人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
『このイベントまだやってないよ!』
という旨はメッセージにて報告お願い致します!
最悪アフタータイムを設けて可能な限り行います!
『そうか…店長よ。休暇を真に達する為、敢えてサバフェスの競合に飛び込むことを選んだのだな』
ヘラクレス…否、サバフェス店員たる彼はじゃんぬの決心を静かに聞き届けた。
『ギリシャ・オリンピアブースですら崩す事叶わなかった女王の牙城、やはり崩すは甘味と滾る情愛の炎。このヘラクレス…此度のループは全霊で協力させてもらうとしよう』
ヘラクレスは記憶を保持している。正確には『メイヴを突破せしめる相手』『重要人物』はニャルの手により記憶を託されている。
前回ループ分の記憶はBBの手により補完され、然る後に返却となる。その為、このループは最初で最後のチャンスだ。
「アンタが入れば勝確よ!…と、言いたいんだけど。前回のループはそうもいかなかったのよね」
『うむ。私とアキレウスは手を組み、ギリシャブースとしてオリンピック体験を皆にしてもらう手筈で覇を競っていたが、それでも女王メイヴには及ばなかったのだ』
無念だ。或いは我々も全裸で…と不穏な言葉を浮かべつつ彼は冷静に分析する。
『エミヤズキッチン、マシュ☆コンといった優勝候補のサークルですらかの女王の『上に立つ』能力の前には膝を折らざるを得なかった。料理人、偶像の概念が劣っている訳ではない。余りにもヤツに適した戦場に過ぎるのだ』
「嘘でしょ!?エミヤ師匠にマシュ達まで勝てなかったワケ!?あのチーズ死に女王、ハンパなさすぎでしょ…」
じゃんぬの衝撃は尤もだ。エミヤと言えばカルデアのグランドマザー。マシュとコンラのアイドルユニットはカルデアの押しも押されぬグランドスター。
それらが個別に挑み、其れでも敵わなかった。それは即ち、『カルデアのトップカルチャーの双極が敗れ去った』と言うに相応しいものなのだ。
『作家組は盤石なバカンスが故に堕落の果て新刊を落とし、サークル八百万は印刷部数の関係上棄権の運び。それにてメイヴは、前のループにて覇を掴んだのだ』
故に、とヘラクレスは念を押す。
『我が友イアソンは分析したのだ。『すいーつじゃんぬがカルデアの全てを味方につけ漸く五分。二の太刀や切札無くして勝てる相手ではない』と』
「だから…リッカに、その…グラビアアイドルを?」
『そうだ。料理では勝てなかった。偶像崇拝ですら勝てなかった。ならば『両方を重ね合わせ打ち克つ』他無いのだと、肝心な時にしか役に立たない愚かな我が友は踏んだと言う訳だ、店長よ』
そして大英雄は、弟子と視線を合わせる。
『我が弟子、龍華よ。此度のバカンスを勝利にて試練を終わらせるにはこの手筈しかない。お前が積み上げ、磨き上げた『女子力』を此処に全開させ、女王を上回るのだ』
「────!!」
上回る。女子力で。女としての魅力で。
あの、女王メイヴに。
『じゃんぬ店長の最高の甘味。我が弟子の最高の『雌』を見せ付ける事で盤石の女王を下す。これこそが、我等の勝利の凱歌を響かせる唯一無二の道となったのだ』
ヘラクレスの言葉は、リッカへの覚悟と想いを説いていた。
『だが──私は杞憂も、絶望もしておらぬぞ。我が弟子よ』
表情を緩め、優しくリッカの肩に手を置く。
『お前は弛まず、驕らず自身を磨き続けた。常に自身にとって最高の魅力と力を磨き上げてきた。その果てに宿した強さと美しさ、決してアマゾネスの女達にも劣りはせん』
「ヘラクレス…!」
『最高の相手ではないか。ギルガメッシュに挑んだイスカンダルのように、我が前に立ったギルガメッシュのように。越えるべき頂点は目の前に在る』
(どっちも金ピカじゃない。どんだけヤバいのよアイツ)
ヘラクレスは、ふっと笑顔を見せる。
「業腹だが、我が父大神ゼウスの太鼓判も受けている。『ポセイドンがいなくて本当に良かった。いつか私とお茶してほしい』などと、巫山戯た評価をな」
「ゼウス様が…私を…!?」
「うむ。アルテミスの加護を受け、極東の国造の女神の祝福を受けたお前に、何の不足があろうものか」
大英雄は、自信を以て弟子を送り出す。
『試練に挑め。己が身一つで、女の頂点たる女王を下すのだ。何、お前には共に挑むかけがえのない同胞もいるであろう』
その力強い激励を受け、リッカの目にはみるみる覇気が漲る。
「…ずっと、自分を磨いてきた。性別リッカとか、女ヘラクレスとか言われてきて…ううん、それも立派な私の魅力だと信じてるけれど」
『………』
「ずっとずっと磨いてきた自分が、アルテミスやイザナミ様の応援や祝福まで受けてきた自分の魅力を、思い切りぶつけられる相手と機会に今恵まれてる。それって…──」
リッカの口調、そして──
「────さいっこうのお披露目会になるよねっ!!今まで私を見てきてくれた、応援してくれた全ての人達への感謝も込めた、お披露目会に!」
その想いに、なんの翳りも気後れも、迷いも無く。
「私、やるよ!じゃんぬのすいーつ!そして私の…!その!み、魅力で!メイヴちゃんに勝つ!!」
「リッカ…!!」
「もう性別リッカも、女ヘラクレスも卒業する!今こそなるんだ!私は!『最も抱きたい女マスターNo.1』!グランド・ファム・ファタールに!!」
運命の女、ファム・ファタール。女の極点、傾国の美女。
今こそ自分が、そうなる時が来たのだと。気合を一閃、気炎を吐く。
「やろうじゃんぬ!じゃんぬ一人で勝てないなら、私も全力で戦う!」
がっしりと、じゃんぬの手を握る。
「私とじゃんぬで!女王メイヴのチーズになろう!!」
「──ええ!勿論よ!やってやれるわ!私とリッカなら!」
その手を、強く握り返すじゃんぬ。
「あなたの成長と研鑽には、玉座と王冠ついでに聖杯が相応しいものね!全部あの女王からぶんどってやろうじゃない!!」
『その意気だ。私も看板娘ならぬ看板大英雄としてメイド服着用も辞さない覚悟だ』
「えっ?ま、まぁそれはともかく!ヘラクレスとアキレウスがこっちには味方としているのよ、負ける理由なんて無いわ!」
こうして、最後のループを飾りブリセラを打ち破る為の要因は此処へと成る。
「よぉし!すいーつじゃんぬ&グラビアアイドルリッカ!この二枚看板で!サバフェスの天下取るわよーっ!!」
「おーっ!!」
『それで良い。課せられた試練ではなく、自ら挑む試練のなんと心地よいものか…』
ヘラクレスは、そんな二人を満足気に見やる。
『……アルケイデスと成り、神への復讐に狂い果てるよりも…』
それを否定はしない。
取り繕わず、地の衣を羽織り、汚染され引きずり出された憎悪の人間となる自身も確かに在る。
だが、やはり。それでも。
『──私は、未来ある者達の礎でありたいのだ』
大英雄は、サバフェスのイベントにて…
己の英雄性の原点を、見つめ返すのだった。
?「おーっほほほほほ!リッカとじゃんぬに参加するよう迫るつもりだったけれど、そんな必要は無かったようね!」
じゃんぬ「この声は…!」
メイヴ「よくぞ女王に挑む決心を固めたわ、褒めてあげる!今回のサバフェス、他のサークルは最早眼中に無し…!」
リッカ「メイヴちゃん…!」
メイヴは高らかに、両手の手袋を二人に突きつける。
「あなたと私達の!誇り高き一騎打ちよ!!」
リッカとじゃんぬは頷き合い。
「「望むところ(よ)!!」」
力強く、メイヴの手袋……
決闘の証を、受け取るのだった。