人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
ラクシュミー『でもまゐちゃん、しっかり想いを届けられてよかったわぁ』
ヴィシュヌ『そうですね……ん?』
ベルフェゴール【──────】
ルシファー『ベルフェゴール?どうしたの?』
ベルフェゴール【…『これからも一緒にいてくれるのなら、きっと大丈夫』……『永い時を生き続けるとしても…あなたがいれば、怖くない』……】
【────私が望んだ、永遠の愛……ここにあった…ちゃんと、あったんだぁ……!】
ルシファー『…ふふ。嬉し涙だね。……よかったね、ベルフェゴール』
(うんうん。やっぱり愛は素敵だなぁ…)
────バトルを終えた、馬神弾と紫乃宮まゐ。2人はエクストリームゾーンから出て、バトルスピリッツブースに戻ってきていた。
「弾」
「なんだ?」
まゐは、頬をほんのりと赤く染めつつも、微笑みをたたえて言う。
「…私、やっぱりあなたのことが好きよ。愛してる」
「っ……」
その言葉を受けた弾は……こちらも微笑みを浮かべ、応える。
「……お前との死別は、考えるだけで結構ダメージだった。やっぱり、俺にはお前が必要だ。…愛してる、まゐ」
───10年前、断たれたはずの繋がり。もう二度と、直接顔を見ることも叶わないはずだった最愛の人。
「……ふふっ。初めてかも、直接『愛してる』って言ってくれたの」
「そ、そうだったっけ…?」
しかし、そのキズナは永遠であり…やがて、こうして二人は再び結ばれるのだった。
…その時。
「「っ!?」」
弾とまゐの身体から現れる、赤と紫の「シンボル」。それは、「コアの光主」の証。
とある世界における、「地球」と「異界グラン・ロロ」の太陽たる「マザーコア」…それに選ばれた存在、時代の転換点を象徴するもの。それこそがコアの光主であり、二人はそれぞれ、「赤の光主」と「紫の光主」であった。
…弾の赤のシンボルと、まゐの紫のシンボルは、徐々に近づいていき、やがて重なり合う。その瞬間、眩い光が辺り一面を照らし……。
…やがて、光が収まっていき、二人のシンボルがそれぞれの中に戻るとともに、1枚のカードが姿を現す。それはゆっくりと、まゐを選んだかのように降りてきて…まゐはそれを手に取る。
それは、バトルスピリッツのカード。そして、その銘は……。
「『超龍騎神グラン・サジット・ノヴァ』…!?弾、これって……!」
「…ああ。俺が持っているものと、同じカードだ」
そう言って、弾は自分のデッキケースから1枚のカードを取り出す。それは、今しがた誕生し、まゐの手に収まったものと同じスピリットカード「超龍騎神グラン・サジット・ノヴァ」。馬神弾の今の「光導」デッキにおける、最強のスピリットカードである。
しかし…。
「…カードの絵が、違う……?」
そう。弾が元々持っていたグラン・サジット・ノヴァは、煌めく宇宙の星空を背にしたような神々しい姿の絵柄だったが、まゐが手に入れたグラン・サジット・ノヴァの絵柄は、星の剣を手にした勇壮なる姿であった。
「なんで絵が違うのかは分からないけど……なんだか、あの時を思い出すな」
「あの時…?」
「ああ。俺がギデオンと戦っていた時…お前と、ほんの少しだけ逢えたあの時だ。あの時も、俺とお前のシンボルが共鳴して…このグラン・サジット・ノヴァが生まれたんだと思う」
「……そっか」
まゐは瞑目し、新たに生まれたグラン・サジット・ノヴァのカードを、両手で優しく持って、愛おしそうに、抱きしめるように自身の胸に当てる。
───超龍騎神グラン・サジット・ノヴァ。そのカードが持つ「系統」は、とある世界にいる神の一種「
…そして、残り2つは「
……偶然か必然か、今の馬神弾と紫乃宮まゐが、それぞれ主に使うカードの系統であった。
「…なんだか、嬉しいね」
「ああ…そうだな」
視線を交わし、微笑み合う二人。そしてまゐは、ずっと見守っていたヴィシュヌとラクシュミーに告げた。
「…ヴィシュヌ様、そしてラクシュミー様。…お願いします」
『わかりました。…では、ラクシュミー』
『ええ。…始めましょう、まゐちゃん』
そして、弾とヴィシュヌ、まゐとラクシュミーの融合のための……そして、未来にてまゐが神として新生するための儀式が、始まろうとしていた。
~
『……これでよし、と』
弾とまゐの足元に、ヴィシュヌとラクシュミーが、神の力を用いて魔法陣らしきものを描く。
『では……始めましょう』
「「はい」」
弾とまゐが魔法陣の中央に立ち、弾の前にヴィシュヌが、まゐの前にラクシュミーが佇む。
その儀式の様子を、離れたところからルシファーとベルフェゴールが見守っていた。
────弾の足下の魔法陣が赤く輝き、まゐの足下の魔法陣が紫に輝く。その輝きは徐々に強くなっていき……。
『──────告げる』
『──────告げる』
ヴィシュヌとラクシュミーが、順に詠唱を唱えていく。今回使われるそれは、英霊召喚の詠唱を簡略化し、彼らが独自にアレンジしたもの。
『我が身は汝の下に、汝の命運は我が剣に』
『聖杯の寄るべ、母なるコアの導きに従い、この意、この理に従うならば応えよ』
『誓いを此処に』
『我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者』
『我ら、三大の言霊を纏う七天』
『天秤の守り手、抑止の輪より此処に来たりて、今ここに我らの運命を重ねん―――!』
詠唱が終わると、弾とまゐの姿が完全に光に包まれ、そこにヴィシュヌとラクシュミーが重なっていき……。
────光が収まった時、弾とまゐの姿のみがそこにはあった。しかし、その服装は大きく異なっている。
弾は、装飾に彩られた服装と黄金の外套を纏い、腰には笛が提げられている。
まゐのほうは、インドの民族衣装「サリー」のような衣装へと変化していた。
そして……。
『…成功、ですね』
『ええ、そうね…!』
弾とまゐの内から声が響く。そう、ヴィシュヌとラクシュミーが、弾とまゐに憑依融合する疑似サーヴァント化の儀式は、確かに成功したのだ。
「…これが、神霊の疑似サーヴァントの力……」
「すごい…!今までじゃ考えられないくらいに、力が湧いてくる……!」
インド神話の神々の力を自らの身に降ろし、その大いなる力に驚嘆する弾とまゐ。
…だが、儀式はまだ終わってはいない。
『……さて、儀式はもう1段階、ですね』
『ええ。…まゐちゃん、あなたの魂に
「───はい、お願いします」
頷くまゐ。そして、弾とまゐの肉体の意識がヴィシュヌとラクシュミーに交代し、更なる儀式が始まる。
ヴィシュヌがまゐの身体に向けて右掌をかざし、ヴィシュヌとラクシュミーが詠唱を開始する。
『『───夜を従え、星を超え、救世の赤に寄り添う慈愛の紫』』
『『遥かな彼方、生命の終わり。その果てに神格へと至り、真に救世の傍らへ───!!』』
2人のその詠唱と共に、再びまゐの身体が紫の光を纏う。その光が収まった後、まゐ自身には現状これといった変化は起きていなかったが…。
『───成功、ですね』
『ええ。まゐちゃん、これであなたの「死後」が確定したわ。あなたは人としての死を迎えた後、神の座に至り、弾くんと同じような存在になる』
「──はい。ありがとうございました」
静かに、だが感慨深げに、感謝を告げるまゐ。すると……。
『ちょっといいかな?』
そこに割って入る者達がいた。…先程まで儀式を見守っていた、ルシファーとベルフェゴールである。
「あなた達は……」
「確か、ルシファーさんと…ベルフェゴールさん、でしたっけ?」
『うん。…ほら、ベルフェゴール』
【…馬神弾、紫乃宮まゐ。……おめでとう。そして、ありがとう】
「「……」」
【君達は、私に「永遠の愛」を示してくれた。君達が星の竜に乗せてぶつけ合った互いへの揺るがぬ愛……私にも、伝わってきたよ。
もう二度と望むべくもないと思っていたものが、まだ現実にあると示してくれた。…本当に、ありがとう。
───どうか、君達の未来に、心からの祝福を送らせてほしい】
その言葉に、どれだけの感慨が込められていただろうか。それを感じ取った弾とまゐは、照れくさそうに笑う。
「…こちらこそ、ありがとう。でも、きっと…」
「うん。…きっと、私達だけじゃないと思います。あなたが望むものを示せるのは。…あの楽園カルデアなら、きっと…」
【…うん。私も、今はそう思えるよ。だからこそ、起きてこられたんだ】
微笑み合う、2人とベルフェゴール。ルシファーもそれを暖かく見守っていた。
すると、そこでヴィシュヌが口を開く。
『…っと、そうでした。弾君、まゐ君。早速ですが、君達の力を借りたいのです』
その言葉に、弾とまゐの表情も真剣なものへと変わる。
「…このハワイに迫る脅威について、ですね?」
『さすが、察していましたか。ええ、そうです。敵は、邪神と敵対する旧神「ノーデンス」…の外見や力を模した「空洞の何者か」。それに加え、偽神の配下たる天使達も姿を現していたとか…。
…しかも、ノーデンスらしきナニカもナニカで、一度は打ち倒されたはずなのですが…まだ裏というか、隠された秘密がありそうなのですよね…』
「そんな相手が、リッカちゃん達のバカンスを狙って……!」
『はい。……その上、まゐ君が接触したことのある邪神クトゥルフの反応が消えました。恐らくは、先ほどの「空洞の何者か」に取り込まれて…』
「っ!?そんな……!」
その言葉にショックを受けるまゐ。彼女は、娘・クトゥーラとの接し方に悩むクトゥルフに声をかけ、相談に乗ったことがあったのだ。その時にカレーを振る舞い、バトスピのスターターデッキを渡していたのだが…。
『ですが、ニャルにも確認を取ったところ、まだ希望は残されています。むしろ、取り込まれた彼を救い出すことで、敵の策略に穴を開けられるはず』
そう言いつつ、弾の意識の表層に出たヴィシュヌは、弾とまゐが用意していたスターターデッキの1つを手に取る。
「それは……」
───『アイツのデッキ』。構築済みデッキに加え、コアとプレイシートまで付属し、これ1つでバトスピを始められるスターターセットだ。
弾、および彼の友である「バローネ」が使ったデッキをモチーフとしており、それがなんだか嬉しくて体験会デッキに選び、ニャルに取り寄せてもらったものだ。
実はリッカ達の世界では2年後に発売される商品であるのだが、楽園カルデア内でなら大丈夫だろうと、困惑する弾を押し切ってまゐが選んだことを、弾とまゐは覚えていた。
『ちょうどよく、これは「光導」のデッキです。光導の神、そして今疑似サーヴァントとなった弾君と、まゐ君が力を合わせれば…偽神の天使相手にでも通用します。それに…』
さらにヴィシュヌは、神の力を用いて1枚のカードを再現し、手に取る。それは、「月紅龍ストライク・ジークヴルム・サジッタ」。
『このカードが、クトゥルフにも渡したスターターデッキに入っています。これは弾君とバローネ君が使っていたカードであり…「射手座」の「赤いジークヴルム」。弾君にとっても特に縁深い要素を備えています。
これを一番の取っ掛かりとして、私達と君達の力でクトゥルフを引っ張り出します。および、何者かの魔の手からハワイを護る戦いに加わる。
…頼まれてくれますか?』
「もちろんです」
「はい!」
ヴィシュヌの言葉に、すぐさま弾とまゐは頷く。
『ありがとうございます。…では、まずは一旦、今日のサバフェスに向けてこのブースの準備を。折を見て、作戦会議といきましょう。ニャル達とも連携しなければね。
私達以外にもクトゥルフを引っ張り出せる力があれば、力を合わせて成功率も上がるでしょうし』
───こうして、疑似サーヴァントとなった馬神弾と紫乃宮まゐ、そしてヴィシュヌとラクシュミーもまた、リッカ達のバカンスを脅かす者たちとの戦いに参戦することとなるのであった…。
ヴィシュヌ『とはいえ、今しばらくはこのブースを運営しながら、ニャル達や他の仲間達と連絡を取り合い、決戦に備えておきましょう。私達と君達の力が必要になるときは、いずれ必ず来ますから。
…ああ、それと、現状リッカちゃんには情報が漏れないようにしないと、とのことですよ』
弾「──分かりました」
まゐ「そういえば…今回の敵やこの戦いの裏に隠された秘密、その正体に、ヴィシュヌ様はお心当たりがあるのですか?」
ヴィシュヌ『ええ、勿論。アレは─────』