人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜   作:札切 龍哦

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アズライール【この少女…生命を捨てることに躊躇いを感じられなかった】

(契約の事とは言え、彼女が本当の意味で【依代】となるのは、まだ先となるか…)

ルシファーの声『おーい!アズライール!』

アズライール【!ルシファーか…】

『聞いたよ!君、契約して顕現できるようになったんだね!』

アズライール【耳の早いことだ】

『でも、依代の女の子の寿命…八十年くらい吸い取っちゃったんだって?』

アズライール【そうするだけの、願いがあったのだ】

『それはそうかもだけど…どうにか、なんとかならない?』

【なんとか、とは?】

『だって、その娘はリッカ達の友達だよ?これからリッカや皆はたくさん生きていくのに、その娘だけ急死なんてしたら皆哀しみで曇っちゃうじゃないか!』

【───貴様、今他人の心配をしているというのか?】

『そうだよ!僕の寿命とかで肩代わりできない?羽は半分あげちゃったから、半分しかないけどそれでいいなら…!』

【──────………………方法は、ある】

『あるの!?』

【あぁ。それは…】

【彼女の代わりに、一人ずつ…系8名、彼女に寿命を捧げる者がいることだ】


何故世界と龍は平和に、エロくいられないのか。

「…………………………」

 

「ふふっ、リッカ達が早速サンプルを送ってきたけれど…これはとても素敵なものね、ユイ?」

 

緑川ユイは、榊原のボディーガードとして彼女の傍に侍っている。ヤマトやサラ、アスカの使用する強化外骨格たるMSプラモデルを完璧に修復できる彼女、並びに特別な空間把握力を持っている以上、精神干渉を得意とする偽神の影響を危惧したがゆえの選択。

 

そんな彼女達に、リッカのグラビア撮影が開始した事を知らせるサンプルが届く。それは特にテーマなく、リッカ達がフリーに撮っていたリッカの写真である。

 

「…………………」

 

ユイは、正直に言ってリッカに勝ち目があると思えなかった。彼女は、リッカの歪みを静かに見抜いていた。

 

人の愛を知らない存在が、教わった愛を懸命に真似している。かつてそういった印象を懐き、彼女を警戒していた。

 

『お前を殺す』

 

そしていつか、彼女が有する恐ろしい【何か】が顕現した時、自身が始末をつける事を彼女に告げたこともある。

 

「うん、よろしくね!」

 

なんの躊躇いもなく、笑みを浮かべてそう言った彼女を、ユイは同じ人間とは思えなかった。

 

彼女を監視しながら、決して気を許さなかったユイ。しかし彼女は、ユイの学園生活をサポートしてくれた。

 

デュオ、カトル、トロワ、フェイ。自身と同じエージェントを、受け入れるよう榊原に嘆願したのも彼女であった。

 

その時から、彼女のコミュニケーション能力は人ならざる何かを感じてはいた。

 

しかしそれは、人外魔境の領域。人を魅力するグラビアアイドルには向いていない素養。

 

牙を剥き出しにした龍に、魅力を感じる層と。アイドルを愛する層とは違うことを、ユイは把握していた。

 

故に彼女は強硬手段を取った。物理的にライバルを抹消し、聖杯を奪取する方向へと。

 

結果的に失敗はしたが…それでもリッカの女子力に懸けるよりは、と。

 

「ほら、ユイ。あなたも観てご覧?」

 

ならばいっそ疑似人格をうたうちゃんに頼んで…、そう考えていたユイに、榊原が画像を魅せる。

 

「彼女…私たちが知る頃より、ずっとずっと素敵な娘になったのよ?」

 

そうして端末を手渡され、映されたリッカの『グラビア』。

 

「──────────」

 

そこに、ユイは衝撃を受けた。

 

そして、自らの見識の浅さを恥じた。

 

「時間にしたら、ほんの少ししか経っていないのに…。人は本当に、出逢いで変わるという事よね」

 

ユイは食い入るように、1枚の画像を見つめる。

 

「────────私は」

 

「ユイ?」

 

「私は間違っていた。私の…」

 

私のミスだ。

 

そう呟き、彼女は駆け出す。

 

「ユイ…ふふっ」

 

やっぱり。

 

あなたもちゃんと、人の事を理解できる娘ね。

 

榊原は、その後ろ姿を優しく、確かに見守っていた。

 

 

そして場所を変えた、リッカの撮影風景。

 

「う〜〜〜〜〜〜〜ん……」

 

「ど、どう、かなぁ?私的には覚悟を決めた感じなんだけど…!」

 

一同が試しに様々なフリーショットを撮ってみた結果、一同に唸りを上げて拝見している中、リッカはおずおずと問いかける。

 

「リッカ先輩脱ぐとすごすぎ問題…。いつのまにこんなボディに…?」

 

「身長も伸びたし、血色もいい。ふふっ、どうだ縷々?お前好みか?」

 

「すまないちょっと席を外す」

 

「縷々?」

 

「黙れ朱雀!何も言うな付いてくるなよ!!」

 

退室する縷々。エルと黒神が感嘆を表す。

 

「凄いです!無駄がないところは芸術的に!魅力的なところは豊満に!エクシアのスマートさ、やF91のようなムッチリさ!総じて素晴らしさを感じます!!」

 

「うむ!戦いの中で丹念に磨かれた戦士、星のように輝く女神のような肢体だ!天晴!!」

 

同時に浴びせられる感嘆、ぱちぱちとアカネから送られる拍手に満面の笑みのリッカ。

 

「えへっ、えへへへ…ありがとぉ〜!」

 

「えぇ、先輩グラビアアイドルとしてボディや体型に関しては何も言うことはないわ。ここまで完璧に仕上がった状態は私もいくつあるかどうか…」

 

厳しく、優しい天空海の手がリッカに伸びる。

 

「性別リッカなんて言われても、それを魅力の全て甘んじずに研鑽を続けてきたのよね。本当によく頑張ったわ!太鼓判押したげる!」

 

「天空海先輩ぃ!!あ、ありが──」

 

「ただね…」

 

天空海の手が、頭から頬へ伸び……

 

「────表情が凛々しすぎるのよ!媚び方がダメ!まるでなってないわ!!アイドルとして致命的にあんたは『カッコよすぎる』のよ!!」

 

「ふぁ〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

そう。リッカの写真…写真に映る彼女は様々である。ビーチバレーボールを持っていたり、浜辺で海を望んでいたり。ホテルにてベッドに腰掛けていたり。

 

だが、それらの表情全てが所謂『キメ顔』なのだ。戦いに挑み、覚悟を決めた戦士の顔…。

 

「縷々はお前の肢体にノックアウトされたようだが、朱雀、お前はどう感じた?」

 

「戦乙女だと思ったよ」

 

「はうあっ!!??」

 

「確かに!神話の光景、英雄の肖像画とは見紛いましたが!可愛らしさはあまり感じられませんでしたね!」

 

「はぐあっ!!?」

 

「わ、私はいいと思うなぁ…。女性として、こんなに自信満々なのは憧れる、というか…」

 

「アカネちゃん…!」

 

「そうですよ!私の作った水着、こんなに着こなしてくれてありがとうございます!最高にカッコいいです!!」

 

「アスカちゃん…!か、カッコいいかぁ…」

 

「可愛くはないな」

 

「ムワアァアァアァァァァァァ─────!!!」

 

「何でそういう物言いしか出来ないんだアンタはァ!!」

 

ぶっ倒れるリッカ。そう、彼女の表情は待ち構えるメイヴとの決戦を見据えた凛々しいもの。

 

彼女の中の決起、使命感、決意の表れが一切の媚を抜き去り、その女神の如きプロポーションも相まり、『グラビア』を『肖像画』へと変えている。そう、女神を称え描かれた肖像画のような。

 

「でも、アカネの言う通り…同性としてはオスに媚びたメイヴさんよりこっちの方がいいかも」

 

「辛辣っすね、ヤマト先輩…でもでも、カッコいい女性だと、どことなくニッチというか…」

 

「私は好き、という領域で果たして天下を取れるかという問題が発生するということだな。難しいものだ」

 

天空海が意見を聞き、リッカに取りまとめる。

 

「この路線も決して悪くないわ。でも今のあなたの中に『雌』が足りないのも決定的な事実…!」

 

「め、雌…私の中に、雌がない…!」

 

「あの女王に勝つには、カッコいいと同じくらい『可愛らしい』も必要になってくるという事よ。それは本来戦いの中では育まれない、平和の中でしか生まれない余裕…!」

 

びしり、と天空海がリッカに指さし、突きつける。

 

「そう!!ファム・ファタールになるためにはあなたは『可愛く』『エロく』ならなくてはならないのよ!!!」

 

「か、可愛く…!」

 

「「「「エロく…!!!」」」」

 

天空海が求めるレベル。リッカがメイヴを打ち負かす領域。

 

それはかっこよさ、たくましさ、かしこさ、美しさ、可愛さ。

 

そして……男性が懐く根源的欲求を呼び覚ます、女性としての根源。

 

リッカは、エロくならなくてはならないのだ。勿論、公序良俗に抵触しない範囲以内で。

 

しかし、それはマスターとして戦ってきた彼女が求められなかった未知の領域。

 

パンツがチラりするより臓物がチラりする戦場、油断すれば首がポロリする鉄火場でリッカはあまりにも力強く戦いすぎた。

 

「ちなみに言うとだ、恐らく今のリッカよりも女装した縷々の方が可愛らしいぞ?」

 

「いやそれは反則だよ!?夏草ウェディングドレス着用コンテスト1位だったじゃん!」

 

「エロさならアカネさんも是非参考にしてください!ネグリジェと下着で部屋をうろつくアカネさんは中々にエロイズムでフェティッシュです!」

 

「だらしないって言わない辺り本当にエル君は優しいんだなぁ…自堕落なんで見習っちゃダメです…」

 

「頑張ろ、リッカ。時間はまだまだあるんだから」

 

「そうだぞ。馬子にも衣装だ」

 

「使い方間違えてるぞサラ!」

 

友達からの暖かいフォローを受け…

 

「ふ、不安だよぉ…!」

 

それでも、自分の魅力の未知数に慄くリッカであった。

 

 

 




屋上

リッカ「エロさはともかく…、私、楽しむ事が下手っぴになったのかなぁ…」

ユイ「リッカ」

リッカ「!?ユイちゃん!?なんでここに!?」

ユイ「謝罪する」

リッカ「へっ!?」

ユイ「お前は成長した。私は間違っていた」

リッカ「ど、どったの急に…?」

ユイ「お前の中に、全てはある。躊躇うな」

リッカ「へ、へぇっ?」

ユイ「死を想え────」

リッカ「な、なんなの、あの子…?」

その時、リッカの端末が鳴る。

「!」

そこには──

「これ…いつの間に…?」


【挿絵表示】


榊原が『今のリッカ』を、自身の能力を使用し念写した…

───ユイに見せた、1枚の写真があった。
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