人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
はくのん「アニムスフィアめ、とんでもないものを創り上げた」
BB「本当ですよ!…根源に至ったリッカさんといい、これなら本当に宇宙に巣食う獣や、私達の悲願の【遊星】の打倒も…」
はくのん「そこは別に心配してない。皆いるし」
BB「───はい!」
ニャルラトホテプ【………】
BB「おや、どうしました?変わらず楽園カルデアの大逆転ですよ?」
ニャルラトホテプ【そこは素晴らしいさ。だが…】
【……もしや…ノーデンスは、既に…】
『あぁ、もう!暗黒宙域でもこんなに暗くありませんよ!どうなってるんですかこの宇宙は!』
ハワイに動乱が巻き起こっている今、その頃一方の別部隊。ぼやきながら暗黒を極めた宇宙を疾走する3つの陰があった。
「仕方ありません。星の輝きは本来とは違うものとお父さんも言っていましたし…」
『我らだからこそ見つけられる事があると、我らの主は告げられたのでしょうから。なんとしてもやり遂げなくてはなりませんよ』
謎のヒロインXX、ナイア、そしてダゴネット。この三人が、無謬の暗黒を切り裂く流星として疾走を続けていく。
彼女たちは、それぞれの主に従い別行動を行っていた。スペース・エレシュキガル。ニャルラトホテプ、そしてハスター。
ハワイの宇宙が、何かおかしい。そう感じた者達が、自身の信じる者達を派遣したのだ。(XXはエレシュキガルの個人的な依頼)
それはノーデンスの消失にも通じる事象に違いなく、三人はひたすら宇宙の果てを目指して駆け抜ける。
そこには星の瞬きすらない、なんの座標もない無謬の宇宙。常人なら狂死してしまう環境のため少数精鋭だ。
何故宇宙を疾走し、目指すのか?それは全くの無謬である虚ろな宇宙に、一瞬だけ『反応』があったのをニャルラトホテプが捉えたからだ。
一瞬、星の瞬きのように消えた反応。そこには間違いなく思惑があると睨んだニャルラトホテプ達は協議し、ちょうど派遣されていたXXと協力しているというのが事の経緯。
『しかし気が滅入りますね。あのニャルラトホテプ、本当に正しい事を言っているんでしょうか?』
「大丈夫です。今のお父さんは、カルデアの皆様を嘲ることは決してしない方ですから」
『それは勿論、更にハスターさまも関与しているのだから間違いは…、!皆様!』
三人は突如現れた反応に急停止し、身構える。なんの気配もなく、しかしその気配は、そこにいない『彼』なら気付いたであろう存在。
【─────…………】
黒き禍々しき翼。漆黒の光輪たるヘイロー。怜悧かつ冷徹な瞳
『あなたは、確か…』
「ミカさん…ミソノミカさん、でしたか?」
アダムが擁する、かの姫君。聖園ミカ。その全てを漆黒に塗り潰したかのような、黒き少女。
【やっぱり気付いたね。まぁ見逃すほどバカじゃなかったか】
だが、天真爛漫な彼女とは真逆の雰囲気を漂わせる彼女は、その言動に親愛や優しさを全く有していない。酷く落ち着き、落ち込んでいた。
【ノーデンスだっけ?その神様や宇宙のことを調べに来たんでしょ?私、教えてあげてもいいよ】
だが、その提案は彼女達の調査を結実させるもの。
推定されていた黒幕…ビーストΩのにとっては、利敵とされるものですらあった。
『いいんですか?確かあなたはあのエセ神の…』
【あなた達の味方をするんじゃないよ。そのエセ神の邪魔をするの。…まぁ、あのエセ神はそんな事すらどうでもいいんだろうけど】
それに、と彼女は付け加える。
【…助けてもらったし、ね】
聞こえないようにそう呟いた後、ミカは手を広げる。
【さぁ、何を知りたいの?なんでも教えたげる。私の知ってる事なら、ね】
では、と。ダゴネットが歩み出す。
『クトゥーラ様の父、クトゥルフ様がノーデンスたる者に吸収されたました。私はハスター様にその捜索を仰せつかりました。クトゥーラ様のために、この使命はなんとしても果たさなくてはならないのです』
そう。クトゥルフはノーデンスに介し、その身を吸収されてしまった。その捜索は、彼女の目付役を任命された彼女にとって急務にて使命であるのだ。
【クトゥルフ…?あぁ、あのタコみたいなの?それなら─…】
ミカは、ぐっと腕を広げる。
【いるよ?この場所に】
『それは、どういう…。──』
まさか。そう、ダゴネットが気付いたように口を抑える。
【そう。ハワイを取り囲んだこの宇宙。それに神格ごと存在を溶かされて…宇宙熱量のエネルギーになっちゃったんだよ】
それは、衝撃を極めた発言。クトゥルフは既に【宇宙の燃料】にされていたと。
【私がここにいて、感じたんだから間違いないよ。助けたいなら…ちょっと遅かったかな?】
『まさか…そんな…』
ダゴネットが片手にて頭を抱える中、XXがミカに問う。
「では、あのノーデンスは一体何なのでしょう?私の知るノーデンスお爺様とは、何もかもが違いすぎます」
ナイアは図らずとも、抗議のような声音を発してしまう。彼女とモアは、邪神と敵対しながら、慈愛を忘れなかった彼との相違を問いかける。
【それはそうだよ。ノーデンス、あのエセ神に戦いを挑んで負けて、宇宙の闇に呑まれちゃったんだから】
「──────は、い?」
【うーん、ちょっと違うかな?ノーデンスおじいちゃん、あの人は宇宙の【滅びようとする意志】が全てを飲み込む前に、自分の全てを懸けて逝っちゃったんだよ】
ミカたる少女は、全容を語る。
かつてノーデンスは、邪神を越えた邪神…独善を極め宇宙を揺るがす『獣』を見出した。
邪神は領域外から全てを翻弄するが、これはもっと悍ましい事をせんとしている。
彼は邪神の敵であるが、生命への慈愛も有している。
それらを根こそぎ奪い去る根元的厄災を、なんとしても取り除かんとしていたのだ。
彼は『保障』されし至高天、その中枢に向かわんとし、その意志に触れた。
その至高天に座す神を騙る獣…それは、余りにも強く圧倒的であった。
神が万軍を組もうとも。
人が束を成そうとも。
森羅万象が、全ての力を合わせても。
その存在は微塵も揺らがず、ノーデンスは圧倒的な力の前に翻弄され続けた。
『下だらぬ老人よ。枯れ木の如き無謀は見苦しいぞ』
聖なる声は、彼を嘲る。
『どうせ老い先短い生命じゃい。せめて貴様を道連れにせんと死んでも死にきれん』
そう、ノーデンスは決して諦めなかった。
そこで、聖なる声は考えた。
『この老人が護らんとする全てを壊してやろう』と。
平行世界の銀河が、次々と破壊されていく。
宇宙に満ちる生命が、瞬く間に縮小され消え去っていく。
『貴様、何という事を───!!』
神たるノーデンスは、その愚行を越えた愚行に憤死も辞さぬほど憤った。
宇宙には、存在する力と滅びに向かう力がある。
それを、存在する力を支える生命を猛烈な速さで刈り取っていった。
それをすればどうなるか。
当然、宇宙の【滅びに向かう力】が圧倒的となり、もはや世界は成り立たなくなる。
それはこの悍ましい聖なる神にも好ましくない事態のはずだ。自身を崇める生命体の根絶を、此奴は望むというのか?
『我を満たす生命は、既に我が手中に』
輝かしい、邪神を越えた根元的厄災たる存在は告げる。
『我が世界、我が栄華、我が栄光は既に保障されているのだ──』
その時点で、この存在を倒す事は叶わないとノーデンスは知る。
『次元が違う』。世界に生きとし生ける全ては、この存在を打倒する階位に達していない。そう確信したのだ。
それよりも、このままでは宇宙の大崩壊が即座に始まる。
護るべき全てが滅び去る。そうある最悪の可能性を、防がんとするためにノーデンスは動いた。
『邪神の娘よ、断罪者の慈悲よ!せめてもう一度…頭くらい撫でてやりたかったわい──!』
彼は自身の全ての神格を、宇宙を存続するために解き放った。
生命も、神格も、使命も、人格も、記憶も、その全てを燃料に変え、宇宙の『存続の意志』へと変換し、全宇宙を護った。
『我が威光に、我が世界を支え尽くす覚悟をしたか』
残された、ノーデンスの霊基をかの獣は嘲笑う。
『枯れた老人の痴愚にしては上出来だ。せめて赦してやろう。下らぬものの、懸命な献身を…』
そして、そこには…
ビッグバンクラスの熱量を放ち形骸化した、ノーデンスの亡骸だけが残ったという。
ナイア「そん、な……」
ミカ【あのノーデンスは、ノーデンスおじいちゃんが遺した神の遺骸を使って、中身に宇宙の滅び去る意思を詰め込んだ剥製。ノーデンス・デストルドーって感じかな?】
ナイア「ノーデンス、お祖父様……」
XX『随分詳しいんですね。見てきたように』
ミカ【私、ノーデンスおじいちゃんに助けられたから。死刑にされかかってたとこ】
ダゴネット「なんと…!」
ミカ【だから…あれはノーデンスのガワだけを使ったまがいものだよ。神相手に、何でそんなことできるかは…】
なんだっけかな、とミカは言う。
【虚空には、神ありき…だっけ?それをできる機械を、作ったんだって。確か名前は…】
【───マリス・なんとか、だったかな?】