

思い返す。自分は何故ここにいるのか。どうして拘束されているのか?

 

自分は確か…カルデアスと話していて…。

 

「〜?」

 

思考を回す。一体どういったカタチでこんな事になっているのか?

 

そもそも……

 

自分は何故…

 

「どう見ても…ゲスト待遇の対応じゃ、ないわよね…」

 

座らされているし、拘束されているし…

 

「まるで実験動物…いえ、もっと言うなら…」

 

『宇宙人の被験体』のような扱いと言ってもいいくらいの…。

 

「!」

 

その時、扉が開く。

 

『おおっ!意識が戻ったみたい!』

『良かったです…。蘇生措置が功を奏しましたね』

 

慌ただしく、部屋に入ってくる白衣を纏った『職員』。

 

「え、ちょっと…!?」

 

その存在に、彼女は大いに見覚えがある。

 

「マシュ!?リッカ…!?」

 

そう。……本来の年齢より大人になった、親友二人。

 

「これはどういう…。──いいえ。これは…」

 

あの二人じゃない。似ているようで、異なる人だ。

 

それくらい、所長として違えない。

 

『辛抱強く、復活を願って良かった』

『はい、ようやく始められますね』

 

「あの、もしもし?」

 

『!信号出してる!』

『復活した証ですね!』

 

どうやら、自分の声は届いているが…信号としてしか把握されていないらしい。

 

「私はオルガマリー・アニムスフィア。その、あなた達は…地球人よね?」

 

『私達に何かを伝えようとしている…!』

『はい、間違いありません。これは信号を発しています。この『検体E』は…』

 

「け──」

 

検体、E?私が?

 

え、本当に宇宙人みたいな扱いなの?私?

 

『この信号を正しく把握すれば…』

『はい。私達人類は新たなるステージにへと向かえるはずです』

 

「あ、あの!私は地球人よ!地球人!あなたと同じ地球人なの!」

 

ガチャリ、と。

 

「っ…!」

 

見えたのは、鋭利な手術器具。

 

「そ、それ…まさか、嘘よね…?」

 

未知の存在、被検体に…

 

人類が成すべき事は、一つしかない。

 

「ま、待って…!待って!やめて!実験する気…!?同じ、同じ地球人よ!?いや、聖杯人間だったわ!いやでも人間!自認人間なの!」

 

拷問に耐えられる訓練は積んでいる。

 

最悪、聖杯をオーバーロードして自爆もできる。

 

だが、『この二人』なのが幸いであり最悪だ。

 

何があろうと、どんな状況だろうと…。

 

「マシュ!リッカ!話を聞いて!お願い、届いて…!」

 

『この二人を傷つけることなんて、選択できるはずがない』。

 

「私は人間よ!あなたたちと同じ人間なの…!」

 

そして。

 

【この二人からの拷問など、耐えられる筈がない】

 

『それじゃ、始めよっか』

 

無機質な声が響く。

 

「ひっ…や、やめて…。よりによってあなたたちが、あなたたちになんて…」

 

『はい、先輩。人類の未来の為に』

 

マシュが、リッカに器具を渡す。

 

『この検体は、信号を発している』

 

『なら、必ず仲間を連れてくるはずだよね』

 

「ひっ、ひぃっ──や、やめて、やめて…!お願い、いや、リッカ…!」

 

『実験を…』

 

『はい、初めましょう』

 

「い、いやぁっ─────!!」

 

実験が、始まった。

 

 

「あ〜〜〜〜〜〜〜………」

 

リッカから施術を受ける。

 

それは、くまない全身マッサージ。

 

『リラックス反応を検知。この被検体は今、すっごくリラックスしています、先輩!』

 

『宇宙人にも労りの気持ちは通じる…ファーストコンタクトはやはり友愛路線。間違ってないかも』

 

「だから〜〜…私は地球人よ〜〜〜…」

 

ふにゃふにゃになりながら、施術を受ける。

 

 

「クラシック…モーツァルト。鉄板よね…」

 

『脳波のリラックスを確認。骨抜きになっています。先輩』

 

ヘッドフォンを付けられ、音楽を聴かされる。

 

『感覚は人間と同じなんだね。いや、ほぼほぼ人間のフォルムなんだけど…』

 

(!もしかして、人間に見えていないの…!?)

 

認識の齟齬に、オルガマリーは気付く。

 

(となるともしかして、彼女達って…!カルデアスの…!?)

 

『次はキチガイレコードを流してみよう』

『解りました、先輩』

 

「あーーー!?何よこのなんとも言えない曲ーー!?」

 

『あ、嫌悪反応だ』

『やはり感性部分は私達ととても近いようですね…』

 

 

「ふ〜〜〜〜〜…………」

 

オルガマリーは、特設スパランドの温泉に沈められていた。

 

「いい施設ね…」

 

『うーん。やっぱりそうだ。ほぼ私たちと感覚は同じじゃないかなぁ』

『はい。その見た目も、神秘的な巫女のようですし…』

 

(巫女…?)

 

 

「それっ!」

 

オルガマリーは、バッティングセンターでボールを打っていた。

 

『おおっ、凄い動体視力とパワー!』

『180キロを軽々と打ち返しました!』

 

「あ、これも私に対する実験…なのね…?」

 

『次はボールを投げてもらおっか。運動能力や身体能力を測ってみよう』

『これでピッチャー適性もあったら…』

『身体女性っぽいし、女性オータニだね…』

 

(なんというか…)

 

ただの、スパランド観覧なんだけど…

 

腑に落ちないオルガマリーは、その後も様々な歓楽を楽しむこととなる。

 

 

『うん、色々実験してみたけど…個体としての差異はともかく、私たちとほとんど変わらないね』

『はい、先輩。野蛮な実験なんてしていたらファーストコンタクトに失敗するところでした』

 

『ホントホント。人類は間違えなかったみたいで良かった〜』

 

そして戻される実験室。

 

(やっぱり、私を宇宙人と認識していたのね…)

 

ホッカホカの湯気を上げながら、ドライヤーを受けるオルガマリー。

 

(それにしても、流石リッカとマシュというか…驚く程理性的ね…)

 

あの実験器具を使って、解剖されるのかと気が気では無かったが…

 

蓋を開ければ、行なわれた実験とはスパランド漫遊となんら変わらないもので。

 

実のところ、非常にリラックスできたと自認する。

 

『じゃあいよいよ…』

『はい、先輩』

 

「ひっ!?」

 

やっぱり実験!?上げて落とす気なの!?

 

ビクリ、と跳ね上がるオルガマリーの拘束具が、外される。

 

「あ、あれ…?」

 

『手荒な真似をして、ごめんね』

 

そっと、リッカがオルガマリーの額に額を当てる。

 

『私たち人類は、あなたという隣人と相互理解を行いたいと考えています』

 

「!」

 

意味の解る、通じる言葉が頭に流れ込んでくる。

 

「えっと…そうね──」

 

意志は疎通を図られる。

 

「私は、ここの地球とは別の地球から来たの。そういう意味では、宇宙人…かしら?あ、でも私は…」

 

確かカルデアスが言うには、私はカルデアスの心臓だから…同類、なのかしら?

 

『私たちは、あなたとその同胞を傷つける意志はありません。ですので──』

 

「……?」

 

『私達の地球と人類、あなたの同胞や仲間たちに伝えてもらえますか?』

 

その言葉を最後に、彼女は様々な実験を受ける。

 

様々な施設、様々な歓待、待遇。

 

様々な術式、様々な実験を受けた彼女。

 

その果てに──。

 

 

「みんなーーーーーーー!!カルデアスはとっても良いところよーーーーー!!」

 

『宇宙親交親善大使』のたすきをかけたオルガマリーが、空に浮かぶ星々に向けて絶叫する。

 

「皆もいつか!!カルデアスにいらっしゃーーーーーーーい!!」

 

『先輩……!やりました!ファーストコンタクト、大成功です…!』

 

『私の故郷『オモテナシ』…!宇宙の隣人にも通じたんだ!ありがとうジパング!ありがとうジャパン、我が故郷…!』

 

「慰安旅行は!カルデアスで決まりよーーーーーーーー!!」

 

感涙に肩を組み合うリッカとマシュと共に。

 

オルガマリーは大量のお土産と共に、叫び続けた…──。




オルガマリー「─────はっ!?」

カルデアス『お目覚めですか』

オルガマリー「温泉卵は…!?」

カルデアス『今のはシミュレーションです。オルガマリーが、今のカルデアスに落ちた宇宙人…被検体Eとしての』

オルガマリー「すっごく歓待されたわ…」

カルデアス『はい。あれが私の目指す人類のサンプルケースです。『相互理解を図る、ファーストコンタクトを間違えない人類』…リッカとマシュを当てはめたのはそういう事です』

オルガマリー「な、成る程ね…」

カルデアス『どうでしたか?』

オルガマリー「……そうね…」

「いくらリッカやマシュでも、宇宙人をスパランドには連れて行かないと思う…わよ?」

カルデアス『そうですか?やるかやらないかでいえば…』

オルガマリー「…やりそうね、うん」

どうせファーストコンタクトするのなら…

そっちのほうがいいわね。

オルガマリーは、楽園の施設とはちょっと違う…

真化人類を目指す人類とのファーストコンタクトを、味わったのであった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。