人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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アジーカ【ムフ】

アンリマユ【…】

アジーカ【ムフフ】

アンリマユ【……】

アジーカ【ムフー】

アンリマユ【…どうした、って聞いてほしいのかよ?】

アジーカ【聞いてほしい】

アンリマユ【おう、どうした?】

アジーカ【等身大の私…楽しみ。うれしい】

アンリマユ【そりゃあ結構な事だが…先行きは暗そうだぜ?】

アジーカ【なぬっ】

アンリマユ【理想と憧れが強すぎて、絶賛難航中なんだとよ】

アジーカ【それはよくない】

【応援に行かねば】

アンリマユ【行くってどうやって…】

アジーカ【ぺいっ(空間断裂)】
アンリマユ【あー…】

アジーカ【レッツゴー】
アンリマユ【あー、そうか…】

【私ら、そういう不条理側だったなぁ…】


悪しき龍は何を望み夢見たか

「ひとまず、思考の袋小路に入ったなら立ち止まるのが重要よ。今回の作品は私だけの評判じゃない…リッカやカルデアの威信がかかってるんだから…」

 

メイヴとの戦いにおいて、自身が作ると決意したリッカの戦う姿、等身大アジ・ダハーカ。じゃんぬはそれに着手していたのだが、自身における理想の姿を形にするのに苦戦、製作は難航していた。

 

ヘラクレスとアキレウスの稼ぐ材料を懸命に形にしていくものの、彼女の納得いく形の作品は一向に完成の光明をじゃんぬに齎さない。

 

もっと上手く作れる。

 

リッカの姿はこんなものじゃない。

 

妥協は許されない。

 

絶対に完成させ、素晴らしいものを作り上げなくてはならない。

 

そういった使命感と、妥協を一切許さないじゃんぬの気質と性質が相まり、ドツボの袋小路に陥っていたのだ。

 

「ひとまず、リッカの活躍の記録を見返してみましょうか。そういうところに、必ずヒントや光明があるものよね」

 

とはいえ、ことリッカという最愛のマスターにおいての事象故、彼女は冷静かつ俯瞰的に行動を選び、選択を行えた。一度手を止め、彼女の戦い抜いてきた旅路を観ることとする。

 

「被写体の、モデルの把握は絶対にして基本の事柄よね。私もリッカの活躍や遷移はいくらでも見られるし!」

 

先程の苦悶から一転、ウキウキになりながらコンソールを操作しカルデアのデータベースにてリッカの奮闘を検索し、展開する。

 

「えっと、じゃあまずは冬木から…」

 

動画をオート再生モードにし、腰を下ろして映像を再生する。

 

藤丸龍華。運命に弄ばれ、この世全ての悪となった少女。

 

覚醒するその寸前、現代の覚者たる存在に救われ、カルデアに導かれた少女。

 

その先において、彼女は人理を救うための戦いに身を投じた。数多の勝利、数多の研鑽、数多の決闘を乗り越え、彼女は誇り高き人理を守護する龍となった。

 

アジ・ダハーカ。恐ろしい邪悪の龍。

 

アンリ・マユにおける最強のしもべの三頭龍であり、人理においても決して味方になど望むべくもない最強の悪龍。

 

それがリッカに宿る事により、人理を守護し未来を救う存在となった。

 

「────────……」

 

改めてその存在に注視することにより、その奇跡がどれほどのものであり、得難いものであり、あり得ざることであるかを再認識する。

 

「あ、これティアマトと戦った時のやつよね…グガランナが後ろから…何やってんのよあの邪神は…!」

 

人理の為に、リッカの大切な人達の為に。

 

「カーマ…じゃないわ、マーラだったかしら。なんか結構ピンチだったはずなのにあんまりそう思えないわね…」

 

記録に示されしアジ・ダハーカは、懸命に戦い、人々の未来の為に戦っていた。

 

雄々しく、強く、禍々しく。

 

しかしその咆哮と力は、揺るぎなく人類の未来の為に。

 

「……こうしてみると、アジーカやアンリマユは一体どんな気持ちだったのかしらね…」

 

アフラ・マズダとの二元論。絶対なる悪として存在する二人。

 

本来ならば、人理の味方になど決してならぬであろう二人。

 

そんな二人が、ある意味藤丸龍華という存在に【受肉】し、『転生』して人理の為に戦う事。

 

それは一体、どんな心持ちであったのだろうか。彼女達も、最初から決してリッカとしてあることを理解していた筈ではないだろう。

 

邪悪として、人類を滅ぼす悪としてなお、自身の存在意義を未来と世界の為に戦わんと費やした誇り高き魂と共に在り、彼女たちは一体何を想い、何を望み、何を感じたのだろうか。

 

「………あー、かっこつけて引きこもるんじゃ無かったわ…」

 

そこに、もしかしたらヒントがあったかもしれない。今回の作品における、大切なヒントに繋がる何かが。

 

「まぁ愚痴を言っても仕方ないわ。リッカのカッコいいとこれを目に焼き付けたし、もうちょっとアレコレ悩んでみるとしますか…!」

 

パチンと、自身の頬を叩きじゃんぬは立ち上がる。

 

「自分の趣味としてやってきたスイーツ作り、それが今こそ役に立つのならまごまごしてられないわ!なんとしても、私なりに形にしてみせるわよ!」

 

弱音は吐かぬ、諦めは論外。滾る復讐の炎は情熱に変えて。

 

今一度、じゃんぬは自身の戦いに飛び込んでいく。

 

「絶対作るわよ!度肝を抜く最強スイーツ!!」

 

そしてじゃんぬは、更なる試行錯誤を続ける。

 

「刀を構えたアジ・ダハーカってのはどうかしら?いやいや、割と弓を構えたアジ・ダハーカってのもいいわね。天沼矛は…なんかジャパンの創作に取り込まれた感があって怒られそうね…」

 

リッカが持つ魅力や、リッカの紡いできた迫力を懸命に自身の実力で表現する。

 

それは趣味に没頭する時とはまた一味違う、正解なき自身との魂の戦い。

 

それが正しいか、間違っているかを決めるのは自身ではなく客…観客やギャラリーの判断だ。

 

それであるからこその緊張、だからこその繊細な創意工夫に気合と妥協なき試行錯誤が入る。

 

「別に誰かからの評価が欲しくて始めたものじゃないけど…たまにはこういうのも、悪くないわね」

 

自身に一切の妥協を許さぬ戦い。アスリートや。スポーツのような輝きを持つ戦い。

 

普段の和やかなスイーツ作りとはまた違う、妥協なき創作の醍醐味に、じゃんぬは顔を綻ばせる。

 

「よおし!!とことんまでやってやるわよー!!」

 

そうして気合も新たに、制作に取り掛かったじゃんぬであったが…

 

創作空間は時間の流れが異なる。そしてサーヴァントはその気になれば睡眠も食事も不要なる存在。

 

そう決心し、外の世界においてなんと一ヶ月が経過した頃…。

 

「うあああああああーーーーーー…!!!」

 

辺りにアジ・ダハーカまみれの、熱心なゾロアスター狂信者もかくやとの空間を作り上げた後、じゃんぬは突っ伏し撃沈する。

 

「カッコいい…逞しい、禍々しい、雄々しい、誇らしい…」

 

アジ・ダハーカの奮闘にて感じたものをそれぞれ形にして、作り上げ、最高のものを作る工程。

 

しかしそもそもそれは、滾る熱量をどのように昇華するのかという自問自答から始まったものだ。

 

記録を確認して、やる気やビジョンを明確にしたのはいいものの、それは全力でエンジンを空回すに等しいもの。

 

明確な『表現したいもの』を見つけない限り、じゃんぬの真の納得は、完成は訪れない。

 

「出来るのかしら、私に…本当のリッカの魅力を、再現する事が…」

 

彼女らしからぬ弱音が溢れる程に、出口の見えぬ迷路。

 

創作とは、得てして容易には生まれない。

 

他者に見せ、評価を受けるのなら尚の事。

 

「何かを生み出すのって…大変な事だったのね…」

 

そしてそれは…

 

じゃんぬという『個人』の限界でもあった。

 

 




そして、それは個人の限界。

アジ・ダハーカ【こんちゃ】

じゃんぬ「!」

アンリマユ【らしくねぇじゃねぇの、じゃんぬちゃん。スランプかい?】

個人では目指せぬ境地は…

得てして、誰かとの語らいでも道が拓けるものであるのだから。
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