人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
大和『!』
縷々『ディスラプターを撃て!皆続く!!』
大和『了解──!ディスラプター、承認要請!』
クライン『承認致します。さぁ!』
大和『───発射!!』
重粒子核崩壊砲が、撃ち放たれる。
同時に指摘されたポイントへ、ハワイからの全火力が集中され天幕が割れる。
縷々「───!」
其処より現れしは…。
ノーデンス【───愚かしくも、偽りの楽園にて安寧を貪っていればいいものを】
巨大な老人の意匠たる神…。
【それほどまでに惑いたいか、愚か者どもめが】
旧神、ノーデンスそのものであった。
「あれが、ノーデンス…邪神の敵対者たる存在か…!」
海の上に、巨大な存在感を齎すノーデンスを名乗る者。確かにその巨大なシルエットに加え威風を感じさせる存在感は確かに神を名乗るに相応しいものを有する。
【愚かなる者たちよ。邪神に阿り、邪悪なる在り方を良しとした者達よ。我は貴様らを裁くものであり、我は貴様らの敵である】
その物言いは傲岸不遜であり、全てを見下し、全てを蔑む傲慢さに満ち溢れている。まさに、人が思い描く神の様相そのものだ。
【崇め、平伏すがいい。お前達には最早慈悲は与えられぬ。貴様らの末路はこの偽りの地にて、未来永劫──】
瞬間、ノーデンスに与えられたのは…。
「撃て!撃てーっ!!」
ハワイの全戦力における、ノーデンスに叩き込まれる最大火力の一斉掃射であった。
【白痴の愚昧どもめ、抗うか】
しかし、その一撃一撃はノーデンスが持つ神威、それにより完膚なきまでに防がれる。それは、邪神の敵対者として培われた神の威光、まさにそのもの。
【無駄な事だ。貴様ら邪神の眷属の悪しき力など、我には届かぬ】
それらを弾くノーデンス。邪神の敵を名乗るだけあり、このハワイ・トラペゾヘドロンにて凄まじい耐性を誇っている。
【久し振りだな、ジジイ。随分と物言いが悪辣になった】
その時、ノーデンスの下へ通信が届けられ。
【むぅっ…】
瞬間、吹き荒ぶ荒れ狂う暴風がノーデンスに叩きつけられる。そこには、銀髪褐色の黄衣の王。
【そうじゃのう。お前はもうちょい可愛げのあるジジイじゃったはずだったが】
邪神にして最強格の神性、ハスター。ノーデンスの力を意に介さぬ程の颶風を以て、巌然と立ち塞がる。
【ハスター。黄衣の王。まさか本当に人間に阿っていたとはな】
【儂は気ままなボケ老人。隠居先に愉快なものらがいた故に世話になっておってのう。…まぁ、貴様が先に耄碌するとは思わなんだ】
瞬間ノーデンスが手にした杖を掲げ、ハスターへと天罰の雷を叩き落とす。
【ますます以て嘆かわしい。会話に興ずる余裕すらないか?老い先短い同士花を咲かせてもよいじゃろうに】
【ただいたずらに風を吹かすだけの貴様と語る舌など持たん。腐りきった人間どもの腐臭を運ぶ風、断ち切ってくれよう】
ハワイ全土を覆う暗雲。万雷が、ハスターへ全て叩き込まれる。
【派手好きなところは…。まぁええわい】
しかし、ハスターの黄衣の前に落雷は全て阻まれる。抑止力も減衰もないハスターの神格は、クトゥグアやニャルラトホテプと違い依然健在だ。
【おい、ノーデンス。お前は確かに邪神の…私達の敵であった】
そんな中、ハスターのスマホからニャルラトホテプの通信が響く。
【だが、人間に対して積極的に被害を齎し、貶めるような真似をするほど暇な奴じゃなかった気がするがな。今のその姿、ナイアやモアが見たら一体どう思うか】
【下らん】
ニャルラトホテプの問いを、ノーデンスは一蹴する。
【星の断罪者に狩人。目をかけていてやったのは貴様ら邪神を討つ力となるが故の事だ。惰弱と化した貴様らの喉元を食い破る可能性を持つ因子として】
ハスターとノーデンスの風雷が交錯する中、ノーデンスは断ずる。
【だが結局それも無駄だった。邪神をあまつさえ親と仰ぎ、下だらぬ家族の真似事に興じる愚かさ、度し難きにも極まったというものよ】
【フン、そうかい。じゃああのファンキー爺っつぷりも演技というわけか?】
ニャルの問いに、ノーデンスは雷の力を密集させて返礼する。
【無論だ。邪神の血縁など、本来は目にする…口にするも穢らわしいもの。利用価値がなければ言葉など交わすものか、悍ましい】
そこには徹底して、邪神への侮蔑と嫌悪、憎悪があった。邪神の敵たる、その有り様。
【……深淵を除く時、またこちらも深淵に覗かれているのだ】
ニャルがため息と共に、言葉を送る。
【何…?】
【残念だよ。私が知る限り…お前はもっと愉快で輝いている存在だったんだがね】
それは訣別の言葉。同時に───
『面白い耄碌爺だ。気に入った』
瞬間。
『今すぐに殺してやる』
【──────!!!??】
叩き込まれる、人理を固定補正する錨。それこそは、人理の正しき道を記録する固定記録帯。
即ち、人理定礎。それを固定する錨が、月から直接放たれたのだ。
【これは───!?】
それこそはムーンセルより、記録固定に使用するエネルギーを対象に向けて発射する事象兵器。
どれ程優れた防御障壁(対粛正防御も含む)でもこれを無効化する事はできない。ただし、効果範囲から離脱する(回避する)事で攻撃を躱す事は可能な一撃。それを担う事が出来るのはたった一人。
【月の、新王……!】
岸波白野。ニャルラトホテプの下にてBBを介抱しているその人が、青筋を浮かべ月の新王の切り札を以てノーデンスを打ち据えたのだ。
『私は別に邪神とか神とかでこだわりを入れたりしない。眼鏡をかけてくれれば嬉しいけどそれはあくまで個人の自由』
【む、むぉおっ……!こ、れは…!!】
『だけど、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いか知らないけれど、うちのバカで愚かでトンチキポンコツな後輩をお前は嘲笑った』
はくのんは淡々と、しかし怒りを越えて冷え切った声音でノーデンスを打ち据える。
『私は、私の大切なものに唾を吐いた奴を絶対に許さないつもりでいる。そもそもお前はリッカと、その大切な人達のバカンスを邪魔している』
ノーデンス程の神といえど、それを防ぐことは叶わない。理論上、マシュの防御やアルトリアのアヴァロンでさえ『確定された事象』を防ぐことは出来ないからだ。かわすしかない。
だが、人を嘲り、高みから見下ろすような愚神等に回避の手立てや心構えがあろうはずもなく。こうして人理の錨に串刺しにされている。
【────…………】
【かかかっ。人類の積み重ねは凄いのぅ。こうして今ボケ老人の介錯をできとるわい】
ニャルラトホテプ、ハスターが手を下すまでもない。ノーデンスは今、人理を繋ぎ止める巨大な錨に貫かれているのだ。
『愚かだと対話を一切拒否するのならそれでいい。尊重とは、愚かな行為に正しき報いを与える事もまた然り』
はくのんはニャルラトホテプの隣でBBを抱きかかえながら月の全てを叩き付けている。最早その行為に慈悲はない。
ニャルラトホテプも、ハスターも、会話や風は囮に過ぎなかった。いやそもそも、ハワイの全てがこの瞬間の布石。
『覚えておくといい。悪意を以て人を傷付ける輩は、やがて絶対的な報いと共に破滅するという事を』
女性差分テキストを用意されなかったはくのんの硬質な声。本来ならばレイド戦が始まる場面を、怒れる月の新王は全てスキップする事となる。
【むぅおぉおおぉおおぉおおぉおおぉおおぉおおぉお…………………!!】
人の極致。その生まれがなんであれ、変わり続け終わることなく進歩した窮極の王たるはくのんに、深淵に堕ちた旧神は討たれる。
『リッカ風に言うなら……』
そして、人間による神への罰は下る。
『ゲームオーバーだド外道ーーーーーッ!!!』
【ぬあああーーーーーーーーーーーーーッッ!!】
その一撃は…。ノーデンスの顔面を、強かに打ち砕き破壊せしめたのであった。
【───────は?】
【───────何?】
しかし。
二人の邪神は、皮肉にも。
【───────どう、なってる…?】
【───────おかしいじゃろ、これは】
目の前の光景に『正気を疑う』事となる。
【─────────】
顔面を砕かれたノーデンス。
そこには、何もない。
臓器も、肉も、骨も、何もない。
ただの空洞。
空虚なるもの。
そこにはただ…
ノーデンスとして活動していた、何かがあった。
ノーデンスだったもの【】
岸波白野『……ハリボテ?』
ニャルラトホテプ【いや、違う…違う筈だ。奴はナイアを、モアを知っていた。その記憶をも】
BB【コピー体、とも違いますね。投影にしてもリアルすぎます。先程まで、あれは確かにノーデンスだった。ハスターさんもニャルさんもそう認識していた筈】
ハスター【うむ。あの権能は確かにやつの…】
ハルモニア『う、うーん…あれれ?』
はくのん「!」
ハルモニア『私達、何を…?』
はくのん「目覚めた。突然で悪いんだけど、あれは…」
その時。
天使『星の形。宙の形。神の形。我の形。天体は空洞なり』
通信より、天使達の声が響く。
ニャル【何…!?】
天使『空洞は虚空なり——— されど、虚空には神ありき』
はくのん「これは、確か…」
ニャル【アニムスフィアの理念だったか…?───いや】
ハスター【まさか──】
天使『邪神を抑える旧神は今、滅んだ』
天使『善は潰え、安寧は崩れた』
『『さぁ、混沌がここに目覚める時』』
そしてニャルは、理解する。
【───────やられた…!!】
瞬間。
『─────■■■■■■■■■■■■■■ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!』
善なる力を受け、ハワイを支えるニャルラトホテプの神体が『起動』し。
ハワイに満ちる願い…。
『こんな素敵なバカンスが、ずっと続けばいい』
その願いに殉じ。
『ハワイにまつわる全てを崩壊させ永遠とする』というプランの下。
──ハワイ全ての、崩壊が始まった。