人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
キラウエア火山、八合目 キャンプ地
エミヤ「まさかハワイの地が白く見える程とは。シロアリの行軍のようでゾッとしないな」
ケイローン「皆が押し留めてはいますが…あと一押し、過剰なほどの殲滅力が欲しいですね。…おっと」
エミヤ「こちらもこちらで砲撃に晒される。ロー・アイアスの展開も視野に…ん?」
セイレーン『大丈夫、ですか?』
ケイローン「これは…水泡?いや、液体金属か…?」
セイレーン『オールドテイルズ…セイレーン。皆さんを、援護します!』
エミヤ「これが、噂の美少女サイボーグか…」
ケイローン「噂の…?」
エミヤ「種族は何であれ、かわいければなんでも好きだからね、オレは」
ケイローン「……成る程。女難と書いて自業自得でしたか」
『セイレーン!君の水泡を使って、ハワイで戦う皆をサポートしてあげて!頼めるかい!』
『あう!任せて、王子様!』
遂にその全貌を披露する、勝利の女神達の部隊『オールドテイルズ』。ルシファーを指揮官に据え、一万年先を行く頭脳を持つエイブが製作した至高のニケ達がそのスペックをフルで発揮する。
『光に向かって、全力で泳いで──!』
セイレーンの言霊と想いを乗せた水泡、液体金属が『ハワイ全域』における味方の防御、防壁、或いは防具となり展開。
『皆はやらせない!』
遠距離攻撃に対する防護、チャフやジャマーの役割、ノイズといった妨害を、一瞬でハワイ・トラペゾヘドロンに浸透させる。物理的、光学的、通信的に敵対者全てはセイレーンの意思を受けた液体金属のデバフを受ける。
そして対照的に、セイレーンの声援、言霊を受けた味方陣営は精神的な高揚を付加される。即ち『テンションMAX』状態。スーパーハイテンションといった状態だ。
『ありがとう!改めて最高の初陣にしよう、セイレーン!』
『あう!見ていて、王子様!』
敵対者と戦っている皆が、目に見えて精彩を増す。サーヴァントやモンスター達も含めた者らが、セイレーンの声に後押しされたのだ。
そして、精彩を欠いた敵対者たちに、狙いをつける2人がある。
『ヘンゼル、グレーテル!用意はいいか!』
エイブの声に、二人が戦闘態勢を取る。
『このハワイは神秘の土地だ。つまり行使できるものも一味違う!こちらのデータ通りに制作、射出を行え!』
『……』
「グレーテルはエイブが何故そんなデータを持っていたのか不思議だわ。でも、ヘンゼルは今は敵を倒す方に集中するわ」
グレーテルが、贈られたデータを参照する。
「…………宝具?」
『グレーテル。お前の魔女の竈門でやってみろ!サーヴァントの、宝具の真似事だ!』
「未知の物質。グレーテル、やるよ」
「…うん」
『セイレーンが齎した隙に、撃ち込め!』
エイブの激と共に、グレーテルがそれを執行する。
『神性拡大。空間固定。神罰執行領域固定。────全承認』
瞬間、グレーテルが擁する装備からあふれ出す『破壊神の怒り』。それの劣化を極めた、超絶エネルギーの奔流。
「行くよ!『破壊神の手翳』────!」
グレーテルが生成した───エイブが大聖杯と、カルデアのデータベースから見た『宝具』の再現を行ったエネルギーを、ヘンゼルが撃ち放つ。
そしてそれが着弾した時──。ニケ世界の兵器火力の全てを上回る、大規模大爆発が巻き起こった。
当然、範囲にいた全ては破壊神の怒りにより全ての命運を絶たれている。
『上手くいったようだな。宝具も単純な威力なら再現できたようで何よりだ』
ヘンゼル、グレーテルは二人で一つ。様々な物質、物体を生成し射出するタイプのニケ。
本来ならば宝具の再現など当然不可能だが…カルデアのデータ、並びに一年間アップデートを加えたエイブの手腕、そして密かにエイブが運営している『大聖杯』のバックアップにより、二人の限界は異常に引き上げられている。
『…………』
「グレーテルは、これならシンデレラの殲滅力も越えられるかもと興奮しているわ。ヘンゼルも、少し期待しているわ」
『はっ、シンデレラを越えられるだと?』
敵対者勢力のど真ん中に風穴を空け、自信を告げるヘンゼルとグレーテルにエイブは失笑、思わずといった様子で笑いを零す。
『今のアイツを越えられる存在など、この世にいるかどうかすら怪しいぞ?』
『…!』
「───凄いわ」
エイブに指され、ヘンゼルとグレーテルが目にしたもの。
それは──空に、地上波に編まれる紋様。
天と地を埋め尽くす、光量と光条。味方を識別しながら、敵対者を貫き消し去るシンデレラの無数の攻撃の弾幕であった。
〜
「あぁ───」
シンデレラは息を吐く。夢見、待ち望んだ日がまたやって来た。
もう一度、王子様と共に戦うこと。人類の為に戦うこと。
世界は違う。けれどそんなことは関係無い。
カルデアにおいての記録を、シンデレラは目にした。
完全無欠のはっぴぃえんどを追い求めて戦う皆。
シンデレラは、読みながら美しすぎて目眩を起こした。
誰も彼もが、眩く輝く美しい、美しすぎる物語。
そして、ここにいる皆は、頑張りに頑張り抜いた一人の女の子の、安らぎと安心の為に戦っていると。
「本当に光栄だわ。こんな美しい戦いに、皆と挑めるなんて」
藤丸龍華。世界を救う為に、悪を背負いながら逃げなかった女の子。
そんな彼女が掴んだ平和と安寧を、護るための戦い。
自身が全力を出すのに、相応しい戦い。
「だから──」
自身の武器、浮遊ユニット4基『ガラスの靴』を展開する。
「全力で、力の限り。美しく戦うわ。見ていて、王子様」
別れた時から、呼び続けた名前。
何度も何度も呼んで、帰ってこなかった返事。
『うん!頼んだよ──僕の勝利の女神!』
今は、しっかりと声が届く。
あぁ、夢じゃない。何度も何度も夢見て、現実に目覚めて涙に濡れた朝の現実じゃない。
「───ガラスの靴、フルコンタクト!」
だから魅せる。
だから書き記す。
あの日に刻まれてしまった、涙のピリオドの先を。
王子様との永遠の別離、その先をまた書き記す。
その為に──。
「力の限り、美しくあって───!」
笑顔すら浮かべ、シンデレラは自らの力を解き放った。
───シンデレラの戦闘能力は、広域殲滅に長けている。
シンデレラ本人が放つ光線が、四つのユニット『ガラスの靴』により縦横無尽に展開、増殖、或いは掃射され。浮遊能力を持つシンデレラの眼下や眼前、上空における全ての敵対者を殲滅する戦略級の大規模攻撃を展開する。
セイレーンのデバフ、ヘンゼルとグレーテルの戦力削減、並びに敵対者達の練度の低さ。それらの要素が、シンデレラの保有スペックと戦術に合致したこの地において起こした現象。
それは『戦力の迎撃』すら越え、『復活する敵対者達のリスポーン・キル』に起因する『敵戦力の再編不可レベルの全滅』という事態を起こしていた。
地上に蠢く、クローン兵士など動く的でしかない。片端から撃ち抜かれていく。
復活した敵対者が、復活した傍から撃ち抜かれていく。戦力の再編どころか補充すら叶わないほど。
それは『戦闘』ですらない。『清掃』『駆除』とすら言える一方的なもの。
シンデレラはエイブが創り上げた、最高傑作のニケであり。ルシファーが見出した、ニケにおける世界で最も美しい魂を持つもの。
それ故に──彼女の齎す勝利は、絶対的な迄に美しいものであった。
「舞踏会の邪魔は許さないわ。──消えて」
全く威力を緩めず、シンデレラは圧倒的な光線をハワイに打ち放ち続ける。
避けることも、受け止めることも叶わない一撃が、無慈悲なまでに敵対者を照らし滅ぼしていく。
血煙の様な白き光の粒子が、ハワイに満ち溢れる。
「空っぽでも、せめて散り際くらいは美しくしてあげるわ。……あら?」
一仕事終えた、と手を下ろさんとした時、シンデレラ達の下に向かう戦力がある。
『『『『『『安寧を阻む者に、裁きを』』』』』』
それは、ハルモニア。安寧を齎す者達の意志。
『手助けは必要かい?シンデレラ』
ルシファーが問う。
「大丈夫。ただ、そこでどうか私を見つめていて」
シンデレラが背中越しに微笑む。
「貴方の勝利の女神が、美しくあるこの一時を──」
『『『『『『『悪しき機械に、滅びあれ──』』』』』』』
シンデレラを取り囲み、英雄の武器を刺し構え一斉に突撃するハルモニア。
「美しさは砕けない、滅びないわ」
それらを、四つのユニットを展開、回転させ弾き飛ばし防御する。
「滅びるのは、美しさを理解できないあなたたちよ」
そして、シンデレラは『本領』を発揮する。
先の『通常』でしかなかった稼働とは違う本領。
「『殲滅モード』」
一言、指示を出して移行するシンデレラの真価。
同時に、シンデレラの周囲を埋め尽くす光線の束が、1秒の間隙なく巻き起こされる。
『『『『『『『──────!!』』』』』』』
ハルモニア達は身動ぎも、回避すら出来ずシンデレラの光線に身を焼かれ切り刻まれていく。
かわしようがない。シンデレラの周囲はまるで嵐のように、配電線が敷き詰められたかのように光線が満ちあふれているのだから。
シンデレラの兵器のスペックは当然のこと、彼女自身もまた血の滲む努力により極限までその実力を研ぎ澄ませている。
「美しくない操り人形では、こんなものかしら」
その努力と労力と研鑽は、シンデレラの半生を注ぎ込まれたものであり。
その心身は、ルシファーという王子様の存在により絶頂を極めている。
故に、夜渡り達が全員でかかり、サラが懸命に退けたハルモニアの集団ですら歯牙にもかけず、シンデレラは圧倒的な勝利を収める。
「どう?王子様。──今の私は美しい?」
いや、勝利という言葉は似つかわしくないかもしれない。
『うん、うん!とっても!僕より美しく輝いているよ!』
数十秒後には復活するのだとしても。
「それは言い過ぎよ。──あなたの輝きには、まだまだ遠いもの」
しかし確かに。
シンデレラはたった一人で…。
ハワイにスポーンしていた敵対者全てを『殲滅』せしめた。
戦闘ですらないそれ。
害虫を始末するようなスケールの競り合いにおける決着は勝利ではなく…
──『駆除』。
そう、言うべきものなのだから。
シンデレラ「ふふっ、王子様?なら美しく勝利した私に、ご褒美のキスを…あら?」
ルシファー『!あれは…!ディスラプターか!』
シンデレラ「空間の薄いところを見つけたみたい。そして私が倒したエネルギーを纏めて撃った、という事かしら」
ルシファー『何かが出てくる。あれは──ノーデンス、だったかな…?』
シンデレラ「……………?」
ルシファー『旧神…本当に関わっていたんだね。アレを始末すれば…』
シンデレラ「──ねぇ、王子様」
ルシファー『?どうかしたかい?シンデレラ…』
シンデレラ「アレは、何かしら?」
ルシファー『アレ?ノーデンスの…』
シンデレラ「空っぽよ、あれは。中に何も、入っていないわ」
ルシファー『─────────なんだって?』