人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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ボルシャック『オレはよ、いつかあの空にかかるあれみてぇな世界を作ってみてぇ』

『色んな色が一つになって、一つの橋みたいなカタチになってる空のアレだ』

『アレ、なんていうんだろうな?』

『いつか…解るといいな。あの橋みたいな…』

『キレイな色の、あれの名前がよ…』


灰燼の竜

かつて、燃え尽きる前の世界。そこには様々な色の文明があった。

 

そこには様々な者達の生きる世界があり、様々な色の暮らしがあった。

 

そのドラゴンは、大きな身体と優しい心を持つドラゴンだった。

 

小さな者達も数多生きていたが、その世界においての力の序列は未だ大きく肩身の狭い想いをしていたものも多くいた。

 

『困ってるのか?そんならオレが、手を貸してやるからよ』

 

そんな一顧だにされない生命たちに、そのドラゴンは躊躇いなく力を貸す生き方を貫いた。

 

『オレのデカい図体や強い力は、きっとオレより小さいヤツらを護ってやるために備わったんだと思うのよ』

 

そのドラゴンは弱きを守り、助け、彼等を導き、寄り添った。

 

彼は強くありながら、弱きものを愛した。

 

弱きものは力が弱いだけで、時に強いものが想像もしないものを生み出す。

 

その歌声は心を癒し、皆で作った家や建物は暖かい住処となる。

 

『君のお陰で、僕達は毎日を生きていられるよ!ありがとう!』

 

『よせやい。当たり前の事をしてるだけだぜ』

 

『それなら、僕達と友達になってよ!』

 

小さき友達は、ドラゴンにそう告げた。

 

『オレが…お前らの?』

 

『うん!僕達ファイアー・バードは、君と友達になりたいんだ!』

 

『お、おう…それなら、よろしく…な?』

 

『うん!僕はルピア!コッコ・ルピアだよ!よろしくね!えっと…』

 

『ボルシャック』

 

『!』

 

『オレの名前はボルシャックだ。よろしくな、ルピア、皆!』

 

これが、あの世界における『火文明』の始まりの一つ。

 

かつての友との、出会いの記憶。

 

 

ボルシャックは、友たるファイアー・バード達と共に各地の荒くれ者、力を持て余している者達を纏め上げていった。

 

『無軌道に力を振るうんじゃねぇ。暴れたいなら、オレ達と一緒に来い』

 

『力の振るい方、護り方と暴れ方を教えてやるよ。どうだ?オレ達の仲間になる気はねぇか?』

 

ボルシャックは他のドラゴンを筆頭に、行き場無く暴れる者たちと心を通わせていく。

 

水とは相容れず、自然とは馴染めず、光に嵌まらず、闇に染まらない、血気盛んな者らの愚連隊。これが火文明の勢力の始まりの中核だった。

 

『オレ達の力は、無軌道に振るうもんじゃねぇ。デカいやつは弱いやつを護ってやれ。助けてやれ』

 

ボルシャックは、愚連隊のリーダーとして火文明の礎を作り上げていった。はたまた、そういった地盤やマナは築かれており遅かれ早かれ、だったのかもしれない。

 

『オレ達は各文明のどの戦いにも出向く。戦いを止めるため、争いを止めるための戦いの為にだ。殺し、傷付ける戦いじゃねぇ。弱きを助け、共に生きていくために戦うんだよ』

 

その志の下、弱き者たち…虐げられし者達や、その志のもとに集う強き者達も数を増やしていった。

 

バザガジール、ボルメテウスはボルシャックのその志に共鳴した側であり…

 

『ぐははははははははァ!!いいぞいいぞ!その強さ、志に見合うものだ!故にオレ様も貴様に従おう!』

 

『それならこんなガチのやり合いする前にやれることあったろうがよ…!』

 

ボルバルザークはボルシャックに挑み、引き分けにて力を認めた側である。

 

その戦力はみるみるうちに世界の有数な戦力にして抑止力となり、他の文明が無視できぬものになっていった。

 

『オレ達のできることと言ったら、結局は戦いだ。だったらせめて、何を護るか…何を救うかくらいはその強さで選ばなきゃならねぇ』

 

ボルシャックは、集まった仲間達にその志を説き続けた。

 

『いいか。弱きを護り、明日を救うために力を振るえ。強さってのは力だけの事じゃねぇ。明日をより良く出来る奴等の事を言うんだ』 

 

力と、その責任を。

 

『オレ達は、世界と未来の為に戦うんだ。それだけは、忘れるんじゃねぇぜ───』

 

やがて、火文明の戦争や紛争抑止の力により、世界各地の交流や流通はより活発となっていく。

 

彼らの護りし弱き者らが、世界にその生存力を増やしていき世界を豊かにし始めたのだ。

 

『こりゃあいい。オレ達みたいな荒くれ者でも、ちょっとでも世界の為に何かができたなら…』

 

『それに越した事はない、か』

 

『うむ。善きかな善きかな』

 

『ぐはははははははは!まぁ良かろう、平和という鞘に収まるも悪くない!!』

 

ボルシャックはそれらを満足気に見やる。

 

いつか、世界もまたああしてみたい。

 

自らの頭上に、いつか輝いた…

 

あの、七色の橋のように。

 

 

『大変だ!急に闇と光が、戦争を始めちゃったよ!』

 

『なんだと!?』

 

何かが、致命的に狂い始めた。

 

『僕ら、見たんだ!戦場に水文明の奴らがいたんだ!本当だよ!』

 

『自然文明は中立を保つって…!これじゃあ、三文明に狙われちゃうんじゃないかな…!?』

 

突如として始まった、文明間の大戦争。

 

『何故急に戦争などが始まった!?新たなるエネルギーやマナでも発見されたというのか!?』

 

『ぐはははははははは!!良いではないか!殴りかかるというなら殴り返すまでよ!!』

 

なんの前触れもなく訪れたその大戦争に、火文明の皆は困惑を隠せない。

 

『落ち着けボルバルザーク!なんの理由も道理もなしに戦争が始まるわけねぇだろ!どう考えてもコイツはおかしい!』

 

『ならばどうするボルシャック!火文明の司令塔はキサマだ、決めろ!何を救い、何を守るか!』

 

ボルシャックは、突如火文明と世界を護るための決断を担うことになってしまった。

 

『──一先ず、戦場に向かって戦争を止めるぞ!』

 

『ほう、戦争を戦いで、力で止めるか!』

 

『あぁそうだ、オレ達はずっとそうやってきた!バザガジール、各文明に使者を出せ!ファイアー・バードの皆に頼むんだ!』

 

『分かりました。ただちに!』

 

『何が起きている…!?ボルシャック、一先ず私は部隊を指揮するぞ!』

 

『あぁ、頼む!』

 

混乱と困惑の中でも、ボルシャックの指揮の下火文明は誇り高く在ろうと努めた。

 

争いを止めるため、弱者を護るために。

 

『じゃあ行ってくるよ、ボルシャック!必ず真意を聞いてみせるから!』

 

『頼むぜ、ルピア!こんなわけも分からず、戦争なんて認めてたまるかよ…!』

 

ボルシャックらは、友たるファイアー・バード達に和睦の使者を任せた。何故戦争を始めたか、目的は何かを問うために。

 

だが───戻ってきた結果は、凄惨たるものだった。

 

『うわあぁあぁあ!!なんで、なんでこんな…!!』

 

闇文明により、八つ裂きにされて帰ってきた友の姿。

 

『うわーっ!!助けて、助けてーっ!』

『ボルシャックーッ!!嫌だよ!助け──』

 

助けを求めながら処刑される様を見せつけてきた、光文明。

 

『水文明のクソったれどもめ!!!コッコたちを爆弾にして返してきやがった!!』

『俺達のダチを、仲間をよくも…!絶対に許さねぇ!!』

 

使者を爆弾に変え、火文明の同胞たちを数多巻き込み傷つけた水文明。

 

『ボルシャック!!フィオナの、フィオナの森が燃えている!!』

 

『なん、だと…!!?』

 

そして、侵略の手により焼き尽くされる自然文明の全て。

 

『うわぁーっ!森が!僕達の森がぁ!!』

 

そこで見たものは、住処や積み上げてきたものが焼き払われて涙し、慟哭する小さき者達。

 

『う、ウソだろ…なんで、こんな…』

 

『火文明だ!火文明のやつらがやったんだ!!』

 

『!?』

 

『敵討ちに手を貸さないなら、テメェらも敵だって…!火文明の奴らが火をつけたんだ!』

 

その言葉に、動揺するボルシャック。

 

火文明が、この惨状を招いた?

 

仲間達が、この燃えた世界を招いたってのか?

 

『嘘つき!!』

 

『─────!!』

 

『火文明の皆は、弱きを護るんだって言ってたのに!信じてたのに!!』

 

住処や家族、大切な全てを奪われた小さき者達は、ボルシャックを睨みつける。

 

『お前らなんか、皆死んじゃえばいいんだ!!返してよ!僕らのお家を、家族を!友達を返してよ──!!』

 

『そ、そんな……ウソだ───』

 

自分がやってきたことは。

 

自分が夢見てきたことは。

 

一体、何だったというんだ?

 

『おのれ卑怯者ども!!卑劣なる火の者共めが!!』

 

自然文明は怒り狂い、徹底的な抗戦を示す。

 

『その蛮行の報い!必ずや受けさせてくれる!!我等が怒り、貴様らの火などより燃え猛ると知るがいい───!!』

 

『あ、いました!おカシラーっ!』

 

『お前ら…』

 

『何してんですか、戦いますよ!もうこの世界に味方なんていねぇ!俺達が天下を取るんです!』

 

『天下…?』

 

『えぇ!アイツらは俺らのダチを惨たらしく殺しやがった!それなのに自然の奴らは高みの見物を決め込むつもりだったんだ!許せねぇでしょう!?だからやってやったんですよ!』

 

自身が伝え、説いてきた事。

 

『俺らの他に文明なんかいらねぇ!!全員ぶっ潰して仇を討って、これ以上犠牲が出ないようにするんです!そうすりゃあ、この世界は丸々俺らのものですぜ!』

 

怒りと憎しみが、戦う理由に。

 

戦う理由が、欲望と憎悪を呼んでいく。

 

『戦いなら俺らが最強だ!カシラ、今すぐ──!』

 

その時、ボルシャックは限界を越えた。

 

『────おお、おぉお……!!!』

 

何も護れず、何も救えず。

 

自分はただ、間違っていた。

 

『うぉおぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッッッ!!!』

 

戦いにて出来ること。

 

それは誰かを、傷付ける事だけ。

 

そうする事でしか、戦いは終わらないのなら。

 

『ひぃいぃい!?』

『か、カシラ…!!』

 

終わらせる。終わらせてやる。

 

【あぁいいぜ…!終わらせてやる…!!】

 

ボルシャックは、憎しみと怒りに満ち溢れ決意する。

 

【戦いで、全てを終わらせてやる!戦う全てを!ブチ殺す事でなぁ──────!!】

 

そうしてボルシャックは、護るため、救うための戦いを捨てた。

 

『ぐぉおぉぉ─────!!馬鹿な、この、我が…!下賤なる火

如きに…!!』

 

アルカディスを討ち果たし、光を途絶えさせ。

 

【ククク…いい目だ、いい憎悪だ。それでよい。それこそが…】

 

バロムを打ち取り、闇を吹き飛ばした。

 

【水文明の奴等は一匹たりとも残すな!!一滴残らず蒸発させ、皆殺しにしろォ!!】

 

不倶戴天の水文明は、徹底的に叩き潰した。

 

『ひぃい、助けて…!』

『慈悲を、どうか慈悲を…!』

 

【テメェらに殺されたダチの願いを、テメェらは聞いたのかよ──────!!】

 

『『ぎゃあぁあぁあぁあぁあーっ!!』』

 

強きも、弱きも、徹底的に。

 

その怒りは、世界の全てを呑み込んでいく。歯止めなく、何処までも。

 

やがて、その戦いに最期がやってくる。

 

『ボルシャックは厄災になった!!全ての文明を終わらせる災厄だ!!』

 

懸命に戦い、護り続けた仲間達からも拒絶され。

 

『貴様ら正気か!ボルシャックは何のために…!』

『馬鹿な…戦いが終わることは、無いというのか…!』

 

ボルメテウス、バザガジール、ボルバルザーク共々、世界を終わらせる『厄災』として、火文明すらから排斥される。

 

『ぐははははははははははははははァ!!全ての文明を絶やす戦いならば、最後は当然火も含むか!いいだろう!全て喰らってくれるわァ!!』

 

最後は、同胞同士で殺し合う始末。

 

【────間違っていた】

 

大切な者達は皆死んでいった。

 

分かり会えたと思ったのは、まやかしだった。

 

必要なのは、手を取り合う事ではなかった。

 

いや、そもそも手を取り合う事など出来なかったのだ。

 

【オレがすべきは、色を束ねる事じゃねぇ…!!】

 

そして遂に、ボルシャックの怒り、哀しみ、憎しみは頂点に達する。

 

【怒りのままに…!!全てを燃やし叩き潰す事だったんだァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!】

 

自身が間違えたから、たくさんの者らが傷付いた。

 

自身が頂点に立ち、全てをねじ伏せていれば、何も間違わなかった。

 

間違っている。間違えてしまった。

 

なら、間違って紡がれた全てを消し去ることが償いだと。

 

『ボルシャック!!』

『やめなさい、そんな事をすれば!』

 

『いいだろう!その炎の行き着く果て!見届けてやる!!!』

 

世界も、何もかもを燃やし尽くす終末の炎が、世界に満ちていく。

 

全ての生命を焼けただらせ、世界を滅ぼす【悪竜現象】。ボルシャックは、それになろうとしていた。

 

【うおおおおおおおおおおァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!】

 

そしてやがて、世界を…最後の仲間も焼き尽くさんとしたその時。

 

『だめだよ!止めて───!』

 

【!!!】

 

その刹那に───

 

『ボルシャック────!!』

 

友の、声を聞いた。それが最後。

 

世界は──火の皇炎に、包まれた。

 

 

 




全てが焼け落ちた世界、その大地にて。

ボルシャック『ルピア!!』

友の声で、正気を取り戻したボルシャックは抱え上げる。

炭になりかけている、友の姿を。

『ルピア!しっかりしろ!オレは、オレはなんてことを…!!』

世界は滅びた。

余すことなく、ボルシャックに焼き尽くされたのだ。自然文明が跡形もないほどに、星は終わった。

ルピア『ボルシャック…良かった…元に、戻って…』

話すごとに、炭となり崩れていく。

ボルシャック『良くねぇ…!オレは、オレは…!!』

ルピア『ボルシャック……』

ボルシャック『もういい、喋らないでくれ!オレは…!!』

ルピア『───ごめん、ね』

ボルシャック『な────』

謝罪。

それを告げ、友は物言わぬ炭になった。

ボルバルザーク『ぐはははははははははははははは!!成し遂げたかボルシャック!!貴様が!我らが!この星の覇者だ!!』

バザガジール『こんな…馬鹿な……』
ボルメテウス『……………』

ボルシャック『オレは…オレは…!』

何のために。

自身は、何のために。

【うおおおァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーッッッッッッッッ!!!】

ボルシャックの報い。それは万象一切の灰燼。

それは、虹を焼き尽くした末路。

神の炎を宿した…

一匹の竜の、末路であった。
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