人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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コンラ「あの女の死因、ですか?チーズです!投石機で、シュバーっと投げて、ゴーンです!あの女は脳みそをぶちまけて死んだようですよ!」

【───────】

コンラ「でも、今は通じるか分かりません!楽園のメイヴは、なんというか、とても真っ直ぐで素敵なんです!」

【─────任務了解】

【暗殺を、まずは試みる】


女王の決心

「へぇ…白昼堂々、このメイヴを暗殺する気概のある輩がこのハワイにいるだなんて。どこまで私を楽しませてくれるのかしら?」

 

ビーチにて、空から飛来する巨大な固形状態のチーズに向けて視線を送る。

 

チーズ。それは女王メイヴの死因。ヘラクレスのヒュドラ毒と意味を同じくする彼女という存在における死の足音。極限まで硬化されたそれが、投石機より放たれた勢いのままメイヴの頭に直撃し彼女の命を奪ったのだ。

 

それが今、メイヴに向けられて飛来している。そう、英霊において死因とは絶対の運命。

 

 

「さぁ来い!実は私はヒュドラ毒を食らうと即座に命のストック全てを使い果たして死ぬぞぉ!!」

 

とはヘラクレスの弁である。

 

 

その様な事もあり、メイヴにおけるチーズは絶対のタブー。このままではメイヴは道半ば、志半ばで力尽き果てることとなる。

 

しかし──。その様な想定を果たせねば、彼女は女王たりえない。

 

「出番よ私のクーちゃん!格好良く私を護って!」

 

メイヴが高らかに指示を出す、その前に。

 

【脈動しな。抉り穿つ鏖殺の槍(ゲイ・ボルク)───!】

 

狂王クー・フーリンがメイヴの前に立ち、肉体の崩壊も厭わぬ…

 

否。肉体の崩壊を前提とし無視した一撃が、真紅の軌跡を以てチーズへと全力投擲される。

 

「ごあいにく様。私が心から敗北を認める様な相手は今生には一人だけなの♡」

 

メイヴの投げキッスと同時、突き刺さったチーズが即座に爆発四散。固形化したが故に粉々に砕け散る。

 

そう。メイヴは敵多き女王。戦いの中にてその覇と美を示した女王の中の女王である。

 

数多の暗殺を退け、数多の奸計を跳ね除け、数多の抹殺を乗り越えた女傑である。その様な彼女が、直接的な暗殺を警戒していない筈もなく。

 

傍らには、カルデア最強戦力が一人『クー・フーリン』の陰の側面、クー・フーリン・オルタが控えている。ギリシャ、日本、ケルトといった神話体系の頂点たる一角の、メイヴちゃん魔改造のオルタナティブ。

 

そんな彼が、彼女を護衛している。ヘラクレスとギルガメッシュ二人がかりで突破が叶うかといった土俵の話ができる彼が、メイヴを直接傷付けるという可能性を絶無にさせていた。

 

【ケッ。大半は砕いた。破片はテメェでなんとかしろ】

 

ちなみに彼がメイヴを守護している理由は『コンラのライブを応援しろ!』とフェルディア達が五月蝿かった為、こちらに避難してきたのである。

 

どちらがマシか、ではなく。陽の自分がいるなら自分は不要と考えた武骨な合理によるものだ(クーちゃんが自分から来てくれた、とメイヴは狂喜乱舞し来たことを後悔したが)。

 

「えぇ、これで十分!呪だか知らないけど、飛沫すら私に飛んできてるみたいだし…」

 

だが、砕かれた破片が未だなおメイヴに迫る。それは殺意に満ちた、運命の一撃だ。

 

それを───

 

「────せいやあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!

 

気迫一閃。

 

メイヴ渾身の後ろ回し蹴りが、死の運命たるチーズを完全に迎え討ち、即座に粉砕へと導いたのだ。

 

「──英霊は人理の影法師。月経の血も出せないこの身体じゃ成長なんて見込めない」

 

ザッ、と自らの死の運命を退けたメイヴは語る。

 

「けれど!私は『進化』したのよ!苦手を苦手のままにしない!チーズをトラウマのままにしない!いつかこの頭にチーズが飛んでくるケースを想像し、想定し、イメージしてイメージして…!」

 

(どんなケースだそりゃあ)

 

「そして私は遂に!『チーズオート迎撃』に至るまで自分を高めるに至ったのよ!!私は私であることから逃げなかった!その信念が!私に生前できなかった事を成し遂げたのよ!おーっほほほほほ!!」

 

そう。彼女は鍛えに鍛えた。自らの弱点を克服するために。

 

チーズを遠ざけるとか、チーズだけを消し去るとか、そういう女々しいものではない。根本的な『克服』。

 

飛来したチーズに頭を砕かれる感覚。飛び散る脳、崩れ落ちる身体。末期の瞬間をイメージして、イメージして、振り返った。

 

今ならどうするか?どう迎撃するか?把握できた今ならどうするか?

 

かつてアメリカ特異点にて、リッカから受けた断頭の一撃。霊基に刻み込まれた、邪龍渾身の必殺。

 

あれがいい。二度目の生で死ぬなら、ずっとずっとアレがいい。

 

なら、幕を引く無粋な要素は排除しなくちゃ。

 

メイヴはひたすらにチーズを頭にぶつけられるシミュレーションを行った。

 

何度も何度もチーズが頭を砕く瞬間を味わった。

 

何度も何度も死の瞬間を味わった。

 

なんてことはない。それはただ死ぬだけだ。

 

あの時の、死以上の死。

 

自身を討ち果たしながら、心から認め合い高め合い、通じ合うことの出来た運命の親友との決着!

 

あらゆる勇士の射精を受け止める以上の快感、充実感、満足感。

 

アレほどのものを打ち込まれ、座に刻まれたあの衝撃!

 

故に自身の死因は『アレ』と定めた。

 

リッカが叩き込んだナインライブズ、究極の一撃!

 

それ以外で自身を仕留めるものはない、認めない、ありえない!

 

そう感じ、そう信じ、生前のチーズを叩き込まれる訓練を愚直に繰り返した。

 

震える身体はやがて強張りが消え、緊張はやがて小川のせせらぎのように。

 

木の葉の如き軽やかさ、猿のようなしなやかさにて、華麗なる後ろ回し蹴りが放てるようになるまでそう時間はかからなかった。

 

そう。ヘラクレスがリッカの故郷でヒュドラ毒すら克服したように。

 

メイヴはここに来て、チーズを克服したのだ。

 

【─────………】

 

クー・フーリン・オルタが、曲がりなりにもこの女王に侍っているのはそこに理由がある。

 

マスターであり、ライバルであり、親友であり、最高の仲間にて運命。

 

それにより、かつて自分を執念深く追い詰め、殺めた女王が更なる高みに登った。

 

 

『許さないわ!許さない、許さない!許さない…!私を好きにできるのに!私の愛を受け取る栄誉を賜ったのに!』

 

『そんな目で見るアナタが許せない!まるっきり私に興味を持たない、そんな顔をするアナタが許せない!』

 

『見ていなさい!見ていなさい、クー・フーリン!私があなたを殺してあげる…!』

 

『鮮烈に!苛烈に!絶対に忘れられない、絶対に無価値にならないやり方でアナタを殺す!』

 

 

『ぜーーーーったいに!!私をフッたアナタを!後悔させてやるんだからぁぁぁぁぁっ……………!!!』

 

 

あの、稚拙かつ短絡的な女王が。これほどまでに誇り高く、雄々しくなる。

 

それは、メイヴをここまで美しく気高く変革したマスターへの、けして口に出さぬ敬意と。

 

「さぁクーちゃん!ミーティングを始めるわよ!あぁ楽しみね!リッカはどんな写真を見せてくれるかしら!彼女のどんな魅力を魅せてくれるかしら!楽しみで楽しみで夜しか寝られないわ!」

 

そして、その変革により彼が唯一……。

 

【……まぁ、期待は裏切らないだろう。あのマスター、あのリッカだからな】

 

「そう!そうなの!問題は萎縮しちゃって上手くいかないことだけど…大丈夫よ!だってリッカには、仲間も友達も、私というライバル兼親友もいるのだから!!」

 

【……………】

 

いや、オメーの存在は萎縮の元だろ。どっちかって言うと。

 

【……そうかい】

 

そう口に浮かべようとして、タニキは静かに閉口する。

 

───彼が知る故郷の王の中で。

 

唯一『愚かでない』女王として認めたメイヴへの…

 

物言わぬ、敬意の表し方であった。

 

 




【─────任務失敗。英霊が弱点を克服する可能性を想定していなかった私のミスだ】


【暗殺は不可能と判断。ならばこのまま、リッカへのバックアップへと移行する】

撃ち放ったポイントより、人影は消える。

そこには…

告死を告げる、黒き羽根が舞い落ちていた。
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