人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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サバフェス・ハワイ

クトゥルフ【………】

(あの天使どもは走狗に過ぎん。真にこの事件に噛んでいるのは…旧神、ノーデンス…)

【……娘を見捨てた愚かなるこの身、雪辱を晴らすは最早これ以外に道はない】

(この地は邪神を楔に造られたもの。ならば…!)

【その『空間』を打ち払うのも…また邪神の力!】

(いるはずだ、この空間の外にヤツが…!)

【──────!!】

(来い、来い…!ノーデンスよ…!!)


邪神の敵

【はっ──!】

 

ハワイを、カルデアを脅かす外敵『ノーデンス』と邂逅するために…自らの力を解放し、空間へ『穴』を空けたクトゥルフ。邪神のハワイから外に出た彼は、目の当たりにする。

 

【これは…ヤツの『宇宙』か…!】

 

ハワイを覆い包むように、また宇宙が展開されている。神が有する自らの空間にして領域。そこにて小さき姿のクトゥルフは漂い、また瞠目する。

 

【ノーデンス!旧神よ、出てこい!!】

 

その空間において、クトゥルフは怯まず一喝し声を上げる。その空間の主へと。

 

【我が名はクトゥルフ!貴様の宿敵、貴様の敵だ!姿を見せろ!!】

 

喝破を放ち、挑発を続けるクトゥルフ。その目論見は即座に実を結ぶ。

 

『──誰かと思えば、旧き支配者たるクトゥルフではないか』

 

【…!!】

 

塩が如き潔白の装いの、猛々しい老爺。逆立つ白髪に白き神依を纏う荘厳なる旧神。

 

【ノーデンス…!】

 

遍く邪神の敵、ノーデンス。永劫の敵対者たる彼と、クトゥルフは遂に相対する。

 

『忌まわしき呼び声を聞き、応えてみれば。見るも無残な零落もあったものよ。旧き支配者』

 

【………】

 

『態々我に殺されに来たのならば潔いが…穢らわしい邪神にそんな殊勝な態度は求めておらん。何用だ?』

 

侮蔑と嫌悪を隠そうともせず、ノーデンスは言葉を紡ぐ。

 

『大人しくあの穢れた箱庭にて飼い殺されていればよいものを。庇護から離れた家畜に待つ命運は一つだぞ?旧き支配者』

 

家畜。恐らくそれは、楽園の事を指すのだろう。

 

【貴様は何を目論むか。邪神の誅罰を望む貴様が、何故カルデアの者らを敵視する】

 

クトゥルフは更に、ノーデンス…此度の黒幕の思想を問う。

 

『分かりきった事を聞くのだな。我が悲願、我が使命はたった一つ』

 

ノーデンスはさも当然と応える。

 

『邪神どもの討滅だ。この宇宙に蔓延る穢らわしい生命体。それに関わった生命、交わった生命。それら全てをこの宇宙から抹殺し、消し去る事だ。それこそが我が神格の使命である』

 

【………!】

 

『幸いな事に、虚空の天体に混沌、黄衣、生ける火が集っている。宇宙全ての敵を纏めて滅ぼさんとするには絶好の好機だ。この機を逃すわけにはいかぬのでな』

 

故に、ノーデンスは干渉したのだと。彼は語る。

 

『そこな箱庭に閉じ籠もったのは好都合よ。貴様らをその箱庭に封じ、未来永劫監禁し宇宙より切り離してくれる。それで、全宇宙は護られるのだから』

 

【何故だ?何故、宇宙から切り離すといったまわりくどい手段を取る?何故一息に破壊することをしない?】

 

クトゥルフはノーデンスに、その矛盾を突きつける。滅殺するといいながら、宇宙から切離すというのは恩赦とすら取れる振る舞いだ。

 

【貴様にそんな慈悲など、備わっておらぬだろうに】

 

ノーデンスは邪神の敵だ。誰の味方でもない。

 

邪神の眷属に支配された星があれば、その星の全てを消し去る事などなんら躊躇いがない程の冷酷さを持つ。

 

そんな彼が、あのハワイ全てを切り離し、まさか生存を許すなどとは考えにくい…いや、あり得ないのだとクトゥルフは推察する。

 

『知らぬのだな、邪神。あの天体が、あの組織が何を宇宙に齎し、何を宇宙に示すのかを』

 

それに対し、ノーデンスはクトゥルフの言葉を咎める

 

【あの天体だと…?】

 

『虚空なる天体。たかが人類の瞬きを永劫に保障するためだけなんぞに造られた空洞なる天体。それが宇宙に齎す真の愚行…それらを理解せずにあの組織に身を寄せていたというのか?』

 

愚かしさも極まったわ。そうノーデンスは手にした杖を掲げる。

 

『いいだろう、旧支配者。支配を目指す貴様に絶望と共に見せてやろう。あの天体が齎すものが、宇宙をどれほど変わり果てさせるのかを』

 

【───!】

 

ノーデンスの掲げた杖から、光が溢れる。それらは瞬く間に辺りを包み、白く染め上げる。

 

【こ、これは──!?】

 

そして、クトゥルフは垣間見る。

 

空に浮かぶ天体。

 

それらに満ちる銀河。

 

そして銀河を奪われ、白く無となっていく宇宙。

 

138億年先の天体と生命体の全てが消し去られる漂白。

 

そしてただ一つ浮かぶ星。

 

そこに生きる、ただ一つの種。

 

【これが──カルデアの目指す窮極であると…!?】

 

クトゥルフは瞠目する。カルデア…

 

否。カルデアスの目指さんとするそれらの事象。

 

『カルデアの者共は、今全宇宙の根元的厄災たる終極の獣を討ち果たさんと息巻いているようだが…』

 

混迷するクトゥルフを見下ろしながら、ノーデンスは断ずる。

 

『宇宙において、宇宙の全てを浪費し下等な人間の人理とやらを保障せんとする恥知らず、虚空の天体を有するカルデアという組織も等しく許されぬ存在よ。神を騙る愚かな偽神と同じく、この宇宙より抹殺されねばならぬ存在だ』

 

カルデアスはその様に使われるものであり、いずれ全ての宇宙を滅ぼし消し去る。

 

偽神と同じ様に、その存在は抹殺されるべき存在なのだとノーデンスは語る。

 

『そしてこの宇宙の漂白が果たされた時、偽神は外なる宇宙より降臨し、全ての宇宙を自らの宇宙へと置換するであろう』

 

【!】

 

『故にまず、貴様らは宇宙から切り離されなければならんのだ。貴様らの存在はやがて、偽神の宇宙を降臨させる絶好の助けとなる。この宇宙を護るため、何としても滅ぼさなくてはならぬ。そしてその手法は、虚空の天体の破壊ではない』

 

破壊では、再び再生が起きる。再利用の目が出てくる。故に、ハワイを切離さんと画策し実行したのだ。

 

『貴様らを永劫に遮断し、我が宇宙にて断絶する。さすれば宇宙を、銀河を弄ぶこともなく、貴様らを求める偽神の目論見も破綻する。それを疎んじた偽神は、天使どもを差し向けせめて魂だけでも回収しようと手駒を送ったようだが…』

 

ノーデンスは愚かと断じた。人も、偽神も、天使も邪神も全て。

 

『この宇宙において、貴様らカルデア並びに邪神は不要な存在なのだ。故に我が貴様らをこの宇宙より抹消する。監禁し、断絶し、永劫に白痴の日々を送らせる事で』

 

【カルデアの者らが、宇宙全てに恥をさらすような愚行をすると思うのか…!】

 

クトゥルフは見てきた。あの天球が、宇宙全てを使い潰す恥晒しの星なのだとしても。

 

カルデアに集う人々は、決してその様な愚かな選択は…

 

『思うとも』

 

ノーデンスは断ずる。

 

『自らを弄ぶ邪神を受け入れ、あまつさえ交わうなど。そんな愚かで穢らわしい生命体の集まりなど、白痴のアザトースの夢に生きる生命体に相応しい。まさに──塵屑のような命だ』

 

口にするのも穢らわしいとばかりに、ノーデンスは断ずる。

 

そこにあったのは、偽神の自尊とも無慙無愧とも全く違う。

 

【……!】

 

宇宙を救わんとする傲岸不遜。

 

自らが宇宙を護る代行者とする傲慢。

 

神として裁きを下さんとする独善。

 

『貴様らを無価値にした後は、かの神を名乗る獣は私が討ち果たしてやろう』

 

それが、邪神を討ち果たすノーデンスの思想。

 

邪神の敵であり、何者の味方ですらない。

 

『人はただ矮小であればよい。邪神に愛撫される玩具であればよい。進化など、進歩など不要。未来永劫、下らぬ生命であればよい。その方が、精々護ってやりやすくなるというものだ』

 

それこそがかの神の思想。

 

『足許で蠢く事くらいは赦してやろうとも。我という神は寛容であり、慈悲深い。たとえそれが、邪神の玩具に過ぎぬとしても──』

 

見下しながら、人を護る理由。

 

『我という神を証明するにおいて、貴様らの生命は使い果たされるべきなのだから。それを思えば、吹けば飛ぶような塵の山程度護ってやるとも。片手間にな』

 

それこそが、ノーデンスの本質。

 

邪神を滅ぼす旧神において。

 

人間という矮小な虫螻など、その程度の価値しかないのだから。

 




ノーデンス『さて、話すべきは話した』

クトゥルフ【!】

ノーデンス『あの箱庭の土台を崩すための効率を上げるための種火が必要だった。貴様で代用させてもらおう』

クトゥルフ【う、うおおおおおっ────!!】

ノーデンス『態々顔を見せに来た以上、何か策の一つがあるのかと思えば。それ程までに弱体化していようとはな』

クトゥルフ【ぬおおおおおおおおおお────!!!】

ノーデンス『消え失せるがいい。這い寄る混沌に零落させられし愚神よ』

ノーデンスの領域において、今のクトゥルフは余りにも矮小であり。

──成す術なく、ノーデンスに彼は吸収される。

ノーデンス『人にほだされし憐れなる神の末路か』

その末路を…

ノーデンス『ハッ。愚かなものだ』

邪神の敵は、せせら笑った。
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