人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
「まさかこのようなめぐりあわせを果たせるだなんて……」
「——タケル様、私を、お覚えですか?」
名前:御鉏友耳建日子(ミスキトモミミタケヒコ)、もしくは、吉備武彦(キビノタケヒコ)
クラス:ランサー
性別:女性
出身:異聞帯大和國(剪定済み)
出典:古事記、日本書紀、オリジナル
属性:秩序・中庸・人
特技:陶器・埴輪作り
好きな物:茶と花、そして団子
嫌いな物:嵐と大荒れの海
ステータス:
筋力:C+ 耐久:C+ 敏捷:E+
魔力:B+ 幸運:B 宝具:A
スキル:
・対魔力:B+
ランサーのクラススキル。
霊験あらたかな世界で鍛え上げたその力、それは生半可な魔術妖術を無力化する。
・神魔鏖殺:B
神性、魔性に対する優位。
ヤマトタケルと共に旅をしたその実績は確か。
神も人も魔も、打ち倒すのみ。
・心眼(真):B
修行・鍛錬にて培った洞察力。
御鉏友耳建日子は長きにわたる努力の末に、その戦闘論理を確立した。
・非時人:EX
ときじくびと。
垂仁天皇の命により、不老長寿の薬として常世国から田道間守が持ち帰った木の実『非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)』を利用して生成した薬『非時の薬』によって永遠の命を得た存在であることを表すスキル。
蓬莱の薬により生まれる蓬莱人と原典を等しくする。
・総合魔術:C++
異聞帯大和國が征服した数多の国々、それらの魔術師が保有していた知識を集め、覚えた証明のスキル。
魔術は不得手ではあったが、それでも当時の全ての魔術の知識は、彼女の中に仕舞われた。
・涙を知る者:EX
御鉏友耳建日子は従者である。
ヤマトタケルの従者としてその旅路を共にする最中、彼の眼から滴った涙を今でも、忘れない。
・大和は國の真秀ろば:EX
やまとはくにのまほろば。
異聞帯大和國出身であることを示すスキル。
また、世界を渡ることが出来る白鳥であることも同時に示すスキルでもある。
例え過ちであったとしても、終わりに進む道であったとしても、果てに殺し合う忠誠を見せることになろうとも。
それでも、あの世界は美しかったのだ。
宝具:
『
ランク:B
種別:対人宝具
レンジ:0
最大捕捉:1人
「この水は癒しの水。タケル様の狂いを晴らしたる霊水。玉蔵部の清水。居寤清水。――そして、私たちの過ちの、起こり」
伊服岐の山を下りた先にある、玉蔵部の清水。
汎人類史のヤマトタケルは伊服岐の山の神にやられた際に狂化の如き精神悪化を起こしたが、この水を飲んだことによりその狂いは収まったという。
これを御鉏友耳建日子は総合魔術により生成を可能にした。
この水を飲むことである程度低ランクの狂化を解除でき、また傷もある程度治療することが出来る。
『
ランク:B-
種別:対人/対軍絶技
レンジ:1~9
最大捕捉:1~19人
「斬り裂く。滝のように。波のように。嵐のように! 絶技・八岐怒濤・亜!」
水の斬撃を1度に8本放つ絶技。蛇のようにうなる斬撃は、さながら八岐大蛇を彷彿とさせる。
破壊力が高すぎるため、対人技であるはずが範囲効果まで付帯してくる(当然、対軍とまでなれば威力は落ちる)。
ヤマトタケルが揮いし宝具もとい剣技を、御鉏友耳建日子が長い月日の末に我が物としたもの。
最後の「亜」は亜種、オルタナティブの意味。
ヤマトタケルのそれとは違い槍で放つため、ちゃんとした区別をしようと考えた結果の命名である。
魔性・神性に対して強い効果を発揮するという。
『
ランク:A+
種別;対人宝具
レンジ:1~10
最大射程:1人
「はしけやし 我家の方よ 雲居立ち来も――故郷は消えた。歴史に残らず、世界に残らず、天地は認めず。されどここに在りし想いよ、槍よ、貫き示せ、かの歴史! 滅槍・天之広矛——これが、私の忠義です――」
ヤマトタケルが東国平定に向かう前に父、景行天皇から授けられた槍、比比羅木之八尋矛(ひひらぎのやひろほこ)。
ヒイラギの木でできた大きな矛。
出所不明のこの槍は、日本古来の樹霊信仰の顕れだとする説や、似た名前の比々羅木之其花麻豆美神(ひひらぎそのはなまづみのかみ)、八尋鉾長依日子(やひろほこながよりひこ)に関連する神器・祭具である説などがある。
また、ヒヒラキを日開きと読み、大和平定の想いを込めた名前であると言う説もある。
これは、汎人類史の御鉏友耳建日子では決して揮えぬ力・技。
永劫にも等しき年月を、ただ一つの忠誠の為に鍛え上げた無二の忠義によって、この槍は神威を放つ。
その全容はいたって単純。——踏み込み、そして刺す。
それだけの単純な工程は、神威によって『刺さった、だから踏み込む』と事象が変異する。
わかりやすく言うならば、ゲイ・ボルグ大和バージョン。
しかし、その力を引き起こす原動力は比比羅木之八尋矛に内包されていない。
あるいは内包されているのかもしれないが……それでも因果改変の力の比重は御鉏友耳建日子に偏ることになる。
この因果改変を引き起こしているのは槍ではなく、揮う者その人――御鉏友耳建日子の強き覚悟によるもの。
それはヤマトタケルという『これ以上のいない世界』では終ぞ現れることのなかった称号——『位』と呼ばれる、境地に匹敵するのだろう。
あえて名を付けるならば――『滅位』。
忠義のために人を、神を、妖を滅ぼしながら手に入れた、『
解説:
御鉏友耳建日子は古事記にて、吉備武彦は日本書紀にて登場するヤマトタケルの従者。
熊曽、出雲を平定したヤマトタケルを父景行天皇が東国の平定に向かわせる際に従者としてお付きに添えた。
御鉏友耳建日子が吉備臣の先祖であるという記述より、吉備武彦と同一視されることがある。
吉備臣の祖先であるが、その出自には謎が多い。
吉備武彦について平安時代初期に編纂された新撰姓氏録によると、稚武彦命(わかたけひこのみこと)の孫、あるいは子であるという。
また、吉備武彦の娘である吉備穴戸武媛はヤマトタケルの妃となって武卵王(たけかいごのきみ)と十城別王(とおきわけのきみ)の2子を産んだとされている。
――これが、汎人類史における御鉏友耳建日子そして吉備武彦の記録であるが、この御鉏友耳建日子はロストベルト、異聞帯と化した大和國を出身としている。
異聞帯大和國は端的に言い表すならば『ヤマトタケルが己が力を過信しなかった世界』と言える。
汎人類史では伊服岐の山の神にヤマトタケルは成すすべなくやられてしまったが、異聞帯大和國のヤマトタケルは『前もって居寤清水を用意し』、『草薙剣をしっかり持参して』伊服岐の山の神を討伐した。
それゆえにヤマトタケルは死ぬことなく、東国を平定するに至った。
そこまでならば『あり得た可能性』と言えるかもしれない。
だがしかし、事態は此処から急変する。
ヤマトタケルは王城の宝庫に眠る果実『非時香菓』を口にしたのだ。
非時香菓はヤマトタケルの祖父にあたる垂仁天皇が死を恐れて求めた不老不死をかなえる果実だった。
タヂマモリという当時の家臣が必死に常世の国へ赴き手に入れたが、帰って来た時には既に天皇は崩御していたために、そのまま宝庫へと仕舞われていたものだった。
そうして永遠の命を得たヤマトタケルは、その勢いのままに大陸へ攻め込み、当時南北朝時代だった中国を落とし、ユーラシア大陸を平定していく。
それが終わればヨーロッパ、アフリカ、南アメリカ、そして北アメリカを破竹怒涛の勢いで平定し、ついに地球全土を平定するに至ったのだ。
そして最後には父景行天皇と正々堂々の一騎打ちを征し、地球全土の支配者となったのだった。
その際にも、ヤマトタケルの傍に御鉏友耳建日子はいた。
ヤマトタケルが非時香菓の効能・成分を調査して作り上げた秘薬『非時の薬』によって不老不死の身体を得て、大和軍の参謀格として世界各国を平定していった。
その旅路の中で、ヤマトタケルはの剣は苛烈さを増していった。
唯一神の教団を見たなら殲滅し、異文化の遺跡・神殿を見たならば破却した。
その様相は確かに神も人も妖もことごとくを切り伏せる英雄だったが、それ以上に『もはや己が自身の力では止められない狂気』を見せていた。
御鉏友耳建日子は察した。
ヤマトタケルは狂ってしまったのだ。
愛するオトタチバナの死によって。
これを止めるにはもはや遅きに失したと御鉏友耳建日子は己を恥じた。
世界各国の勇士・英傑は総じてヤマトタケルに一騎打ちの末に斬り倒された後。
ヤマトタケルは王として世界を治め、もはや歴史に彼を追い越すような英雄は現れる気配は決してない。
『ヤマトタケルがいればいい』『ヤマトタケルが王ならこの世は安泰だ』
もはや世間はヤマトタケルの傀儡と化した。
かつての家族、友、部下に至るまでがヤマトタケルの政権を支持する傀儡と化してしまっていたのだ。
まるで神の思し召し。
鶴の一声のように、ヤマトタケルがそれを好しとすれば世界はそれを好しとする。
究極無二の独裁政権が、誕生していた。
そして――もはやこの暴走を止められるのは、御鉏友耳建日子だけになっていたのだ。
なぜ、どうして。そんなことを何度も考えたが、それの答えは終ぞ現れなかった。
とにかく『ヤマトタケルは私が討たねばいけない』その想いが御鉏友耳建日子の覚悟の火種になった。
御鉏友耳建日子は軍を離れ鍛錬を行った。
いずれヤマトタケルを討つために。
やがてヤマトタケルを超えるために。
異端だとして民に追われ、愚者だと嗤われ、石を投げられようとも決して諦めることはなかった。
意地だった。
かつてのヤマトタケルを知り、それが今のヤマトタケルとどうしても照らし合わさることが無いから。
オトタチバナヒメの死より狂った歯車を、その瞬間を見て、知っていて、涙を流した光景すら見ている私だからこそ、ヤマトタケルを終わらせられる。
驕りだと言うならば言えばいい。
それでも、御鉏友耳建日子は槍を振るった。魔術を覚えた。
不幸中の幸いだったのは自身もまた非時の薬を口にしたこと。
不老不死になって、時間のことを気にせずに鍛錬に勤しむことができたこと。
それだけが幸いだった。
だが、その幸運は突如として終わりを迎える。
千と五百年以上が過ぎた頃に、ついに世界の剪定が始まったのだ。
まだ、御鉏友耳建日子の槍はヤマトタケルの身体に傷をつけるかどうか、という鍛錬度合いなのに。
遅かった。
また遅れてしまった。
急ぎ急いで、御鉏友耳建日子はヤマトタケルの下に駆けつけた。
ヤマトタケルはあの時と変わらない姿だった。
少年のような、少女のような、若々しいお姿だった。
「——ミスキ、か。やっと約束を遂げに来てくれたんだね」
「——はい。二度にわたる遅参、申し訳ございません」
1度目は、ヤマトタケルの下を離れる時。
その時に殺せていればよかった。
そして2度目は、今。
「あなたを終わらせに参りました」
この世界は、この歴史は不要なものと断じられた。
それは致し方のないことだろう。
だがしかし、それでも。
御鉏友耳建日子は己が忠義を全うする。
ヤマトタケルという異聞帯を終わらせるために。
そのために、全速力でここに駆け参じたのだ。
そして、槍を構える。
手に入れたのは因果逆転の槍技。
これでヤマトタケルを刺し穿つ。己が命に懸けて。
御鉏友耳建日子は、槍を構えた。
ヤマトタケルは微笑む。
「ありがとう」
その言葉のままに、御鉏友耳建日子は槍で刺し、それであるがゆえに駆けた。
因果逆転の槍、確実に刺すという因果の下に行われる技。
それによって、ヤマトタケルは確実に終わる。
しかし――
「でも、ごめん」
ヤマトタケルの一振りは、時空を裂いた。
此処ではない世界とつながるほどの、強烈な斬撃。
それが2人の間を裂き、そして御鉏友耳建日子はその中に入り込む形になった。
「待て、待って、ダメ、そんなこと――」
御鉏友耳建日子はそれが何であるか悟った。
それはいけないことだ、あってはならないことだ。
従者が主君よりも生きるだなど、あってはならない。
ヤマトタケルは動揺する御鉏友耳建日子に、感謝を告げる。
「この世界は、僕は間違ってしまった。それに歯向かってくれた君を、父から託されたのは永遠の思い出だった。——ありがとう、僕の、忠義の従者になってくれて」
そして時空を裂いた穴は閉じた。
異聞帯は終了し、大和國は終わりを告げた。
ヤマトタケルは消えた。御鉏友耳建日子が忠義を尽くしたヤマトタケルはもう世界の何処にもいない。
でも、御鉏友耳建日子はいた。
ヤマトタケルが裂いた世界の断層は御鉏友耳建日子に宿り、世界を渡ることをある程度可能にしていた。
御鉏友耳建日子は世界を渡る白鳥として、様々な世界を巡る定めを帯びた。
「私は――愚か者です。主君に忠義を尽くしながら、主君を諫めることが終ぞできなかった愚か者です。——だからこそ」
2度。
そして3度目。
2度の失敗。
3度目の忠義。
最後の忠義、今度こそは成し遂げる。
世界を巡り、世界を知り、そして紡ぐ。
あの世界の、異聞帯の、大和國の物語を。
「私が、
消えた歴史が向かう何処かの果てで、どうか見守っていてほしいと、御鉏友耳建日子は今日もまた世界を巡る。
人物関係:
・ヤマトタケル(汎人類史)
少年のような少女のようなヤマトタケル。
邂逅したことはないがいずれ出会うその時は、共に肩を並べたいと夢見ている。
もはや、ヤマトタケルに全てを任せていたころとは違うのだから。
・オトタチバナヒメ
ヤマトタケルの傍で微笑み、支え、そして海に沈んだ優しき乙女。
時たまに一緒に茶を嗜んだり、楽しい日々の象徴のような存在だった。
サーヴァントと化した彼女にはまだ会っていない。
「会ったときは、何を話そうかなあ……」
・日本武尊(汎人類史)
武神として大成したヤマトタケル。
日本武尊は人間だった頃の記憶が薄く、御鉏友耳建日子のことはほとんど覚えていない。
それについて「まあそういうものだよね、普通は」と納得しており、できるならこれから親交を深めたいと考えている。
・伊邪那美命(汎人類史)
えっ本物? がファーストコメント。
まさかご本尊がお出迎えしてくれるとは思わないじゃないですか、とは本人の言。
なんか、思っていたよりも気さくでフレンドリーな感じ、と思っている。
ご飯がとても美味しい。
・イザナミ(異聞帯)
ほんの1時間だけ、禍胎に立ち寄ったことがある。
あそこまで悍ましい威容もまたイザナミ様のお力だったということに驚きを隠せない様子。
今は改心したから別にいっかーという状態。
・藤丸龍華
なぜ富に富んだ世界でこのような化物が生まれるのか、と汎人類史をある意味で恐怖した。
魔術と併用して槍で戦う戦術を時たまに龍華に教えたりする間柄になった。
・クー・フーリン
槍の戦術の大先輩。
一度対局してもらったがどう戦法を練っても勝ち筋が見えてこない化け物。
宝具を切っても勝てるかどうかレベルの差。絶対勝つと意気込んでいます。
「いや、なんでゲイ・ボルグを技量だけで撃てんだよコイツ、怖えよ」
・温羅
どこかの世界で出会った鬼。
なんていうか、もう、とてつもなく強い。
ひょっとしなくてもヤマトタケルに打ち勝つよりも難題なので、出会ったときは稽古を付けてもらっている。
・アダム・カドモン
数多の世界を巡ってきたが、彼ほど研鑽を積んだ人間というのもそうそう見つからないな——と思ってたらまさかの人類の原点でした。びっくりだね。
・宮本武蔵
馬が合うのか良い感じの友情を築いている。
たまに試合して、ご飯食べて、そして試合するルーティーンが気に入った模様。
……もしかしたら、根っこは同類なのかもしれない……?
プレシアンスグレムさん、ありがとうございました!