人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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サバフェス開催地上層

テスカトリポカ「あれが、イスカリを半殺しにしたケツァル・コアトルお気に入りのマスターか。成る程、近くにいて確信に変わった」

(あれはとびきりの戦士だ。技術と、何よりその心構えがな)

「それに、保護者に収まっていたあの男…」

(最初の人類にして神殺し。こりゃあなんともまたとんでもないな)

「学園都市に興味はあったが、事業展開はやめておこう。間違いなく俺はあの拳を振るわれる側の『悪い大人』だからな」

(アレを敵に回しちゃ、全面戦争しかなくなる。学園都市は全面禁煙、ってな)

「……………」

「……コンビニのアルバイトくらいは、御目溢し願いたいものだがね」


探す太陽と颯爽の風

『スンスン、クンクン…』

 

ハワイの繁華街の一幕にて、白き毛並みの狼アマテラスがその自慢の鼻をくんくんしとある匂いの出処を探索していた。それは、彼女が感じた濃厚な【死】の気配。

 

(リッカに纏わっていた死の気配、あの濃さは尋常ではありません。まだ近くにいるかも知れないのなら警戒しなくては)

 

黄泉下りから帰ってきたかのような恐ろしい死の気配。アダムには付かずリッカに付いていたところをみると、それは【縁結び】だったとアマテラスは推察する。

 

(害意は見受けられませんでしたが、それでも警戒することに相違ありません。イザナミ御母様もあれほどまでに匂いたちはしなかったでしょう。恐らく最高神クラス…)

 

遠回しに黄泉臭いとおばあちゃんを切って捨てるアマテラス。尚同じくらい清廉なので普段は匂わないとフォローは忘れない。

 

クンクンと死の匂いを手繰り、一人探索を続ける。

 

(お祓いしておきましたから大丈夫とは思いますが…アダムさんと頼光さんとは一緒にいてもらいましょう)

 

だが、その探索はまるで煙に巻かれたように功を奏さない。最高神クラスの残り香を有しながら、その気配の下が掴めないのだ。

 

(むむ……これほど鼻に効くのなら、気配の一つ嗅ぎ分けられないはずがないのですが…もしや、アサシンクラス…?)

 

仮にアサシンだとしても、ルーラーであるアマテラスならば容易に真名看破(鼻)ができるのだが、今回はそれすらも叶わず、相手の特定すら覚束無い。

 

(まさか、グランドクラスの気配遮断だとでも?…ありえない話ではないでしょうか)

 

伊邪那美命として天沼矛を有するイザナミならその資格があるように、最高神クラスなら当然の様に資格を有してもおかしくはない。しかしそれならば、更に状況は危惧を深める。

 

(グランドクラスの死の神にリッカが狙われているのならば…それは大変な事です!なんとしても見つけ出さなくては…!)

 

死の神、或いは戦いの神。それらがもたらすはバカンスにそぐわないもの。早急に処理しなくば取り返しのつかない事態を招くやもしれない。そう考えたアマテラスは、一層鼻を利かせる。

 

(彼女の平穏と安寧、母にしてペットの私がなんとか護らねば!)

 

そう決意を持って鼻を明かしていた…その時だった。

 

「ワオ!ハワイに白い狼だなんて不思議な事もあるものデース!ちょっと触ってみようかな…?」

 

『ワフ?』

 

不意に掛けられる声に顔を上げると、そこにはまるで風のように颯爽とした雰囲気を持つ女性があった。

 

「あれ、でもこの気配…。いけすかない蜘蛛の残り香がしますね?どういう事でしょう?」

 

『ワフン』

 

「まぁサバフェスですし、あの蜘蛛ヤロウもいても不思議ではないですが…それでもなんだか気になるので、洗浄だけはしておきまショウ!そーれ、よしよし〜♪」

 

『ワゥ!?』

 

途端にもみくちゃにされるあまこー。それは強引でありながらも気遣いに満ちた、暑く情熱的な手触りのモフモフ。

 

『(この感覚は…ケツァル・コアトル?)』

 

その躍動感には覚えがある。太陽神ケツァル・コアトル。太陽フレンズに雰囲気が酷似する彼女に通じるものをアマテラスは見出す。

 

しかし、その風貌は似つかない。西洋ジャケットに銀色と翡翠の髪色、美貌の女性は全く別の存在と認識させる。しかし、その暖かい雰囲気はとても近しく、似ている。

 

「はい、これでよし!毛並みと同じ、ピカピカですね!」

 

名残惜しげに離れる女性だが、アマテラスは気づく。

 

(残り香が…消えてしまいました…)

 

太陽の温もりに、感じていた死の気配がかき消される。それにより、死の気配の探索が不可能になってしまったのだ。

 

「あ、あれっ?落ち込んでますか?や、やっぱり急に触るのは良くなかった…?エチケット違反だったかな…?」

 

『───ワフ!』

 

まぁこの人も悪気があったわけではないのでしょうと、一鳴きし問題ないことを伝えるアマテラス。

 

「わぁ!良かった!次はちゃんと許可を取って触りますね!」

 

何故か通じている体で話す女性。その存在に、アマテラスはかすかな疑問を抱く。

 

(似ている…やっぱりこれはケツァル・コアトル…?)

 

それに、更に感じたことのある匂い。

 

(確か、藤丸の一人が連れていたフォーリナーの一人、確か…ORT?あの不可解な匂いと太陽の匂いが混ざっている…?)

 

嗅いだことのない…否、地球に無いような匂いを感じ取り、しきりに首を傾げるアマテラス。

 

「あ、申し遅れました!私は……えーと、ククルん!ククルんと呼んでください!」

 

(ククルん)

 

「はい!現地生命体…じゃないや、皆さんのお祭りにちょっと顔を出してみたくなっちゃって、一人旅していたところをあなたに出会って!白い狼だなんて初めてです!はい!」

 

その様相、振る舞いから敵対者には思えない。あの、根本的に異質な気配を太陽が埋めている感覚だ。

 

『ワフッ(ご丁寧にどうも。私はアマテラスと申します)』

 

「え!?アマテラス…!?あの日本の主神ですか!?」

 

『ワゥ(主神……まぁ、役割は担ったことがありますが、今は一児のママペットですよ)』

 

「わぁ、なんて偶然!日本の主神、太陽神に出会えるなんて!ではその、お近付きの印に、これを!」

 

ククルんはアマテラスに、とある束を渡す。

 

『ワゥ?』

 

それは、モロコシだった。ジューシーに焼け、ソースをかけられた神の肉。トウモロコシジューシーセレクション。

 

「向こうで売店していた原初の祖龍さんが構えるトウモロコシです!とーっても美味しいので、御家族とお食べください!」

 

『ワゥ〜(これはこれはご丁寧に…!)』

 

「それにしても…あの目障りな蜘蛛ヤロウも来ているなら好都合デース。食後の運動に血祭りに上げてやるとしましょうか!」

 

笑顔が一転、邪悪な威嚇に変化した事を見てアマテラスは確信する。ケツァル・コアトルに近しい神格…

 

(もしや、ククルカン?ならばこの気配は、テスカトリポカ…!?)

 

ククルカン。太陽神または風の神。テスカトリポカの宿敵たる存在。

 

しかし、土着の神としては混ざりけの気配が多い。不可解な匂いはアマテラスを困惑させる。

 

「本当は素敵な人理を救ったこちらのマスターさんに会いたかったけど…縁があれば風が出会いを運んでくれマース!」

 

そっと名残惜しげに、アマテラスを抱くククルカン。

 

「日本には縁結びの文化がありますね?太陽神のあなたにお祈りしておきましょう」

『!』

 

「どうかこちらの世界でも、素敵な縁が結ばれますように。…それでは!蜘蛛ヤロウを探してぶち殺しマース!」

 

チャオ!と笑顔を見せて駆け抜けていく、風のような女性。

 

『ワフッ……』

 

するといつの間にか、そこには沢山のトウモロコシセットが括り付けられていた。

 

(ククルカン…最後まで正体の全容は掴めませんでしたが…)

 

少なくとも、これだけは理解が及ぶ。

 

(決して悪い人ではないでしょう。また会えるといいのですが)

 

そして、死の気配もきっと同じ。

 

(リッカに害を齎さないのであれば…ひとまず様子を見ましょうか)

 

そう決断を下したアマテラスは…

 

せっかくなので、トウモロコシ店舗を覗きに行こうと歩き出すのであった。




リッカ「あ、お帰りなさいアマこー!どうだっ」


アマテラス『ワフ!(モロコシだらけ)』

リッカ「どういうこと!?」

アダム「問題はなかったか?」

アマテラス『ワフッ!』

アダム「──そうか」

頼光「皆様方?『ビーマ・レストラン』なる場所でお昼ご飯を食べましょうか♪」

リッカ「わーい!」

アマテラス『(ワフッ)』

笑顔は奪わせない。

モロコシを食べながら、アマテラスは決意するのであった。
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