人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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コッコ・ルピア『ねぇ、ボルシャック』


ボルシャック『ん?』

コッコ・ルピア『あの光の橋、名前は解った?』

ボルシャック『──あぁ。あれは、虹だ』

コッコ・ルピア『虹、かぁ』

ボルシャック『あぁ、そうだ』

オレ達の夢の名前は…

虹っていう、名前なんだぜ──




炎の中で紡がれ始める物語

『グオォオァアァアァアァアァアァアァアァアァアァアーーーーーーッッッッ!!』

 

燃え盛り、燃え猛る神の炎の中から、更なる新しき神が降臨する。それこそは、かつて世界を滅ぼした炎、ボルシャックの新たなる姿にしてその可能性の極致。

 

『ラーの翼神竜の炎を触媒とし、冥界におけるボルシャック・ドラゴンの魂に共鳴する魂の全てを束ね、真なる覚醒を齎した…!ラーの神の炎、ゴッドフェニックスを使用した瞬間から、ここまでの想定をアダム先生は行っていた…!』

 

アテムは感嘆する。カードゲームにおける、決闘者としては未熟であろうとも。

 

彼は先に立ち、迷いを晴らし、導くために全てを懸けた。ボルシャック・ドラゴンの持つ力への畏れ、生き残ってしまった者達の嘆き。かつて悪に堕ちたラーの無念、それら全てを身一つ、魂一つで晴らしてみせた。

 

『アダム先生。あなたは決闘者ではないのかもしれない。そして勿論、ファラオという訳でもない』

 

そして不死鳥の巻き起こした炎は収まり、やがて顕現したボルシャック・バクテラス、並びにラーと合体したアダムが帰還する。

 

『だが、それでもあなたは神を操るに相応しい力と資格を示した…三幻神、サンダーフォースノヴァ、そしてボルシャック・バクテラス…!あなたの手には、切り札となる神達がいる!』

 

その威風堂々たる威容に、ファラオたるアテムは万感の想いで賛辞を送る。

 

『アダム先生!!デュエルの腕前は優れなくとも、貴方は紛れもなく、真の決闘者だぜ!!』

 

此処に、神々のカードは揃った。禁断、或いは宇宙を滅ぼす意志に抗う力達が。

 

『キュアァァァァァァァァァァーッッ!!』

 

やがて合体を解除し、ラーの翼神竜も満足気にカードとなりアダムの手に収まる。ファラオに続き、アダムを主と認めたのだ。

 

『これが…オレの力。虹の文明を守護するための、とびきりの力…!』

 

かつての世界の全てが集いし究極の姿。それにアダムは太鼓判を押す。

 

「強さは、それだけがあればいいというものではないのだ。ボルシャック」

 

『!』

 

「同じ世界を滅ぼす力があるものとして…助言をしよう。力を有するもの、正義を成すものは常にその意味と意義を問い続けなくてはならない」

 

固定化した正義や観念ほど恐ろしいものはなく、無軌道に振りかざされる力ほど厄介なものはない。

 

「問い続けるのだ、ボルシャック。力の行き着く果てを見た君だからこその問いを。自らが望む、その答えに辿り着く道筋を探すために」

 

『オレが望む答え…』

 

ボルシャックは胸に手を当てる。その教えを、答えを確かめるように。

 

『オレはよ、一度は全てを滅ぼしちまった大バカ野郎だ。そんなオレに与えられた…いや、皆が与えてくれたチャンスだ。もう二度と、馬鹿なヘマはやらかさねぇ。怒りに呑まれる事はしねぇ』

 

そして、掲げる。新たな誓いを、高らかに。

 

『オレ達全ての世界を束ねて生み出した力!これの全部を、オレ達は虹の文明の皆に捧げる事を誓うぜ!オレ達が至れず、しかし夢見た虹によ!!』

 

竜の皇、ボルシャック・バクテラス。あの星における、最強の種。

 

『アダム先生よ。あんたの後に続く皆だって!オレ達が護り抜くぜ!』

 

「あぁ──頼んだぞ、ボルシャック達よ」

 

アダムの教育、熱血指導は完遂された。ボルシャックたちも、三幻神も、超神星も、皆神の力を宿すに至った。

 

「これで──此度の黒幕を討ち果たす準備は整った!」

 

これにて、最後の決戦においての戦力は揃う。宇宙を、ハワイを、バカンスを脅かす全てを討ち果たす神々たち。

 

後は帰還を果たすのみ。そう決心したアダムであったが…

 

「ぐ、っ……」

 

鉛のように重い瞼、腹が背中とくっつくかのような空腹、全てを使い果たしたかのような虚脱感。

 

「少しだけ、無理をしたか…」

 

神の行使、極限まで削った生命力。彼自身の生命活動になんら支障はないとしても、支出された生命は、生成される生命力を上回っているため。

 

そのため──、彼が膝を付くも今回ばかりは無理からぬ話であったのだ。

 

 

『アダム先生!大丈夫ですか!?』

 

アロナ、パパポポ、そしてボルシャック達も合体を解除し、膝をついたアダムを取り囲む。

 

「問題ない、死ぬほど疲れただけだ…すぐに復帰する」

 

『無理もない。本来ならとうに国の人口分まで生命力を使い果たしている。むしろ死んでいないことこそが奇跡なんだ』

 

アテムの言葉の通り、アダムが費やした生命力は大国の人口クラスのもの。本来なら絶死して然るべき状態であるのだが、彼は疲れただけと即座に復帰しようとする。

 

『無茶だ、ここは──』

 

アテムが制しようとした時、その場に新たな声が響く。

 

『そうです。大人しくしていなさい。本来ならば生者にここまで自由にはさせないのですよ、全く』

 

『!』

 

「あなたは…」

 

そこに現れたのは、珍妙な…何か、布を被った何者かであるとしか言いようのない、謎の存在。

 

『メジェド神!!』

『なにっ、メジェド神!』

 

アテム、そしてパパポポの驚愕に首を傾げるアロナ。メジェド神とは、高位なる謎多き神。冥界にて、アダムたちの前に現れたのだ。

 

『冥界において、生者が死者と交わる。本来ならば許されるべき所業ではありませんが、想定される敵が敵。アトゥム、バアル、ラーをかつて貶めし不倶戴天の獣と戦うと言うならば、ここで狭窄してあなた方を裁くは神の名折れ』

 

『つ、つまり…?』

 

『我々もファラオに習い、冥界の勢力として皆様に協力をお約束致しましょう。さすればファラオは越権することなく、また恥知らずの汚名を被ることはない。そうでしょう?』

 

そしてメジェドは、冥府の天を仰ぐ。

 

『────うむ。善きものを見せてもらった』

 

天に響き渡るは、メジェドやアテムを上回る神威を有する、巨神の姿。

 

『うぇえぇえぇえ!?なんですかあれ!?』

 

「封印されし、エクゾディア…!?」

 

その威容、それはまさにエクゾディア。巨大なる召喚の神かと思われたが、アテムは捕捉する。

 

『彼は冥府の神、オシリス。オシリスの天空竜と名を同じくする冥府の神だ』

 

『然り。本来ならば魂の裁定、冥府の沙汰はかのオシリスが行うことですが…決闘の儀と、神の試練であるならばと。彼は容認なさってくれました』

 

深く感謝することです。メジェドは頷き、アダムは敬服する。

 

「感謝する。お陰で…ファンサービスと熱血指導を行うことができた」

 

オシリスは、厳かに頷く。

 

『ラーの火に自ら飛び込み、炎に焼かれようとも自らを貫く。その高潔なる魂、指導には報いなくてはならぬと至ったのだ。先を生きるものよ』

 

オシリスたるもの、ファラオの示せし試練を越えたアダム達を尊重する。

 

『冥府にて得た力、世界を照らす光とならんことを。我等冥府の闇は、死者の安寧を護りし闇。かの偽りの神たる獣は、死の安寧すら奪い去るものだ』

 

許してはおけぬと、アダム達にその可能性を託す。

 

『進め。ファラオの名は、正義と共にある。神の力もまた、その道と共に』

 

「──感謝する。その期待、必ずや報いてみせよう」

 

『──久しぶりに、とてつもなく熱い戦いを見せてもらった。一人の決闘者として感謝するぜ、アダム先生』

 

アテムの助力なくば、これほどの成果は得られなかった。アダムは気合と全身全霊を込め、立ち上がる。

 

「決闘王たる君に出会えて、心から光栄だった。次はカルデアで、カードゲームを教えてほしい」

 

『勿論だ。次は俺と、熱いデュエルで語り合おう!アダム先生!』

 

竜と神々が見守る中、力強く握手を交わすアダムとアテム。

 

『もう大丈夫だな、ボルシャック?』

『我らは共にあります。常に相談をお願いしますよ』

 

『ぐははははははははははァ!!是非オレ様とも戦えよボルシャック!いつぞやの決着をつけようぞ!!』

 

『──あぁ、諸々わかってるぜ、お前ら』

 

残った仲間、共にある皆。

 

『今度こそ──あの虹を、護り抜こうぜ!!』

 

力強い決意と共に──

 

皇の竜神は、虹の文明の守護者となった。

 

 




アベル「アダム先生!」

アダム「アベル…」

アベル「冥界で生命を削るなんて、とんでもない無茶をしましたね…。今、あなたを回復させる供物を用意しますから」

アダム「…いいのか?」

アベル「地上のことですか?大丈夫ですよ。キラナさんとテイルモンにファームはお任せしていますから」

アダム「そうか…」

アテム『すまない、冥界の食事は永住の危険があるからな…』

アベル「いえ、決闘王よ。我等が父への助力、心から感謝を」

アダム「………」

アベル「さぁ、楽にしてください。腹ごしらえして、地上に戻りましょうね」

「──あぁ」

アベルに甲斐甲斐しくケアされるアダム。

──かつてのエデンにおける光景のような一幕に、アダムは懐かしげな笑みを浮かべるのであった。
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