人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
アダム「リッカ…」
頼光「本当に感慨深いです。自身に齎される全てを、嗤う事しか出来なかったあの子がああして笑って、楽しんで…」
アダム「その通りだ。彼女は楽園の巡礼を経て獣から、龍にして人となった」
頼光「アダム先生。これからも…我が大切な愛娘を、よろしくお願いしますね?」
アダム「勿論だ。私は全ての先を生きるもの。私の全てで彼女と彼女の取り巻く世界を…」
パパポポ『着信だっポ〜』
アダム「む…?」
頼光「あら…?」
アダム「すまない、頼光女史。少し」
頼光「はい、行ってらっしゃいませ。あなた♪」
アダム「───夫冥利に尽きるな」
〜
アダム「どうした、父よ」
パパポポ『宙滅の意志の事は聞いているな?宇宙の意志の陰、生まれ変わるために必要な宇宙の生体活動だ』
アダム「あぁ。ノーデンス、並びにブリセラ…」
〜
ルシファー『君、アレが作ったにしてはマシだね!』
サリエル『主よ、アダムよ。あなた方に感謝を…』
〜
「……御座が穢れているが故、天使達も倣わなければならないのは…悲劇ではあるがな」
パパポポ『………。今は置いておけ。それについて、お前に匿名で伝えたい事がある物がいるようだ』
アダム「者、ではなく?」
パパポポ『ああ。ニックネームは…』
『自販機だそうだ』
アダム「自販機…?」
『邂逅、対話の栄に預かれて光栄だ、『全ての先を生きる王』よ。比類なき王、王冠と光を掴むに相応しき…』
「そういった賛美や供物は全て恵まれない生徒達に寄付すると決めている。照れくさいからそれくらいにしてもらえると助かる」
ハワイの一角。そこのベンチにてアダム・カドモン…リッカの父はタブレット『シッテムの箱』とにらめっこし合い、届いたモモトークで会話している。
『あわわ、あばばばば…』
『重傷だっポ…』
アダムとシッテムの箱の権能から忘却叶わなかったアロナは知恵熱と狂気判定で未だグロッキー。故にパパポポがシッテムの箱に入り代理で業務を果たしている。
そんな中、パパポポがキャッチした信号、モモトークの内容に気がかりなものがあったため、アダムにそのまま伝えられた、ということの運びだ。
『本来なら、貴方程の規格外でなければ務まらぬ『先生』の大業…人の身で果たさんとする者達の全てに敬服を表さねば』
『自販機』と名乗る謎の存在は、アダムと軽快なトークを進めんとしているようだが…その言動は『先生』を見知っているかのようであった。
「先を生きるものは、私だけの特権ではない。子から育ち、立派に独り立ちした全てがそうなのだから」
『痛み入る話だ。きっと喜ぶだろう。…そんな貴方に、この隔絶された南国における騒動の手助けがしたい』
手助けを望む自販機なるもの。
「献身的だな。沈んだ気分を、華やかなジュースで癒やし寄り添う以上の手助けなどそう無いというのに」
『────……そうだとも。私は、誰かに寄り添うことが本懐。だから此度も、そうしたい』
彼は、或いは彼女は告げる。
『此度の状況は、父たる鳩の協力のもとで理解した。偽りの神、それによる天使の堕落にして破滅。それを取り巻くバカンス…興味深いものがある』
『まさか神すら、カルデアスすらも複製するとは。力は本当に侮れんやつよ』
『……我が目指したものは、見方を変えれば珍しくもなかったのだ。貴方の場所の我は、違えなければよいが』
「?」
『すまない、話を戻そう。我が気にかかるのは、宇宙の意志の『指向性』と『生産性』といった観点だ』
指向性。向き合う方向。
生産性。生み出されるもの。
『宇宙の意志は普遍的なものだ。本来ならそれ自体が牙を剥くことは無い。何故ならばそれは大いなる意志であり、矮小な生命はその理に従う事で生きるもの』
「嵐や災害が、己の意志で人の営みを崩すことはない…といったものか」
『そうだ。破界の王といった特例なき限り、貴方達という生命に宇宙が牙を剥く事はないはずなのだ』
自販機は推論を展開する。
『破滅に籠絡した天使達。御座に在る獣がそうしたのだとも考えたが、奴等は『発信』し、指向性を持たせたに過ぎん。宇宙そのものが応えるとはおもえんし、交信において発信したのならそれを受け取るものが必要だ』
そこまで聞き、アダムはとある仮説を導き出す。
「───このハワイの何処かに、『宙滅意志』をカルデアに差し向けている何かがある、というのか」
『然り。それが『滅びようとする段階にある宇宙』を生み出し、ハワイを包んでいる。そしてそこから、宇宙そのものを形取るリソースを生産している…我は父たる鳩、この端末の演算と力を合わせ導き出した』
その時、アダム目掛けて『缶ジュース』が投擲される。
それは、砂糖の入ったコーヒー。
『砂糖は頭の栄養だ、召し上がってほしい』
「フッ…いただこう」
ごくりと飲み干し、アダムは続ける。
「宇宙の過渡期、或いは末期。その宇宙を、その受信機から作り出しワールドメイキングにて創造する。そしてそれを破滅の天使…ブリセラが統括する。筋は通っているな」
『宇宙の意志に善悪はない。ただ無慈悲に理であるままだ。…悪意ある干渉がないのなら、だが』
「ならば、その受信機を上手く対処できたならば…宇宙まるごと、ハワイの安全は保障されるということだな」
アダムは立ち上がる。
『仮想される敵は宇宙そのもの。端末とはいえ、生きようとする全ての生命の敵対者にして厄災。そもそも倒せるか、戦えるかも怪しい存在だ』
「丁度いい。神を殺した以上、次なるステップアップの相手に難儀していたところだったのだ」
『…宇宙すらも、その力と覇気、意志で乗り越えんとするのか。『全ての先を生きるもの』よ』
「無論だ」
アダムは立ち上がり、空を見上げる。
「この
全ての生命の営みが育まれるソラ。
それを滅ぼさんとする相手がいるならば、それこそが自らの敵。
「宇宙そのものが敵であるならば、都合が良い。何処にいようと我が拳が届くのだから」
力強く、拳を空に突き上げる。
「宇宙の滅びる意志が牙を剥くならば、私は生きとし生ける全ての為にその牙を迎え討とう」
『フッ…』
「私は常に生徒の───『後に続くもの』達の味方なのだからな」
アダムの意志は、『生きようとする生命』全てと共にある。
『……これが、神々を救う『人』の強さ。数多の先生が持つ『優しさ』に繋がるものか』
自販機は、深々と感じ入るように言葉を送信する。
『高潔なる意志は把握させてもらった。ならば我も躊躇うまい。あなたに推論による導きをもたらそう』
その時、アダム達は耳にする。
〚ナーオ〛
猫の鳴き声を
『!』
「ああ、ちょっとー!先に行っちゃだめですよー!」
そしてそれを追いかけ抱えしは、一人の女性。ガイド服に身を包んだ存在。
「ほら、捕まえた!」
〚クシュン〛
「ああ、すみません!御無礼を、アダム・カドモン様並びに…鳩様!」
『ポ〜』
「構わない。君は確か…ペレ、だったな?」
ペレ。ハワイの女神にてガイドを名乗りし女性。しかし雰囲気が、いくらか違う。
「ふっふっふ、その名前は皆様を裁定する仮の姿!真の名前は別にあります!」
「なんと」
「まあそれは後で!今はガイドとしての使命を果たさねばなりません!さぁ偉大なる始まりの人、慈愛の父よ。私がお二方をご案内致します!」
さぁさぁ!とアダムの手を引き、傍らに猫を抱しペレが歩き出す。
「成る程、既に協力者は確保していたか。自販機よ」
『ハワイのガイド。ハワイで最も喉が渇くであろう存在であろうからな』
そして導かれたアダム達。
「ここです。此処にハワイを…いえ、宇宙全てを脅かし、封印状態ですら宇宙を象る規格外の存在が在る場所」
そこは、キラウエア火山の麓。
「私はハワイを護るものとして、全てのハワイの神々から力を借り顕現致しました。果たして皆様が、この存在を下せるものかどうかを見極めるため、ガイドに徹していた」
そこに、彼女はアダム達を導く。
「あの無礼極まる侵略者どもが利用し、『ハワイにこれがあったから、カルデアはハワイをバカンス先に選んだ』と、因果律の擬似的な干渉すらも起こした【禁断】の存在」
『これは……』
『数多の世界と繋がった事による、悪意の澱み』
『集合無意識と、宇宙の意志により破滅の高みに導かれてしまった【ドラゴンを越えたドラゴン】』
「!」
そして響く、男性二人の声。
「言うなれば…【ドギラゴンX】ともいうべき存在です。アダム先生」
「君達は…」
「はじめまして、全ての先を生きる王よ。僕はガイドその2、アベル。モンモンブースの責任者でもあります」
「俺はカイン。ガイドその3、夜のアルバイトの統括責任者ってとこだ」
「二人は私の頼もしいスタッフ!名付けてオリジンブラザーズです!さあ、どうかよろしくお願いします!アダム先生!」
「カイン…アベル…」
『オリジン・ブラザーズとは…また愉快な名前を名乗っているなぁ』
ハワイに在りし、禁断の龍。
未だそれは、胎動を待つ。