人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
パパポポ『じゃんぬちゃんもこのサバフェスを制する素敵なアイデアを思い浮かんだようだ。私達は私達で、最後の仕上げのためにやるべき事をしなくてはならないな』
アダム「うむ。ではまず、記憶を有しているであろう者達を中心にに『ドギラゴン』の調停を目論むとするか。そして晁マリアちゃんやハルモニアの面談も諸共にな」
パパポポ『キヴォトスでもカルデアでも、忙しい事だな。アダムよ』
アダム「楽しい仕事だ、喜んで打ち込むさ」
パパポポ『ふ…。ではアロナちゃんの代わりに支えてあげよう』
アダム「青封筒は許してくれ」
パパポポ『ならぬな…』
アダム「そんなぁ…」
「という訳で、無事に合流出来たことを喜ばしく思う。ハルモニアの者達よ、共にバカンスを完遂させよう」
『『『『『『はーい!』』』』』』
アダムは完全に行動が停止したブリセラ勢力の間隙を突き、受信機たるドギラゴンを調停し宇宙の破滅の意思を食い止めんと思い至る。その為に、彼はリッカらの勝利を信じてその戦いに備えているのだ。
『ドラゴンが相手なんだって』『怖いねー』『でも、安寧のために頑張らなきゃ!』『やるぞー!』
ハルモニア…ブリセラ達により宙滅意志の走狗となっていた彼女達を味方に引き入れることに成功する。彼女達は大いなる意志の下、安寧を齎すため『英雄武器』を揮う神の騎士団…という事らしいとパパポポから聞き及ぶ。
『すみません、アダム先生。私達を救ってくださりありがとうございます』
そんな中、彼女達はパパポポの手により正気に戻る。彼女達は、アダムやカルデアに協力の意志を示した。それこそが、パパポポを真の主と認めたが故。
「あぁ。夜渡り達から話は聞いている。その結束と協力…心より頼りにしているぞ」
リーダー格のハルモニア達と握手をかわすアダム。彼女達の強さは、夜渡り達のクレームめいた評価からも伺えているところだ。
『皆様にご迷惑をおかけしてしまった分、全力で名誉挽回を狙います。どうか、主と始まりの人の加護を我等に…』
跪くハルモニアの顔を上げさせ、アダムはとある疑問を告げる。
「君達は、言動と見た目があまり一致していないように思える」
彼女らの見た目は、白き無垢の花で出来た鎧に黄金の武器を握る女性である。それでいて彼女らは一様に長身だ。
『はい!私達は安寧の意志に召し上げられし子らの魂を、武器と一つにしています。肉体はこの武器を揮う為に最適化しているのです』
「…それでは、君達の年齢は…」
『私は長女としてあるので、13歳となります。彼女達の部隊の平均は、6から10歳がほとんどなんですよ』
アダムの目が見開かれる。だが、彼女はその事実を不満や不便には考えていない様だ。
『救世の旗手と呼ばれる、未だ解き放たれていない我等ハルモニアの精鋭達はもっと上の年齢であるのですが、彼女らは獣たる偽神の玉座を守るものであるため我等とは隔絶しています。彼女達も来てくれたなら、パパポポ様をより強く御守りできるのですが』
武器に合わせた肉体に調整された改造人間。それがハルモニアの正体であった。
「……惨いことをする。あのケダモノめが…」
少女の精神を縛り、肉体を弄る非道に怒り滲ませるアダム。
『あ、あわわ。怒らないでください』
しかし、ハルモニアたる彼女は彼を宥める。
『私達の一団は同じ修道院の子供達でした。日々を神の愛と信仰と共に生き、神の愛を信じ日々を幸せに生きていました』
故に、神の力となり神の愛を示すために戦う。それは、自身たちの望んだところであると。
『我等が全ては、主たる者に。偽りの神に仕えていた事は何よりの屈辱ではありますが、それでも我等の神への愛は揺らぐことはありません。これからは偉大なるパパポポ様のため、私達は頑張ります!』
『おー!アダムせんせ、勉強教えてー!』『私達ね、読み書きできるよ!マザーが教えてくれたの!』『勉強終わる前にハルモニアになったから、まだ終わってないんだよね』『おなかすいたー』
ハルモニア達に取り囲まれるアダム。どうやら彼女達の信仰心は、パパポポに正しく帰依したようだ。
「──あぁ、勿論だとも」
彼女達を優しく抱きしめながら、アダムはハルモニアの少女達に誓う。
「このバカンスの後、新たに始めよう。君達だけの人生…君達だけの青春を取り戻すために」
『『『『『おー!!』』』』』
『青春って?』『うん!』
宙滅意志を突破する為の、パパポポの頼もしい力。ハルモニア達が、アダムの庇護下に入るのであった。
〜
『私はユスティナ聖徒会にて聖女などと持て囃されてはいましたが…荒事に多少の心得がある程度のか弱き乙女。脆弱さを、ただ信仰にて補っているだけにすぎません。とてもとても、戦いなどは…』
そうして行われたパパポポの使徒にしてユスティナ聖徒会の『聖女』と謳われしバルバラたる復活せし『晁マリア』。かつてトリニティの暗部を知り、アリウスを弾圧し、また救った経験のある彼女。
『パパポポ様を護るため、最低限の嗜みは心得ております。テストでしたら、えぇ。喜んで』
そうしてアダムは千束の下、マリアの戦闘力をテストの名目で拝見することとしたのだが…。
そこには謳われ、賛美され、そして戦慄の下秘匿されし『ユスティナ』の象徴の姿があった。
『久方ぶりの聖戦です。かつての過ちを、繰り返すことのなきように…』
両手に二連装ガトリング、4門の反動を全く意に介さない殲滅力。
ロケットランチャーとグレネードランチャーを問答無用に撃ち放つ筋力。
超大型ライフルのストッピングパワーを片手で完全に制御する膂力。
扱いの難しい範囲の広い鎌を揮い、中距離を完全に掌握する技量。
剣と盾、ショットガンを使いこなし近距離を完全に征服する力。
かつてアリウスの反抗を完全に弾圧し、壊滅に追いやった最高戦力の姿がそこにあった。
「ねーアダ先さー。あーいうの午後のロードショーで見たことあるよ」
「どんな名前の映画だ?」
「コマンドー」
「私も大好きだ。素晴らしい日本語吹き替えを楽しめるからな」
想定された『国家首相官邸を占拠したテロリスト鎮圧』の訓練レベルを、彼女は一人で完璧にこなしてみせた。
『ふぅ…。久々の戦闘ですので、勝手を掴むのにややかかってしまいました』
一汗流した、そのような軽い要領にてマリアは帰還する。
「どうでしょうか、アダム先生?パパポポ様の使徒として、相応しい力を示すことができましたでしょうか?」
優雅な所作で一礼するマリアに、ひきつった笑いを返しながら千束はアダムに耳打ちする。
(聖職者って何でもかんでもこんな感じだったりする?)
(信仰を貫くには、時には力も必要というだろう)
(血煙と硝煙の香りがドギツイ聖なる力だなぁ…)
「?アダム様?」
マリアの言葉に、アダムは静かに向き直る。
「最善、いやそれ以上だ。今の父を安心して託す事が出来る」
「いや〜すごかった!まさに人間武器庫って感じ!たのもしー!」
その太鼓判に、マリアは可憐な笑みを浮かべ一礼する。
「何よりですわ、アダム先生。そちらの御学友も、神の愛に背く異端の獣がいるならば是非私にお伝えくださいな」
「あーと、マリアさん?参考までに見つけたらどうするのかを聞かせていただいても?」
千束が乾いた笑いを浮かべながら、マリアへと問う。
「?えぇ、勿論です。神の愛を知りながら、慈悲を踏みにじる者は人間ではなく卑しい獣、忌むべき異端でございます。それらを…」
スッと、マリアは目を細める。
「その尽くを、神の名の下に浄化するまで。えぇ、神の座を穢している偽りの神、並びにそれらの信奉者などは特に…地獄の業火にて焼き尽くした後に、永劫の責め苦のため魂をコキュートスにまで叩き落として差し上げましょう」
(ヒェ…)
彼女は神の愛の下、生まれたものや生きているものは全て愛の中に在ると信じている。
彼女にとって異端とは、偽りの神たる終極の獣。そしてそれらを信奉する信者たち。
それらに彼女は絶対零度の殺意をもって応え、撃滅する殺意を有する。
「アダム先生。どうかキヴォトスの生徒達を獣の誘惑からお守りください」
マリアは切に願っていた。
「もう……他者のヘイローを砕きたくは、ありませんので」
「……約束しよう」
同じ、神の愛にて生まれた仔らが…
二度と、争う事のなきように。
パパポポ「どうだった?ハルモニアにマリアは。頼もしい戦力になってくれるはずだよ」
アダム「あぁ。だが…」
パパポポ「?」
「二者二様に、いずれメンタルケアを先生として行わなくてはならない。そう、感じたよ」
パパポポ「……そうだな。是非ともそうしてやってくれ」
宇宙の殺意と闇に抗う光の使徒たち。
その抱える闇と、アダムは向き合う決意を固めるのだった。