人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
パパポポ『それはもしかして…』
アダム「あぁ」
「遊戯王デュエルモンスターズだ」
「という訳で!私達は等身大アジ・ダハーカ…つまりリッカのもう一つの晴れ姿で挑むことにしたわけよ!これなら絶対あの女王サマに勝てる…!我ながらそんな確信に満ちてるわ!」
リッカのグラビアに並ぶ、会心のスイーツを追い求めていたじゃんぬ。サバフェスを制覇するための光明をアジ・ダハーカ…即ちアジーカを丸々再現することに見出した彼女は運営たるBBに直訴する。
「それをする為には諸々材料とか、費用とかが必要なんだけど…そこら辺は『何とか出来る』空間とか手段を用意してちょうだい。どんなリスキーな仕入れルートだろうと、やってやるわ!」
じゃんぬ、ヘラクレス、アキレウスの三人はその方針にて固め、チョコの固定や莫大な素材の『調達素材』を彼女に申請。
どのようなルートであれ、このAIは『苦難と苦労が見合っていれば用意する、できる存在だ』と見通しての打電であった。
「成る程成る程〜!リッカセンパイのドラゴンモード、人理を救う龍としてカルデアで名高きアジーカちゃんをスイーツに!素晴らしい着眼点です!」
「でしょ?誰がどう見てもカルデアの顔なわけだし、どストレートにカッコいいドラゴンだし。数十メートルのスイーツだなんてシンプルに度肝を抜けると確信したわけよ!」
興奮気味に語るのは、やはりリッカの側面が勝利に繋がると確信したが故の事だろうか。デカい、つよい、カッコいい。それは世界の普遍の真理。
『見方を変えれば等身大藤丸龍華スイーツとも言える。カルデアのイベントでこれほど覇を掴むに相応しい形態はあるまい』
「サバフェスの新しい見世物にしちまうレベルのすげぇやつを作るつもりだからよ!どうにか何とかならねぇか、BBさんよ!」
ヘラクレス、アキレウスの布陣を見て、BBはふむふむと頷く。
「成る程成る程、良く分かりました!はい!絶対無敵、完璧なBBちゃんは勿論、このサバフェスの突破口を有するサークルたる皆様方に協力は惜しみません!」
「そうこなくっちゃ!」
「必要な素材、経費、そして時間…それらを一挙、BBちゃんスペシャル空間で賄っちゃいます!サバフェスの、さらなる得意な空間!BBスイーツ工房を、皆さんに!」
教鞭…『十の王冠』を振るい、二つの空間に続く二つのワームホールが、BBの手により開かれる。元より彼女は月の裏側でムーンセルを相手取っていたAI。違法脱法行為はお手の物だ。
しかし───小悪魔系である彼女は、すんなりと協力するはずもない。
「でもじゃんぬさん?気をつけてくださいね?この空間はそれぞれ必要な素材がエネミーの形をしている魑魅魍魎空間となっていて、スイーツ製作空間は時間が歪んでいくらでも製作ができますが…」
「?」
「どちらも、ノルマを達成するまで出ることはできませーん!『優勝の力を有するスイーツを』『サバフェスにかける時間の全てを費やして』制作してもらいます。それが運営でありながら個別サークルに協力する違法の、それなりの対価とリスクというものとお考えください」
BBの言葉に、三人は顔を見合わせる。サバフェスに優勝する為に、サバフェスの享楽を諦める覚悟は果たしてあるかと問われているのだ。
「さぁ、どうします?皆さんに滅私奉公の概念はありますか?」
だが、それはよりにもよってこの三人に問うのは愚問を越えた愚問というものだった。
『丁度良い。ギリシャを思い起こさせる無茶振り、いっそ懐かしさすら覚えたぞ』
素材調達エリアのワームホール前に、ヘラクレスは堂々と立つ。
『こういった、他者への助けとなる試練であるのならば大歓迎というものだ。喜んで私は身を投じよう』
「おいおいヘラクレスさんよ。オレを差し置いて先んじるとは流石じゃねぇか」
ヘラクレスに並び立つように、アキレウスも参戦の意志を見せる。
「どちらにせよ、やんなきゃいけねぇのなら丁度いいぜ。とことん遊んだ後はとことん働くとしようじゃねぇか。とびきりのスイーツ作りのための戦…痛快な事この上ねぇ」
ケイローン先生だって、きっとこんな戦いは未経験だろうぜ!心から楽しげに、アキレウスは肩を慣らす。
『流石だな。俊足の大英雄よ』
「よせやい。アンタに言われちゃイヤミにしか聞こえねぇよ」
「あ、アンタたち…いいの?そりゃあ力を借りるとは言ったけど、外に出れないのよ?」
自分だけならやってやるわ!なメンタルのじゃんぬであるが、従業員の定時以上の残業など容認できずに弱腰を見せるも、ヘラクレスとアキレウスは頼もしげに笑う。
『店長よ、そんな顔をするものではない。私達の戦いこそが、マスターたる龍華に栄光をもたらすものであるならば』
「いくらでも喜んでサービス残業してやるぜって話だ。心配すんなって。アンタの美味い菓子、試食や毒見させてもらってる日頃の礼には足りねぇくらいだ!」
ヘラクレスとアキレウスはじゃんぬの下でスイーツ店にて働いている。だがその労働環境はホワイトで、じゃんぬも彼ら二人を丁重に起用していた大英雄二人だから気後れ気味もあったが。
その際、差し入れやまかないとして彼女のスイーツを振る舞われたり、その礼に応えクリスマスに24時間残業なども笑顔で行う程の信頼を築けているほど、二人はじゃんぬを信じていたのだ。
「あんたら…」
『むしろ大変なのは貴女のほうだぞ、店長』
「そうそう。何せオレたちのリッカの決戦フォームを作るんだ。半端な出来じゃ、オレたちも含め納得しないぜ?」
そう。既にリッカの晴れ姿を形取るというものにはリスクがある事を把握している。
誰もが納得できる、生涯最高のものを。全身全霊で届くかすら分からないものを作り上げる。
それは果たして、ここから出てこられるものであるのか。保障はない。
『それでも貴女は、挑むというのだな』
ヘラクレスの問いに、それは愚問だとばかりに鼻を鳴らす。
「ハッ、誰に物言ってるワケ?この私が、リッカに関することで妥協や失敗するとでも?」
勿論、その確証はない。だが、実績と自信は確かに胸に…霊基に宿っている。
「スイーツじゃんぬ、最高の傑作を作るためな一大決戦よ!今回ばかりは労基も基準法も完全に無視…!次に顔を合わせるのは、完成品を納める時よ!!」
力強く、じゃんぬは拳を振り上げる。
「やってやりましょう!私達スイーツじゃんぬカルデア本店!一大制作!!開始よ!!」
「『おう!!』」
そして三人は、それぞれワームホールへと飛び込んで行く。誇り高き決意と共に。
『また会おう。必ずや成果を掴み此処に』
「じゃあな!食材調達は何も心配しなくていいぜ!!」
「えぇ、やってやりなさい!何年、何十年かけても──!」
じゃんぬもまた、サバフェスにて孤高の戦場へ。
「絶対!作り上げてやるわ!!あ、BB!」
「はいはい、なんでしょうか?」
「リッカには『心配いらないわ』って!伝えておいてってね──!」
そしてワームホールに飛び込み、やがてその後ろ姿が消え去るのをBBは見送り、笑みを零す。
「楽しみにしていますからね、新作スイーツ…!」
その笑みは…
「私も先輩も、ファンなんですから!」
戦いの武運を祈る…
ある意味で、BBらしからぬものであった。
生地ドラゴン「グオアアアアアアッ!!!」
サンダークランチバード『キュアァァァァァァァ!!!』
ヘラクレス『遅れるなよ、アキレウス』
アキレウス「ハッ、誰に言ってんだ!」
ヘラクレス『─────行くぞ!!』
〜特設厨房
じゃんぬ「へぇ…気が利いているじゃない」
ばしりと頬を叩き…。
「待ってなさいよ!女王サマ!!」
スイーツじゃんぬ、最大の戦いに身を投じるのであった。