人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

124 / 203
ハワイ・管制ルーム

ニャル【どうしたというのだ、BB…!】

(聖杯を渡す最終診断はまだ数日先だった筈だ。確かにスコアは離れていたがそれでもまだ終わりに向かわせるようなタイミングでは無い、まだまだ日にちは残っているというのに…!)

【彼女は人類の友だ、こんな初歩的なミスや手抜かりなど…、…!】

BB【はぁ、はぁ……はぁっ…】

ニャル【BB!】

BB【あ…ニャルさん…。すみません、なんだか体調が、優れなくて…】

【これは…、まさか私の本体と同じ…】

【こんなに具合が悪いのは…先輩に見つけてもらった時以来です…オーバーワーク、懐かしいなぁ…】

ニャル【どうやら私の力に、奴等の力の反作用が影響しているようだ…。BBホテップなどやはり無茶だったな…】

BB【そんな事ありませんってば…ちょっと休めば、BBちゃんはすぐに…】

ニャル【無理しなくていい。すぐに岸波白野を呼ぶから…、!?】

【──この数は…、まさか…!】

『『『『──────世を乱す、邪なる神よ』』』』

【!】

『『『『安寧の為に、どうかお眠りなさい』』』』

【お前達は…まさか──!?】

『『『『我等は、ハルモニア。安寧を齎す者。全ては、大いなる意志の御心のままに──』』』』


最後の夜の始まり

「おいおい、なんだってんだ!?今日は昨日までとは段違いじゃあねぇか!」

 

再びの夜。聖なる者と邪悪なる者が混沌と混ざり合うこのハワイにて、各所における戦いが繰り広げられている中、夜渡り達の懸命な戦いの中で無頼漢が声を上げる。

 

「地にも空にも敵がいる。有難いことだ。撃ち抜く的に事欠かん」

 

聖痕を刻まれし天の傀儡。クローンの悪魔達、ハワイの巨人達。それらの量と密度が先日とは常軌を逸していると夜渡りは気付く。

 

空は夜空が疎らな程に。地は大地が疎らな程に。一個師団、軍隊も彷彿とさせる程の進軍が展開されている。サーヴァント達や来客した仲間達が総動員して戦線を維持しているといった状態である程の。

 

「まるで何か、効率よく変換できる何かを見つけたみたい」

 

「黒幕が何かを取り込んだということかしら…!」

 

「口を動かす暇があるなら戦え!」

 

隠者が測り、レディが推察し、復讐者が荒々しく倒す。

 

「───!!」

 

「なんであれ、俺達のハワイを護らなければならん。その為には──戦うのみだ!」

 

執行者が剣戟を演じ、追跡者がパイルバンカーを打ち放つ。彼等は団結し、指揮官タイプといった強敵とその周辺を打ち滅ぼす。

 

「戦っても戦っても、終わりなく戦える。最高だカルデア。俺はこういう組織を待ち侘びていた…!」

 

「あー、まぁ程々にな?」

 

だが、此度ばかりは一筋縄では行かない事を誰もが認識している。

 

単純にあまりにも数が多すぎるのだ。倒しても倒しても、数が一向に陰る気配がない。

 

「これでは死骸が出す光の簒奪も果たして上手くいくかどうか…!」

 

「考えていても仕方ないわ!戦うしかないのなら迷わず戦うのよ!」

 

「そうだそうだ!良い酒場は護らねぇとなぁ!」

 

懸命に戦う夜渡り達。その闘志は衰えを知らず懸命に力を振るう。

 

───その時だった。

 

「───なんだ、アレは!?」

 

追跡者が、弾かれたように空を見上げる。

 

そこには、白く輝く戦乙女達が…輝く武器を持つ戦乙女達が厳かに天より織り立たんとしている光景があった。

 

大理石を切り出した石像のように白く美しい姿をしており、鎧と服の中間の様な服装。

 

白く無垢たるその姿は、天使と形容できるもの。

 

『『『『『混沌たる邪神に囚われし者達よ』』』』』

 

それらは、夜渡り達の下へ折り立つ。

 

『『『『『皆に、安寧を与えに参りました。我等はハルモニア』』』』』

 

静かに、槍にハルバード、斧を持ちし娘達は告げる。

 

『『『『『この地にて、皆様に安寧を。我等が永久に寄り添いましょう』』』』』

 

彼女たちはハルモニアと名乗る。

 

ハルモニア。ギリシャにおけるハーモニーの意味を持つ言葉。

 

英雄の武器を握る戦乙女達が降り立った意味。

 

それは、邪悪なる神に囚われし者達に安寧を齎す為。

 

これもまた、邪神を中核としたハワイに呼び寄せられし者。

 

「美女の添い寝なら大歓迎だがよ。持ち物が剣呑だよなぁ…」

 

「フン。どうせ中身は悍ましいものだろう。砕いて本性を引きずり出してくれる!」

 

『『『『『皆様に、安らかなる眠りあれ…』』』』』

 

夜渡り達と、安寧の使者達が接敵する。

 

此度の夜は、想像を絶する決戦と相成るのだった。

 

 

「昨日までと比べて戦力比率は十倍以上だと!?段階を踏め段階を!程度というものがあるだろうがクソGMめ!」

 

罵倒を口にしながら、戦術指揮を飛ばし続けるは縷々。戦力を過不足なく配置し運用しても押し寄せる戦禍の波に、彼自身も辟易を隠せないほどだ。

 

『わ、私!ファイブキングで砂浜に陣取るから!』

『僕もボルメテウスと一緒に制海権を護り、アカネさんをフォローします!』

 

「アカネを護りきれよエル!朱雀何してる!もっと気合い入れて戦略をひっくり返せ!得意だろうそういうの!」

『勿論そのつもりだ!だが…このまま倒し続けてしまえば先の懸念は…』

 

そう。倒されていった光の粒子がハワイに還元されているという仮説。それが進めば、果たしてどうなるかという危惧。

 

「確かにそれは憂慮するべき事象だ、だが今は優先順位がある!シンプルな数の暴力、それが唯一無二の難題だ!」

 

空から、陸から、どこから湧いてでてきたのか、どこから生成されているのか。右から左から、空から陸から無際限に現れる聖痕を刻まれた者達。

 

「防衛戦が破られればハワイの市街地に奴等がなだれ込む…!最早こちらに倒さず様子見などという手は使えん!徹底して跳ね返し迎撃するしか無いんだ!」

 

『敵は、それを想定してるのかもしれない。僕達とハワイ、その根幹の瓦解を…!』

 

「だろうな!故に俺たちの逆転の手立てはこの夜の内に黒幕を討ち果たすしかない!質では勝っている、捕捉できれば不可能な話ではないはずだ!」

 

忙しなくキーボードを打ち、演算しながら縷々は求める。この戦況を打開するきっかけを。

 

(天使が主導するだなどとは考えにくい。天使はどこまで行っても神の傀儡。カルデアの大天使たちでもない以上あれはどれほど力を持っていようと末端なんだ)

 

ならば存在するは『神』。その上位存在の感知を彼は行う。

 

(邪神に対してこれほど偏執的に害を成す存在、ラブクラフトの旧神ノーデンス辺りしか候補を絞れん!奴は邪神に対して敵なだけで人間の味方ではない、邪神と蜜月となった人間もお構いなしに排除する腹なのだろうな…だが手はある!)

 

縷々には、邪神…領域外の生命体においてカルデアは切り札を有していることも把握していた。

 

(クトゥグアすら討ち果たしたナイアさん、支配者の血を継ぐクトゥーラさん、それに加え星の断罪者アンゴル族になにより銀河警察のXXもいる!ノーデンスの場所さえ分かれば…!)

 

『縷々!空路から更に増援だ!』

 

朱雀の言葉と同時、端末からアラートが鳴り響く。

 

「何が空路からだ!陸路からもまた増えてるじゃないか!」

 

『これではやがて押し切られる!これはもう、彼女に…!』

 

彼女とは無論、藤丸龍華の事だ。

 

彼女が戦列に参戦すれば、こんなものピンチですらない。

 

彼女の指揮、彼女自身の力や慕う英傑や神々の力が加われば、瞬く間に逆転が叶うだろう。

 

「…いや、まだだ!」

 

それでは、彼女のバカンスの終わりが望ましくないものになる。

 

世界が滅びたさなか、彼女は頑張ってくれた。

 

誰よりも、何よりも、いつまでも、どこまでも頑張ってくれた。

 

そんな彼女の為に、今のバカンスはある。

 

だから、闘いのことなど思い出さなくていい。

 

楽しい思い出だけ、持ち帰ってほしいのだ。

 

その想いは、夏草の皆が有しているものだ。エルも、アカネも、縷々も朱雀も。

 

「彼女は都合のいい神じゃない!困った時のリッカ頼みなど、彼女が良くても我々が腐っていくんだ!」

 

『!』

 

「ギリギリまでやれるうちは、どうにもならなくなるまで足掻くぞ!彼女も、カルデアの皆はこんな今よりずっとピンチな状況を切り抜けたのだから!解ったか!」

 

『───そうだね。僕もまだまだ彼女に甘えていたようだ!』

 

「リッカは頼られがちだが、その実甘えたがりなヤツだ。忘れるなよ!」

 

『あぁ!じゃあ、行ってくる!』

 

「死ぬなよ!」

 

やり取りの後、縷々はコンソールを叩く。

 

(陸路はむしろ押し返している。だが空からの対応が困難だ…!ルウちゃん様達は負けはしないだろうが果たしてどれ程の空域をカバーできるか…最悪俺がエルにナイトメアフレームでも作ってもらえば…!)

 

指揮官自ら、そう思案した刹那。

 

『────お待たせ、縷々』

 

「!」

 

『すまない、調査で遅くなった!』

『鈴村飛鳥!大和さんとサラで戦線に参加します!』

 

ハワイに走る、三つの閃光。

 

「───これほど嬉しい想定外はないぞ、馬鹿者どもめ!」

 

それを、縷々は喜色満面で迎えるのだった。

 

 

 




ルシファー『わぁ…よくもまぁこんなにも数を集めたものだねぇ』

シンデレラ「見た目だけは白く整えているけれど…そこには何もないわ。醜さすらない、空っぽよ」

セイレーン「でも、それが皆を傷つけるつもりなら…戦わなくちゃ!」

グレーテル「……」
ヘンゼル「グレーテルはやる気に燃えているわ。ヘンゼルは武者震いをしているわ」

エイブ「だが、気色の悪いラプチャーよりは幾分かマシだ。…準備はいいな、お前達」

「あう!」「…うん」「勿論よ」

シンデレラ「さぁ、王子様?美しい私達の舞台の幕開けの号令を行なって?」

ルシファー『よし…久し振りだからね!』

エイブ「……本当に、久し振りだな」

ルイ・サイファー「皆!カルデアの皆のために、人類の為に!その美しい力を存分に振るってほしい!頼んだよ、シンデレラ!」

シンデレラ「えぇ!──任せて、王子様!」

ルイ・サイファー「オールドテイルズ部隊!レディ───!」

キラウエア火山に山頂にて、勝利の女神達が羽ばたく。

「──────エンカウンター!!」

待ち侘びた王子様…

──明けの明星の、号令と共に。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。