人理を照らす、開闢の星・破章〜almighty,grail,war〜 作:札切 龍哦
騎士王の、円卓の皆の、ブリテンの頃みたいに」
「・・・・いやいや!!諦めたら駄目だ。微力でしかなくても続けるんだ!!今の自分はクトゥーラ嬢の道化師…
少しでも早く、その悲しみが払えるように。
心からの笑顔を取り戻せるように!!」
(リッカ嬢達が勝利すれば道は開かれる。けれど、それを奴らが座して見ているはずがない。
どこかに、どこかに必ずお二方の残滓、証が残っているはず…
それを見つけていれば、速く復活できて、奴らの思惑の粉砕も早く、上手くいくかもしれない…!)
「どうか、どうか待っていてくださいクトゥーラ嬢…!」
ダゴネットは体を軋ませながら風を奔らせ続け、クトゥルフ、ノーデンスの残滓、証を探し続ける…
『はぁ、はぁ…はぁ…!』
ハスターの風を受け、クトゥーラの道化師ダゴネットは飛翔を続ける。その目的は、宇宙と一つになった…或いは、統合されてしまったクトゥルフや、ノーデンスの痕跡を見つけるため。
ハワイを、星を覆う宇宙には何もなく、そして同時に生命もない。そんな中を飛翔し続けるのは、精神を有する生命体の正気を著しく奪い取るものである。
それでも尚、ダゴネットは飛翔を続ける。それは、彼或いは彼女らの、決意と奮闘の表れにして決意。
一度、主として認めたものへ何処までも献身する。それは、忠義と呼ばれるものであった。
『まだ行ける。ハスター様の加護のお陰でまだ、まだ…!』
そう決意し、自らを奮い立たせるダゴネット。
【ふふ、ふふっ…あはははははははは!!】
【くく、くくっ…あはははははははは!!】
ダゴネットの執念か、はたまたそれらを愚弄する悪意の表出か。
『!!』
ダゴネットの目の前に、現れる2体の『天使』。かつてアスモデウスと同僚であった、2体の天使なるもの。
【いつまでも無駄に飛び回る様な蠅がいるから、何者かと思えば】
【外で蠢く化け物の手駒風情が、身の程を弁えるがいい!】
『!?…!?』
ダゴネットは、まずその2体の【天使】の、あまりの異質さに目を奪われた。
天使。ダゴネットがそれを判断したのは、あくまでそれが羽を持ち、五体を有している普遍的なイメージを残していたからである。
でなければ、今の天使達であっただろう存在をそう認識することは叶わなかった。そう確信できるほどに、今の天使達は歪んでいた。
『なんだ、その姿は…一体、何が…?』
羽。そう感じられる期間は、羽ばたく様な麗しさは有されていない。腕が何重にも絡まり、触手が幾重にも絡まり形をなしているような悍ましさ。
美しかったであろう肌や顔は、ぐちゅぐちゅと音を立て蠢く肉塊と、そして宇宙を思わせる虚空の虚で蝕まれている。それらは大凡、人としてすら認識できるようなものではなくなりかけている。
【お前達のような低俗な次元に生きる生命体では、理解も想像もできないだろうな?】
侮蔑、或いは不遜に極まった言葉がダゴネットに投げられる。
【人、神、星。そのようなものは何もかも下らないものだ。この大いなる虚空、大いなる黒き宇宙の下に生み出される被造物にしかすぎん】
『お前達は、偽神に…デミウルゴスに仕える天使じゃないのか!?』
ダゴネットの言葉に、天使達は告げる。
【【はぁ?─────あっははははははははははは!!】】
天使達は笑う。その笑いは、自身が聞いてきたものと違い、自身が求めてきたものとはまるで違う。
【馬鹿め!私達が言っていた言葉を聞いていなかったのか?あのような嫉妬に塗れた俗物など、語るに値しない!】
【神の座に必死にへばりつく愚物…全てが滑稽だ!あの愚物も、あの愚物如きに手を焼くお前達もな!】
その様は…悪意に満ちた、嘲笑であった。
【お前達カルデアが懸命に護る人理とやらも、神々が懸命に護る世界とやらも、全て虚しく、等しく呑み込まれるもの。そう、この大いなる宇宙の意志により!】
【宙はやがて全てを破滅に、終焉に導くのだ。それがあの矮小なる愚物が生まれ出ずる遥か前より訪れし理!】
【我等はそれに触れた!かの愚物が恐れた宇宙の深淵、その意志、その真髄にして真理に触れたのだ!】
【そう、そして我等は一つとなったのだ!宇宙の大いなる意志…全てに、滅びと亡を!】
【【そう───宇宙の真意に触れ、『真化』した我等こそが!真なる神に相応しい…!】】
真化。神。それを口にする、天使であったものたち。
彼らは偽神の命により、今の世界が観測しきれぬ未明暗黒領域。神の威光や人の意志が介在せぬ宇宙の深淵へと派遣された。
それらは、真化という宇宙の意志に合一する究極の領域に達する為に偽神が行った探求、即ち彼らは捨て駒であった。
偽神の下にある天使達は精神制御を施されており、自我といったものに乏しい。
故に、その人身御供にも等しい使命を果たすために、躊躇いなくその身を投げ出した。
そしてそれらは宇宙、その深淵に辿り着き触れる事となる。
禁断の意志。或いは、宇宙の側面…【全てを滅びへと向かわせる意志】。
宇宙そのものが、滅びを望む。果たしてそれは二元一体、『宇宙を発展させ、生まれる全てを育む』という側面の表裏であったのだが。
偽神が自らのため、その正の意志を銀河規模で削り取っていき続けた結果、宇宙のホメオスタシス、サイクル行動にエラーが起きてしまう。
【生命が滅びへ向かい始めている。それは即ち、この宇宙が終わりを迎え、完全なる終焉へと向かい始める段階に入っている】
【ならば、滅びを迎えなくてはならない。新たな世界、新たなるる宇宙の為にも、今の宇宙は滅びなくてはならない】
【その為に、その手段が必要だ】
本来の宇宙はまだ『発展』『進歩』『進化』を見守り、促す段階。滅びのサイクルには、星々が滅び死に絶える程の時間がいる。
だが、偽神が介入してから生命体は削り取られすぎた。真化人類が生まれた、観測された宇宙はまだサイクルは狂ってはいないものの、それが目覚めるには十分過ぎた。
全てに滅びを。新たなる始まりの為に。
全てに滅びを。新たなる生誕を迎えるために。
それらは紛れもなく、宇宙の意志。
それに先んじて触れた天使達、その2体は【宇宙の意志】に触れたことにより、自我が励起することとなる。
いや、正確には取り込まれたのだ。宇宙の滅びようとする意思。全てを終焉へと向かわせる意思に。
自身の絶対性と安寧のために宇宙を弄ぶ、あの矮小な神など最早従うに値しない。
自身たちこそが、この宇宙の意志の執行者。自身たちこそが、この宇宙そのもの。
即ち、神たる存在であるのだ。
皮肉にも、精神性はルシファーよりも傲慢なる大天使に覚醒した2体は、偽神に盲従する素振りの名目で此度の計画を進行する。
全能の聖杯とその所持者、真化に至るに最も近い者たちを永遠に切り離し。
その禁断の意志で、宇宙の発展の意志を刈り取る。
その為に、ノーデンスやクトゥルフといった神格を取り込み、『神すらも滅びの意志に呑み込まれた』という因果を創り出す。
それにより、【禁断】や【遊星】の力が自身らの手により行使される。
愚昧なる神は、自身の愚かさの為にそれに気付かず、目論見通りノーデンスを排除し。
ノーデンスの力を行使し、意志に近しい神格を取り込んでくれた。
カルデアが何をしようとも、最早無駄なあがきだという。
宇宙の意志たる【禁断】は最早動き始めているのだと。
それが、2体の天使…
否、宙滅意志の尖兵と化した使徒たちの、最終結論であった。
【お前達がいくら足掻こうと無駄なことだ】
【だが、それを理解することもできないのだろう】
宇宙の意志に蝕まれた天使達が嘲笑する。
【我々こそが宇宙の意志】
【偽りの安寧の中で、緩やかに朽ちていくことすら出来ぬのならば】
【【我等の聖なる裁きにより、滅びるがいい────!!】】
そして、その力を解放する。
『ッッ…!!』
ダゴネットが見たもの。
【【アハハハハハ!!アッハハハハハハハハハハハハ────!!】】
それは、天使達の見目と、冒涜的な触手に塗れ蠢く四肢。
無数の目が蠢き、天使と邪神が無理矢理統合されたかのような…
悪夢のような、悍ましき宇宙の意志を体現せし怪物そのものであった。
ダゴネット「!」
しかし、ダゴネットは光明を見る。
「あの姿、あの力…間違いない、クトゥルフ様のもの!」
それに、神たる力は即座に無からは生み出せない。
神の如き力は、根源がある。
「クトゥルフ様、並びにノーデンスは…消えたわけじゃない!まだ確かに…!」
希望を垣間見たダゴネット。
しかし───
禁断の大天魔、ブリセラ【【見せてやろう、矮小なる生命よ。これが美しき、禁断の意志である!!】】
次にダゴネットが見たものは…
「──────」
宇宙全てから放たれる…
消滅と、滅亡の意志であった。